04/20発売amazonの電子書籍版です
小説

いくら何でも病気のことを、死を迎えるそのときまで隠し通せるはずなくない?
病院にも入院せず、ホスピスにも行かず、自宅療養って。病気で衰弱していく姿が明らかに普通じゃないのは、リョウ兄大好きな重なら分かるはず。さすがに両親には末期癌のことを伝えていただろうけど、両親が死にゆく息子を指咥えて見ていたはずがないと思うし、関係も良好そうな兄もいるのに、家族の関わりが薄く見えてしまったのはイマイチしっくりこずでした。
異世界ターンに移行するために死亡までの流れが手薄になってしまった感は否めません。
物語の主軸は死亡してからの異世界の部分。凌馬に告白してきた弟みたいな存在が年上のイケメン貴族として登場するのが物語の第二幕です。
重として生きた前世の記憶を持つ侯爵騎士のヴァレリスの追っかけ転生愛とでも言いましょうか。BLには執着イケメンが数多く存在しますが、死してもなお好きな人の存在を…しかも魂まで欲するほどの想いをぶつける攻めはそう多くはいません。古代魔術にまで手を出してしまうくらい凌馬のことが大好きだったヴァレリウスの、時代や世界の垣根を越えたヘビー級の愛がズクンと響きました。
凌馬は自分が死ぬときも、そして新たな人生を得たときも、ヴァレリウスのそんな思いを知ることもなく、重の告白や好意に真剣に向き合わないところが私の萌え感にはあまりハマらずでした。
自分の命が残り少ないことを伝えず、挙げ句の果てにはお前の気持ちがキショいなどと言う背景には重のことを考えたことだと、さも自分の行動を正当化していたところが気にくわない。全然重のためになってないし、ずっと一緒にいて重のことを何も分かってないじゃんと言いたかったです。
転生後でもまーた同じことを繰り返そうとする凌馬にモヤモヤ。
恋が分からないとか言いつつ、しっかりヴァレリウス(重時代も含む)が自分の方をだけ見てることに優越感を感じたりもしてるし、嫉妬もしてるし、凌馬の面倒くさい系小悪魔感がいやらしいなぁと私的にはあまりハマらずでした。
年下の執着愛は大好きな設定だけど、細々したところの雑さが見えて物語に入り込めなかったかな。凌馬のヴァレリウスへの向き合い方がグダグダしてなければGOODでした。
病気で亡くなった、大好きな「リョウ兄」と再び出会うために。
なりふり構わず手段を探り、ついに願いを叶えた攻めの執念が光る物語でした。
タイトルがあらすじをざっくり説明してくれている、こちらの物語。
タイトルと表紙から、「ポップな物語なのかな?」と予想していたのですが。
これが予想に反して、内容はなかなかのシリアス寄り。
ネグレクトや病気による死の描写があり、受けの凌馬が亡くなる前半パートは切なさに胸を突かれました。
主人公は高校生の凌馬。
ある日、近所に住む小学生・重(かさね)が母親にネグレクトされていることを知り、家に上げて面倒を見ます。
やがて毎日凌馬のもとへとやって来るようになった重と交流は続き、
好意を寄せられ告白までされることに。
7歳年下の重が自分へ向ける好意は、きっと一時の気の迷いだーと
真剣には受け止めず、冗談にして返して数年後。
社会人1年目になった凌馬は病に倒れます。
ついに力尽き、この世を去ったのだ…と思った次の瞬間、
見知らぬ場所へ飛ばされていてー
と続きます。
重に心配をかけたくないがあまり、最後の会話で
凌馬は重に対し、冷たく棘のある言葉をぶつけます。
ここ、本当に切なかった……
ここ、言われた重も辛いけれど、全く本心ではない言葉で重を刺した凌馬の方も、
やりきれない思いと痛みを抱えていたと思う。
転生後、どうか誤解が解けますようにと
祈りながら読みました。
そうして気付けば異世界に転生していた凌馬。
同じく転生していた元の世界の重と、再会を果たします。
で!
転生後の世界では、重が凌馬より年上(28歳)の
騎士団所属の侯爵・ヴァル(ヴァレリアス)となっているのです。
前世パートでのショタおにから、今度は「年上イケメン×ほだされ年下受け」
と異なる属性になって進む恋愛パートが、まさに”一粒(一冊)で二度美味しい”!
パ○コを半分こしたり、ドライヤーで重の髪を乾かしてあげたり。
凌馬のバイト先の本屋に重がやって来て、凌馬が本を選んでやったり。
そんな日常の交流にほのぼのします(一瞬なのが悲しい...)。
凌馬に真剣に迫る姿もどこか可愛らしさを含んでいた前世と違って、
転生世界で言動の端々から伝わってくる執着心と囲い込み。
これ、たまらなくゾクゾクするーーー…!
重が28歳になっている、ということは。
この28年間、彼は「リョウ兄」に再び会うことだけを夢見て
がむしゃらに生きてきたんですね。
会えない28年。本当に会えるかどうかも分からなかった28年。
いや、長いよーー…
再会するまで、誰もヴァルの笑顔を見たことがなかった、というのも納得です。
前世の記憶を保持したまま、ひたすら28年間、再会のために手を尽くしてきたんだものね。。( ; ; )
ここ、攻め視点で後に転生の経緯、前世で凌馬が亡くなってからの顛末が語られるのですが。
リョウ兄のためだけに、グレーゾーンな行為(というより、倫理的にはアウト...)にも手を出していたヴァル。
「現世でもらったお守り石に願ったら、願いが叶いました」というようなライトさはないからこそ、より彼の想いの深さ・重さが迫ってくる。
怪しげな組織との対立により凌馬がさらわれ、呪いをかけられた際、
脅しをかけてくる相手を迷いなく斬り捨てる姿は、小さかった”重”とは違うものでした。
何を犠牲にしても、絶対に凌馬をこの手に取り戻し、愛を返してもらう。
そんな攻めの執念・執愛を「これでもか!」と見せつけられて、グッときました。
こんなふうに一途に追いかけられ求められたらもう、落ちるしかないよね、と納得です。
…と、ここまでずーーーーっと攻めについて語ってしまいましたが。
(攻め重視なので…)
一方の受け・凌馬にもまた、転生後の頑張りのストーリーが。
前世での会計知識を生かして行ったり、”福利厚生”の概念を持ち込んで浸透させようとしたり。
三人の気のいい同僚たちとのやりとりにはほっこりしました。
同僚とはいえ他の男と仲良くなると、もれなくヴァルが嫉妬してくるのが良いですね(*´艸`)
恋愛パートだけでなく、お仕事パートでの受けの奮闘・活躍も楽しめました。
終盤の展開がやや巻きに感じられたり、前世で病に倒れる凌馬が
最後まで入院せず生活を続けていることなど、ちょっと(だけ)
引っかかるところもなきにしもあらず、ではあったのですが。
前世で叶えられずに終わった恋が、時を経て叶えられるまで。
受けを恋い慕う攻めの、28年の執念の前に平伏…!
そんな読み応えある(282P、ボリュームたっぷり)転生ファンタジーでした。
