犬としての幸福があればいい、『ご褒美』で満足だよ――

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表題作言いなり

本川剛,同じサークルの冴えない同級生
坂井圭一,テニスサークル所属の大学1年生

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

初対面のときから妙に懐いてきた男・剛に大学生の圭一はうんざりしていた。
野暮ったい外見で場の空気が読めない剛は、圭一に邪険にされてもにこにこ笑っているので、
所属するテニスサークルの仲間にまるで圭一の犬だと陰で揶揄されるほどだ。
ある飲み会で、剛は先輩に媚薬を盛られ、公開自慰を強要される。
周囲が囃したてる中、剛の熱い視線はただまっすぐに圭一に向けられ……!?

作品情報

作品名
言いなり
著者
丸木文華 
イラスト
minato.Bob 
媒体
小説
出版社
フロンティアワークス
レーベル
ダリア文庫
発売日
ISBN
9784861348419
4.3

(145)

(82)

萌々

(45)

(9)

中立

(4)

趣味じゃない

(5)

レビュー数
13
得点
621
評価数
145
平均
4.3 / 5
神率
56.6%

レビュー投稿数13

“言いなり”なのは…?

※本を読み終わっていない人は要注意です。ストーリーの根幹部分に触れての感想なのでネタバレ嫌いな場合はお避けください。



…なんかもうどんでん返しでした。
下克上のそのまた下克上で、人間やっぱり本質って変わんないよね!的な。

一見チャラくて俺様な圭一と、もっさくてなんでも言うことを聞く剛。
でも、いじめられっ子だった圭一はやっぱりどこか脆いところを持っていて、“遊んでいる”ように見えるよう頑張って…自分に鎧を着せていつかそれが見せかけではなく本当の鎧になるよう努力しているんですよね。
そんな圭一から見て、なんでも言うことを聞くけど結構図太い神経の持ち主。
サークルメンバーの中にはアイツいじめられっ子だったんじゃない?的なことを言っている人間もいるけど、実際にそれを体験した圭一は違和感を覚えるんですよね。

で、中学生の頃の嫌な記憶も時折挟みながらなので…「もしかしてー?」と思っていたら案の定な展開。

少しずつ囲い込んでいく剛の策士ぶり、そしてその根幹にある執着とか病み具合とかがもうすっごいドロッとしていて…。
もうねー狂気すら感じますよ。
過去の剛と大学で再会した時の剛、全然違いますもの。
ここまで変えて近づかれたら気づくの無理じゃない?!状態。
でもうっかり再会時点で気付かれてしまったら全力で拝み倒す予定だったらしいのですが、想像つかないわー…。
だってホントなんだかなんだ“犬”と思わせておきながら、嗜虐性とかが段々出てきて「あ、やっぱりいじめっ子だなー…」って感じますから。
特に圭一が“気付いたことに気付いてから”の言動がねー…。
あと最終的には圭一には「自分だけ」がいればいい的思考なんですよね。
だからどんどん大学内で圭一が接する相手は減らされていき、圭一も終いにはそれが自分の“幸せ”だと感じている。
なんともいえない読了感でした。

それにしても最初の方と最後の方の対称性が面白い。
最初は剛が圭一に呼ばれたらホイホイ走っていく感じだった。
終盤は逆に圭一が剛のもとに走っていく。
「言いなり」がいれかわってしまってるんですよね…。

そうそうそれから剛が圭一のことを「格好良い」「ケイ君みたいになりたい」って言っていた意味が最後のほうで語られて、あ!そういうことだったのか…って思いました。
明らかに方向性が違うだろ!ってツッコミを圭一を含めた各方面から入れられている外面ではなく「自分自身を変えようと思って努力して、変えてみせた」その姿を格好良いって評していたんですね。
なるほど~でした。

とにかくドロドロの執着ヤンデレっぷり。
サークル仲間の敦司だけが癒やし的存在でした!

17

ご褒美!

久しぶりに小説読みましたが…やっぱり丸木文華作品の雰囲気好きだなあ。
今回のお話はある意味王道といいますか、話の展開が簡単に読めちゃうんですが、いじめっ子といじめられっ子とか下剋上とかが大好きなので私はすごく楽しめました。(あと性欲が暴走してる攻めも大好き)
特に、攻めが受けの「犬」だとか言われてるのに攻めはそれを嬉々として受け入れて、徐々にその関係が逆転していくのを見てるとすごく萌えます…!
そして何よりケイ君が可愛い~~!剛も髪切って身だしなみ整えてからすごくかっこよくなったし、挿し絵でももっと見たかった…

8

人間の核は変わらない

適度に遊んでオシャレもしている圭一と
犬のように圭一に付きまとい、言う事を聞くモサい剛。

変わりたい。
変わろうとしても
本質は変わらない。

おもしろかった……!
いじめっ子といじめられっ子も
丸木先生の作品も好きな私には
ど真ん中なお話でした。
仄暗さも良い。

攻めの剛の執着度合いと、互いの仮面を剥がしていく過程にゾクゾクしました。
計画性を持っているところもゾッとしました。
圭一は、罠に嵌ってしまったけど
最終的には2人で幸せなのだから
それで良かったのだと思います。

あと、最後の制服プレイはエロい。
もっとやれ!笑

6

執着愛

異常なる執着…好きな設定でした。すごく良かったです!

当初から異常に圭一に執着し、圭一の言いなりになっている剛。

そして形勢逆転していきます。

剛がすべて告白したときに、常軌を逸した執着っぷりがわかりました。それ自体異常ではありますが、そもそも周囲構わず振舞っていたように見えたのも、全て用意周到にやっていたこととわかり、犬のように感覚的でおかしな人間ではなく、計画的で頭の良い人間なんだなと思えました。

圭一がだんだんと堕ちていく様が好きです。
剛の要望通り黒髪にして、お互い昔に戻ったような感覚を自覚しながらプレイをするのが良かったです。やっぱり本質は変わらないのですね。そして学ランとか…(電子版で読みましたが、最後に学ラン姿の圭一のイラストがありました~)

圭一は元々被虐性質ということで、このまま居心地の良いところに収まっていくのだと思います。それがはた目から見ればおかしくても、彼が選んだことでもあり、幸せなら良いかと思います。
その後の生活は「言いなり」通り、いくところまで行ってしまうんでしょうが、ちょっとでも続編が見れたら幸いです!

6

よく出来た映画のような…


執着ものを書く丸木文華先生大好きです!

体格大、執着攻め×元いじめられっ子のお話。

いじめられた経験のある受けの圭一は、大学デビューで根は真面目ですが頑張って女たらしで軽い大学生を偽ります。

攻めの剛は、何故か最初からめちゃくちゃ受けに絶対服従のワンコ。
野暮ったくて大きくて熊のようだけれど受けの命令は何でも聞く。あと皆がビビるほどの巨根。
対する受けは平均とはいえ美人の部類。
この二人の体格差も見どころの一つです。

色々な犬(もやはワンコではない)を読んできましたが、作家さんごとの特色が出ているなと最近、気づきました。

また、丸木先生は伏線を置いたり物語にスパイスを加えるのが本当に上手い。
ただの執着攻めで終わるわけがないんです。
最後にはハッとさせられる。
これをBLで読めるの幸せだなぁと思いました。

内容に触れてしまうようなレビューを書いてしまってなんですが…、是非ネタバレなしで読んでほしい一冊です。

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