傷ついたあなたを、抱きしめさせて。

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表題作捨てていってくれ

水梨隆之,21歳,編集部バイト大学生
沖屋統,28歳,官能小説雑誌編集長

その他の収録作品

  • 花束抱いて迎えにこいよ
  • 神様のいない夜
  • あとがき:高遠琉加、金ひかる

あらすじ

バイト先のクールな美人編集長・沖屋に惹かれる隆之。成り行きで身体の関係になるが、身体を許しても沖屋はベッド以外ではそっけない。 それは、彼の心が傷を抱えているから――。一途な純愛。

作品情報

作品名
捨てていってくれ
著者
高遠琉加 
イラスト
金ひかる 
媒体
小説
出版社
海王社
レーベル
ガッシュ文庫
シリーズ
捨てていってくれ
発売日
ISBN
9784796400633
3.9

(44)

(15)

萌々

(15)

(12)

中立

(0)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
15
得点
171
評価数
44
平均
3.9 / 5
神率
34.1%

レビュー投稿数15

例えるならラブラドール・レトリバー

個人的に大好きなカップリングが年下ワンコ×気が強くて賢い美人。
この作品はまさに好みど真ん中!

攻めの水梨は編集部でバイトをしている大学生。
その編集部の辣腕編集長が受けの沖屋。
水梨はラブラドール・レトリバー系の従順で優しくまっすぐな男の子(ここで“男の子”呼ばわりしてしまうほどまだまだ発展途上のワンコ)。
一方、沖屋は毒舌クールビューティで仕事ができる大人の男性。
表面上は上記の通りなのですが、人には見せない繊細さや弱さがあり、それがいっそう沖屋を魅力的にしているのだろうな、と。
昔の恋が心に傷をつけていますが、その傷を心の底に押し込めて今は自由恋愛(体本位の関係)を基本に恋人を作らずにいます。
こうした年下攻めの物語の場合、如何に年下ワンコが難攻不落の年上に振り向いてもらうかが肝だと思うのですが、その物語の流れがとても良かったです。
水梨の情熱とひたむきな愛情に少しずつ沖屋が絆されていく様子が読んでいて納得の展開でした。

個人的に印象に残ったシーンのひとつが、嫉妬とは縁がなさそうな沖屋が水梨の服についていた女性の香水の匂いが気に入らず「着ている服を脱げ」と。それも食事の最中に。
結局、パンツ1枚で食卓に座らされて夕食をとる水梨が気の毒やらかわいいやら(笑)。
そんな水梨に向かって「首輪つけたくなるな・・・・・・」と。
その後のベットシーンで、水梨が心の中で、首輪がなくたってこの人だけのものなのに、と思うのがなんとも健気。

恋人になれるまでの物語が「捨てていってくれ」。
恋人になり、水梨も社会人になったあとの物語が「花束抱いて迎えにこいよ」。
後半の「花束抱いて迎えにこいよ」には沖屋の昔の恋人が登場したり、水梨が初めて担当を持った小説家の雛川が話に絡んできます。
この雛川は女性で、今はスランプですが都会的な恋愛小説の名手。ただ処女作は真逆のセンシティブな小説を書いていました。
美人であったため、タレント業も平行して行うことととなり結果、世間のイメージは「タレント作家」。
BLの感想とは少々離れますが、私は雛川にとても好感を持ちました。
自分の処女作について、全然売れなかったし、子供の頃に書いたから今読んだら恥ずかしくて顔から火が出るわ、と。
でも「それできっと、子供な自分が愛しくて泣きたくなりそうよ」と。
この作品自体が大好きですが、どこに一番胸をうたれたかというと、登場人物が皆、自分の仕事に誇りをもって真摯に取り組んでいるところ。
自分の進む道を定め、途中でままならずに気持ちが揺らいでも、きちんと自分自身で立て直す強さが素敵でした。
それは、水梨と沖屋はもちろんのこと、沖屋の元恋人の掛居も、小説家の雛川も皆そう。
BL小説として面白いのは間違いないですが、仕事観も読み応えのある作品でした。

2

すがすがしい程にツン!!

官能小説編集長の受けとその編集部のバイト学生の年下攻め。
受けの沖屋は「愛想のわるい猫のような」なかなか甘えない男。
口が悪く、淫乱、天邪鬼で一筋縄ではいかない受け様です。こういうひねくれた受けは大好きで、冒頭の作家へダメ出しをするシーンから面白く、物語にのめりこめました。
キレイで淫乱で仕事のできる受けって最高ですよね!
一方攻めの年下ワンコの隆之は常識人で、
あの強烈な沖屋にこの攻めは少し役不足なのでは…と感じるシーンもありましたが、
せいいっぱい愛されようと頑張る姿がやっぱりかわいいです。
「お前のものになりたい」と言わせるだけありますね!

「捨てていってくれ」とその後の短編「花束抱えて迎えにこいよ」、
このタイトルの意味が分かった時は沖屋が愛しく思えて仕方なかったです。印象に残るタイトル…。
前者はハッキリ口にしたセリフで、後者は言った言葉ではないのですよね。
そういうところは天邪鬼な言葉は言えても甘える言葉は面と向かって言えない、沖屋らしいなと思います。
(捨てていってくれと話したシーンはシリアスな山場ですがw)

高遠先生の作品を読むのはこれが初めてでしたが、選ぶ言葉にとてもセンスを感じます。
わかりやすくて、特に比喩の表現がステキです。
沖屋の毒舌を、「子供向け風邪薬のシロップのよう」と例えてみたり(甘くて苦くて体にジンとくる)カチッとはまるような言葉選びは、この作家さんのすごいところだなぁと感じました。

末永くお幸せに!!

2

ワンコ×ツンデレの素敵な作品

ノベルズ収録の中編2作品に、ショートを合わせた文庫版です。

「犬と小説家と妄想癖」のスピンオフ作品ですが、未読でも大丈夫です。前作のノリが合わなかった方でも、年下ワンコ×年上ツンデレや切ない系が好きな方はこちらがお勧めです。

「捨てていってくれ」で二人はセフレから恋人同士になり、続編「花束抱いて迎えにこいよ」で二人の絆は強固なものになります。

メインストーリーは隆之(攻め)の視点なのですが、沖屋(受け)の気持ちが透けてみえるのがすごく良かったです!隆之は鈍感ワンコでなく、唇の震えなど沖屋をよく見ています。そこもデキる男って感じで良いです。

続編で沖屋が元彼を優先するような態度も、事情が分かるとすっきり落ち着きました。あとは掛居が自分を「ガラス玉」、隆之を「ダイヤモンド」の男と例えたところが特にお気に入りです。

金先生のイラストも作品の雰囲気にぴったりで素敵でした。エレベーターのキスシーンとか艶ぽかったです。沖屋が水梨の服を脱がせての食事の場面、水梨の後ろ姿とそれを笑って見てる沖屋のイラストも良いなぁと思いました。

ショート「神様のいない夜」は沖屋視点。隆之が支えになっているのが感じられて微笑ましかったです。ただ前2作品がシリアスチックだったので、猛烈に甘いバカップルぶりも垣間見たかった気もします。

3

神様のいない夜、にやられた

いやぁ、本当に面白かった。
何が面白かったって、沖屋のキャラクターが!
これぞツンデレというくらい、ものすご~くとがっていました。
捻くれ者、天邪鬼、意地っ張り。
そういうキャラが好きな人には、これはたまらない人物かも?

沖屋は、弱小出版社の官能小説雑誌編集長。
若いのにとても切れ者なので、かなり口が悪いのに、周囲には一目置かれています。
実は部下思いの優しいところもあったりして、でもそれを絶対に見透かされたくない意地っ張りな人です。
そしてプライベートはなかなかの淫乱。
このギャップがまた良い、すごく濃い人だわぁ。

相手は七歳年下の編集部アルバイト大学生、水梨。
水梨は、典型的なワンコ攻めです。
はじめは出来過ぎお坊ちゃんな感じなのですが。
沖屋の蜘蛛の糸にかかり、知らない間に恋に雁字搦めになっている印象でした。
器用にそつなく生きている青年が、沖屋の行動言動で、天国と地獄を行ったり来たり。
でも、それがまた幸せそうだったりします。


このお話は、三つにわかれていました。
はじめの二つは水梨視点。
最後のショートストーリーだけ沖屋視点です。

「捨てていってくれ」
出版関係の仕事に就きたい水梨は、先輩の友人が編集長を務める青耀社でアルバイトをしています。
先輩の友人である沖屋はとても綺麗な人なのに、とても口の悪い怖い人。
ある日沖屋は、とても機嫌が悪い状態で出勤してきます。
そんな日に、水梨は大型台風のために沖屋と社内に閉じ込められてしまって…。

「花束抱いて迎えにこいよ」
大手出版社に勤め始めて間もない水梨。
はじめて担当になったのは、只今絶賛スランプ中の女優兼作家、雛川咲。
水梨はある店で、初めての打ち合わせをします。
その雛川が店内でプライベートなもめ事を起こし、ちょっとした騒ぎに。
そこへちょうど通りかかった沖屋が加わり、雛川に妙な提案をします。
後日、水梨と沖屋と女性作家の雛川は、二泊三日でスランプ脱出の為の小旅行へ行くことに。
ただ、その旅行先には問題があって…。

「神様のいない夜」
沖屋の出版社は年末連休前のため、いつもよりもスケジュールの詰まった年末進行の真っ只中。
世間はクリスマスイブで浮かれムードな日。
連絡のつかない作家に振り回される沖屋は…。


はじめの「捨てていってくれ」はBLにありがちなシチュエーションではあるものの、沖屋のキャラがとにかく面白くて。
タイトルの言葉はどういう意味?どっちのセリフ?と思っていたんですが。
そうかそうきたか、となってグッときました。
それにしても、沖屋みたいなちょっと難しくて苛々させられるキャラが好きなのですが。
実際に身近にいたら大変そうです。

二話目の小旅行話は、正直あまり好きではありませんでした。
どうしてかわからなくて苛々する話はわかった時の爽快感が大好きで、好みの展開なんですが。
仕事とプライベートを、あまりにもごちゃ混ぜにしすぎているところがまったく共感できず。
最後までどうしても仕事視点で見てしまい、水梨にも沖屋にも、なんだかモヤモヤした気持ちが残りました。

ただ、三話目の「神様のいない夜」というショートストーリーがあまりにも良すぎて。
二話目のモヤモヤも吹き飛びました!
いやぁ、これは良い!
超ツンデレと超ワンコっぷりがかなりヤバいです。
もうすぐクリスマスなので、今読むのがオススメかも?

5

ココナッツ

roseーlilyさま

ものすごーくご無沙汰ですよ〜(*^^*)お元気でしたか?
BLから少し離れてらしたのでしょうか。またお会いできて嬉しいです♪
この作品、地味でご存知ない方も多いかと思いますが、受けのキャラが本当に良いですよね!お仲間が増えて良かったー。

あいつのものになりたい

きらきら光る、けれどひび割れてしまったガラス玉を大切にしていた男が、光るより強い耀きの、絶対に傷付かないダイヤモンドを手に入れる。
かつて自ら傷付き、傷付けてしまったひとへの懺悔のように心を諦めてきた沖屋。
対してはじめは好奇心だったはずなのに、今は「何が欲しいの。どうして欲しいの。いつもそればかり考えている。自分だけがあげられる人間になりたくて。」と愛に足掻く隆之。
もう傷付きたくなくて、後悔させたくなくて、立ちすくみ「捨てていってくれよ、頼むから」と震える沖屋を抱きしめ愛を乞う年下の男。

「花束抱いて迎えにこいよ」
2年たっても「今はおまえだけだ」と言われて動揺する子犬。
沖屋と共に忘れられない傷を分かち合った昔の恋人との邂逅。
この章ではホントに素晴らしいフレーズの連発で圧倒されます。それは登場人物達が編集者だったり作家だったり政治家だったり「言葉」に対して命や生活をかけ、また心を砕いて向き合っている人たちだ、という設定が活きているのだと思う。作者の巧みさだけが伝わるのではなく、登場人物その人の言葉として響いてくる。
あまり引用ばかりしたくないので、読んでくださいとしか言えません。
隆之は一人で焦っていたけど、沖屋は隆之と出会って既に過去とは決別していたのでしょう。
「あいつのものになりたい」
過去に傷付きビッチ道を歩いていた男のこの言葉…

「神様のいない夜」
年末進行で忙しすぎる編集長、沖屋。年下ワンコが待っててくれるからクリスマスに神様なんていなくてもいい。というお話。

元々は「犬と小説家と妄想癖」という作品のスピンオフですが、前作読まなくても大丈夫です。逆に今作の方が、文章そのものや言葉の選び方などにも萌えを求める方に合うのではないかと思います。絶対的おすすめです。

12

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