SS付き電子限定版
杉原理生先生のお話、いいですよね。なんというか、BL作品にありがちな、奇をてらうようなオーバーな表現、字面から激しすぎて何言ってるのかわからなくなってしまうような表現がなく、安心して読めます。
だからといって心が動かされないわけではないですよ!ドキドキしっぱなしです。
このお話は寮生活の高校生のお話でしたが、さすが優秀な高校が舞台なだけあってみんな大人です。攻なんてあなたいくつなのよ、と聞きたいくらい大人(笑)
ギャグや下品さはないです。設定的にはド定番ものかもしれませんが、ピュアなお話が好きな方にはオススメです。
電子書籍で挿絵なし。
寮の同室の2年生×1年生です。
この表紙の雰囲気そのままの、とても穏やかなお話でしたが、登場人物の人となりや成長もしっかり見られました。特に主人公・遥の心情の描写が見事で、好きな人を思って悶える気持ち、過去を詮索されそうになって不安になる気持ち、自分に味方がいてくれることに心強さを感じる気持ち、あらゆる場面で遥のことがよく理解できました。この作品を読んでいる間は、まさに若葉寮の周囲の、草木に囲まれたきれいな空気を吸っているような気分になれました。体を繋げるシーンも、何をしているのかはわかる程度にしつつ、あまり具体性を持たせない描写になっており、作品全体の雰囲気にマッチしています。
篠宮先輩が王子らしく振る舞っている理由と、遥が寮生活でうまくやらなきゃと意気込んでいる理由。いずれも辛い過去がありますが、お互いと出会ったおかげで、それらを克服していきます。関わってくる同級生や先輩たちも、それぞれにキャラがあって良かったです。
最高にキュンとしたのが、宿泊学習の夜、真夜中の3時半過ぎに先輩と二人で外に出て、明けの明星を見ながら話していたら、手を繋がれて、告白されて…宿泊棟に戻る直前に額にキスされて…のシーン。もうもうもううらやましすぎます(笑)。こんなことされたら、一生忘れないでしょうね。
お兄さんのことがなかったら先輩はどんな人になっていたんだろうと気になりますが、生来の思いやりはありそうなので、王子っぽくはなくても素敵な人になっていたんだろうなと思います。
学年が上がったら先輩は一人部屋に移ってしまいますが、環境に負けず隙を見ていちゃつきまくってほしいです(笑)。
そして寮という特殊な空間を抜け出しても、二人がずっとお互いにとって特別な存在であり続けてほしいと心から願える作品でした!
舞台は坂の上にある、全寮制の名門ミッション系男子校・森園学院高等学校という閉鎖的な空間。
大正時代に建設された蔦の絡まる煉瓦造りの旧めかしい学び舎。
胸元にエンブレムを着け、仕立ての良い揃いの制服を身に纏った少年たちが聖書と讃美歌集を手に礼拝堂で祈りを捧げる。
青嵐寮と若葉寮から成る学生寮に棲まう"坂の上の囚人"たち。
やや現実味のない、どこか浮世離れした空間で繰り広げられる1年間の物語。
「僕」という、主人公・遥の一人称で語られるちょっぴりレトロな雰囲気を感じる学園・寮での生活の様子が、杉原先生の流れるような優しい表現で綴られています。
寮生達が管理する組織や行事、1学年上の上級生との2人1部屋の空間、ライトなファグ制度のようなもの…と、設定的には真新しさは見受けられず、海外のパブリックスクールやギムナジウムよりも入り込みやすい印象ではありますが、かなり王道の学生寮ものなのです。
しかしながら、なぜか非常に味わい深く、じわじわと静かに魅力が広がる作品。
訳あって外部から入学をした新入生・遥が同室となったのは、寮内で「王子」と呼ばれ親しまれている、美しい容姿をした1学年上の寮長・篠宮。
目には見えない葛藤やトラウマ、傷を心にずしりと抱えている2人が、共に寮生活を送る中で少しずつ距離が縮まり、淡い想いを抱き惹かれ合い始めます。
高校生同士ならではの心地良い青さが良い。
一貫して淡々とした語り口で進みつつ、2人が恋に落ちるまでの流れや、心の傷を吐露し、自然と互いを分かち合う心情描写がとても繊細で美しいです。
大人しく内向的で控えめながら、ネガティブさは無く真面目で努力家な遥。
そんな彼が自身が抱える問題から逃げず、あくまでも前向きに懸命に克服して生きようとしている姿がいじらしい。
そして、自分は王子ではないけれど、遥にとっての王子さまにならなりたいと思うと言う、篠宮の物腰の柔らかさと包容力と優しさ、遥に対しての慈愛に満ちた仕草はまさしく王子さまでした。
遥にとっては大人のようでいて、途中途中に年相応の男の子な部分が垣間見えるのが良いですね。
欲を言うのなら、篠宮の過去や心情をもっと掘り下げたものも読みたいなと思ったものの、そこまで書いてしまうとこの読み口の良さや味わいが変わってしまうかも。
主人公たちの周りをかためるキャラクターたちもそれぞれ魅力的。
遥の友人2人が特に人間的に好ましく、中学時代に暗いものがあった分、賑やかな仲間たちと最高の青春を送って欲しいと願ってしまう。
男子校ならではの上級生や同級生とのやり取りもさじ加減が程良く、年頃の男の子らしさも描けているというのに上品なのですよね。
学園ものにありがちな全員BLCPにならないところも良かった。
序盤では「袖口が少し長い制服」だったものが終章では「ぴったり」になっている。
1年という短くも長く濃密な時間の出来事と少年の成長を細やかに表現した、このさり気ない描写がとても好みでしたね。
杉原先生にしか描けない世界観だと思います。
大きな問題や派手な出来事は起こりません。
その後については描かれていないので、もしかしたら卒業後は2人にかけられた青春という名の魔法はとけてしまうのかもしれない。
けれど、青少年たちの青く、淡く、繊細な姿にどうしようもなく心惹かれてしまう美しい作品でした。
寮ものが読みたくなって、人気のこのお話を選びました。淡々と静かに進むお話です。高校生らしく、爽やかで甘い読後感です。
寮で王子と呼ばれる同室の先輩(2年)篠宮と、女顔でトラウマ持ちの真面目っ子(1年)遥のお話。
あるトラウマを持っている遥が、寮の1年のリーダーに選ばれ、王子と呼ばれる寮長 篠宮に励まされたり友人に支えられながら、一生懸命寮生活を送るストーリーです。
男子校ものらしく、生徒の中にアイドルがいたり、皆んなでわいわいとするシーンがあったり。トラウマを持ちながらも一生懸命な遥に、応援したい気持ちになります。また、遥の篠宮へ向ける淡い想いや、不器用ながらも一生懸命に伝える気持ちにキュンとします。
嫌な敵も出てきてトラブルもありますが、全体的には爽やかで甘酸っぱい高校生の物語です。読み終わって、「これを求めてた!」と満足しました。寮ものの甘酸っぱい恋や、健気な受、王子様な攻が好きな方にオススメです。
学園もので寮の同室で先輩後輩という、寮もの、先輩後輩ものとして王道な設定でした。
寮長であり王子と呼ばれる篠宮と同室になった遥には、前の学校で秘密にしたい過去があり、精神的に不安定。ストーリーも割りと王道というか、期待を裏切らないものでした。
しかし期待を裏切らず、予想も裏切らないので、こういうの好きな自分には楽しめる半面、寮ものを沢山読んでいる方には真新しさは感じられないかもしれません。
篠宮が優しくほんとに王子というキャラだったために、ラブストーリーとしての困難さとか、面白みもいうのは少し薄めに感じました。あまり障害はなく結ばれた感じです。
遥は寮をまとめるリーダーに抜擢され、そのせいであちこち奔走しますが、お話の半分はそちらにもっていかれた感じです。ラブストーリーが薄めかなと感じた分、友人たちは多くいて、寮ものの醍醐味である個性的なメンバーに囲まれて暮らすわちゃっとした感じはよく出ていたと思います。
良くも悪くも王道の寮ものだなあという感じでした。