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表題作恐怖の男たち 1

イライジャ(別名:タイガー),凄腕の傭兵
アッシュ(本名:シャオラン),パルミラ王族最後の生き残り,24歳

あらすじ

額に嵌め込まれたラピス・ラズリ。 第三の眼を持つパルミラ王国の王太子シャオランは、傍系王族の叛逆により家族を失い、ひとり逃亡を続けた。 そして“恐怖の男”と呼ばれる傭兵アッシュとなって過去を捨て、同じ呼称を持つイライジャの傍らで生きて行くことを選ぶ。 だが、CIAやKGBの国家的謀略に巻き込まれ、母国の刺客からも追われる身に。

作品情報

作品名
恐怖の男たち 1
著者
花郎藤子 
イラスト
竹田やよい 
媒体
小説
出版社
白泉社
レーベル
花丸文庫
シリーズ
恐怖の男たち
発売日
ISBN
9784592870166
3.4

(5)

(2)

萌々

(1)

(0)

中立

(1)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
2
得点
15
評価数
5
平均
3.4 / 5
神率
40%

レビュー投稿数2

JUNE時代の大作

花丸文庫の無料お試しで読んだことがきっかけで、手に取ることにした作品です。
表紙が印象的なので知ってはいましたが、JUNE時代の作品(これは'97年。同人誌先出で、それはもっと前です)なので躊躇しておりました。
ただ、読むと凄かった!
無料である程度読ませてくれてありがとう、花丸さん。

**********************
受けは特出した美貌の傭兵で、無口で感情をほとんど出すことのないアッシュ、24歳。
額には小さな紫色の石が嵌っており、パルミラ王家最後の直系男子のため刺客から逃げ続けています。

攻めのイライジャはアッシュの相棒で、共に『恐怖の男たち(レ・ザフルー)』と呼ばれる凄腕の傭兵。
どんな人間も彼の醸し出す雰囲気に圧倒される、タイガーの別名を持つ男。
**********************

彼らは四年間共に組み世界各地の戦場を渡り歩く傭兵として生きてきましたが、イライジャとアッシュの力の差は大きく、つねにアッシュはイライジャに置いていかれぬよう気を引き締めています。
アッシュはイライジャへの想いを抱えつつもそれをどうしたいということでなく、ただ一心に側に居たい、必要とされたい、そして出来れば褒められたいと望むだけ。
金も女も自由も求めない、喜びや悲しみの表し方も知らない。
そんなアッシュが求めるのはただ一つです。
イライジャを想うことで人間らしい感情を芽生えさせるアッシュですが、ただ嫉妬や恋心を体の不調と捉える辺りは本当に真っさらなんですよ。
本当に可哀想なくらいに。
それは彼の出自と、それによる奇形が大きく関わっていると思うとよけい切ないです。

序盤はソ連(まだロシアじゃないのよね)と敵対するゲリラ組織に雇われており、その世界観と傭兵という職業からかなり血生臭い表現が多々あります。
アメリカとソ連の冷戦時代のお話なのでね。
が、神視点のような書かれ方のため、淡々としていて不快さはありません。
そして一巻については戦闘シーンよりも、アッシュのイライジャへの想いの方にページが割かれていますし。
アッシュの身分が、東西の戦況に大きな意味を持つことも。
アッシュの過去や記憶、そして夢が時折差し込まれるので、今はどこ?となることもありますし、序盤こそモブの説明調なセリフが気になるものの、JUNE作品の中ではかなり読みやすいという印象です。

この作品で主役の二人以外で異彩を放っているのは、女傭兵のライラでしょう。
BLに女性キャラはいらないと思われる方もいらっしゃると思いますが、世界に男と女がいるならばまったく出ないというのも変な話だなあと個人的には思いますし、このライラというキャラは寡黙な二人の代弁者のような雰囲気があります。
小説というのは漫画のように表情だけで語ることは出来ませんし、かといって第三者がベラベラ説明しまくるのも冷めるという、書かれる作家さんにはその辺り難しいだろうなあと思うのですよ。
このライラはでしゃばり過ぎず、尚且つ、まるでアッシュの母親のような部分もあり、「困ったお人形さんね」と愛情と共に語りかけるんです。
傭兵同士、敵対組織に雇われれば時には命のやり取りをする相手でありながら、仕事と切り離した部分ではアッシュを気遣い、アッシュ自身も弱みを語れる唯一の相手ではないでしょうか。

人間は獣以下だという、イライジャの言葉があります。
お互いがお互いを憎み殺し合う人間社会を冷めた目で見つめ、ならばと自分の信条だけに従うことを選んだイライジャには、安穏と守られる屋根はありません。
ただそんな屋根の代わりに彼が手にしたものはなんなのか、そこにアッシュも含まれているのか。
続刊が気になって仕方ありません。

ちなみにこの作品は全三巻。
商業で出版される際に大幅加筆した代わりに、エチシーンをかなりカットしたとか…なぜなぜに?
確かにこの一巻には自慰の手伝い(精通もまだだったの…それくらい自分に興味がないの…)以外は直接的なものはありませんでした。
このままいくのか、それともイライジャはアッシュを抱くのか!
それ以上にきっちり皆生き残るの?
…はやく届いてね、二巻(涙

6

大国の諜報機関がからむがメロドラマ風味

電子書籍で読了。挿絵有り。

花郎さんの『寂しい金魚』 が期待以上にハードボイルドのいい感じだったので「これは長編を読まねばならぬな」と思い手に取った一冊。
結論から言ってしまうと、お話に乗りきれずちょっと嫌な予感がしています。

主人公のアッシュ(本名はシャオラン)は、神秘の小国パルミラ王国の王位継承者でしたが、クーデターで両親を殺され、妹を手にかけた過去を持つ傭兵。彼自身は王位に一切の執着を持っていないのですけれど、現権力者からは暗殺集団を差し向けられるのと同時に、パルミラの位置によって生じる軍事的な思惑からアメリカとソ連(+東ドイツ)の諜報機関からも追われています。
アッシュは『虎』と呼ばれる凄腕の傭兵、イライジャと行動を共にしています。タイトルの『恐怖の男たち』というのは、この二人の仕事ぶりから付いた通り名なんですね。
こんなアッシュが一番恐れているのは暗殺されることではなく、イライジャに追いて行かれること。他人に感心がない彼が唯一執着しているのがイライジャで、だけれども、イライジャとどういう関係になりたいのか、自分でも解らない。ただ、彼に追いて行かれたくないだけなんです。どうも、アッシュは成長に難があるようで、精神と肉体的な発達が非常に遅いみたい。このお話の中で、イライジャの手によって初めての射精を行うシーンがあったりします。でも、だからと言って「好き好き大好き」という風にならないのです。感情の全ては幕がかかっているようにぼんやりしているのだけれども「イライジャに追いて行かれる」と思った瞬間にのみ「それだけはイヤだ!」と爆発します。
赤児の様です。
通り名とは異なり、アッシュは運命に翻弄されて流されていっちゃうんでしょうか?

今一発乗りきれなかったのは、CIAがアッシュを傀儡として手にしようと謀をめぐらす訳ですが、これが若干、リアリティが無いような気がして……たとえ30年以上前のことだったとしても、軍隊とか諜報機関とかって、もっと合理的なやり方をすると思うのですよね。その辺がお話にズッポリ入り込めなかったのではないかと思っています(その時に生きていたものなぁ。あ、逆に20世紀を知らない方はいけるかもしれません)。

4

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