聖邪の蜜月

seija no mitsugetu

聖邪の蜜月
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神31
  • 萌×24
  • 萌4
  • 中立0
  • しゅみじゃない7

62

レビュー数
13
得点
183
評価数
46
平均
4.1 / 5
神率
67.4%
著者
安西リカ 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
yoco 
媒体
小説
出版社
心交社
レーベル
ショコラ文庫
発売日
価格
¥690(税抜)  
ISBN
9784778130831

あらすじ

奴隷市で売られ「神の愛し子」として聖職者に犯された過去をもつアシュは、偽聖職者として人を欺いて暮らしていた。ある日、絶滅したはずの聖獣の卵を拾い、生まれた仔にサージと名付け、育てることを選択する。純粋なサージを育てる生活のなかで彼の存在は唯一無二となる。人型にもなれるサージは美丈夫に成長した。性を知らなかったはずの思春期の彼がアシュに乗りかかり「アシュが欲しい」と迫ってきて …。

表題作聖邪の蜜月

サージ,聖獣・ドライトン
アシュ,元奴隷で偽聖職者

その他の収録作品

  • あとがき

レビュー投稿数13

心に響く作品

神の愛し子として聖職者の慰み者にされていたアシュが自由の為に逃げ、逃げた先で拾ったのが聖獣ドライトンのサージ。
アシュ目線でお話は進みますが、アシュの心情が丁寧に書かれていて胸打たれました。あとがきで安西先生がダークファンタジーと書いてらっしゃって、確かにしんどい場面も多いけどアシュとサージに、周りの人達の想いや優しさに救われました。
胸に希望が灯るような作品でした。素晴らしかった

0

神の真意とは

今回は絶滅したとされる聖獣と聖職者を偽称する青年のお話です。

踏みつけられる人生を逃れた受様が攻様を出会い、
歪んでしまった国の理に一石を投じるまで。

この国は神リエラを祀る王族を頂きますが
王都の聖殿が国の権威の象徴であることから
聖職者たちは神託により人々を支配しています。

受様は親を知らず貧民屈で生きてきますが
奴隷商人にさらわれ奴隷市の商品となります。

受様の額には4枚の花弁に似た傷があったことから
聖殿の司祭に「神の愛し子」として買われます。

「神の愛し子」とは生涯独身を守る聖職者が
「邪悪を追い出す」儀式で組み敷くための子で
貧民窟でも犯され続けた受様は無駄な抵抗もせず
彼らに従います。

しかし受様は不用品として「天に召される」事を
良しとせず、聖殿に通っていた薬師から知恵を学び
祝祭の夜に聖殿から逃げ出します。

受様はいずれ捕らわれて処刑される覚悟を秘め
聖殿での振舞や知識を生かして巡礼の聖者と偽り
聖堂の戸を叩いて司祭を誘惑した後は
司祭の代理を騙って有力者からの寄付を集い、
聖堂の金品や装飾品も奪い、次の地へと移り続けます。

そして4年、立ち寄った食堂で
世話をしてくれた娘から聖獣の里の存在を知ります。

その聖獣ドライトンは涙が万能薬となり、
鱗は宝石の美しさを持ちましたが、
凶暴性故に幼獣のうちから駆逐されるようになり
今では絶滅したとされているそう。

受様は町から離れる際にあやしい荷馬車に乗り
山中で夜盗に襲われてしまいます。

逃げるうちに崖を転げ落ち、
淡い光を漏らす不思議な洞穴に辿り着くのですが
光の溢れていた場所を掘り起こすと光を発する
大きな石と欠片と球状なものを発見します。

夜が更ける中、
いつの間にか眠っていた受様でしたが
膝と腹の間で何かが蠢く感覚で目覚めます。

球状のものが発光して表面が割れ始め
くうくうと悲しげに鳴いて出てきた黒い塊こそ
今回の攻様になります♪

攻様は動揺する受様の指ににじんだ血を舐め
受様は塊を手の中で包み、温め続けます。

果たして不思議な卵から生まれた攻様の正体とは!?
そして攻様に関わってしまった受様の未来とは!?

絶滅したと言われる聖獣の攻様と
過酷な生を独力で切り開いた受様との
種族を超えた恋物語となります♪

貧民窟で育ち、奴隷商人に売られてからは
聖職者の慰め者とされた理不尽な現実を直視し

自由を得るために知恵をつけ
隙のできる一瞬に賭けて聖殿を逃げ出し
ただ自由に生きる事を望んだ受様の物語は
物語の序盤からかなり悲惨です。

己の罪を自覚しながらも
自由に生きる道を選んだ受様でしたが
攻様との出会いがその生き方を変えていきます。

攻様を育てるために聖獣の里の
外れの小屋で薬師もどきを始める受様に
聖獣ドライトンである攻様は良く懐きますが
伝説の中でも人に害をなす狂暴な害獣とされていて
受様は攻様を失うかもしれないと恐怖します。

しかし攻様は受様に似た容姿の幼い子供へと変化し
受様は攻様を養い子として再び旅に出るのです。

そして旅の間に人ではありえない成長を見せた
攻様のために聖獣に関する知識を求めた事から
2人の未来は大きく変化していくのです。

丁寧に張られた伏線に隠された聖獣の謎と秘密、
受様に読み書きや薬の知識を与えた薬師との再会、
成獣への兆しを見せ始めた攻様の変化、
神の愛し子だっただろう少年の死、

そしてかつて受様を貪った聖職者達の変らない姿を
目にした受様は怒りを抑えられません。

受様がどうなるのか、攻様がどうするのか、
誰が味方なのか、敵なのか。

不穏さを増していく状況にハラハラし、
一途に受様を慕う攻様の恋の行方にドキドキしながら
たいへん楽しく読ませて頂きました。

誰かにも大切にさせずに孤独に生きてきた受様にとって
一途に受様を慕う攻様の想いは嬉しくあっても
同じ種でない受様には受け入れられません。

攻様と別れても正しい未来をと望み続ける
受様に胸が締め付けられました。
そして何よりも受様だけを慕い
守り続ける攻様にもすごく萌えました。

繊細で静謐な中に潜む暗い情感までもを
感じさせるyoco先生のイラストも物語の雰囲気に
とてもマッチしていて素敵でした (^-^)v

3

綺麗なだけではないファンタジー

いつものほんわかとした安西リカ先生の雰囲気とは異なるお話、アシュの過去の壮絶さと彼の拠り所になっているサージとの関係にほっこりします。

攻めのサージが本当に可愛い……厳しい世界観が牙を剥くこともある本作の中で、サージの存在は和む要素でした。
サージのキャラクター付け、好きです。
アシュがこんなにもしたたかに頼もしく感じるのは、彼の言動に一貫性があるからでしょうか。
生きていく上で必要なものを持っている、そういう強い受けが大好きなのでアシュに対する好感度がかなーり高めのまま読むことができて良かった…!

終盤のとあるシーンがロマンチックで、情景と二人の心情の結び付け方が安西リカ先生特有の穏やかさで好きでした!
愛の深く豊かなサージが攻めなのが先生節ですよね!
ストーリーや描写が本当に素敵でした。こういうファンタジーがもっと読みたいです…!
余韻のあるラストが素敵。

攻めのサージの「発育」がこの小説の旨味成分なのでは…と思ってしまうほどサージのカッコよさと内面の幼さのギャップ…育ての親と仔、本当に好きな攻め。
個人的に安西リカ先生の攻めは絶対の信頼を寄せているので、今回もワクワクしていたんですが…良かったです…最高に好きなやつでした…////

4

好き

聖職者にいいように扱われてきたアシュが、サージを見つけて唯一と言える者が出来た。暗い空に一本の光が差すような、神秘的なものを感じた。ドライトンが狼や竜のような姿に変形できる進化が面白かった。勝手な想像だけど、番でなければ孵化させる事が出来なかったのかも。そして、ドライトンの最期を誰も知らないのは、番と二人きりでそれを迎えるから、見た人がいないのだと思った。アッシュが自分と同じ境涯の子を助けた時には、他が介入できない強い力を感じた。誰かを思う心は勇気で優しさだと思った。安西先生のファンタジー、好きだな♪♪yoko先生のイラストも素晴らしくて、物語の世界に惹き込まれた♡

4

美しく強い人

作中に登場する"レモンの形の月"という言葉が好き。
なんだかとても印象的で、ロマンティックで素敵な表現でした。

なかなかの辛い境遇の中にいた主人公・アシュの視点で語られていくファンタジー作品。
物語の序盤から綴られている、過去にアシュがされていたことや育った環境のことを考えると、もっと重苦しくて悲壮感たっぷりのものになったり、痛ましさを強く感じてしまいそう。
しかし、ものすごく重たい雰囲気にはならず、かといって儚さ一辺倒にもならず、お話に惹き込まれてするすると読めてしまう。
不思議な感覚に包まれたまま読み進めると…これは彼が強く美しい人だからこそなのかなと。
「こういう強い主人公のお話が読みたかった」がありました。

ただひたすらに、がむしゃらに自由を求めて必死に生きていたアシュが、サージと出逢ってから安らぎや愛おしさを知っていくのがとても良いのです。
導入部分にある、このお話を象徴するかのような文章と、yoco先生の美麗なイラストもあって、お伽噺のような雰囲気も感じる。
お話もすごく面白いんです。本当に。
惹きつけられるものがあります。

それだけに、BL的なあれそれの部分では、子育てものの定番な流れになってしまった部分がやや惜しいなと。
アシュの過去を見ると、やはり性的なものや欲望を向けられることを、生きるために利用はしても、あまり良いイメージは持っていない気がするんですね。
なので、愛する者との愛のある行為は、アシュの中にいまだに残っている性に対してのイメージを上書きする…ではないですけれど、愛も救いもある素敵なシーンのひとつだとは思うのです。
サージの成長が分かるシーンでもあり、萌えどころなのだとも思う。
でも、なんだか私は何度かあるこの性行為の部分に少し疑問を持ってしまって。
そんなになくてもよかったかなというか、直接的な描写は少なめでも2人の繋がりは伝わったのではないかなと。

ちょっと上手く言葉が出て来ないのですが、行為以外でもアシュへと真っ直ぐに深い愛情を捧ぐサージの姿が初々しかったり、微笑ましいものが十分にあったからなのかもしれないですし、性行為をきっかけに2人の関係がトントンと進んでしまったように感じたからなのかもしれません。
2人の関係性だとか、立場が逆転するかのように頼もしくなっていくサージは良かったんですけど。
安西先生の従来の作品の雰囲気とは少し異なるお話で本当に面白かったので、シリアスとダークさと、お伽噺のようなほんのりロマンティックさが香る作中の空気とあまり合わないかなと感じたのが大きいです。これは完全に好みの問題ですね。

評価に悩みながら、高評価の中大変恐縮なのですが、今回はこちらの評価で。
それから、おそらく少数派だろうなと思いつつ、個人的にはラストはあのままのものも読んでみたかったななんて思ったり。
このラストも余韻があってとても素敵なのですけれど。

4

絶対に読んで欲しい一冊!

もう何て言っていいかわかりません。強いて言うなら安西先生にしてやられたでしょうか?

いつもと違う安西先生作品最高でした。
こちらの作品は詳しい内容は知らずに読んで欲しいです。
ただ、感想でも内容に触れてしまいますので心して読んで下さい。



まず読み始めてアシュの過去の壮絶さと、彼の強かと言えるほどの柔軟さに驚きました。そして聖獣(ドライトン)の卵を拾ってからの、彼の生き甲斐とも言えるサージの存在に和まされるのです。

魅力的に育つサージがアシュに独占欲を見せる度に、いつこの2人が恋人同士になるのだろう。
どうやって害獣と恐れられるドライトンを隠し続けるのかばかり気にして読んでいました。

そしたらですよ!終盤になってあの事件が起こるではありませんか!アシュがあれを決意する気持ちは分かりましたし、聖職者達を追い詰める姿に小気味良ささえ感じていました。

そしてサージが現れてアシュのしたかったことも成し遂げられて聖堂を去ろうとした時に、アシュの身に起きた出来事があまりにも壮絶すぎました。
2人が過去に暮らしていた山小屋で、アシュを静かに見守って世話をするサージに涙が溢れてとまりませんでした。

ARUKU先生の「猿喰山疑獄事件」を思い出して胸が潰れそうになりました。

ただ作中のサラのセリフも頭に残っているので、希望は捨てていませんでした。
それでもアシュの混沌とする意識の描写が秀逸すぎるんです。(安西先生上手すぎました。)
そしてサージがドライトンになって背中にアシュを乗せて最後になるであろう飛行をした場面。とてもロマンティックで悲しくてずっと泣いてしまいました。
そして最後を迎えるべく地上に降りた2人。

その後の怒涛の展開は素晴らしかったです。BLはファンタジーであると常々思っていますが、まさにこの作品がそうでした。

多くの方に読んで欲しい作品でした。

3

怒り

先生買い。腐った聖職者へぶつける清冽な怒り、その後の浄化再生のあたりがとても好きだったので神にしました。シリアス寄り、どファンタジーが大丈夫な方でしたら是非。いつもの安西先生テイストとは異なるお話、本編250p弱+あとがき。

奴隷市で聖職者に買われ、彼らの欲望を身に受けていたアシュ。磨き上げられ飾り立てられた美貌の底に、彼らに対する怒りを秘め、諦めず、ある日とうとう無事逃げ出すことに成功します。それから4年、各地で同じようなことをする聖職者などからスキを見て金品を奪い取り転々と移動する毎日。ある日逃げ込んだ山の中で光を放つ卵のようなものを見つけ・・と続きます。

攻め受け以外の登場人物は
カーリン(薬師、アシュに知を授けた人)、サラ(ある町で救おうとした少女)、悪党ども。

++良かったところ

サージが最初可愛くって。得体のしれないちっこい動物だったのが、ある日人型を取れるようになって、「ああしゅ」なんて呼びかけてくれたら、どうでしょう?
たった一人きり、いつ何がどうなるかもわからない、目的もない人生だったのに、ずっとそばにいる、守るべきものが出来、アシュの変わっていく様子がたまりませんでした。サージが無事だったと知って流す涙はきっととても美しかったはず・・

そしてアシュ。強いです。何がどうしてこんなに強いのでしょうか?カーリンの授けた知性が彼を支えたのかな。虐げられてもあきらめず、自由を勝ち取り、サージを守り、最後は自らが出来ることをやり遂げようとする。本当に強いです。この強さに感動を覚えました。怒りという感情はあまり好きなものではありませんが、アシュの抱いた怒りの感情は、清らかな、物事を正す炎のように感じられました。

やはり神がなんらかの意図をもって、アシュを遣わしたのでは?彼の人生を企んだのではと思うのです。神の想いをかなえたのだと思うのです。このまま二人安らかに穏やかに幸せな日々をおくれることを願った、読後の余韻が続く一冊でした。

3

こういうBL小説もっと増えて欲しい

いつもの安西先生と違う!とyoco先生の描いた美しい表紙からでも伝わってきて、読む前からワクワクドキドキしました。

アシュは過酷な幼少期を過ごしているのに、そこで拗らせず、自由を手に入れるために前へ前へと進んでいく受けです。
めちゃくちゃ好みの受けで、強さと儚さをもってる美人は最高、となりました。

サージは年下の純粋ワンコなのですが、アシュへの愛が太平洋なみで、こちらもとても最高の攻めでした。

読み進めていくなかで、予想だにしない怒涛の展開が訪れてこちらの情緒も揺さぶられましたが、最後は完全なるハッピーエンドなので、読了後の情緒はすっきり爽快感謝感激ありがとう安西先生とyoco先生、出版社、となりました。

話が面白かった。恋愛だけじゃないファンタジーってこんなに面白いんだ、と思いました。

他の方がネタバレは書いているのでそこは書かないでおきますが、
あるシーンのyoco先生の挿絵がめっっっっちゃくちゃ良かったです。泣きました。
読者に想像させる余白があるイラストってこんなにも心に響くのか、と。
勿論どの挿絵も素敵だったのですが、あるシーンの挿絵が一番好きです。

安西リカ先生×yoco先生、神の組み合わせ。
もっとこういうBL小説を読みたいと強く思ったそんな一冊でした。

3

悔し泣きは少数派?

安西先生とyoco先生って、素敵な組み合わせ!と飛びつきました。

安西先生の読みやすい文章で淡々と仄暗いストーリーが語られ、すぐに引き込まれたのですが…!!
途中、度々やってくる物語の無情に、何度嘆いたか〜(¬_¬)神も仏もない。
終盤にいたってはあまりの無情に悔しくて泣きました。
自分ではない誰かのために頑張ったのにこれかー。と。

いきなり終盤まで語ってしまいましたが、ラストの話をする前に、萌えの話をしたいです。
過去に酷い境遇に置かれていたアシュが、絶滅したはずの聖獣の卵を拾い、生まれた仔を育てていき…というお話なんですが、聖獣だからか成長の早いこと( ´ ▽ ` )仔は、サージと名付けられたのですが、あっという間にハツラツとした美丈夫に。
サージの見た目は大人であっても、内面はまだ外見に追いついておらず、アシュが誰かに優しくすると嫌な気持ちになるって言っちゃったりして、かわいい〜んです♡
サージの、アシュにして貰った精通からの性行への流れ!良きです!(精通といってもサージの見た目が大人なので、背徳感は薄れて/もしくはほぼ無いかと)
ここから先、サージも外見に見合った内面になり、どんどん格好良くなっていきます!アシュにもバンバン愛を囁きます!

恋愛面で良い萌えを楽しみながら、ストーリーは終盤へ。ここでの感想は冒頭で語った通りです。私、悔し泣きです。
でもですねー、悔し涙の後からは、もうサージの愛の深さに涙、涙だったのです。あまくて幸せで。゚(゚´ω`゚)゚。
そっか、二人は幸せなんだと思って、どんなラストでも受け入れる。という心づもりでいたのですが。
いらぬ心づもりだったようです。

とびきりのハッピーエンドになりましたよー♬

3

深い深い愛情に、萌えと涙が止まらない

安西先生って、ほのぼのっていうか甘々っていうか。そういうお話を書かれる作家さまのイメージが強い作家さまでしたが、数年前からですかね。どっしりとしたハードなお話も描かれるようになった気がしています。

で、今作品はがっつりドシリアス。ダークなバックボーンを孕んだ作品でした。安西先生らしい甘々なお話を求めて手に取られると、若干方向性が違うかと思われます。

でもねえ…、めっちゃ良かった…。
深い深い愛を描いた作品で、心に突き刺さった感じ。子どもが大人の汚い欲望のはけ口になる描写があります。苦手な方は注意が必要かもです。


主人公はアシュ。
親に捨てられ、その日暮らしをしていた彼は幼少期に人さらいにつかまり売り飛ばされることに。可愛らしいビジュアルをしていたアシュは、「神の愛し子」という名のもと、聖職者(や、他の大人たち)の慰み者になっていた。

ここで終わりたくないと思ったアシュは、必死の思いで逃げ出すが、逃げた先で彼は見つけてしまう。絶滅したと思われている、聖獣と呼ばれる「ドライトン」の卵を。

卵から孵ったその雛にサージと名付け、ともに暮らし始めるが―。

序盤からアシュの過酷な環境に胸が痛くなり、けれど正直に言ってしまうとありきたりなお話だなと思ったことも否めない。「聖職者」と呼ばれる、人の皮をかぶったケダモノと、見目麗しいがゆえに彼らの慰み者になる少年、のお話なんだと。

けれど、ドライトンという聖獣と出会い、そこから紡がれていくストーリーに圧倒されました。けして、ほのぼのなファンタジーものではないんですよ。心も身体も傷つき、必死で逃げたアシュが出会った、サージという存在。一心にアシュを求め、懐き。そんなサージに、どれほどアシュが救われたのか。

だからこそ、アシュはサージの幸せだけを望む。
いつか自分の手元から離れていくであろう、愛しい子に注ぐアシュの見返りを求めない深い愛情に、うっかり落涙しました。

で。

いやもう、サージがイケメンに育ち、スパダリ風になっていくのは想定内。
そんなサージが、アシュだけを愛するようになるのも。

この二人の愛情というベクトルにおいて、そこは揺らぎなく進むのであろうことは。

今作品の素晴らしいところは、アシュとサージ、二人の恋の成就を描いただけではないところにあると思われる。

アシュという青年は、自身が体験した辛い思いから、他人に対してすごく優しいんですね。弱い立場の人を、踏みつけにされる人たちを見捨てることができない。サージへの想いとは別に、彼が世界のすべての人に向ける目のなんと優しいことか。そんなアシュに幸せになってほしいと、ただそれだけを願って読み進めていきますが。

んー。
んんー。
もうね、終盤の流れには涙が止まらなかった。自分の欲だけで動くゲスな大人たちと、アシュのこの清廉な魂の比較が、安西さんの圧倒的な文才をもって紡がれていく。素晴らしいです。

そして、そんなアシュを助けてくれるのもまた、アシュが手を伸ばした人たちだったのも。

アシュは不遇な存在であり続けましたが、それを憂いているだけではなく、自身の足で立ち上がり、つかみ取った。そして彼の優しさが、彼のこともまた、救ってくれたのだと。

人間であるアシュと、ドライトンであるサージの生きる時間軸は異なっていて、彼らの未来はいかほどなのかとハラハラしつつ読み進めましたが、うん。彼らの「行き着く先」についてもきちんと胸に落ちてくる展開だったのもさすがでした。

ずっと、ずっと、彼らはともに有る。
先述しましたが、胸が痛くなる描写は多々あります。けれど、それを上回る、深い愛を描いたストーリーでした。

yocoさんの挿絵も素晴らしく、この作品の持つ世界観にぴったりでした。

どこをどう切り取っても素晴らしく、神×10くらいつけたい素晴らしい神作品でした。

6

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