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表題作音無き世界

水原英之
28歳,映画ライター
笹塚遼
22歳,大学生

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

「──妬いてるの?」
フリーの映画ライターとして活躍している水原英之は、ある日、かつてひと月だけ一緒に暮らした笹塚遼と再会する。十年前、無口な子どもだった遼は、その頃の面影を残しながらも、印象的な青年へと変貌していた。けれど、遼は子どもの頃の経験から、誰も好きにならないと決めていた。でも、それでも遼は英之に惹かれていく。英之もまた遼にやましい思いを抱いていて…… ひそかに、熱く、恋は生まれてくる──!!
(出版社より)

作品情報

作品名
音無き世界
著者
杉原理生 
イラスト
宝井理人 
媒体
小説
出版社
大洋図書
レーベル
SHYノベルス
発売日
ISBN
9784813012108
3.6

(46)

(15)

萌々

(10)

(15)

中立

(3)

趣味じゃない

(3)

レビュー数
12
得点
163
評価数
46
平均
3.6 / 5
神率
32.6%

レビュー投稿数12

映画的

受けも攻めも映画の仕事に携わる人々の話で、このストーリー自体も映画にしたいような切ないムードの漂っているお話で素敵でした。

父親との思い出にトラウマがあって人を好きになることができないという不器用でナイーブな性格の受け。六歳年上の攻めはそんな受けを心から大切に思っていて受けが過去と折り合いをつけられるようになるまで気長に待ちます。とても包容力のある人です。

タイトルに繋がるエピソードのシーンは感動的でなるほど!と思わされましたし、ラストの終わらせ方もなかなか粋でした。ベテラン作家さんなので所々で演出が上手いなあと思いました。

2

情景が目に浮かぶ

ネタバレなしで書きます。
最近読みましたので、記憶の新しいうちに。


攻めは父親の影響で映画業界を志した、映画ライターの英之。
昔、父親から見せられた無音のフィルムが記憶に焼きついています。

受けは子供時代にひと月だけ英之と同じ部屋で寝起きした、大学生の遼。
彼もまた、映像という世界に生きています。


英之は先輩から素人の投稿作品を見せられ、その中に記憶に焼きつけられていたフィルムに良くイメージが似ている作品を見つけたことが再会のきっかけとなります。

大学でフィルムを撮っている遼のOBが英之の先輩でその縁で紹介してもらうのですが、遼が自分を覚えているのか読めず、英之は大人のいやらしさで自分からは告げないんですね。
反面、遼は自分の今をかたどった英之をずっと忘れず、いつか出会えるのではないかと心に留めて暮らしていました。
十年前の遼は家庭の事情が影響しひじょうに無口で表情を変えない子供でしたが、英之が自分に対して示してくれた誠意がキラキラ輝く特別な記憶として残っているんですね。

遼は自分の健康であったり生活にまったく興味がないのですが、唯一執着するのは英之の存在。
そこがとっても純粋で、英之にだけベクトルが向いているといった一所懸命な遼にホロっとします。

彼が経験してきた悲しい幼少期の記憶は英之と共にあることで、きっと良い部分も探すことが出来るようになるのではないかと暖かい気持ちになる作品でした。

3

映画を観ているような

フリーの映画ライター水原英之は、偶然観たフイルムコンテストの応募作品からかつてひと月だけ一緒に暮らした笹塚遼と再会します。
一瞬でしたが過去を共有したふたり。
過去と現在を行ったり来たりしながら静かに話が進んでいきます。
「遼   壊れないものはないんだよ」英之のその一言がとても印象に残りました。
誰も好きにならないと心を閉ざしながらも子供の頃からずっと英之を思っていた遼の心を解き放ったのは、遼が心を閉ざす原因となった遼の父が残したフイルムでした。
タイトル通りサイレントフイルムを観ていたようなそんな読後感でした。

2

文体が好きだー

杉原さんの作品のレビューを書くとき(あと高遠琉加さんのとき)って、同じことばかり書いてる気がするのですが、改めて文体が好きです。
実に美しい…!!
この作品はとくにそれを感じました。
とある無音のモノクローム映像がキーとなってる物語なんですが、それについてのエピソードが語られるときの文章が、やたらと美しいのですよ。「情景が浮かぶ」というより、「文章そのものが情景になってる」って感じ。たぶん私、その映像を見ても感動はしないんだけど。映像で見ると退屈さしか感じないだろうなと思うんだけど。

ストーリーは杉原さんお得意のじれったい恋です。
すんなり身体を繋げるんだけど、受けがなかなか自分の中にある感情を認められない、という。
子供時代のエピソードが効果的に配置されてあって、少しずつ受けの抱えてるものが見えてくる。
トラウマものなのに陳腐さを感じなかったのは、過去を説得力のある形できちんと描いてくださってたから。陳腐さを感じるトラウマもののBL、正直多いんだよね。
過去話、良かったなァ。
杉原作品にはよく「イビツな親」が出てくるし、それを絡めて子供時代のエピソードが語られたりするのですが、むしょうに惹かれてしまうものがあります。

1

家族愛と恋愛の境界線

穏やかで、繊細な文を書く杉原さん。
好きな作品も多いですが、これは萌えに近い中立評価。


遼、そして英之がお互いに「恋」しているのかが、私にはイマイチ伝わってこなかった。

小さい頃なら親を通して得られるはずの身体の触れ合いや、家族からの愛を得られず、心を閉ざして生きてきた遼が、英之に対して求めているものが、どうしても家族愛に見えてしまう。
10年越しに再会してから、人との繋がりに飢えていた彼が英之の隣に居続けることが、食べ続けているラスクのように依存を感じるし、
一番嫌だったシーンが英之に求められてしてしまうH。
彼のそばにいるために抱かれている感じが・・・。
逆になんとなくしてしまった!とかならいいんだけど。

小さい頃から心の成長を凍らせてきた遼が、一体どのあたりで英之に「恋」をしたんだろ。
遼が英之に求めていたものが、恋人ではなく兄のような慈愛だった気がして、ムズムズ。

英之も遼自身に恋をしたというより、彼の欠如部分に興味を抱いていた気がする。


でも恋をするきっかけなんて人それぞれだし、家族愛のような恋愛があってもいいのか。。
彼の欠如した部分の痛々しさによって、余計に私はそういう風に捉えてしまったかな。

父と遼のストーリーや英之の父のこととか、脇話が結構おもしろかったけど、
主となる遼と英之の恋愛にうまく入り込めなかった。



最後の手紙は好き。
手紙によって萌えに近いアップ。
この作品がBLじゃなかったら、もう少し評価高いかな。

2

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