この愛、鬼畜で野獣――。

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表題作深海のヴィーナス

都,トマの世話係 / 樹,パトロン
トマ,両腕のない用心棒 / 都

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

恋人・トマの腕を斬り落とした瞬間から、都の中で目覚めた淫らで危険な野獣の心。そんな2人に異常なほど執着する樹…。
お前とのセックスは常に死と隣り合わせ――生死を賭けた極限のエクスタシー。狂気的なアウトローラブの開幕!!殺意的な愛と性がここにある!!

全員サービスのポスカ&描き下ろしペーパープレゼントあり!
(出版社より)

作品情報

作品名
深海のヴィーナス
著者
定広美香 
媒体
漫画(コミック)
出版社
マガジン・マガジン
レーベル
ジュネットコミックス ピアスシリーズ
シリーズ
ヴィーナスに接吻
発売日
ISBN
9784864520003
3.9

(32)

(15)

萌々

(7)

(5)

中立

(2)

趣味じゃない

(3)

レビュー数
6
得点
120
評価数
32
平均
3.9 / 5
神率
46.9%

レビュー投稿数6

こんなBLがあるとは。一読の価値あり。

あまあまのせつないBLが好みの私は、この続巻でさらに度肝を抜かれました。

『ヴィーナスに接吻』でも、男らしさ満点のまぐわいを見せて頂いたのに、こちらではさらにすごかった。
まさか、こんなに受が似合わないこの人が犯されるなんて、と驚きますが、そのやられっぷりは見事にその人らしく、最後まで男のままなのです。

私が読んでいないだけのでしょうが、強姦とはいえ、これだけ「女」にならない受はあまり見たことがありません。

この巻では、私は樹に感情移入してしまいました。
哀れな彼を何とかしてあげて欲しいと思いますが、心を鬼にしてこれで終わらせたのが、定広先生のプロ魂なのでしょうね。

6

yoshiaki

むぼちさま

こんにちは。
むぼちさんは樹に感情移入されたとのこと、樹は定広先生もお気に入りだったみたいですね。(下のアドレスにこの作品に関しての先生への質問コーナーがあります。)
ttp://www.june-net.com/cominfo1950.html#sp

私も樹が主人公のスピンアウト読みたかったです。

期待以上に痛快な結末!

『ヴィーナスに接吻』の続編です。

前作のあとがきで「キャラクターの思い通りになんかさせてたまるか!(=死なさせない)」と仰られていたので、二人の倒錯した執着愛の行き着く先は一体どこなのかとドキドキハラハラしながら読みました。

「よくぞこの結末にしてくださいました!」という感じです。

本作では色々なことがひとつずつ明らかになっていきます。
トマが樹に望んだ“本当に欲しい物”
樹が二人と一緒にいる本当の目的
トマのトラウマの正体
都の破壊願望の奥に潜む深層心理
トマと都の本当の関係性
ひとつずつ明らかになっていくことで、前作では異常な関係性だけが突出していたこのストーリーの根っこにあるものが段々と見えてきます。

都によって、永く彷徨っていた深海(暗闇)から救い上げられたトマに戻った生命力の眩しいこと!
これまでの死ぬ怖さを持たないが故の歪んだ強さとは違う、トマの本当の強さ、とでも言えばいいのでしょうか…これこそが本来の意味での「タフ」ということですよね。
彼が選んだ二人の未来も文句なしの痛快さでした。
都の深層心理は意外だった…
でもだからこそ綺麗にハマったわけですが。

で、ですね、
このシリーズの一番の見どころだと自分的に思っているのが、何と言ってもやはりキスシーン。
タイトルに「接吻」と付いているだけあって前作のキスシーンも非常に印象的だったのですが、本作で描かれる都とトマのキスシーンがこれまた堪らなく良いのです。
都はトマに舌を噛み千切られるか否か、トマは都に頭を撃ち抜かれるか否か…自分の生死をお互いに委ねて交わされるキス。エロスの極みです。死ぬかもしれないのに…
この二人の間に、殺されるかもと怯えて好きな相手とのキスを躊躇ってしまった樹が入り込む隙などはなから到底なかったってことです。
可哀想だけどこればっかりは仕方ない……

「世界がお前と俺だけだったらいいのに…殺しちゃおうぜ俺達以外みぃんな」
トマのこのセリフ、カッコよすぎでしょ。

一般的なBLとしては受け入れられ難いのでしょうが、個人的には一作品として大いに一読の価値ありだと思います!
阿仁谷ユイジさんの『刺青の男』を読んだ時以来の興奮でした。
出会えて良かった〜!
エロさえちゃんと入ってりゃ何でもいいぜ!なピアスは、マニアックな嗜好を満たしてくださる有り難いレーベルです。笑

2

悪人ではない樹にも、満たされる日が来ますように

 最後まで勢いを失わずに描かれていて、大満足でした。愛しているという言葉を、今まで言ってこなかった都。彼は愛があるのかないのかなんて関係なく、トマが自分のものだという事実だけあればいいという。けれど、樹の盗撮していた動画には、トマが意識を失った後に、愛していると囁く都がしっかり映っていて。感情の昂ぶった時にだけ出る都の本音に、人間らしく等身大なところもあるんだな、と改めて魅力的に感じました。

 物語が進むにつれて、樹の存在感は増していきます。今まで単なる2人の飼い主だった彼だけど、面白がって飼っていたわけではなく、そこにはちゃんと理由があったのです。自分が都に愛でられるヴィーナスになりたかったという彼の想い。好かれたい、抱いて欲しいなんていう感情を飛び越えて、彼は自分もトマのように都に腕を斬り落とされたかったという。2人のあまりにぴったりと嵌まった魂の形を間近で散々見せつけられて、そこに羨望を抱いた彼の気持ちはよく分かります。両腕がない不自由さを差し引いても、1人の男に一途に激しく重い愛情を注がれる甘美さは、補って余りある幸せでしょうから。

 それでも最後には、どんなに時間をかけても自分がヴィーナスになれる可能性は皆無だと気付いて、2人を手放した樹。自らの生死の手綱すら、一切躊躇せずに相手に明け渡してしまえる都とトマの間には、もはや1ミリたりとも何かが入り込む隙間なんてないのです。完全な自由を手に入れ、心中もいいけれど、共に生きることはもっといいと思えた2人が、これからどんな人生を歩むのか、想像が膨らみますね。

1

2冊じゃ足りない!!

定宏さんの長編は色んなものが詰まり過ぎてあれもこれもと欲張りなビュッフェディナーみたいです(涙)
もしこの2巻で完結だとしたら、それはそれはひどい欲求不満に陥ります。
あとがきに作者さんが自らのオナニー作品だと書かれていますが、作者さんの頭の中にある設定と、この作品だけでは語りきれなかった部分が絶対あるということは、明白であり、実に悶々とした作品になってしまいました。
こんな奥深い、そして罪深い人物達が主人公なんだから2冊で収まり切るはずがない!
ただ一応のエンドは見せて、それなりにまとまってはいるので作品としての形はできあがっています(もちろんですが)
しかしこのエンドもすごくすごく頭をかきむしりたくなるような、不安と希望がぐちゃぐちゃに入り混じった必ずしも安らかなものではないような・・・

自分にはトマという人間が最後までよくわかりませんでした。
彼は都より、樹よりももっともっと奥深いはず。
ただ単にMという分類では区別しきれない、死と隣り合わせる残虐さや血によって激しく興奮する、自分を壊したくて仕方ない、ある意味都と同じ性癖であるのだろうとは思うのですが。
樹はそんな二人を壊して、支配して、自分のモノにしたかったのに、心まですべてを手に入れることが出来なかった。
今回トマに対して攻めである都が、対樹で受けをして、相手違いのリバになっているので、苦手の方要注意です。(っていうか、定宏作品といえばリバv)

同人で補てんするんだろうか?
それとも短編で過去編なんか描いてくれないだろうか。
また他の作品みたいに、全てが出来上がった時、もう一度全部読み返したら、彼らの何もかもがみえてくるようなきがしてしかたないのです。

つくづく、定宏作品、、、好きですっ!!
命張っても臭くないのがいい。ガチンコの極みと醍醐味です!!

9

一人では生きられない幸福

◆あらすじ◆

「ヴィーナスに接吻」の後編。
相変わらず金満家の樹(いつき)の用心棒を続けている、都(みやこ)とトマ。
都の目を盗んでトマと関係を持ち、都とトマの寝室を盗撮する樹…彼は都のトマを壊したい衝動に興味があると言うのですが、その「興味」の意外な正体が、徐々に見えてきます。
或る日、トマを襲った暴力団組員を都が殺してしまったことで、三人は追われる身となり、樹の別荘に身を隠すことに。
樹の別荘を取り囲む樹海が、トマの過去――一家心中で入水した夜明け前の海の記憶を、鮮やかに呼び覚まします。
トマを襲う過去のトラウマ。
樹の別荘で、三人の関係に大きな転機が訪れます。
相手を壊していくSとMとの性愛から、共に生きるパートナーへと変わっていく都とトマの関係と、壊されたい男・樹の孤独を描いた後編です。(一瞬リバあり)

◆レビュー◆

う~ん。後編に入って少し焦点がぼやけてしまった印象が(汗)
前編では狂言回し役に徹していた樹が積極的に参戦してくる上、エンタメ要素もふんだんに盛り込まれているため、キャパオーバーは明らか。
終盤かなりはしょってしまった感じですね。

勿論、樹は脇に押しやっておくには惜しい魅力的なキャラなんです。ルックスといい、傲慢でスカした態度といい…そんな彼が、都の落とした眼鏡をかけ、独り眠るシーンにハッとさせられたり。
樹が執着しているのは、トマじゃなかったんですね。トマとのセックスで、樹は間接的に「彼」を感じていたのかも…
でも、勿論二人の間に入り込む隙などないし、樹のやり方では、人の心は手に入れられない。
彼の生き方はトマとの対比になっていて、彼を通じてトマの生き方がより鮮明に見えてくるわけですが…樹に深入りするにはスペースが足りてない!足りてないです。

とりあえずツッコミどころは満載。ただ、もう文句を垂れる気が失せるくらいに、トマの表情がイイ!
母親を「ママ」と呼ぶ時の少年のような幼なさや、樹に「俺の物を狙ってる奴はすぐわかる」と敵愾心を剥き出しにしてみせた時のゾクゾクするようなメス顔や、生き延びられるのかさえあやふやなラストシーンで、海辺にはしゃぐキラキラした笑顔や…
一瞬一瞬にハッとするような煌きを見せてくれるトマは、定広作品の中で一番好きなキャラです。

腕を切られる前は都に対して素直じゃなかったトマですが、腕を失ってからのトマは、都に対して、
「お前なしには生きられない」
という言葉を口にするようになります。
自分を支えてくれる誰かがいなければ生きられない存在になること(或いはその支える側になること)は、必ずしも不幸ではなく、むしろ一つの幸福の形ですらある…とても逆説的ですが、これが作者の描こうとした究極の愛=介護愛ということなのでしょう。
SとMとの束縛の果てに介護愛があるのだとすれば、介護愛とは、昇華されたSM愛?
全てを持っているクセに愛だけは手に入れられない樹が、都に両腕を差し出したいと願ったのも、この作品の中で読むとごく自然なことにさえ思えます。

しかし定広作品って、やっぱり容赦なしですね。
結局都とトマは最後まで樹に心を開かず、樹は何一つ報われることがないまま孤独に取り残されます。
鼻もちならない奴にしろ、樹もかなり二人のために動いてくれてたんですが…(苦笑)
ラストシーンのトマの言葉も、いかにも定広作品!(まあこういうトコが癖になるんですけどもね)

「世界がお前と俺だけだったらいいのに…殺しちゃおうぜ 俺達以外みぃんな」

5

むぼち

yoshiakiさんに教えていただいた、定広先生のインタビューを読みました。
先生も樹に思い入れがおありなのですね。
一緒だあ、と思いきや、私にはきつ過ぎた、義手の場面と台詞が一番のお気に入りとは。

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