目覚めるのも眠りにつくのも、君のそばで。

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表題作スリープ

上木原 喬 高校生 不眠症
倉知 馨 高校生 睡眠障害

あらすじ

睡眠障害のナルコレプシーを患っている倉知。ところ構わず襲ってくる発作的な眠気のため、生活に支障をきたすことの多い倉知をフォローしているのが、同級生で同じマンションの住人でもある上木原だ。理由は退屈だから。倉知とは反対に上木原は不眠症で長い夜を持て余していた。だがいい加減で本音を覗かせない上木原が自分に構う本当の理由、倉知はそれが知りたかった――。心に闇を抱く二人の、癒しと再生の物語。

作品情報

作品名
スリープ
著者
砂原糖子 
イラスト
高井戸あけみ 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
ディアプラス文庫
発売日
ISBN
9784403522239
3.5

(44)

(9)

萌々

(8)

(25)

中立

(1)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
16
得点
153
評価数
44
平均
3.5 / 5
神率
20.5%

レビュー投稿数16

Sleep next to me

ナルコレプシーという脳疾患を抱えた少年が主人公です。高井戸あけみさんイラスト(凄くレア)の持つ雰囲気も手伝って、痛々しいほど透明感のある作品でした。

突然眠ってしまう主人公・倉知と、精神的な理由で不眠症に陥っている上木原。対照的な二人はある部分では依存し合い、ある部分では探り合って牽制し合うような不思議な関係です。上木原にはずっと心に秘めている感情があるのですが、物語はあくまでも淡々と進んで行きます。

こういう風に思うことはあまりないのですが、この作品は実写化に向いている気がします。二人は思春期らしい平凡さと繊細さを持っている青少年で、続いていく日常のある日、ある季節、二人の運命が絡み合うような静かな展開が印象的でした。

2

ときどき眠り姫と不眠王子

おとぎ話ではありません(^^)
おとぎ話風にレビューしてみました。

幼い頃に心に傷を負って不眠症になった王子様は、同じく幼い頃に心に傷を負い睡眠障害(ナルコレプシー)のお姫様に出会います
王子様は、お姫様に惹かれますが、自分の心を隠してお姫様に尽くします。
しかし、あるときお姫様がつらい事件に巻き込まれ…
そして、自分の気持ちをお姫様に気づかれた王子様は…
お姫様に押し倒されるのです。めでたしめでたし…

本篇は、おとぎ話ではなく現代の話です。
ナルコレプシーの倉知(受)と不眠症の上木原(攻)は共に高校生です。

お互いに幼い頃に心に傷を負ったけれど、眠くなる倉知と眠れない上木原の病は正反対の睡眠障害です。
子供の頃に受けた傷は本当につらいものですね
でも、2人はそれを受け止めながら前に進もうとしています。
そして話を読んでいると、前に進むためには2人でいることが必要な気がしてきます。

上木原が倉知に幼い頃の辛い出来事を打ち明けた時に、倉知が、
「喬、辛かったな」と言います。
私には、上木原がその言葉で少し救われた気がしました

上木原は、倉知を地の果てまで追いかけるそうです(^^)。
倉知も受け入れたし、辛い目にあった分以上に幸せになって欲しいと心から思います。

イラストは高井戸あけみ先生です。
この話には、ぴったりのイラストです。
小説に惹かれ、イラストに惹かれ、萌えが2になりました。



1

心地よい眠りにつけるまで

砂原先生は人の心理描写に優れている作家さんだと思います。
この「スリープ」も病気とトラウマを抱える多感な年ごろの主人公たちの葛藤や苦悩がよく表現されています。

主人公たちは、性的虐待の経験を持ちナルコレプシーを患っている馨と不眠症でPTSDの原因となる過去を持つ喬。
テーマはかなり重いのですが、描写はエグくなく二人の高校生活中心に物語は進みます。
ですが、冒頭から読み進めれば進めるほど澱がたまっていくような感覚に襲われ少々読みにくさを感じました。

それでも彼らが傷つきながらも少しずつお互いの影響を受けて変わっていく過程はとても良かったです。この二人は絶対にお互いが必要なのです。

どうしても気になったのは、馨のいとこの行為で問題解決出来ていないようなあまい形で終わっていることです。犯罪的行為だったと思うので。
そのままでいいのか?と、もやもやとした気持ちのままになってしまったことが残念です。

0

まさに割れ鍋に綴じ蓋

視点は攻めと受けの両視点です。
内容はかなりディープで、好き嫌いが分かれてしまいそうですが、わたしは良い作品だったなあと思いました。


受けの馨は、性別もあいまいに見える魔性系容姿の高校生。
感情の揺れはばが小さく落ち着いた性格ではあるが、顔立ちに反して毒舌。

攻めの崇は馨と同じマンションに暮らす、クラスメイト。
チャラチャラして見える外見同様に女関係にもルーズだが、つねに馨の側にいる男。


三年ほどのつきあいになるふたり。
普通ならば顔は知っていても知らん顔で通り過ぎていたであろう、タイプの違うふたりが一緒にいるようになったのは、馨の睡眠障害ナルコプレシーと中学の頃の出来事がきっかけ。
ナルコプレシーは、いつでもどこでも突然抗えない眠りに落ちる病気で、馨の場合は眠気だけでなく、感情の起伏で引き起こされる脱力発作のために、つねに笑うということや感情をかきみだすことにブレーキをかけています。
こんなふうに書くとまるで悲劇のヒロインのようですが、なんといっても馨、まったく負けていません口が(笑
まあ、悪くて悪くて笑っちゃいます。

反対に崇は不眠症。
子供の頃襲った事件で、眠れなくなってしまっています。
それでも自分のことより、『退屈だからかまってる』というスタンスを隠れ蓑にし、馨に重荷にならないよう側にいようとする崇は誠実な男なのだろうと思います。

馨の病の原因になったであろう過去のトラウマは、BL作品ではよく見かけるものではありますが、ヘビーですし、同様に崇の不眠症の原因もかなりのものです。
でも、この作品がドロドロの暗っっいものになっていないのは、やはり馨と崇の、強がりであっても病に屈服されていない様子や日常のやりとりの描かれ方かと思います。
わたしはふだん砂原作品は明るめの物しかほぼ読んでいないのですが、こういうシリアス系もひじょうに面白い作家さんなんだなあと再認識しました。
仰々しい病がわざとらしくとってつけたようでない、自然にキャラクターに存在したもののように感じられて、とても良かったです。

3

発作的に眠ってしまう少年と、不眠症の少年。

シリアスサイドの砂原作品。
テーマが重いので、萌えやBLらしい話が読みたい時にはオススメしません;

へらへらと軽くて腹が読めない攻、上木原。不眠症。
表情も言葉も少なく感情が読めない受、倉知。ナルコレプシー。

ちょっとサスペンス的な要素をベースに置きつつ話が展開していきますが、
たぶんメインテーマは二人が自分自身の気持ちにじりじりと向き合っていくところ。
真逆のようで似ている二人。
相手の気持ちが読めない。それ以上に、自分の気持ちが多分一番わからない。

重いテーマも悲壮感溢れる書き方ではなく、
辛いことも、恋心も、日常も、同等に、淡々と描いている印象でした。

淡々とした雰囲気ではあっても、謎の多い展開なので飽きずに読みやすいのでは。
個人的には、サスペンス要素についてはおおよそ読めていたものの、
メイン二人の関係は全く先が見えなかったので、萎えることなく集中して読めました。
読後感も良いです。

また、シリアスでも濡れ場はちゃんと砂原さんクオリティでした。愛があって、たっぷりと可愛い。
陽の感情で発作が起きやすいと言うカタプレキシーを患ってて、
果たしてセックスは可能なのか…?という疑問は感じたものの、
この病気は人によって症状・度合いが千差万別、
作中では精神的なものも絡んでいるという設定なので…
そこはある程度、本の中のお話と割り切って読みました。

ところで高井戸あけみさんが挿絵って珍しい気がするのですが、読んで納得。
キャラや作品の雰囲気が、高井戸さんのマンガの雰囲気とすごく通じるものがある。
ブレックファースト・クラブシリーズなんかを思い出しました。
高井戸作品が好きな人はこのお話、好きなんじゃないかな。

2

ナルコレプシー受

帯『目覚めるのも眠りにつくのも、君のそばで。』

突然に眠り込んでしまう病、ナルコレプシー、この実際の病気を作中ではトラウマと絡めてアレンジして上手くストーリー内で生かしてます。
そのナルコレプシーを患っている倉知〔受〕と絡んでくるのが、反して不眠症の上木原〔攻〕なんですが彼もまた不眠症とトラウマとが関係してるんですね。
その辺りの設定はドシリアスなんですがそこを重くなりすぎずに、ストレートではなくやや緩い変化球で投げてきたって感じです。
痛い設定なのに痛みを感じさせない投げ方というか何というか。
この辺りは砂原さんらしい話全体の包み方だなあと思いましたです。

0

不眠症×眠り姫


何というか…
こういう受けだいすきです(^w^)hLhLĂn[g

性的虐待を受けていたという重い過去を持ちながら勿論簡単に乗り越えられるわけもなく

その重みを抱えながらも自分なりに考えてつとめて冷静に生きている

かと言って病気のことも諦めているわけではなくて、それを理由に突っかかってくるような奴には言い返してやる

そんな淡々としながらも強気で、でも病気のせいで所構わず寝てしまう放っておけない困ったちゃんな主人公・倉知が可愛くて仕方なかったです

これはもう私的には受けの可愛さで攻めはどうであれ二重丸な作品でした(笑)

そうかと言って攻めが悪かったのかと言えばそんなわけでもなく

本来色んな女のコに手を出して明るくて誰とでも当たり障りなく接してるのに本音がみえないみたいな攻めは好みじゃないはずなんですが…

上木原は全然アリでした!

本人も不眠症という病に悩まされていて暗い過去を抱えている上に、本音が見えないようでいて行動全てが「倉知が大好き」って白状しちゃってるんですよね(´・ω・`)笑

厄介な病を抱えた倉知をずっと側で世話してきた上木原の愛情って、その軽い雰囲気に隠れてるけどかなり深いと思います

そして聡い倉知もそれをきちんと感じとっていて、いつもはぐらかす上木原にイラついてしまうんでしょう

攻めの溺愛ぶりに気づかない天然ちゃんも可愛いですけど

今回の倉知のように気付いた上で何故それほどまでの厚意を自分が向けられるのかについて真剣に悩んじゃうような頭のいい子も最高ですĂĂ

しかし上木原の病んデレっぷりはなかなか凄い…

今後は二人がお互いがお互いの病をケアして支えてゆけるような関係になれるといいなと思います

私も魔性の倉知の超レアな本気の笑顔が見てみたいものです

1

ヘビー

ストーリーは悪くないし、おもしろかったと思うんですが、とにかくキャラクターの抱えているものが重すぎ。もうちょっと、おとぎ話というか、ロマンスの強いものをBLに求めているので、そこからはやや外れてしまったかも。残念。

0

面白かったです

トラウマものには食傷気味なのですが、面白かったです。トラウマものって意外と陳腐になりがちなんですよね。
上手くまとめあげてる点、さすが砂原糖子さんだなと思いました。
シリアスではあるけど作品全体を流れる空気にジメジメしたものはなかったです。
むしろカラッとしてます。
延々ぐるぐる悩むだけのキャラじゃないのが好感でした。てゆかこの受け、男前で好きです。
攻めも受けもそうなんだけど、甘えがない。
だいたいトラウマ抱えた受けというのは、攻めに守られ助けられて、お姫様状態でトラウマを脱出するんだけど、この物語の攻めは無茶苦茶だからねw
読んでる最中も読み終えてからも、色んな意味でバランスのいい二人だなーと思いました。
全体的に、そんなに大きく感情が揺さぶられることはなかったんですが、受けが暴行されたあとに攻めに向かって吐いた「なぁ、おまえがやったのか?」ってセリフにはゾクゾクしました。
あそこは名シーンだと思う。その後の攻めの反応ふくめて名シーン。

脇キャラも良かったです。
住田はもちろん、宮木も好きでした。
宮木は将来的には結構いいやつになると思うw

ただ一点カクッときたのは優一の扱いでした。
優一を最後にいいひとにする必要はなかったと思う。そこだけ違和感を拭えませんでした。

1

眠れない攻めと眠ってしまう受け

睡眠障害の高校生CPのお話。
砂原さんの作品に高井戸さんの挿絵。
シナリオは、砂原さんにしてはかなりシリアスで
高井戸さんの挿絵がしっくりきてました。

睡眠障害で突発的な眠気が襲ってくる体質の受けと
重度の不眠症という攻め。
トラウマものでシリアスではあるけど
重度の睡眠障害持ちの未成年が親もなく高校に通えて
暮らしも不自由ないっていうのが
BLファンタジーだなと
どこか安心して読めましたね。
というかここまでふたりともかわいそうな過去だと
私は逆に現実味が薄くて痛くなかったです。

最後には、読者をほっこりさせるようなネタも用意していて
そのあたりが砂原さんの作品の持ち味なのかもしれません。
サービス精神アリって思いました。
砂原さんてきっとすごくいい方なんじゃないでしょうかw
酷いのは苦手だけども、ちょっと刺激もほしいっていうときに最適かも。

2

トラウマがっつり

 初め倉知のトラウマにビビリ、辛かっただろうなーと思ったのに、さらに上を行く上木原の過去。号泣モノか!! と思いつつ読んだのですが、切なくはあったけど涙があふれることはありませんでした。
 それでも、電車で読みはじめて止まらなくなり、降りたのちもホームで読んで(危ないって!)、目的地に着くまで時間があったので喫茶店に入りカフェオレを一気飲みして、活字を追いました。
 登場人物は、いい人もそうでない人も個性的でしっかりしていて、受攻2人の世界というわけじゃなく、大いにからんできます。その脇役たちがどう行動を起こすのかと気になり、倉知と上木原のトラウマは少しは楽になるのだろうかと心配し、そしてラブの行方は? と気になることばかりで、一気に読んでしまいました。

 残念だったのは、電車の中で読んだせいで、かなり長く濃厚なエロが十分に味わえませんでした。やはり、こういうシーンは、にやけ面をさらしても問題ない自宅で読むべきでしたね!

 

0

睡眠障害

作品タイトルの通り睡眠に関係する高校生2人の話。
攻め・上木原は不眠症。夜は眠ることができず、眠れたとしても浅い睡眠ですぐ目が覚めてしまいます。
反対に受け・倉知はナルコレプシーという発作的な眠気が襲ってくる睡眠障害。発作はいつどこで起こるかわからず、眠ってしまったらすぐに目を覚ますことができません。また、カタプレキシーで感情の起伏で睡眠に引きずられてしまうことも。なので倉知はいつも無表情です。
簡単に言ってしまえば不眠症×過眠症。
ナルコレプシーなんて病気あるんですね・・・初めて知りました。
思わずググってしまいましたよw

受け・倉知をフォローしているのが攻め・上木原。
上木原は倉知が発作で寝てしまったらおぶって家まで送ってあげたりといい奴だなあと思ったんですが、女遊びが激しくて;
そこはちょっと上木原の苦手な部分でしたねー女の子とそれっぽいシーンもあるので苦手な人注意。
倉知はクールで、睡眠障害で授業中居眠りしてしまったのを他の生徒に注意されても反論してつっかかっていくタイプ。倉知は敵が多いです・・・w
上木原と倉知はボケとツッコミみたいな感じでしたねw

ただ上木原と倉知のお互いの過去が切なかった。
上木原が不眠症、倉知がナルコレプシーになってしまったのには原因があって。
その原因が切ないというか重いというか・・・
この過去のせいで一気にシリアスになりますw

恋愛面は高校生らしいというか。良かったです。
上木原が倉知のためについた嘘は、倉知を傷つけたくないからだったんだなあと。
お互いの過去もちゃんと話して最後はちゃんとハッピーエンドです*
ただ、倉知と友達・住田が下校時にいつもいるストーカーの目的にはびっくりでしたw
このストーカーが倉知を狙ってなにかやらかすんじゃないかと思ったら…w
そして砂原さんはラブコメを書くつもりらしかったのですが、思いっきりシリアスでしたよw

1

悲しすぎた二人、この後は幸せになってほしい

それぞれが逃れられない過去に囚われ、睡眠障害を背負いながら生きている倉知と上木原。
カウンセラーにすら言えない過去の傷。
お互いのことを大切に思いながらも、単純に心を開けない理由。
誰も彼もが頑なで、もう少し楽な生き方ができるんじゃないかと言いたくなるような展開の中、ナルコレプシーの発作の最中に倉知が強姦?された事件から絡んだ糸が解け始めます。

どこで睡眠に陥ってしまうかわからないナルコレプシーと、笑うという情動だけでもカタプレキシーの(全身が脱力してしまう)発作を起こす倉知は、自分の欲求も感情も抑えながら生きています。
なのに、魔性とも言われるほどの美貌の持ち主のため、周囲は放っておいてはくれません。
反対に、夜は目が冴えてしまって時間を持て余し、昼は眠れない眠気に身を持て余す上木原は、奔放な性生活の日々のようでいて実は・・・

これが現実のお話ならば、こんな子供たちを子供たちだけで何とかさせるなんて絶対に間違っていると思います。
しかし、やはり現実問題として、正直な話自分で何とかしていかなくてはいけない部分があるのも事実かなぁと思います。
私自身、一人でも生きていけるもんって思いがちですが、何かがあったとき本音が話せる存在がいるのといないのとでは、心に残る傷の大きさは違うだろうなと考えさせられました。

どっちが割れ鍋でも綴じ蓋でもかまわないから、自分にピッタリあった相棒って大事な気がします。

それから、ナルコレプシーといえば、「マイプライベートアイダホ」。
リバー・フェニックスとキアヌ・リーブスですよ。ビデオ漁って見直してみようと思います。

2

割れ鍋に綴じ蓋

砂原さんはこのお話を当初「ラブラブコメディ」のつもりで
書かれていたそうですが。
仕上がりはとってもシリアス。

眠り病の倉知と、不眠症の上木原。
正反対の睡眠障害を患う、二人の高校生の恋。

倉知と上木原の睡眠障害は、精神的なものが原因です。
その原因が何か、それは作中で明らかになりますが。
二人が抱える心の闇が、重くて暗すぎて……

トラウマになった事件や行為については、
詳しい描写がされていませんが。
書かれていない部分を、こちらが色々と想像してしまって。
それが余計に彼らの受けた傷の深さを考えさせられて、
読んでいて色々と痛かったです。
特に「記念日でもないのに高価なプレゼントを貰う」という
倉知のエピソードが、痛々しくて可哀想でした。

辛いことを誰にも言えずに、抱え込んできた二人。
心に刻まれた闇を、何でもないことのように
振る舞う二人の姿が、なんとも痛々しいのです。

作者はこの二人を「割れ鍋に綴じ蓋」と仰っていましたが、
まさにその通り。
倉知の傷は上木原でないと癒せないでしょうし、
上木原の傷もまた、倉知でしか癒せません。

二人が同じペースでゆっくりと眠りを楽しめる日が、
なるべく早くに訪れればいいなと思いました。

1

砂原さんにしてはシリアス

病気持ち高校生二人のラブってことで、砂原作品としては珍しくシリアス。
文体も、主人公・倉知の性格を反映して硬く突き放した感じなのが珍しい。
でも、あくまでも、ラブコメディの砂原さん比で「シリアス」なので、
過去のトラウマとして起こった事件は、かなり痛い事は痛いが、
読んでいるこっちまで目を背けたくなるような、酷い描写はされていない。

この本、挿画が高井戸明美さん。
で、お話そのものが、実に高井戸作品っぽくて、全てのストーリーが、私の脳内では、高井戸マンガで展開されてしまった。
私は、小説やマンガを読みながら、その作品が、音ドラマとして、声優さんの声が当てられた状態で脳内変換される事がよくある。
でも、こんなに丸ごと、絵になって脳内変換されるようなのは珍しい。
この分だと、しばらくしたら、多分、きっと、この作品の作者さんは、高井戸さんだとしか思い出さなくなるような気がする。


0

(不眠+過眠)÷2=正常

ナルコレプシーの倉知馨と、不眠症の上木原喬。
高校生なのに、悲惨な過去のトラウマのせいで淡々と生きている二人はあまりに大人びすぎて、結末はうまくいくのだとわかっていても、目が離せずに一気読みですっ!

倉知の母は”一生少女”のハーフの女性で、その魔性ぶりに一緒に暮らせないと、幼少のころから父の兄弟の伯父の元で生活しています。
しかし、その伯父も12歳の頃死んで、その息子(従兄・優一)と一緒に暮らしています。
同じマンションの最上階に住む上木原は、やはり小さい頃両親を亡くし、一人暮らし。
倉知は、その伯父との過去。
上木原は、その両親の死。
それがそれぞれの病気の原因になっているのですが、誰にも話さないのでお互い知らないのです。
倉知が中学の頃、その外見もあり同級生に暴行されたところを上木原に見られて、彼はそれが倉知の原因だと思っているのです。
それ以来上木原は倉知の側を離れず、高校も登下校も一緒。
女遊びも激しくて、チャランポランにしているのに、かいがいしくずっと側にいる。
いつでもどこでも寝てしまう倉知を負ぶって歩くところなんか愛ですよ。
彼が軽いノリの態度を示す度、読み手はわかっているので、憤慨するどころか上木原が哀れになってきてしまうのです。
「今週のビックリドッキリメカ~」なんてよく言うのが悲しすぎます。

倉知の病気が気に入らなくてイチャモンをつけたがる同級生の宮木。
上木原と倉知を暖かく助ける、一番高校生らしい住田。
倉知達の前にたびたび姿を現す謎のストーカー
(これにはオチがあって笑っちゃうのですが!)
そして何より「怖いですね、怖いですね、怖いですね」と三回くらい言っちゃう従兄の優一の存在。
物語の中盤からそれらがうまくかみあってきて面白くなるのです。

どうして二人がくっついちゃうか、その気持ちは多分上木原のほうが強いんですね。
何せ不能になっちゃうくらいですから・・
決して女の代わりというんじゃなくて、同情でもなくて。
きっと倉知はほだされた形なのかな?とも思いますが自然です。
二人とも、これからも一緒の未来を送るのだろうなと思わせる結末。
本当に必要なものを手に入れて、初めて病気を克服していくのでしょうね。


2

この作品が収納されている本棚

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