表題作Saturday night paralysis

桂英治 (高校教師)
結城志緒 (大学生)

あらすじ

志緒の成人の日、桂先生から貰ったお祝いは?

作品情報

作品名
Saturday night paralysis
著者
一穂ミチ 
イラスト
竹美家らら 
媒体
小説
サークル
MICHI HOUSE〈サークル〉
ジャンル
オリジナル
シリーズ
雪よ林檎の香のごとく
発売日
5

(10)

(10)

萌々

(0)

(0)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
4
得点
50
評価数
10
平均
5 / 5
神率
100%

レビュー投稿数4

清いながらも色っぽい

志緒が成人を迎えます。おめでとう!

桂はあいかわらず飄々としていつつ、
表にはそんなに出さないだけで
志緒に夢中なんだなーっていうのがすごく嬉しい。
そんな桂に志緒はやきもきしたりするのも可愛い。

『サタデーナイトパラリシス』とは
橈骨神経麻痺、という症状らしいです。
腕枕をすると、なるんですって。うふ。
なかなか痺れが治らず、満足に右手が動かせない為
志緒は責任を感じてしまい、
色々甲斐甲斐しくお世話をしたがりますが
桂はそれを拒みます。
煙草に火を点けるのすら嫌がるって、そんな、と思ってしまいました。
変なところで真面目なんだからなー、桂センセイ。

一緒に病院へ行くと志緒は言いますが、
成人式へ行かねばなりません。
渋々向かった会場には、勿論桂の姿はありませんが
区切りの日を、一緒に同じ立場で過ごせたらと寂しくなってしまいます。

家へ帰ると、桂から電報が届いていました。
幼馴染のりかにも届いていましたが
微妙に志緒の方が短い。
「君の前途に幸多からんことを」が志緒にはない。
不満に思います。

雪の降りしきる中、桂のアパートへ行き、
体を温めるためにシャワーをすすめられ、
タオルで拭いている時に電報の事を尋ねます。
桂は志緒のだけ、短くしたと言うのです。
「前途とか幸とか、俺が言うのかよって。うそくさ、って」
ああ、桂…。いとおしい…。
そこからなしくずしにH、なんですが、
桂の右手はまだ感覚が戻っていないので
左手で愛撫するわけなんです。
そのもどかしさが志緒を煽って更に感じちゃうんですねー、いいですね!!
脱衣所なので洗面台にもたれて、
鏡で見ながらいたしちゃうんですけど!!
うっわー!エロい!!!!
志緒は嫌がってうつむきますが、
桂は顎を掴んで持ち上げます。目を瞑るのも許さず。
「みっともない」と言う志緒に
「あられもない、っつーんだよ。……ぶっかけたいぐらいえろいの」
か…桂ー!!!
どっちもえろいよ!w

3戦したお二人は、桂の提案でホテルのバーへ行きます。
大学の時の友達がいるお店だそうです。
成人式を済ましてもまだ20歳ではない志緒に
桂はノンアルコールで注文します。自分はシャンパン。
いいねー、シャンパン。大人って感じ(桂は大人だが)

連れて来てあげたかったんじゃなく、
これからは一緒にお酒飲んだり出来るのが
嬉しくなっただけだと言う桂の優しさに
志緒も嬉しくなります。

そして、桂はシャンパンを一口だけ口移しで飲ませます。
このシーンの表現が最高!!
キスした、とか、口移しで飲ませたとか
直接的な事は書いていないのに!!

そうそう、雪の中、歩きながら想いを巡らせた志緒が
また愛しかったです。

完全にネタバレで申し訳ないですが、
ミチさんの文章で読むとジタバタするほど素晴らしいんですよ!!











6

志緒くんが大人になるとき

本日は成人の日。東京地方は、この作中同様の雪模様…
ということで、レビューしてみたいと思います。
『林檎』番外編、志緒くんの成人式の日のエピソードです。

            :

腕枕をして共に眠った翌朝、桂は右手が痺れて動かなくなってしまう。
そんな状態の桂だが、志緒に世話をやかれるのを嫌がっている。

彼らは、教師と生徒として出会った。
50年経ったら大した差じゃなくなるとしても、まだ10代半ばの高校生志緒と、
大恋愛の痛みと挫折の経て教師になった桂。

志緒は、恋愛という経験の初っ端で桂に出会い、道を選んでしまった。
それは決して桂だけの責任ではないのだけれど、彼は責任を感じ続けている。
そして彼は、常にいつまでも、自分が与える関係であり続けたいと願っている。

大人と子ども、先生と生徒、というのは、実は個人的にはあまり好きなパターンじゃない。
対等であることが「萌え」の大きな要素の私なのだが、この桂の頑さというのは悪くないし、
それにただ甘えて乗っかりきれない、自分も桂に与えたいと真っすぐに願う志緒も好き。


いつもながらどれもいいエピソードだが、桂が担任した生徒全員に電報を送っている話がいい。
全員に同じ文面なのに、志緒のだけ少し短い。
想いが強いだけに、自分の責任を考えてしまうだけに、言葉を削らざるを得ない桂。
桂はいい加減でろくでもない男だが、一方でこういう不器用な誠実さを合わせ持っている。

記念の日に、矢も盾もたまらず一緒に過ごしたいと願う志緒。
雪で冷えた体を温めた風呂上がりに、裸で立ったまま後ろから抱かれる…
利き手のきかない桂の愛撫はもどかしくて、溺れてしまうが、
そんな自分の姿を鏡で見るように命じられる志緒…

その後、二人で祝杯をあげる場面も素敵。
桂はシャンペンだが、早生まれでまだ未成年の志緒は、
ノンアルコールカクテルという名の、ただのジュースだ。

その美味しい苺ジュースのように、瑞々しく甘くエロティックな成人式の二人、
忘れられない日になったことでしょう。


*サタデーナイト・パラリシスとは?
 橈骨(とうこつ)神経麻痺、上腕の真ん中で上腕骨のすぐ上を走行している橈骨神経が、
 骨と体の外の硬い異物との間で圧迫されることが原因となります。
 長時間腕枕をしていることによって起こることが多いので、サタデーナイトの他、
 ハネムーン・パラリシス(麻痺)、ラバーズ・パラリシスという呼び方もあります。

4

甘い麻痺

『雪よ林檎の香のごとく』同人誌7冊目。

志緒が、成人式を迎えました。
ただこれだけの事なんだけれどなー…何だか目頭が熱くなる自分が居る。

桂の腕が麻痺。
ずっと腕枕していたから?それしか考えられない。
煙草の火をつけるにしても、財布から小銭を出すにしても、不便極まりないじゃないか。
俺のせいで。
そんな志緒の考えを、桂は嫌がります。

遠ざけたいくらいって言葉に他意はなかったのかな、と思う。
そう言っても絶対、志緒は離れていかないのは目に見えていると思えるから。
そして、志緒はその言葉をしっかり汲み取ったのだろうか。
いやでもきっと、立場が逆でも一緒だろうか。一緒かな。
結局答えはそこにしかいきつかないのだけれど。


大人になった志緒と出来る色んな喜びが、ぐんと増えたであろう桂。
これからは、一緒にお酒を飲む事も出来て、酔い潰れてお泊りする事だって多少許される気もする。
そんな節目の成人式の日は、一生忘れられないであろう日曜日となったはず。
今までの5年を振り返っても足りないくらい、もっとたくさんの日々を重ねて。


そして、ぐんと一気に想像してしまった、志緒の恍惚の表情。
場所も去る事ながら、ぎこちない利き手じゃない方の手での愛撫に、そこで持ち出す右手の話。
狡いと思えるのに、抗えないのと同時に、とてつもなく感じてしまう時間。
鏡に映し出されたとろけそうな自分に、桂の嘘の言葉の数々。
……もう、誰がどう考えたって、ぎゅうっと心に来るであろうシーンに、顔が熱くなりました。


大人の階段がもしあるとしたら、少し先を歩く桂が後ろ手で志緒の手を掴んで、ぐいっと引き寄せて歩いて行くんじゃないかな、と。
そんなことを想像した、「大人」のお話でした。


麻痺?麻痺は……病院の先生、御名答、全くもってその通り、という結果でした♪(笑)

3

オトナとコドモの境界線

『雪よ林檎の香のごとく』の同人誌です。

本編お読みの方しか手は出していないと思いますが、攻めは桂先生、受けは志緒です。
志緒もこの本で成人式でした。

今回は、桂が志緒を腕枕していたせいで右腕が使えなくなるという、かなりバカップルのノロケ全開なストーリー。

が、そこは志緒ですからね。
若いですから。

ずっとこのままだったらどうしようとか、親切心でしたことが驚くくらい拒絶されてなんで?とか、考えてぐるぐるしちゃうわけですね。
志緒はきちんと性格男の子で女々しいタイプではないですが、若さと理路整然とした頭で時々考え込んでしまいます。
わたしにはそういう部分、本当にキラキラして見えます。
本人は悩んでいるのに、大人は羨ましくてねー。

志緒は自分をとりまくすべて、思い出記憶のすべても桂だけで塗りつぶされればいいのにって思っているけれど、桂は大人になってしまっているからその辺りの考えが違っても仕方ないですね。
ただ桂は、手をいつか離されるかもしれないと覚悟しているだろうけど、自分からは離せないだろうなと。
大人はその辺りのヘタレなんです(笑

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