月を食べて恋をする

tsuki wo tabete koi wo suru

月を食べて恋をする
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神14
  • 萌×28
  • 萌6
  • 中立0
  • しゅみじゃない1

74

レビュー数
9
得点
120
評価数
29
平均
4.2 / 5
神率
48.3%
著者
 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
 
媒体
BL小説
出版社
イースト・プレス
レーベル
Splush文庫
発売日
価格
¥700(税抜)  ¥756(税込)
ISBN
9784781686172

あらすじ

夢に見る過去の恋人。 それが誰なのか思い出せない…大学生の恵多は十代の頃の記憶が一部欠落している。 だが、現在恵多が恋をしているのは、 一緒に暮らす叔父の章介だ。 合コンにまで口を出す過保護さに辟易しながらも、嬉しくてたまらない。 実らない想いでも、この幸せが続くならそれでいいと思っていた。 ところが、あることから二人の間に性的な雰囲気が漂い始め…。 思い悩んだ恵多は、再会した過去の恋人と付き合うが! ? 過去の傑作が大改稿のうえ新装版で登場!

表題作月を食べて恋をする

仲里章介、恵多の過保護な叔父で会社社長、34
仲里恵多、記憶が一部欠損している大学生、21

その他の収録作品

  • あとがき

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レビュー投稿数9

評価は再読してから

途中で思いっ切りネタバレしています。ご注意下さい!

小山田あみさんの表紙イラストが素晴らしく美しい
この作品には、スルメみたいなところがありました。

初読み時には分からなかった・気づけなかった文章表現や描写の意味が
重みを持って心を打ってきたのは、再読している最中でした。
沙野さんらしさのある細やかで意味深な描写の数々に
ハッとさせられ、その巧さに唸らされたのは、再読している最中でした。

ただ、初読み時でも
最後の最後でやっと、章介の言動の意味するところが判明して
泣き笑いさせられましたが。

けれど、再読時には
章介の心中が手に取るように分かってしまうので
切なくて苦しい気持ちでいっぱいになり、涙腺は緩みっぱなしでした。

3年前までは自制心の利かなかった章介が
自制心を利かせまくって生殺し状態のまま
恵多を過保護なほどに見守り続けている姿は本当に切なくて苦しいです。

恵多が記憶の一部を喪った原因には納得がいきました。
父の事故死は当時18歳だった恵多には重すぎる罪です。
章介への想いと決して切り離すことができない父親への罪悪感。

痛みを伴う2人の関係がとても苦しいです。
でも、大人な章介の愛は深くて重くて前向きだから
恵多は激痛を伴う章介への愛を諦めることなく
2人で一緒に幸せになるのだろうと思います。

評価をつけるのは、是非、再読してからにして欲しい作品です。

3

失われた時を巡る、甘やかなミステリー。

ロマンティックなタイトルに魅かれて。
その月は、冷たいのだろうか。昼間に見上げた白い月なのか。輪郭が甘い朧なものなのか。
タイトルの意味はラスト周辺に明かされる。それは私の想像していた様な「白い月」でない事を知る。

父が事故死した時期周辺の記憶を失くした恵多は、時々発作に悩まされながら、何か「大切な」記憶を思い出そうとしている。
そして父亡き後、弱った自分の世話をしながら側にいてくれる叔父の章介に淡いけれども、躰の奥底から沸き上がるような熱情を伴って。
恋をしている。

全部読んでしまうと、シドニィ・シェルダンの何か著名な作品のようでもあり、フランソワーズ・サガンの「悲しみよこんにちは」のようでもある。不安定な記憶と共に、自分の心と、恋に向き合っていく。
父の死の真相や、恵多を取り巻く大人たちの思惑が、まだまだ子供である恵多を危険な局面に立たせてしまう、ミステリー仕立て。
ただ、途中で当て馬(?)として出て来る須藤さんがあざと過ぎて、読み手側には彼の思惑だけは分かり過ぎるほど分かってしまう。恵多はぼぅっとしてるので、ウカウカとしてその手管に落ちてしまうが。
表紙やイラストが指し示しているのに関わらず、章介の外見はちょっと違う人を想像していた。
髪はゆるいウェーブを描きながら、肩に掛からない程度に長く、真ん中で分けられ。肌は浅黒く、うっすらと髭を生やしている。というのが、私の想像で。恵多は、イラスト通りでいいかな。
抜ける様な白い肌の美少年なのだと思う。

記憶を失くしても、何度でも貴方と恋をする。というロマンティックな側面と、その綺麗さを生々しく覆うエロス‼︎ むちゃくちゃエロいです。まぁ、多くのミステリーがエチシーンを含める事を思えばフツーなのかもしれないけれど、何がエロいって、直接的な行為そのものよりも。
他の方も触れている様に、章介が風呂場で倒れた恵多を介抱してその躰を拭くシーン‼︎
恵多は、章介が介抱してくれているだけなのだと思いながら、その手に、触れる指に、タオル越しの温かさに。つい感じてしまい、後ろめたさを持つ。読み手側には章介の熱く濡れた想いが迸っていることが分かる。この男の確信犯的な劣情を感じるのだ。
13年も歳が離れているとはいえ、章介も恋に溺れるただの男だということを。
なので、実際に彼が行為に及ぶ悦びが、大人げなくて。(ちょっとだけ引きます!)
物語は常に恵多目線で語られますが、全部読んでしまってから、章介目線で読み返すとまた、熱いものを感じられるかと思うのです。それは是非。

3

苦しい系

先生&表紙買い。ほんわり甘いのかと思ったら違った・・ドキドキどうなる話でした。最後までドキドキ苦しくてちょっと重いなと思ってしまったので萌にしました。本編230P弱+あとがき。

平日の朝、洗面台で二人歯磨きなど身支度をするシーンから始まります。デザイン事務所勤務の叔父は寝起きはゆるいクマ状態ですが、ぱりっと身支度を整えるとイケメン。色んな女の残り香をまとってきますが、必ず帰宅し、甥っ子である恵多にも外泊禁止令を出す過保護さん。というのも恵多が記憶を一部欠落していて、水の匂いがトリガーとなって動けなくなる発作をたまに起こしてしまうからで・・と続きます。

攻め受け以外の登場人物は
須藤(受け父の会社の顧問弁護士だったイケメン)、大学の友人少々といったところ。ほぼ二人+1で進む印象です。

**以下内容に触れる感想

叔父に焦がれる気持ち、父が亡くなった理由、自分が記憶を無くした理由、その記憶などを知りたくなる気持ちなどで受けさんが煮詰るので、読み進めていくうちに気持ちはぐあーーとなっていきます。なるんですけど、攻め受け共にあんまり好みドストライクという訳ではなかったからかな、萌方面ではあんまり盛り上がれず。攻めさんは甥っ子を思ういいイケメン(やや)おっさんで、受けさんは一生懸命自分と闘う子と真面目路線一色だったからかな。お仕事話があるわけでもなかったし。

攻め受けとも一生懸命!という真面目なシリアスお話がお好きな方には良いのかもと思いました。

1

はまりきれず…。

大好きな沙野風結子さんなので、迷わず作者買いしましたが、う〰️ん。高い評価の中、評価を下げて申し訳ないのですが、私は今一つ萌えきれませんでした。

設定は本当にすごくいいんです!恋人と思われる男性に湯船で温かく抱き締められる記憶(夢)を持ちながらも、父親の死をきっかけにして、その相手のことだけでなく、記憶の一部を欠落してしまって、水や性的なことに拒絶反応するかのように発作が出てしまう甥の恵多と、それを生活面でも精神面でも支える叔父の章介。

叔父甥の関係や同性愛ということに悩みつつ、記憶の欠落に苦しみながら一方的な片思いを拗らせている恵多の恋心が切なく描かれているところや、想いを募らせる1つ1つの仕草にはとてもきゅんとさせられるし、章介の異常なまでの過干渉の様子から過去に何かがあると匂わされてはいるのですが、そこは明らかにされないまま、発作で動けない恵多の濡れた体をすみずみまで拭いていく章介の描写のイヤらしいところとか(ねちっこい分、絡みよりむしろエロくて…う〰️ん、悶絶)前半はホントめちゃくちゃいいんです。

なのに、見た目が過去の恋人に似ているからといって、疎遠だった弁護士の言うことの方をほいほい鵜呑みにしてしまって、3年も一緒に暮らしてきて自分を時に過剰とも思えるほど大事にしてくれて、恋心まで募らせてしまった章介と、そんなよくわかんない人間を比べて、どうしてそっちを信じちゃうかなぁ〰️、なんでよ〰️ってところで引っ掛かってしまって…。

一方、そんな恵多の変化にストーカーまがいの執着心をみせる章介にもちょっとなぁ…って引いてしまいました。外出中に冷蔵庫に肉とかお惣菜とかって…ありがたいし、心配なのはわかるけど、おかんかってツッコミいれたくなりました。

たしかに、記憶の欠落が恵多を不安定にさせていたり、章介の方にも言えずにいることがあって二人の関係を拗らせていたのはわかるのですが、渡辺くんの「俺はこの目で見た叔父さんのほうを信じるね」というセリフがなかったら途中で放棄してしまいそうでした。結局はお互いを大切に想うあまり…ってところでかなり浮上でき、スッキリとはしましたが。

二人の抱える罪悪感と、それさえも凌ぐ愛情で最後はいい終わりになりましたが、途中あちこち引っかかってしまって、どっぷりとははまりきれずちょっと残念でした。

2

深い愛情に萌える

作家買い。

『君といたい明日もいたい』を改稿しての新装版ですが、旧版は未読。沙野さんはがっつり痛い作品も書かれますが、これはなんていうんだろうな。切なく、そしてしっとり。大人の恋。そんな読後でした。

主人公は大学生の恵多。
父親を亡くしたショックで倒れ、その時に頭を打ったせいで記憶が一部欠落している。

そんな彼が時々見る夢。
お風呂に入り、リラックスした状態で、そして信頼できる相手に身を委ねている。

恵多は、父親の弟である章介を愛しているけれど、血の繋がった叔父、という事で自分の恋心に蓋をしている。だから、夢で見る相手は、叔父ではありえない。でも、じゃあ、彼は誰なのか。

「水」を見るとショックを起こしてしまう。
そして性行為にも。
何故、拒絶反応を起こすのか。
そして、夢の中に登場する「相手」は誰なのか―。

ミステリーの様相も盛り込みつつ、恵多が愛しているのは誰なのか、かつて恋人だったのは誰なのかを追うストーリーです。

とにかく伏線は盛りだくさん。
なのに、その一つ一つに意味があり、そしてそれが繋がってく展開はさすが沙野さんといったところか。

主人公は恵多で、視点も彼目線。

でも、この作品の主人公は紛れもなく恵多の叔父の章介だと思います。
恵多が起こす発作や、彼の父親の事故の真相、そして父亡きあと章介に引き継がれた会社の存在。それを恵多が追っていく展開ではあるのですが、そこに隠れた章介の健気な想いを描いた作品だったように思います。

どんなに拒絶されても、それでも恵多を一途に思う。

本当のことを恵多に言えずに苦しむ。
そして、恵多に恋人が出来たと知って苦しむ。
良い意味で、大人で、そして良い男なんです。彼に萌え心が掴まれて仕方なかった。

恵多が追う「謎」は二転三転しますが想像を超える結末ではなく、ある意味王道というか想定内の結末。でも、それらをはるかに上回る登場人物たちの魅力にどっぷりとはまってしまいました。

これ、章介視点で描けないという事は十分承知のうえで、でも、章介視点のストーリーも読みたかったな。

章介と恵多は、気持ち的に途中まですれ違ったままなので、甘々な濡れ場は少ないです。
なのですが、章介が恵多の身体を触るシーンが非常にエロティックです。
相手は自分を愛していない。それでも、体を触られば愛しているが故に反応してしまう。お互いに、そう思っている。

萌え…!
王道の両片想いですが、ここまで萌える作品もなかなかない。

で。
小山田さんの挿絵がめっちゃ素敵でした。
綺麗だし、カッコいいし、濡れ場はエロいし。

綺麗なだけではなく、大人ゆえの暴走。執着。そして深い愛情。
そういったものがしっとりと描かれた、非常に萌える神作品でした。

8

終わりは突然やってくる

電子書籍。新装版より「君といたい明日もいたい」を電子化して、書き下ろしショートストーリー付きでお得な気がします。

本作はモヤモヤしたまま終わりました。実印はどこに隠したか、家と土地の書類は回収できたか、啓太の就活はどうなったか、須藤は恐喝罪で逮捕されないのか。須藤以外の疑問は既刊のエピローグに解説されました。

既刊を削って、サイドストーリーがなくて、本作を楽しめなかった。

小説のみの評価は中立ですが小山田あみのイラストに脱帽して萌えです。イラストを拡大して心癒されます。

5

残酷で美しい物語。真相はいかに。

深い水の青と、薄暗い月のオレンジ。
表紙のイメージをそのまま纏ったような、切なく美しい物語。

3年前に父親を事故で失った恵多は、父方の叔父である章介と暮らしている。
父親の死にショックを受けた恵多は、心因性なのか?中高生あたりの記憶がところどころ欠落している。
さらに溜まった水とセックスに対して何故か強い拒絶反応を覚え、ひどい頭痛と体の麻痺を伴う身体的発作を起こしてしまう。
そんな恵多は、いけないと思いつつも、日々の生活の中で章介に惹かれゆく自分が止められない。
ある日、とあるきっかけで突然章介から迫られ肉体関係を持ってしまった恵多は、章介の真意がわからぬまま苦悩を重ねていくことに。

空白の自分の記憶を探るため、章介への想いを断ち切るため、過去に恋人だった可能性のある父の会社の弁護士だった"須藤"に近づく恵多。
章介も須藤も何かを隠し、章介は重要なことは濁してばかりで決して口にしないため、好きという気持ちと疑心暗鬼に揺れる心の板挟みとなり、さらに追い詰められていく恵多…

ミステリー要素の強い作品なのでこの先詳しい内容には触れませんが、主人公と共に記憶を解き明かしていく展開に、ページをめくる手が止まりませんでした。

恵多の記憶にない空白の時間の存在がもたらす不安や、叔父に抱く恋情や叔父と交わることへの深い罪悪感。
そんな彼の心情を投影した物語は常に仄暗く、読者をも水の溜まりに引きずり込むような息苦しさがありました。
息苦しいけど、進むことを止められない…
そんな水の中でもがき喘ぐような、心的描写がとてもうまい。

近親系は本来苦手なのですが、2人の深い苦悩、記憶を失ってもなお再び恋をし求めてしまう本能、反対に恵多の幸せを願い自分の想いを封じ込めようと戦っていた章介の愛…すべてに熱く胸が震えました。

背徳的な関係や年の差があることも相まって、性描写が非常に官能的。
私は小説はほとんど読んできていないため、小説ならではの濃厚な描写には鳥肌ものというか、赤面ものというか…
絵がない分、頭の中で繰り広げられている2人の交わりは、それはまぁどエロいことになっています。
コミック派の方々にも、ぜひ一度この刺激を味わっていただきたいな〜と思いますね。

こちら、2009年刊行である『君といたい明日もいたい』を大幅に改稿されたものとのこと。
残念ながらそちらは未読なのですが、今回はその際にボツになったタイトルに戻されたようです。
大幅な改稿とのことで物語の雰囲気も旧作とは大きく違うものなのでしょうか?
この作品には『月を食べて恋をする』という、ミステリアスで美しいタイトルがとても合っていると思います。
新しく届けてくださった作者様、出版社の方々には感謝を申し上げたいです。

10

危うい均衡にゾクゾクします

こちら、2009年に刊行された「君といたい明日もいたい」を大幅改稿、改題の上、新装版として出されたものです。
旧版は未読になります。

で、叔父と甥と言う許されない関係もですが、ここに記憶喪失と言う推理サスペンス要素も絡み、ストーリーとしてかなり面白いと言うか、好奇心を掻き立てられると言うか・・・。
いやもう、サスペンス映画を見てるように、手に汗握らせてもらえました。

あとですね、攻めの意外な健気さにも心を打たれるんですよね。
こうわりと、傲慢だったり酷いヤツだと思っていた攻めが、実は超健気でしたと言うパターンが多いと思うんですけど。沙野先生は。
これ、最初から健気なのに比べて、より意外性でグッと来たりするのでお上手ですよね。
実は沙野先生の既刊をまだ9冊しか読んでなくて、偉そうに語るなって感じなのですけど。

で、内容ですが、会社社長で超過保護な叔父・章介×記憶が一部欠損している大学生の甥・恵多による、推理サスペンス要素ありの両片思いものです。

過去に強く頭を打った経験から、記憶の一部が欠損している恵多。
夢で見る「過去の恋人」との記憶に安らぎを覚えるものの、それが誰かは思い出せないままです。
そんな彼が、現在恋してるのは、一緒に暮らす叔父の章介。
過保護過ぎる章介に憎まれ口を叩きながらも、幸せな日々を過ごしています。
そんな中、夢で見ていた過去の恋人と再会する恵多。
恋人の口から、章介の犯した酷い仕打ちを聞きー・・・と言うものです。

で、こちら、サスペンス要素がかなり面白いのです。
何故か、溜まった水やセックスに対して強い拒絶反応を示し、発作を起こして動けなくなってしまう恵多。
そんな彼の記憶から消えてしまった「同性の恋人」。
また、叔父として過保護な程に恵多を大切にしながらも、何か胸に隠している章介。
そして、自身が過去の恋人だと恵多に訴える、亡き父親の元顧問弁護士・須藤。
これらが複雑に絡み合い、もう誰が敵で誰が味方だかサッパリ分からん状態。
終始、恵多の視点で進みますが、彼と共に、読者も疑心暗鬼状態でストーリーを読み進める感じでしょうか。

と、サスペンス部分もとても面白いのですが、並行して進む恋愛部分がこれまた萌えるのです。
元々、普段は叔父と甥としての健全な距離を保ってるのに、何かの拍子で危うさを漂わせる二人の均衡なんかに、ゾクゾクすると言いますか・・・。
発作を起こして動けなくなっている恵多を、章介が介抱したりするのです。
これがもう、身体を拭いてるだけなのにエロいエロい。
こう、過保護な叔父と元気な甥から、なにかの拍子に、ふいに漂う性的な気配-。
この危うい気配の漂わせ方が大変お上手でして。
読みながら「来るぞ、来るぞ・・・!!」と読者がほくそ笑んじゃう感じがご理解頂けるでしょうか。
個人的にですね、こういう危うい関係がゾクゾクする程好きなのです。

そんな中、自身の恋人だったと主張する須藤から伝えられる、章介の意外な姿。
章介を信じられない気持ちと、彼への恋慕との間で追い詰められてゆく恵多。
そんな彼を甘やかし、自分で考えなくてもよいように取り計らってくれる須藤-。
と、ストーリーは更に混迷を極めて進んでゆきます。

こちら、結末は読んでのお楽しみで。
ただ一つ、とにかく章介が健気なんですよ。
彼がずっと胸に仕舞っていた真実ですが、恵多の事を心から大切に思ってるからこそ、黙ってるしか無かったんですよね。
いやもう、章介、かわいそう! 本当、ガチでかわいそう・・・!!
この三年間を思うと、何だか胸が締め付けられるよ( ノω-、)
まぁ、発作時の介抱なんかは、明らかにスケベ心を抑え切れてないと思うけど。

ところでこちら、もう10年近く前の作品ですが、全然古さを感じません。
大幅改稿されてるせいかもしれませんが。
強いて言えば、須藤のキャラが沙野先生にしては単純過ぎる気がしますけど。

あとですね、エロ濃厚です。
二人がくっつくまでも雰囲気だけでかなりエロいのですが、くっついた後のエッチが凄い事になってます。
恵多、エロ可愛いなぁて感じで。
表紙が美し過ぎて悶絶なんですけど、(エッチシーンの)挿絵もめっちゃ艶っぽいのでご堪能下さい。



13

一片の苦さがまとわりつく実に複雑なラスト

『君といたい明日もいたい』(2009年刊行)を加筆修正した物語です。
私は前作を読んでいないので違いは解りませんが、社会情勢等は全て現在の状況に書き換えられていて、所謂『古さ由来の違和感』は一切感じませんでした。

大変痛いお話です。
「この様なことが起きたらこうなってしまうしかないだろうな」という現実感に溢れています。
よく「BLはファンタジーだから」と言われますが、この『ファンタジー』の部分をかなり大きく削ぎ取っていると感じました。
だからとても痛く感じるのだと思います。
ただ、突き放す様な痛さではないので、絶望的にはなりません。

ミステリ仕立てなので、どこまで紹介したら良いのやら……ちょっと困ります。
大学生の恵多はお風呂の中で男性に抱きしめられ幸福な気持ちで満たされている夢を何度も見ます。それが誰なのかは解らないのですが、欠けてしまった自分の記憶なのではないかと思っています。
デザイン会社の社長だった恵多の父は飲酒運転による自動車事故で亡くなっているのですが、それをきっかけにして恵多は記憶障害を起こし18歳以前の記憶が斑で消えています。同時に湯船とかプールなど、溜められた水を前にすると激しい頭痛に襲われることや、普段はそうではないのですが、いざという時になると強い罪悪感を感じセックスが出来ないという状況を抱えています。
離婚によって父子家庭だった恵多は、父亡き後、叔父の章介と一緒に暮らしていますが、章介に対して感じる反発を恋の所為だと気づきます。しかし、頻繁に女性の香りを纏って帰宅する章介を見る度に、このままではいけないと感じる様になります。
そんな折、章介への想いを断ち切りたいと参加した合コンでたまたま出会った高校時代の同級生に、自分が茶髪の年上男性とキスをしていたのを見たと聞かされます。恵多は、思い当たった父の会社の顧問弁護士だった須藤を訪ねますが、須藤から自分たちは恋人関係にあったが、章介が父の会社欲しさに自分を解任し、恵多と会うことを禁じたと聞かされて……

『ミステリ仕立て』と書きましたが、謎解きの部分は割と早い段階で解る様になっています。むしろ、父の会社を巡る陰謀に巻き込まれた恵多に訪れる危機がハラハラドキドキもので、ここの部分がとても読みどころがあったんですね。
だって、章介と恵多、須藤と恵多の関係が強烈にシビアなんですよ。
どちらの男も恵多を追い詰める事しかしないの。
それぞれの動機は全く対局のものなのなんですけれど、記憶障害を抱える恵多にとっては、どちらの行動も「良く理解出来ない」という点で、同質のものと受け取らざるを得ないんです。
ここもねー、辛くて痛かった。

ただ、この物語は『痛さ』を感じさせるものだけではないと思うのです。
理不尽に落ちてしまう『恋というもの』についてのお話なんじゃないかと。
恋は善悪でぶった切れるものではないですよね。
でも、生きていく上でのモラルはそれぞれが持っています。
そこに矛盾が生じたら?

メリバではありません。
でも、幸せを感じる度に、同時に哀しみと後悔を感じざるを得ない形でお話は終結します。
ここに、沙野さんの優しさを見ました。
モラルを大切にしつつも善悪だけで人を裁かない……素敵な大人です。
甘いけれど苦い、極上の物語でした。

14

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