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晴臣と葵一の関係性って不思議だなぁとずっと思っていたのですが、なるほどこういう始まりだったのですね。晴臣はある日を境に一気に人生が変わったわけですが、それは弟である天雷を失って得たもので、100%好転したとは言えない複雑さも孕んでいて。一方葵一も、何不自由ない暮らしをさせてもらえているけれど、父親には都合の良い時だけ利用されて顧みられず、禍に巻き込まれやすいところを考えると、けっして何の苦労もしていないお坊ちゃんというわけではなくて。
そんな2人が出会い、死にかけるような体験を共有して、お互いの背負っているもの、逃れられないものを知った上で、1人で抱えきれない孤独や傷を分かち合うように繋がったのが今の2人なのだなと。正直、私にはこの2人の関係性は恋愛という類の感情とはもっと別の、限りなく家族愛に近いような、それでいて下手な家族よりは余程強い結び付きであるような、独特の印象を受けました。天雷というもう1人の存在も心に刻みながら、2人はこれからも人生を共に戦い抜いていくのでしょう。葵一の父親はどうしようもない男でしたが、彼が他のすべてを差し置いて執着する錦との話はとても読みたいと思いました。
今回は晴臣回、いや、葵一と天雷回と言うべきか…。
からだを重ねなかったからこそ、いつまでも残る想いもあるのですよ…。
【月に願いを】 萌
前巻の怜二の誕生日と同時刻の葵一たちの話。
蒼江の家をすべて弟である怜二に背負わせた負い目を感じる葵一は、ふだんの能天気さを一切見せず、しがみつくように晴臣に抱かれます。
その晴臣もまた、心の中で誰かを思い浮かべ、同じ月を見上げる怜二も失った誰かを想いながら、今そばにいる直也をより愛おしく思うという、情緒溢れる作品でした。
【I’m hungry】(Ⅰ:6話/Ⅱ:4話) 神
中国残留日本人の母から生まれた、戸籍のない双子。
それが天雷(ティエンリー)と天雪(ティエンシュエ)。
盗みで得たお金で生活しながら、身を寄せ合って暮らしてきたが…。
いよいよ晴臣と、(3)で出てきた中国マフィア風の天雪の登場です。
薬の取引に手を出して刺された弟(天雷)を生かすために、将伍(葵一と怜二の父)の元へ行った天雪。
兄の思いは弟に届かず、ただ兄に見捨てられたと思って生きてきた弟は…。
ぐううううう…。中華屋の親父…。予想通りだけど酷い。
そして2人の父親も酷い!
葵一に対する仕打ちも怜二の扱いも、本当に親!?と疑いたくなる父親です。
それもこれも自分が家から解放されて僧侶をモノにするためとか、何なんだ、この胸糞親父は…。あまりの酷さに歯を食いしばりすぎて顎が痛くならないように、ご注意を。
前半は葵一を餌にしてビジネスをする親父に衝撃を受けて、後半になってまた攫われた葵一をビジネスに繋げる親父に衝撃を受けます。
そんな過酷な状況だからこそ、心を寄せ合う葵一と晴臣の間に現れたのが天雷。
別組織からの依頼で葵一を攫いに来ます。
でも天雷の狙いはあくまでも兄・天雪が手にしたしあわせを壊すこと。
必死の逃亡中、また足に怪我を負った天雷を見放さない葵一と天雷の視線が…。
同じ兄弟でも拾い上げられる方と見捨てられる方。
その共通点に、葵一と天雷を惹きつけ合ったのでしょうか。
見送ったらまたひとりになってしまう天雷を、見捨てない人間もいると示したかったのか。
でも葵一にはもう捨てられない晴臣がいるわけで。
知り合うにも、恋をするにも、5日は短すぎることはないけれど、もう生きて会えないかもしれない刹那の恋を、たしかに2人はしたんだろうなと思います。
ただ置き去りになったのも、その後の中華屋の親父の件も、天雪(晴臣)が悪いわけじゃないんだよ…。
2人の関係も「葵一に免じて」みたいにならなくて良かった。
この出会いが、強盗事件((3)に収録されている【素晴らしい日曜日】)のときの「お前を守ると約束した」に繋がるわけですね。
【失くしたもの。残ったもの。この手にあるもの。】 萌2
晴臣目線のエンディング。
晴臣の背中の傷は、葵一を守った勲章だったんですね。
自分の命を投げ打ってでも守ってくれた相手に恩義を感じないわけもなく。
双子2人ともに「守る」と言われた葵一は、今では能天気な医者だけど、こんな過去があっての明るさだと思うと、強い人だなあとしみじみ思いました。
親父さんと僧侶の話や、天雷と女の子っぽいパートナーの話も構想としてあったそうですが、いやいや、これだけ自分本位な親父さんの話を読もうとも、同情はもはや出来ぬ!
想像するに、後継として養子で入って、きっと犬のような扱いを受けたのでしょう。
そんな日々の唯一の癒しが僧侶となった元同級生だったんじゃないかと。
でも後継という役目があるから、妻を娶って、葵一が生まれてお役御免!と思ったら、妻が「この子は女の子!」と言うので怜二も作ったけど、愛のない相手との子供を愛せるわけもなく、愛をもらえなかった妻は精神を病み、いろんなひとを不幸にしたけど、俺が欲しいのは錦、お前だけだ!ということなんでしょうね…。
他の作家さんの話で、893の組長だけど似た設定を読んだのを思い出しつつ、最終巻へ。
大好きで、何度も読み返してる作品です。絵は古いけど、お話が素晴らしくて、帯にある「BL界の金字塔」の言葉に偽りなしと実感します。今回は、蒼江と葵一と晴臣たちの過去編になります。切なくて胸が痛くて、なかなか読み返せなかった5巻です。
晴臣の生い立ちと、生き別れになった双子の弟(天雷)。父親にとっての葵一の存在と、跡取りとしての蒼江の立場。葵一と蒼江の危うい関係。葵一と晴臣の関係。
どれもハッピーエンドとは言い難く、皆の幸せを祈らずにはいられません。
中でも、蒼江たちの父親が鬼畜で酷い男で。犠牲になった周囲の人間の気持ちを考えると、怒りでいっぱいになります。
もちろん、お金だけもらって逃げたラーメン屋の店主や、晴臣たちを捨てた母親も酷いんだけど。
それを乗り越えて、それぞれの今の幸せがあると思うと、感無量になります。
心残りは、天雷の幸せが見れなかったことです。3巻に登場していた、天雷の相棒の一星とのお話が読みたかったです。
今回は、【蒼江×直也】カップルも出てきますが、なんといっても、【晴臣×葵一篇】のお話遂に登場です。一冊この2人メインのお話になっています。
今までの蒼江家の謎が解き明かされていきます。またそれが壮絶なんですよね…。晴臣(中国名は天雪)の過去、双子の弟の天雷の存在、蒼江父の存在と、錦という蒼江父が執着し続けた男の謎が明らかになっていきます。
普段は、女王様気質で飄々としている葵一ですが過去は壮絶でした。実父には道具のような扱いをされ、拉致はされるストーカーには襲われる、今とは違い生きることを自分の存在意義を諦めたような子供時代だったんですよね。そんな葵一の今があるのは、唯一心も身体も預けられる晴臣の存在が凄く大きいんだろうなあと思いました。いろんな苦難と同じ痛みをお互い分かりあい、長年連れ添ってきたからこそ、この2人の熟した関係は一味違う重みがあります。一緒に生きていく相手を見つけ、守るべき相手ができた事でお互いに強くなったんだろうなあと思います。葵一の時代時代で表情が違うのも興味深い点でしたし、痛くてダークなお話だっただけに、現在の葵一のハチャメチャ女王様ぶりには安心します。
せつないといえば天雷です。もし、先に葵一と出会っていたならと考えてしまいますが、影から支える生き方がこの人のあり方なのかなあと…一星とのお話はお蔵入りになってしまったみたいですが、幸せになって欲しい人のひとりでした。
そして、忘れてはならない蒼江父。鬼畜で強烈過ぎて言葉もありません。錦だけがいればいいとは…ひどすぎる男の人だと思うんですけど、ある意味可哀想な人なのかもしれませんよね⁉この2人のお話もある意味読みたかったような気もします。
今回は過去篇という事で、せつなく痛い系のお話でしたが、蒼江家の原点と【晴臣×葵一】の強く結ばれた絆の原点が読める巻になっています。十分読み応えありなのでオススメです。
葵一の過去編メインの5巻。
蒼江パパはとにかく色々すごい人だった。彼がなんであんな風になっちゃったのかもちょっと気になるところだし、錦との色々は是非とも描いて欲しかったです。昼メロ大河ドラマでかまわないのに。むしろウェルカムなのに。
双子の運命とか関係性はとにかく切ないです。葵一・晴臣主従は堪能させていただいたけれど、欲を言えばやっぱり天雪が幸せになる話も見たかったかも。つくづく 天雷と一星の話がなかった事が悔やまれます。