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表題作アマンテ

ビクトル,マフィアのボス
ロベルト,ビクトルに拾われた孤児

あらすじ

マフィアのボス・ビクトルの傍にいるため、ファミリーに入ることを誓ったロベルト。だが、ビクトルに愛人として扱うと宣告され…。
出版社より

作品情報

作品名
アマンテ
著者
華藤えれな 
イラスト
円陣闇丸 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
リンクスロマンス
発売日
ISBN
9784344816558
3.7

(14)

(6)

萌々

(1)

(5)

中立

(2)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
4
得点
51
評価数
14
平均
3.7 / 5
神率
42.9%

レビュー投稿数4

歪んだ純愛

『サウダージ』のリンク作品です。『アマンテ』だけ単品で読んでも分かりますが、『サウダージ』と時間的に重なる部分があるので、両方合わせて読んだ方がより楽しめます。

マフィアのボス、ビクトルと彼に息子のように育てられたロベルトの「禁断の愛」が本作のテーマです。ビクトルは、『サウダージ』では、全く姿を現さなかったので、シニア世代のボスの姿を勝手に想像していたのですが、随分と若々しいボスでした(40代という設定)。

ロベルトは、幼い頃、政争で両親を失い、ボカ(スラム街)でレオンと暮らしているところを、共にビクトルに引き取られます。レオンはビクトルの跡継ぎとして、ロベルトは、マフィアと関わらず、表社会で生きていく人間として。ビクトルは彼が光の中を進んで行くことを願っているので、ロベルトをどんなに溺愛しても、一線を引く。それが、ビクトルの愛し方なんですね。でも、ロベルトは、ビクトルの住む世界に入り込めないのが辛くて…。

この作品の山場は、ビクトルの意に背いてマフィアに入り、彼の愛人(アマンテ)として扱われるようになってからロベルトが歪んで行くところですね。昼ドラ顔負けの愛憎劇が展開していきます。でもね、歪んでいっても、ロベルトの根底にあるのは純愛なんですよ。やってることは、裏切り行為そのものなんですが、そこまで追い詰められた彼の思いが切ないです。

彼が欲しかったのはただ一つ、ビクトルの近くにあって、ビクトルのために生きること。でも、結局それをビクトルは許してくれない。だから、ビクトルとレオンの近しい関係に嫉妬してしまう。ないものねだりにも見えるんですが、もうそこは理屈じゃないんですよね。狂気の愛へと突っ走って行くロベルトですが、愛のために何もかも、自分の良心でさえも捨ててしまう彼の姿は、どんなに歪んでいてもいっそ清々しく思えました。

最後は、ハッピーエンドなんですが、これはもうロベルトの粘り勝ち、といった感がありますね。ビクトルはとうとうロベルトを手放せなくなってしまう。華藤先生曰く、ビクトルはうっかりロベルトに餌付けをしてしまったために「悪霊にとりつかれた」男だそうで…。出会った時からこうなる運命だったのかもしれません。

禁忌の愛、裏切り、復讐、濃厚なエロスと色々な要素が満載で、大満足の一冊でした。

6

光はいつもここにある

「サウダージ」に登場した、マフィアのボス・ビクトルと、レオンと一緒に拾われたロベルトの話。
レオンとロベルトの二人が、ビクトルに拾われたところから、「サウダージ」のラスト近く、ボカの教会跡での二人の対決、そしてその後が、ロベルト視点で語られる。

ロベルトは、マフィアの組織の跡目を継ぐべく育てられたレオンとは違い、裏社会とは一切関わらず清廉な道を歩んできた。
ビクトルに大事にされ、甘やかされてきたロベルトだったが、ロベルトの本当に求める物は、危険から遠ざけられ、何も知らされずに守られるだけの愛を与えられることではなく、いつでもビクトルのそばにいて、彼を守り、力になるような存在になること、そして肉欲を持った愛だった。

大学を卒業し、グラナダの大学に留学を決めたロベルト
ビクトルの生まれ故郷であるグラナダに、ビクトルと二人だけで訪れた最後の夜、ロベルトは、とうとうビクトルに、抱いて欲しいと願うのだが、それを拒絶されてしまい…

この後、ビクトルが襲撃されて、いてもたってもいられなくなったロベルトは、留学先のグラナダからアルゼンチンに帰ってきて、マフィアの組織に強引に入る訳だが、
ロベルトの出自にまつわる復讐やら、組織内部の裏切りやらと、盛りだくさん。

そして、ビクトルがロベルトに与えた組織内の仕事は、自分の「愛人」

まあ、あれやこれやあって、最終的には二人はちゃんと愛を確認し合って、結ばれるのですが、「サウダージ」が『タンゴの調べとベルガモットの香り』だったのに対し、こちらは『イランイランの香り』
もっと濃厚な、オトナの香り。

この本も、挿絵は円陣さん。
オトナの魅力たっぷりのビクトルと、天使のような美貌のロベルトがとても色っぽい

この本、私にとって、掛け値なしの『神』です。

3

「サウダージ」越えかと思いきや……

前半はとても良い進みだと思っていたんですが、クライマックスのロベルトの復讐が本気になった辺りから怪しい感じに。
後半、残りページが少なくなってからやはり私はあなたを憎んでいるので(レオンをと言うべきか)と言う展開になっても、え~~そっちへ行っちゃうの?という思いです。
その辺りのビクトルも突然マフィアのボスとは思えない弱気な姿勢に。
だったら最初からそういうキャラで来ていればいいのですが(マフィアのボスも可愛い我が子には弱いという)確かに過保護なくらい可愛がっていましたが、一線に対しては断固とした姿勢だったはず。
なんか後半はキャラの性格もぐちゃぐちゃになって想像していたものといきなりひっくり返ってしまった感じ。
ストーリーがひっくり返るのは大歓迎なのですが、キャラの思想や性格がいきなりそうなるのは付いていけません。

もしもすべてがひっくり返るほどの復讐に燃えるならそれなりのページを割いて展開して欲しかったし(唐突だったので)、真ん中の愛人云々の展開はいらないので、ロベルトのマフィアの仲間入り時点で冷たくされ、キレたロベルトが……のほうがすんなり受け入れられます。

愛人の展開の時点でロベルトは覚悟していたと何回も言っているのに、レオンが跡取りとして優遇されるのは当然のことだし、それに焼いて……と言うのは動機が弱い気がします。
だったらもっと前に絶望していた気がするんですけどね。

どうもその辺からキャラに同調する気になれず、置いてきぼりを食った気分でした。
もしかしたらビクトルの心情を合間にもう少し書いてくれていたら対比してすれ違いの心が切なく感じたかも?とか色々考えてしまったのですが。
今となってはよくわかりません。

半分過ぎるまでは前作を超えたと思っていたので私的には残念です。

1

タンゴはあなたとしか踊れない

雰囲気【は】良かった『サウダージ』のスピンオフ。
アルゼンチンタンゴの調べをBGMに、舞台はブエノスアイレス、
ビクトル(義父・マフィアのドン)×ロベルト(義理の息子)です。

跡取りのレオン(サウダージの攻)とともに、スラムから引き取られたロベルト。
陽のあたる表の世界で生きていってほしいと、マフィアには関わらせず
ロベルトを慈しむビクトル。
たとえ手を汚してもそんな彼の側にいたいと、狂おしいほどの想いを一途に抱くロベルト。
お互いに深く想い合っているのに、交わる事が許されない人生。
ロベルトの想いが切なくて、濃厚な背景や円陣さんの絵もあり期待が高まります。

留学先でビクトルが狙撃されたのを聞き、ロベルトは矢も楯もたまらず帰国し
いざという時に側にいられなかった自分が歯がゆく、強引に組織に入り込みます。
それに激怒したビクトルは、それならばおまえを愛人にする!と
今まで頑に親子としての一線を守ってきたのに、抱いちゃいます…

はああ?なんだってそんな話に?
前半はなかなか緊張感があったのですが、このあたりから理解しがたい展開に…
さらにその先は、『サウダージ』をロベルト側から見た話になるのですが、
説明調でどんどん話が進んでしまうので、行きつく結果を知っていても取り残された気分に。
極めつけは最後。
「え?それってありなの?」とあんぐりしてしまう、なんとご都合主義な結末!
そんな安易な「血の掟」があっていいのかっ?!
この話、小さな白い家を夢見ながら死んじゃうエンドだった方が良かったのでは?

ということで、『サウダージ』同様こちらも雰囲気はいいけれど、でございました。


3

この作品が収納されている本棚

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