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「犯罪者は地獄に落ちればいい、自分の力を使って私刑を下すことも厭わない」という考え方のもとに超能力を行使している清涼。
かたや秦野は、「いかなる犯罪者であっても法の下で裁かれるべき」という信念の持ち主。
犯罪によって心身を深く傷つけられた過去を持つ二人だが、犯罪者に対するそれぞれのスタンスは対極といっていいほどに異なっている。
ある事件を契機に出会った二人はこの食い違いによって事あるごとに反発し合うが、秦野のほうは清涼に愛情を感じており、恋人のように接する。清涼もまた素直になれないながらも秦野を受け容れ、気にかけていた。
ところがある日、清涼の封じ込められていた記憶を呼び覚ます出来事が起こり……。
というストーリーで、あらすじを書き起こすととても陰惨で重い感じですが、実際読んでみるとわりとライトな読後感です。
最初の山場である強姦もなんかするっと水に流されるし……清涼が豪快に流すんですがw
秦野の清涼に対する好き好き光線がわかりやすすぎてかわいいんです。ああ、清涼の言動に一喜一憂してるよっていうのが丸わかりで。そんな秦野に対して、「こいつがへこむ顔を見たくなったら"お前と付き合っているつもりはない"と言ってみよう」などと鬼畜な思考の清涼ですが、傍から見たらあなたも十分やられちゃってるよねっていう。無自覚ラブラブカップルの話です。
脇を固めるキャラクターも個性的で、彼らとのコミカルな応酬がともすれば暗くなりがちなストーリーの雰囲気を和らげています。重いテーマにも関わらず鬱っぽくないのはそのせいもあるかなと。
ちょくちょく主役二人に絡んでくる清涼の友人・塚本(ドレッドヘアに迷彩服、飄々とした性格の謎の金持ち)や、その彼女である黒薔薇(黒ずくめ、黒髪とヴェールで顔を隠し、唐突にベッドの下から現れる凄腕占い師)などなど。
個人的にはこの本で夜光花作品を揃え始めたほどの大当たりでした。
主役カップルでも脇役スピンオフでもいいんで、続編が読みたいです。
一つケチをつけるとすれば、ちょっとエロシーンが多すぎることかな……。ストーリーのテンポを若干損ねるレベルの多さでした。萌えたけど。
※暴力・流血シーンがあるので、苦手な方は注意したほうがいいと思います。
余談ですが、この本の挿絵を見て、朝南かつみはエロをあまり描かないイラストレーターなのかと思っていました。ので、剛しいらの『描くのは愛』の表紙を見て度肝を抜かれましたw
レビューを書くために軽く読み返すつもりが何度目かの再読になってしまったほど好きな作品です。夜光花さんの作品はいくつか拝見しましたが、この作品が一番好きです。
物語の主軸は主人公・清涼の特殊能力と彼の過去にまつわる事件ですが、登場人物のキャラクターがブレなく魅力的であることと、クライマックスに向かって少しずつ情報が明かされる展開+清涼と秦野の関係が深くなっていく過程が絶妙に絡み合って、暗すぎず、甘すぎず、ときどきクスっと笑える、バランスの良い作品になっています。エロは濃いめで、一冊で完結しているとは思えない読み応えです。
ドリーム満載、キラキラぴかぴか、美形の男しか出てこない、やたら容姿を賛美する描写が多い・・・そんなBL小説に辟易している方にぜひ読んでほしいです。
余談:この作品のCD化作品もオススメです。ブックレットに、その後の二人のショートストーリーが掲載されていますよ。
他人の記憶を読んで消すことのできる受と、受に過去を暴かれて怒って強×してしまう刑事の攻。こんな始まりで大丈夫かなと思ったのですが、攻が直情径行というか素直で。やり直したいと言われ、その後はむしろ優しくて包容力のあるタイプ。照れたり喧嘩したり、あー攻の中ではつきあってるつもりなんだな、と読んでいてわかる。しつこくて甘くて独占欲いっぱいの攻。エロが多めなので、そこは早送り。毎回違うシチュで、かなり濃厚なので、恥ずかしいだけです。必然性はあると思います。
二人とも重い過去を持っていて、特に受の過去の事件の真相に迫る後半は、解決するのかギリギリまでハラハラしました。犯罪者は法律で裁く立場の攻から見れば、受のやっていること=彼らを破滅に追い込むことは認められない。でも、やっぱり受が心配で。攻の強さに惹かれるけど切り捨てようとする受のことを性格悪いとは思えません。
脇を飾る金持ちの戦争マニアと占い師がすごい変人で、重いだけの話にしていない。ラブと事件と脇役のバランスのよさが、すごくおもしろかった!と言える話になっています。
何度も読み返して、その度に好きになる作品です。
幼いころのトラウマを抱えているゲイの刑事秦野と人の記憶を探り消すことの出来る能力を持つ清涼のお話。
二人はそれぞれ少年時代に自分の身に起きたことがトラウマになっていてその後の人生に大きな影を落としています。
この二人の出会いはその呪縛から解かれる為の「運命」…
清涼は人の記憶を消す商売をしており、その依頼者がきっかけで刑事の秦野と出会います。
いけ好かない刑事だと秦野の記憶を探って煽ってしまったために、清涼は秦野から刑事だったらなおさらありえない行為を受けます。
ホント、ありえないよ。刑事なのに!
それで、この先一体どんな展開に?と心配と期待感を冒頭から煽られましたw
ところがその後も良い意味で予想を裏切りえっ?!そんな展開なの的な連続で読み手を楽しませてくれます。
清涼は自分の能力を活かして事件への協力をしていくのですが、その中である日思いがけないことが起こります。
清涼の少年時代に起きた忘れもしない事件。
両親を殺され自分も重症を負います。その犯人を忘れずにいました。
ただその記憶を持っているのは辛く犯人と再び出会うまでは思い出さない暗示をある人物にかけてもらっていたのですが、その暗示が解けたのです。
(このある人物がスピンオフ「サクラ咲ク」の花吹雪先輩)
復讐のために大きく動き出します。
事件は時効を迎えているため犯人を追い詰める方針で二人は対立し、清涼は危険な賭けにでますが…
清涼は過去の辛い記憶を封印していましたが、反対に秦野はその嫌な記憶が自分の一部だからと清涼が消してあげようかと問いかけた時に断ります。
その違いが逆に二人を結びつけることになり、そして、お互が特別な存在となっていくのです。
その過程がいくつかの事件と絡んで上手く調理されていると思います。
事件解決後、二人とも過去の辛い経験をきれいさっぱり忘れることは出来ないけれど、頼れる相手と一緒にいることで癒されるその幸福感。
二人と共に味わうことが出来マス。
イラスト買いです。
トラウマ持ちの刑事と人の記憶の映像が見える精神科医ふうのワケあり青年
自分が子供の頃父親から性的虐待を受けていたという刑事が、その記憶を覗かれて怒りで我を忘れて同じ思いをしてみろとレイプするという部分がどうも納得できなくて長らく読む気になれなかった作品です。
でも朝南さんのイラストが見たくて恐る恐る手に取りました。確かにその辺は引っかかりはしても、事後の清涼があっさりしてたこととその後の刑事の猛反省に免じて許したくなりました。
うまいなあと思うのが、サスペンス調の作品の場合大抵先の読める2時間ドラマ風の筋書きでもLOVEの部分が素敵ならまあこの辺は二の次というかあまり重きをおいていないので気にならないのですが、この作品はその部分がしっかり描かれ偶然の出会いや事象がそんな都合よく…と思わせないところです。
癖のある登場人物が多いです。
清涼の友人で資産家御曹司 塚本や占い師の黒薔薇や名前だけの登場ですが重要な役まわりだった花吹雪先輩。
もっと知りたいなと思う面白そうな背景がありそうで惹かれます。
そんな中でも不思議な魅力がありそうな花吹雪先輩が主役の「サクラ咲ク」も読んでみたくなりました。悲しいことにイラストはないのですが。
主役ではない二人だけがカラー扉を飾るのはとても珍しいことだと思います。彩服の塚本と占い師の黒薔薇があやしげです。
女装した主役かと思いましたが、最後まで読むとその存在感になるほどここにイラストがあるわけが納得です。