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表題作世界のすべてを君にあげるよ

須賀崎洸生、20歳、パブレストランアルバイト
深山省也、27歳、看護師

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

駆け落ち先の海辺の町で、兄弟のふりをしてひっそりと暮らす洸生と省也。元は大病院の院長の息子と病院勤務の看護師だった二人は、恋人関係にあることを洸生の父親に知られ、一度は別れを決意する。けれど気付けばすべてを捨て、この町にたどり着いていた。先の見えない不安定な生活もそろそろ一年を迎えようとしていたある日、省也のかつての知り合いが偶然町を訪れ…?年下攻センチメンタル・ダイアリー。

作品情報

作品名
世界のすべてを君にあげるよ
著者
砂原糖子 
イラスト
三池ろむこ 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
ディアプラス文庫
発売日
ISBN
9784403524042
3.8

(78)

(31)

萌々

(23)

(14)

中立

(3)

趣味じゃない

(7)

レビュー数
12
得点
292
評価数
78
平均
3.8 / 5
神率
39.7%

レビュー投稿数12

強がり健気年上受け

駆け落ちカップルが愛の逃避行の末、辿り着いたとある寂れた町で周りには兄弟と偽って二人で暮らしているという設定で物語は始まります。

物悲しいロードムービー風の感じが素敵です。二人の間に愛はあるのですが、受けが7歳年上ということで先々のことを考えすぎちゃうんですね。攻めのことを大好きなんだけど、こんなことをいつまでも続けてはいけない、攻めを解放してあげなきゃ、と将来を考えて一人で余計な計画ばかりたててしまいます。攻めも馬鹿ではないので薄々受けのロクでもない計画に気づいてヤキモキしています。何でこんなに好きなのに別れようとするんだろうって。

二人の関係が切ないです。甘いです。そして出来上がってるカップルなので・・・エロいです(笑)砂原ワールドの魅力集大成な感じですね。作家生活15周年を飾った作品にふさわしいと思います。ここ数年の作品の中で私は一番好きです。

受けが強がり健気でツンデレで一人でぐるぐる考えすぎちゃうのはやっぱり可愛いです。そして色っぽい所がいい。攻めは7歳年下ですが、精神的に受けより大人だと思います。男前な性格です。

ストーリーは書き下ろしの番外編も含め最後までハラハラドキドキさせられ、切なさに胸が痛くなる系のお話です。でも砂原作品ですので最後は・・・安心してください、大丈夫ですよ!とだけ言っておきます(笑)

15

切ないです。

「世界のすべてを君にあげるよ」
兄弟としてひっそりと暮らしている看護師の深山(受け)と医学生の洸生(攻め)
駆け落ちって好きな人との逃避行なのに辛いのかな。子供ならお金もなくて困ることもあるだろう。でも、未成年じゃないんだし、駆け落ちしちゃっとんなら、楽しく生きれば良いのではないかと。深山はちっとも幸せそうじゃない。
何のために駆け落ちまでしてるのか、本末転倒なんじゃない?と思ってしまいます。
他に手はないの?

海辺の町のサーフィンくらいしかすることのない場所。冬の寒々しく寂しい雰囲気と2人の逃避行が、演歌のような情景を思い起こします。

駆け落ちしてみたはいいけど、未来ある医学生を連れてるという罪悪感から別れなければと思うけどできなくて、時限爆弾を仕込んで警察に捕まるように仕向けて、強制的に分かれる道を選ぶ深山。
そのことに気づいていたけど、気づかないふりで、一緒にいようとする洸生。
ひたすら切ない。
爆弾がなくなって、話し合いもして一緒にいたいと確認したにも関わらず、やっぱり洸生を置いて逃げてしまう深山。
そのことにを予想していた洸生の手紙は泣けました。
それにしても、高校生を連れ回してるならともかく、一応成人してるんだからもっと信用してあげて欲しかったな。別れたくないけど医大に戻って欲しいならちゃんと言えば良いのに。1人でぐるぐる考えても、ろくなことがないんだから。2人できちんと納得いくまで話し合えばよかったんだよ。その結果が、後半のお話になるんですけどね。

「世界の続きを君にあげるよ」
一度逃げた深山が洸生の手紙を見て思い直して帰って行くところから、洸生の父親にきちんと向き合って、洸生は医学生として医者を目指し、深山は関係をきちんと話しした上で元の診療所に戻って洸生を待つことを決めるお話でした。

これは表題作が最後いきなり7年後に吹っ飛んでしまった間どうやっていたかを補完する形になっています。

これから学生生活を謳歌する洸生のことを、待つのが寂しい心配だとちゃんと本音を言えてよかったです。漠然と心配するより言葉に出して相手に伝えるのはとても大事だなとおもいました。そして、我慢してしまう深山に、その言葉を引き出せた洸生は4ヶ月離れてちょっと大人になったんですね。これからどんどん良い男になって、深山を支えてあげることでしょう。

表題作の方で、診療所で一緒に働くようになったということだけはわかっていたので、長距離恋愛を続けられるかという心配もなく、安心して読めます。

あとがきにも書かれていましたが、砂原さんのデビュー作と似たような砂浜が舞台のせいか、年の差は違えども年の差カップルの年下攻めが一生懸命なのが同じだからか、話の内容は全然違うのにもかかわらず、特に砂浜のシーンの度に頭の中で2つの話が交錯して、ちょっと混乱してしまいました。

とにかく切ないお話でした。あんなに切ない話だったんだから7年も遠距離恋愛した後の2人の楽しい生活を読みたかった。
一瞬すぎるのが残念です。
でも、最初から出来上がったカップルなので、エロは多めです。需要があるのかとあとがきに書かれていましたが、私としてはいつもこれぐらいでも全然大丈夫!逆に嬉しいって感じでとても良かったです。

9

攻めも受けも健気!

省也が健気ではあったけど、実は洸生の方が健気なのではと感じました。
洸生の前向きな姿勢と頑張りがハッピーエンドに繋がったんでしょうね。
省也の相手の立場を考えるのは大人ならではと思いつつ、でも、考え過ぎて逃げ出してしまうのはいかがなものかと‥
周りの人たちいい人でよかったし、当て馬の彼もいい人、悪い人がいないって落ち着いて読めるなぁ

8

挿絵もピッタリ!

物悲しく切ない逃避行モノです。
田舎町の情景の美しさや、凪いだ海の中佇む二人など、
ノスタルジックな世界観にどっぷりはまることが出来、
脳内で小旅行をしたような気分になりました。

行先も決めず、お互いの愛情以外は何も持たず、
未来の見えないままでの逃避行ストーリー。
序盤から不安要素がテンコ盛りで、
どうなっちゃうの?とハラハラ引き込まれました。

ポジティブな洸生(攻め)とネガティブな省也(受け)という、
役割分担が出来あがっているので、とても読みやすいです。

洸生が、有望な未来を全て捨てていること、
省也が、そのことに責任と迷いを感じ続けていることが、
次第に、二人の間に影を落とすのが興味深かったです。

また、肌を合わせてもどこか哀しい。
二人でいるのに手放しで幸せとは言えない、
物悲しいメロディが流れ続けているような
刹那的なセックスにも胸が痛みました。

1章の終わりで、ハッピーなラストの結末が
サラっと書かれているのはビックリ!
これは自分的にはとても嬉しい仕掛けで、
このラストに、どうやって繋がるの?とワクワクしました。

私が一番好きな場面は、
1週間の滞在を経て、東京に帰る洸生を省也が見送るシーン。
笑顔でお別れをして、洸生の乗るバスを見送った後、
楽しかった時間を思い出しながら、
微笑みながら、一人で家路につく省也。
だけど、突然歩みを進められてなくなってしまう。
同じように、同じ気持ちで、バスを降りて省也を追いかけてしまった洸生。
駆け寄って抱きしめ合って、その胸で省也は初めて号泣することが出来ました。

同じ作家さんの挿絵ということもあり、
言ノ葉シリーズの二人の感性にも近いものを感じました。

相手を想うあまりに誤った選択をしてしまうことや、
本当の気持ちを伝えることが出来ないこと、
愛し合っているのに、傷つけ合ってしまうこと、
不器用だけどまっすぐに生きる二人がとても愛おしかったです。

7

手紙とチョコバー

駆け落ちをしてさびれた海辺の田舎町で暮らしはじめた看護師の省也と医学生の洸生。
兄弟といつわらなけれないけない不便さはあっても、好きな人と一緒に過ごせる日々は二人にとってかけがえのない時間でした。

でもその陰には、大好きな洸生の人生をだいなしにさせるわけにはいかないと、
自分の気持ちや行動を制御して重大な決心をしている省也の思いがあって切なかったです。
ただ、そのことに気づいていながら知らないふりをしてふるまっていた洸生がそれ以上に切なかったです。
ポケットにしのばせた手紙とチョコバーには優しさと愛情がつまっていて泣けました。

信じる気持ちと不安な気持ちを乗り越えた二人の幸せを願いたくなる切なく優しい作品でした。
照れ屋の省也と年下だけどしっかり者の洸生のバランスも良かったです。

4

この作品が収納されている本棚

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