表題作ランデブー

桂英治 (高校教師34歳)
結城志緒 (大学生22歳)

あらすじ

「雪よ林檎の香のごとく」番外編。
家族旅行で沖縄に来た志緒と、同じく職場の親睦旅行でやって来た桂とのデートエピソード。

作品情報

作品名
ランデブー
著者
一穂ミチ 
イラスト
竹美家らら 
媒体
小説
サークル
MICHI HOUSE〈サークル〉
ジャンル
オリジナル
シリーズ
雪よ林檎の香のごとく
発売日
4.4

(5)

(2)

萌々

(3)

(0)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
2
得点
22
評価数
5
平均
4.4 / 5
神率
40%

レビュー投稿数2

南の島にて

志緒、大学4年生の夏休み。
彼は家族とともに沖縄に旅行に来ている。
本編で生まれた妹美夏も、もう来年は学校に上がる年齢だ。

偶然職場の親睦旅行が同じ時期の沖縄に重なった桂と、南の島で一日だけのランデブー。
離島の空港に迎えにくる志緒、降り立つ桂。
家族が出払った明るい昼間のコテージで抱き合った後は…

桂が「珊瑚の骨を踏んでいるようで申し訳ない」というシーンが好き。
志緒の研ぎすまされた鋭さとはまた違うのだが、
彼もまたこういう生きにくい繊細さを内に抱えている。
何げない行動やセリフから、二人が何故こんなにも惹かれ合ったのかが伝わってくるのがいい。

桂が転勤していてもう志緒の母校にはいないことも、この同人誌を読むと分かる。
出会った時から早7年、3つ年上の栫達も桂に教わっていたことを考えると、
転勤しているのは至極当然なのだが、
こうやってサラリと知らされると、二人がちゃんと日々の生活を営みながら
年齢を重ねているリアリティがあって、なんだか知り合いの近況を聞いたような気分。
こういうところも、上手いなー。

2

同じ目線で見ていても

『雪よ林檎の香のごとく』同人誌5冊目。
沖縄で落ち合う二人のお話。

家族旅行の志緒と、職場の慰安旅行の桂。
偶然にもお互いの日程と場所が丸被りで、1日だけ、一緒に過ごします。
ただそれだけの設定でもキュンと来ちゃう。
静かにコッソリと、人目を盗んで二人で蜜な時間を……と考えると、正にタイトル通り。「ランデブー」以外の言葉が思いつきません。

沖縄に行った事のない私にも、一穂さんの綴る言葉のおかげで、沖縄での二人の情景が映像として思い浮かべる事が出来ました。
じりじりと照りつける太陽。
志緒一人で泊まっているヴィラ。
空と海しか見えない景色。
砂浜に転がる珊瑚。
二人で握る手。
いつもと違う、異空間のような逢引だからこそ、その熱がふと下がった時に思い浮かぶ現実が、物悲しく襲ってくるのだろうな、と。

そんな特別な時間だったからこそ、浮かんで来たその先にあるもの。
お互いがきっといつしか必ず思うことで、でも口に出して共有することだけは避けたい。
心に留めておくだけでいい。
そんな、本当に「いつか」の話。

作中に出てきた、「トータル7年のお付き合い」という言葉を見て、少しジンと来てしまったのは私だけでしょうか。
あの北海道のあのときから、もう7年。
色々当たり前のことも当たり前じゃないことも、一緒に過ごしてきた7年。
日常はいつもどこかで必ず何かに縛られているのだろうから、だからこその、沖縄での甘い甘い短い時間は、きっとずっと心に残るんじゃないかな、と思えてなりません。

いつかを重ねて、先が見えていても、一緒に過ごす時間の甘さが多い事を望んでやみません。
そんな、沖縄と二人の熱さが詰まった、短い逢引でした。

2

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