BLコミック&BL小説、業界最大級の品揃え!
丸木文華 ホワイトハート初登場!
2011年の作品、
随分今とタッチが違う、笠井あゆみ先生の挿絵。
冒頭、予備校講師、嘉藤雄介が攻役なのかと思ってしまったけど、
読み進むにつれて、受験生の水谷宏司は、雄介がかなわないほどの知能犯だと分かってくる。
雄介は、凡庸な自分の才能に引け目を抱いている。
水谷は、有名な作家が認める「天才の卵」、水谷の才能に嫉妬する雄介。
最初は、雄介からやっかみ半分の誘いをかけてくる。
蜘蛛の巣にかかった蝶のような雄介は、囚われて逃げ出せなくなる。
「世界」章は水谷視点。
水谷は、特殊な英才教育を受けたサイコパス。
完結部の「世界は こんなにも美しかったのだ」
・・・二人が幸せなら、それでいいです。
こういう泥っとしたドンデン返しは、丸木作品の醍醐味だと思う。
最近では小説現代でも掲載されていた丸木文華さん。「鬼子の夢」「アフェア」「義父」「ふたご」等、濃密な世界観で大好きです。
冷静に分析する凡才で美麗な主人公と、彼に一目惚れしたと言う才能ある年下の男の共依存ものです。
少し「mother」に近いような、真相が最後にあることで読中モヤモヤ感があり、何だかのめり込んで読めませんでした。女性二人のお話や官僚など、風呂敷広げ過ぎた感も。
とは言え主人公雄介の、才能がない故の劣等感を、才能に満ち溢れた水谷に欲されることで補うという心情はなかなか面白いです。
そんな劣等感や孤独(と秘密)を感じることが、人にここまで利用され依存させるのかと…
受けが大好きなワンコ攻めは「言いなり」に近いですね。
雄介が自分が凡才だとどんどん気づき諦め、周りを気にするところや、それでも将来を深く考え込まないところ、とっても耳が痛い。
2011年発行と少し前の作品だからか、最近余り見かけないような「女にされる」という表現が好きでした。数日間軟禁され抱き合った後、音信不通になったのに毎日夢に出て来て夢精してしまうというのが…
あとは、見つけたスケッチブックに自分の顔がいくつも描いてあるという展開が好き過ぎるので、嬉しかった…!
腹黒・執着・年下と攻めの属性に惹かれて読んだ。攻めの腹黒さは陰湿方向に偏っていて、黒いというか暗いというかじめっとしてる。丸木作品の腹黒攻めの特徴なんだろうか。
主人公の受けは芸術一家の落ちこぼれで劣等感バリバリというベタ設定。中盤の変なタイミングで、記憶が飛ぶ癖や暴れる設定が明かされたが、それそのものが伏線になっているわけでもなかった。話的に使えそうな設定なのに使われず、逆に驚いた。
攻めは人をめちゃくちゃ惹きつけるらしいが、言動からその片鱗が見えることもなく、設定を説明されているだけのよう。受けだけが気付かないとはいえ、仕込まれた話術とやらを聞いてみたかった。
ストーリーは受けがとにかくずるずる引きずられてる。流されてるというよりひきずられてる感じ。毎回自分に言い訳をしながらころっと攻めに従っていて、拒絶するシーンは回想で書かれる。元から視点主の常識ラインが微妙なので、ああそれはダメなんだ?と外側から見る視点で読むことに。心理描写は頭と心がバラバラになっているような不自然さだった。
上に書いた受けの設定もそうだが、伏線かと思っていたいくつかが、特に回収されることもなく終わってしまった。雰囲気がミステリっぽいのでそう思ってしまったが、読み方が間違っていたのかもしれない。全ては恋愛感情から来る脳のバグとかで片付けるところなのかな。
流れとしてはなだらかに降下し、起承転結も何もなく綺麗に堕ちていったような印象。
ラストで受けは攻めの手の中に喜んで堕ちていく。まともな思考力を失くし、数多の手駒と同列もしくはそれ以下になったようにしか見えなくても、攻め視点では恍惚のハピエンらしい。
本編後に攻め視点で同情を誘う独白がなされているが、完全に傀儡化してしまった受けを見せられ、もやもやが膨れ上がる逆効果。捨てられないか怯えた目で見る従順な受けに満足する攻め。この構図は好きになれない。
本編だけなら先々の不安は残りつつまだ良かったが、完全に人としてダメになった受けを見せられる本編後のSSがもやもや度を爆上げしてくる。
読後感はめちゃくちゃ悪いしツボにも嵌まらないし好きでもないのに、他の丸木作品を読んでみたくなる変な中毒性があった。
丸木文華先生は作家買いしている一人です。
今回は、学生×美術講師バイトの先生。
攻めの美術の才能に嫉妬する受け嘉藤。
受けに認められたくて才能を伸ばす攻め水谷。
誰からも好かれる攻め、
受けだけが靡かないというこの図、
めちゃくちゃ大好きなシチュエーションです。
攻めに数々の試練を与えて、出来たら○○な。と、自分の事を一途に思ってくれる攻めを弄びますが結果、攻めがキレて暴走。
しかし、ショックで少し距離を置いたことによって、受けは自分が攻めのことを好きだと自覚します。
全体の攻め執着度で言うと「重め」。
かといって行き過ぎたな行為をしているわけではなく、ヤンデレかというと違うような気がします。
また、タイトルの「罪」については身内が関係してきます。
話の9割が受け視点、最後の数ページだけ攻め視点です。
でもその最後の数ページが、答え合わせのようで最高でした。
こういうところが、丸木文華先生っぽいのかなと思いました。
芸術性についてコンプレックスとトラウマを抱えている受け。
そんな受けの前に、圧倒的な才能を持つ攻めが現れる、という物語。
羨望と嫉妬心と仄暗い優越感というキーワードが好きなので手に取りましたが、その他にもミステリ要素があっておもしろかったです。
受けのトラウマの背後にある受けの秘密や、字体も違っている思わせ気なモノローグ、そして臭わされる攻めの秘密……そんな謎がいい刺激になって読み進められたと思います。
ただまぁ……難点を挙げれば、そういうミステリ要素によっておもしろく読めたものの、惹き込まれるというほどではなかったかな、と。
やっぱりこの手の話は、あらすじ読んだ段階からラストが見えていて、それに向かって段階が踏まれていくのを追うという形から逃れられない。
一度読み終わってしまうと謎が解決したこととも相俟って満足してしまって、二度でも三度でも読みたいとは思えないのが残念かな……と思いました。