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表題作GARDEN

隔離されている人喰い天使
天使の話相手に選ばれた人間

その他の収録作品

  • クロックダウン
  • DOGLA+MAGLA
  • memento mori

あらすじ

過酷な運命を背負った者たち。彼らが隣り合わせたのは「死」である。あたたかな恋情をとぎらせる非情さでもって。そんな彼らを「生」へと導いたのは「愛する者を死なせはしない」という「希望」であった! 世界は終わる…それを知っていてあなたはどれくらい幸福でいられますか? 出産系BLを著す寿たらこが、一番描きたかったもの。渾身の大作に、続編を描き下ろした26Pも収録。
出版社より

作品情報

作品名
GARDEN
著者
寿たらこ 
媒体
漫画(コミック)
出版社
リブレ
レーベル
ゼロコミックスDX
シリーズ
GARDEN
発売日
ISBN
9784862634351
4.4

(41)

(30)

萌々

(7)

(1)

中立

(0)

趣味じゃない

(3)

レビュー数
13
得点
181
評価数
41
平均
4.4 / 5
神率
73.2%

レビュー投稿数13

一生読む本

この世界観、愛、BLでありまた人間愛でもあり、一生大事にしたいと思う本。
読む度に引き込まれる。

1

SFの最高峰

読んでいてまず思ったのは「凄いな~!」です。本当に凄いです。
BLという一つのカテゴリーには収まりきれない、SF漫画としてかなり完成度の高い作品でした。

4つの短編が収録されていますが、どれも恐らく同一の世界が舞台となっています。そこはこの世界とよく似ているけど、少しだけ科学技術が進んでいて殺伐としている世界のようです。
どの作品にも、「クローン」や「種(血)の補完」といったものが一つの題材として盛り込まれています。
そういった舞台装置の中で描かれているのは「自分の存在の揺らぎ」に思えました。
不安定な世界で、自分の存在まで不安定な登場人物たち。だからこそ彼らは愛を求めずにはいられない。
セクピスでもそうですが、どんなに紆余曲折があっても最後には必ず愛が勝ちます。
SFとしても完成度が高いし、人間のエゴを描きながらも「愛」という部分に帰結していく物語を描ける寿たらこ先生は、本当に凄い作家さんだなとあらためて思いました。
この作品を読めて良かったし最高に楽しい時間でした。
ぜひたくさんの人に読んでもらいたい作品です。


余談なんですが…。
『GARDEN』を読んでいる最中は、宮崎駿作品が脳裏に思い浮かぶことがよくありました。漫画版の『風の谷のナウシカ』とか、PVの『On Your Mark』とか…。
押井守作品ぽさもほんの少し、あるようなないような。
寿たらこ先生って私的にはとても謎に包まれている方なので、どういう作品から影響を受けたのかなどがとても気になります。どうしたらこれだけ多彩な作品を描けるんだろう。本当に尊敬してます!もっと寿先生へのインタビュー記事とか読みたいな…。

2

いつか全てがわかる日がくるかなぁ、くればいいなぁと思って読み返す

電子では「GARDEN」という一冊がなくて【コンクリート・ガーデン】【クロックダウン】【DOGLA+MAGLA】【memento mori】がそれぞれバラ売り販売されている状態なので、こちら一冊にまとめてレビューします。

【コンクリート・ガーデン】
人間がクローン研究のすえに創り出したものは何と天使だった。朱鷺と名付けられた天使と友達になって欲しいと送り出されたのは少年・清春。

その天使は、片目が潰れてまるで殺し屋のようないかつい風貌で、我々がイメージする天使とはかなり様子が異なります。
そしてなによりも衝撃なのは天使が「人を喰う」という事実が創り出した結果、わかったという事です。
天使が本当は人類が散々描いてきたような翼を持ってたおやかな顔をしている優雅な存在ではなく、人間にとって天敵であったという設定が凄い。
こんな事、よくも思いつけるなぁとそこで唸ります。

おまけに創り上げてしまった技術者たちはその人喰い天使をさげずんだうえ「利用」しようとしている様子が描かれています。
神をも恐れぬとはまさにこの事だな、と。
倫理観とはなにかといったことも含めて考えさせられるし、清春がまさか…というところもすごい。
そして朱鷺と清春の違いはなにかというと、愛されたかどうかなのかなぁとか、色々考えちゃいます。

【クロックダウン】
パラレルワールドが出てきます。
途中の「平行世界干渉実験」の説明のあたりから、私にはSF的な説明が全く把握できなくて挫折しそうになるのだけど、極論でまとめると、どんなに世界が数多く存在していても人を突き動かすのは「愛」よね、って事でしょうか。
まとめすぎ?!

【DOGLA+MAGLA】
クローン人間の技術でキリストのクローンを作ろうとする団体が絡んできて壮大なストーリーで難解。
なんども読んでもわからないけど、わからないながらも好きなんです。
いつか全てがわかる日がくるかなぁ、くればいいなぁと思って読み返す

ある人間を永遠に残したいという希望を叶えるかもしれないクローン技術。

キリストのクローンの替えパーツのために作られたクリスが「(おまえが)生きていてくれさえすればそれで充分」と友人のタケちゃんに言う。
クローン技術で作られたアダムが「お前さえ生きていていればそれでいい」とかつてクリスに言った。
同じくクローンのスペアーズであるアベルが遺した「貴方さえ生きていてくれれば 私がこの世に存在した証明になるのです」という言葉。

永遠に残り続けるために作られたクローン人間が自分の命や自分の存続には頓着せず、「お前さえ生きてくれていればそれでいい」と言うところが何とも皮肉で、クローンって何のためにあるのだろう?と思わずにはいられません。
自分がこの世に永遠に残り続けることが大切なのではなく、自分を思ってくれる人間がいる事、そういう存在を得ることが大切なのではと。

この作品の中でごくごく普通の感覚を持つ青年であるタケちゃんが叫ぶ「無知である事は罪だ」という言葉が、久しぶりに読み返した私の心に響きました。

【mement mori】
「「コンクリート・ガーデン」「クロックダウン」「DOGLA+MAGLA」全ての作品の続編となる本作。各本編を読み進む衝撃と、著者・寿たらこの仕掛けを完璧に味わうため、本編読了後の講読を強くお勧めいたします。」と電子書籍のあらすじ欄にあるので、一番最後に読んでます。

朱鷺と清春の息子・ジェフと、朱鷺に親族を殺された事のある橘。ロミジュリ的な敵対関係にありながらも恋に落ちてる二人の姿が、リンゴの木の下、リンゴの実といった失楽園を思わせる描き方がされていて、ここが一番好きです。
「キミは僕を生かしてくれる」ここでも人は一人ではなく、誰かと関わってこそ始めて生きているというのではと思わせるセリフが登場しています。

どこか長閑な静けさが漂う作品ではありますが、終わりの日がくる前の束の間の安らぎなのか…_?
終わりはいつなのか?わからないけど[mement mori 死を想え 死を忘れるな]なんてタイトルをつけちゃう事に痺れます。
そして私は背景にフォーレのレクエイムのIn Paradisum(まるで木漏れ日がきらめくような音楽)が聴こえてくるような気がします。

各作品とも壮大な設定にビビるけど、結局は「愛(人間愛なども含めて壮大な愛)」なのかなぁと久しぶりに読み返してぼんやりそんな事を感じました。

一年くらい前に答姐で教えていただいた作品なのですが、なんせ私の理解力&文章力では作品の壮大さに全く歯が立たなくて、レビューがこんなに遅くなってしまいました。
あの時、教えてくださった姐様に感謝です。本当にどうもありがとうございました。

1

たらこさんが描く壮大な「オンリーワン」の物語

これは・・・神しか付けようがないですね。圧倒的な1冊!
2000年〜2002年に描かれた作品ですが、今読んでも古さを全く感じさせない。
寿たらこさんの真髄が詰まっているように思いました。
「SEX PISTOLS」から入ったクチですが、こちらを読んだ後だと「SEX PISTOLS」の読み方も変わりますね。
解り易いお話で読み手を引き込んで、徐々に難解なテーマ(=本題)へと踏み込んでいくのはたらこさんの手法なのでしょうか。
巧いとしか言いようがないです。

コミック2冊分(380ページぐらい)の分厚い1冊です。
3つのお話が入っています。

「コンクリート・ガーデン」
クローン技術の発達した世界で人の手で〔天使〕を作り出したら〈人喰い種〉だった…!という発想がもうすごいんですが、それ以上にすごいと思うのは、食物連鎖の頂点にいると思い込んでいる人間の慢心に警鐘を鳴らすようなお話を、子供にもわかるような問答形式で誰が読んでもハッとさせられるように描かれていること。
SFだけどファンタジー寄りなので他のお話に比べると読みやすいと思います。
哲学的でロマンティックなたらこワールドに一気に引き込まれます!

「クロックダウン」
SF色が一気に強くなるので冗長さが加わり、苦手な方は苦手かもしれません。
私はこのお話が一番好き!
世界が変わろうと時代が変わろうと頭の良い科学者だろうと一般人だろうと、人間を動かす一番の原動力は愛なんだという普遍の真理。
パラレルワールドで出逢うオンリーワンだなんて、ロマンティックにも程があるでしょう!
そしてこのお話、キリスト教よりも仏教思想の方が根付いている私には「輪廻」を描いているようにも読めるのですよね。
今いる世界から別の世界に一定方向に落ちていく。
落ちていくんだけど終わりの先は始まりで、繋がった輪の中で大切な人と出逢ったり離れ離れになったり再会したりを繰り返す。
それって輪廻じゃないのかな?ひとが生まれることを生まれ“落ちる”とも言うし。
んーでもやっぱり違うのかな?このコミックどう読んでもベースにあるのはキリスト教だもんねぇ。

・・・と思い巡ったところで次に「memento mori」がくる流れ、秀逸です。

「memento mori」(描き下ろし)
3作品の登場人物たちのその後がちょっとずつ描かれています。
“メメントモリ”という言葉に馴染みがない方はぜひ調べて、調べた上で読んでみてほしい。
短いページ数の中にグッとくるセリフが幾つもありました。
そんな中からひとつ。
『ここに「世界」があるのに何処へ跳べって?』
こんな風に思えた時、その人生は間違いなく幸せなものでしょうね。

「DOGLA+MAGLA」
最終的な本題はここにあるのだろうと思うのですが、これが難解!
読んでも読んでもこのお話の主題が何なのか私にはよく分からない。
クローン人間っていう存在自体がそもそも難しいんだもの。
でも、そんな風に難解だなぁって思うこと自体に対して「違うんだよ。もっとシンプルに考えて。」って教えてくれているお話なのかもしれない。
神が人間を創って、その人間がクローン人間をつくる。
クローン人間は「人」なのか「物」なのか。
大方の人はクローンだって人の複製なら人でしょって答えると思う。
じゃあ人をつくり出せた人は神なの?クローンでつくった神は神なの?
人工物はやっぱり人工物でしかなくない?
じゃあクローン人間も「物」じゃない?
(──俺らは何なの?)
そんな堂々巡り(まさにドグラマグラですね)を展開しながら、最後に目に飛び込んでくるとてもシンプルな問い。
『何故ご自身で創った者達を愛して下さらなかったのですか…?』
難しいことをあれこれ考える必要なんかなくって、誰が何かなんてどうだっていいじゃん、大切なことはそこじゃないでしょ?って気付かされます。

3つのお話の根底に共通してあるのは「オンリーワン」の追求なんだと思う。
追求すればするほど当然世界は壮大になっていく。
哲学から始まり科学や宗教を絡ませてしまったら頭でっかちになってシンプルなことを見失ってしまう。
でも結局答えは当人の中にしかないし、その答えも人それぞれでしかない。
「memento mori」に描かれていることが結局のところ全てな気がします。


電子版は何故か1タイトルずつ分冊配信されています。
4タイトル全部買うとちょっと割高なんですが、電子書籍でも一通り手に入りますよ。

4

これほどの" 創作 "は…滅多で、貴重。


何処かの世界の内側で出会い、薄い、恋だとか愛だとかの膜の上で現実的と非現実的、科学的と非科学的なことが絡みあって物語が進んでいく。このお話の、私たち読者が見ることのできる一旦の終わりが見えてきたときに鳥肌が立つようなあの瞬間を、どんでん返しと呼ぶには惜しい
泣いていないで理解したいと思うくらい…一歩先にある話を読み続けたいと思わせられる…追い付きたいけど追い付いて話が終わりです、理解できたねってなるくらいならずっと追い付きたくない物語。
何故か間に三つの物語の続き、描き下ろしが入っています。
「あの男は死ぬ だからクリスをつき放すんだ」
寿先生の描かれる複雑な世界観の中で、純粋にハッとさせられる台詞、モノローグ。間違いだったとしても愛していたひとを殺した相手。その相手が真に愛していたひとだった。それを" 罪 "だといっていて惹かれました。
もう何もいわず、ただただ圧倒されては見つめていたいです。現実では有り得ない、とか、どうでもいいんです。あってほしいとかあってほしくないとかも、なく。
一つ希望があるとしたら、それぞれの幸せがあってほしいということだけ…!コメディちっくに。描き下ろしっぽく。あまり語らない方が綺麗な…素晴らしい御本でした。

2

この作品が収納されている本棚

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