小説

  • 雪よ林檎の香のごとく 林檎甘いか酸っぱいか~青~

雪よ林檎の香のごとく 林檎甘いか酸っぱいか~青~

ringo amaika suppaika

  • 電子書籍【PR】
  • 紙書籍【PR】

表題作雪よ林檎の香のごとく 林檎甘いか酸っぱいか~青~

桂英治、高校国語教師、28〜31歳
結城志緒、高校生〜大学生、15〜18歳

あらすじ

同人誌やSS等の再録に書き下ろしを加えた決定版。原作の間を埋めるエピソードと志緒の成人式前までを収録。書き下ろしイラスト付

作品情報

作品名
雪よ林檎の香のごとく 林檎甘いか酸っぱいか~青~
著者
一穂ミチ 
イラスト
竹美家らら 
媒体
小説
出版社
新書館
シリーズ
雪よ林檎の香のごとく
発売日
ISBN
9784403220883
4.6

(140)

(113)

萌々

(16)

(2)

中立

(1)

趣味じゃない

(8)

レビュー数
8
得点
636
評価数
140
平均
4.6 / 5
神率
80.7%

レビュー投稿数8

解けない魔法

一穂ミチ先生のデビュー作『雪よ林檎の香のごとく』の
同人誌や小冊子、ブログなどで発表された小品集。

ファンである私は同人誌も実は全部持っているのだが、
それでもこの総集編をとても楽しみに待っていた。
まして今やなかなか手に入らない同人誌や小冊子を
是非に読みたいと思っていた方々には本当に嬉しい企画だろう。

この「青」には、『bitter,bitter,sweet』から『美しい世界』
加えて書き下ろしの『Now is The Future』までの
全部で13編が収められている。


志緒が高校時代から、卒業大学進学後の18歳までのエピソード。
それぞれが短編だからだということもあろうが、
続編というよりも、あの二人がちゃんとどこかで息をして
二人の関係を深めているさまをずっと一緒に見守るような
そんな作品群。
一編、志緒の幼馴染りかの視点の作品もあり(「かんむりひめ」)
ごく一般のBLの定型からは外れている味わいのこの一冊は、
好まない人もいるだろうと思う。

しかし、出版のされ方を含めて、BLの可能性を広げる
素晴らしい一冊となっていると、個人的には思う。


同人誌や「オンユアマーク」に(これは大好きな作品なので、
HPで見ることができなくなったのをとても惜しんでいたので、
今回紙化されたのは本当に嬉しい!)関しては、
それぞれレビューを書いているのでここでは繰り返さないが、
桂の志緒の、あるいは拵のりかの、他の誰でもない個性が
生き生きと描写され、それぞれが心に響く。

もちろん、青い志緒くんならではのエロスには萌える!
そして書き下ろしの『Now is the Future』では、涙してしまった。


本編のタイトルは北原白秋だったが、
こちらは佐藤春夫か……、
(「さんま苦いかしょっぱいか」のフレーズばかりが有名だが
白秋の短歌同様、こちらも実はかなり暗い詩なのだが……)
しかも志緒ちゃんが成人までが「青」い林檎で、
その後が熟した「赤」というのが、なんともニクい。

竹美家先生が描かれた、各同人誌の美しい表紙も掲載され、
それぞれについての両先生方のコメントも書かれている。

お次は、その成熟の「赤」……です。




<追記/収録作品一覧>
CDブックレット:bitter,bitter,sweet
同人誌:Why don’t you
   (含Spider web on the ground ay duskmoon) 
    キスなんて大きらい 
    感情教育 
    はるのうた(含オンリー・ペーパー・ミュージック) 
    ナイトクルージング 
出版社HP掲載:オンユアマーク
イベント配布小冊子:美しい世界
筆者ブログ掲載:かんむりひめ きんぎんすなご

18

桂と志緒はやはり甘酸っぱくて、切ない

一穂ミチさんのデビュー作『雪よ林檎の香のごとく』のペーパーやら同人誌やらを二冊にまとめて下さった内の一冊。
どちらにも書き下ろし付きです。
こちらの『青』の方が時間軸的には先になります。
わたしは『赤』から読んでしまいましたが(苦笑
高校生の志緒と教師の桂の本編を補完したような作品なので、やはりファン向けと言えます。

個人的には攻め視点好きですし、桂がどんだけ志緒を想っているのか読みたいので、桂視点の入った『感情教育』がお気に入り。
やー、志緒の真っ直ぐさや十代の潔癖さが眩しくてキラキラしていて恥ずかしいー(汗
女子が男子へ行う沿線で噂の痴漢に志緒が当事者となり、一人で女子校へ乗り込むという…うんうん本当やりそうだ(苦笑
そこへ駆けつけてくるのがもう担任ではない桂で…というお話なのですが、これは同人誌の中では長めで読み応えがあるんですよね。
桂が全面的に志緒を信じている様もすごくジワッときますし、寸止めなエロもかえってすんごいエロスでこれまた恥ずかしいー。
読み返すたびに桂のこういう、実は余裕なんてないのに表情に出さないところがもう好きで!
志緒を守る、自分たちの関係を守るための武装なんだろうな。

書き下ろしは人間の死について触れたお話。
これまた志緒の男前ぶりが発揮されておりまして(徳島からトンボ帰りって、あなた)、大人はどっち?的な部分もあるのですが、でもやはりこの勢いは大人になると失くすものなのだろうしね。
ただ、志緒はもしかしたら失くさないのかもしれないですね。
志緒の内面も桂は認めて守ってくれてるから。

こちらの『青』、口絵カラーがすごく好きです。
最初は志緒の一方通行だった恋だけど、桂が本当に志緒を愛してる雰囲気がにじみ出ていてジワジワしみます。

6

いや、ホント甘酸っぱいんですわ

【雪よ林檎の香のごとく】の薄い本やらブログSSやらを纏めた作品です。
デビュー作で凄い新人さんが出てきた!
と大興奮して、新刊が出るたびに買い続けてきた一穂作品、実はある時期から相性の悪さを感じて買うのをやめてしまったのですが、このデビュー作は未だに売らずに手元に残してます。
思い入れが強すぎて、【雪よ林檎の香のごとく】の電子書籍まで購入する始末。
このたび、総集編ともいえる作品が出たとのことで、少し不安ではありましたが2冊同時に購入。

まず表紙が美しい。【青】のこちらは、まんま青林檎の色合い。
志緒が成人する前までのエピソードです。
本編の行間をみずみずしく書かれたものや、志緒の卒業、そして大学入学。
大学生になって、自由にはなったけれども、もう二度と戻りはしない時間。
変わりゆく景色の中で、志緒と桂が些細なことで幸せを感じ、そして一緒にいることの尊さを噛みしめる。
志緒の成長を確かに感じることができたり、二人と同じように読者にも流れている時間を意識させたり……。

デビュー作時点で自分はもう桂側からものを見てしまう汚れた大人でしたが、今回纏まった形でこうして読んでみると、過ぎた時間に思いを巡らせ、なんだか少し恥ずかしいような甘酸っぱい気持ちになりました。
書き下ろしは桂の同級生の死をきっかけに、自分と志緒の【死】について意識するネタになってます。

とても充実した内容でした。

5

薄雲

ココナッツ 様

ココナッツ様、こんばんは。コメントを有り難うございます(^-^)
そうなんですよね、志緒の成長とそれを見守りながらも、内心ではハラハラしてたりぐるぐるしてたりする桂。そういった二人の関係性がとても素敵で大好きな作品です。
ココナッツ様も一穂作品とあまり合わなくなったそうで……多分その理由は近いものがあるかもしれません(笑)
それでも、何度でも繰り返し読みたいと思える作品を産んでくださって、感謝感謝ですね。
特典商法も、辟易しつつも、ついつい買っちゃったりしますよね(TAT)

ココナッツ

薄雲さま

薄雲さま、こんばんは。
わたしも読んだ時にはもう大人(どころか…)で志緒と比べれば断然桂との方が歳が近かったせいか、あの大人の臆病さとかすごいわかるなあと思いましたし、志緒の怖いもの無しな潔癖なところが懐かしかったです。
時系列で並べられると志緒が徐々に桂へ寄り添えるような大人になっていって、こうやってまとめて読めるというのはありがたいですね。
わたしもある時から一穂さんと合わなくなって買うには買うけれど…となっていましたが、林檎は今でも読み返したくなる作品です。
薄雲さまは電子買い直しですか、わたしもSSポスカ目当てにもう一冊買いましたよ(^^;;

甘くて酸っぱい

読み終わった後に、あー面白かったと、すっーと抜けてくものと、いつまでも余韻が残るものがあります。こちらは後者でいつまでも甘いきゅんきゅんが残る。
続篇短篇集なので、いろんなエピソードがあり、より2人の世界に浸れます!大好きです。
中でも、ある事件をきっかけに志緒が少し大人になっていく『感情教育』が一番好きです。一番エロい。
私は、大人でも子供でもない微妙な時期にとても萌えます。成人後のエピソードが詰まった『林檎甘いか酸っぱいか 赤』よりこちらの方が何度も読んで楽しませてもらいました。

4

答えは、きっと「甘い」

本編を読み返したら、こちらも久しぶりに読みたくなりました。

同人誌とショートストーリーで構成された本作品。まるで、一つの作品のように、二人の恋の軌跡が鮮やかに描かれています。

北海道で気持ちを確かめ合った桂と志緒の「bitter,bitter,sweet」、
キスしろよ、ばかやろう、と志緒が焦れる「Why don't you」、
志緒のグラつく前歯を桂がディープキスで奪う「キスなんて大きらい」、
二人の初めての情欲滲む触れ合い「感情教育」、
致すとき桂が灯りを消さず、志緒を泣かせてしまう「ナイトクルージング」、
おしまいの日のこと、志緒と一緒に生きることに桂が想いを巡らせる「Now is the future」、
などなど。

余裕あるように見えた桂が、実は、性欲で触れたりしたら志緒に嫌われるんじゃないか、と不安に思っていたり。

桂の部屋で読んだ文学作品がきっかけで、志緒が桂への欲望に目覚めたり。(志緒の『ひどい目に遭わせて』は、破壊力がすごいです。)

本編では、栫のことがきっかけで勢いで結ばれた印象だったのですが、二人にはこんな気持ちの変化があったんだ、と深く納得します。

特に「Now is the future」は、桂の志緒への想いが溢れていて、切なくなりました。
きっと秘密なままの二人の恋。死に別れる日を思う痛みは志緒と今生きている証し、という桂のモノローグは、桂の覚悟であり、支えなのかもしれない、と感じました。

タイトル「林檎甘いか酸っぱいか」の答えは、甘い、みたいですね。
大胆で男らしいのに性的に未熟な志緒は、桂が抱くと、とても甘い。そのアンバランスさも、桂にとっては、たまらない魅力なのでしょうね。

2

この作品が収納されている本棚

マンスリーレビューランキング(小説)一覧を見る>>

PAGE TOP