あんな姿を見た日から、頭の中があいつに支配されている

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表題作クローズ・ゲーム

母子家庭の進学校高校生 槙野
中学からの友人で同級生 丹羽

同時収録作品サー・オースティンの個人的な思い出

(攻め受け不明)サー・アーサー・オースティン
(攻め受け不明)不治の病を患う少年

同時収録作品Watch your boy

(攻め受け未定)片山(2浪の浪人生)
(攻め受け未定)志野原(大学生)

その他の収録作品

  • ドミノ
  • エンド・プレイ
  • 中学の頃の話
  • クローズ・ゲーム後日談
  • Watch your boyおまけ(その後)

あらすじ

有名私立高校に進学し、成績優秀、美人の彼女持ちで誰もが羨む存在の槇野。
槇野の幼なじみで同じ学校に入学したものの派手な見た目のせいで浮いた存在の丹羽。
仲の良い友達だった2人の関係は、槇野が丹羽の自慰を見てしまったことで一変する。
丹羽のことが頭から離れず、彼女を避けるようになった槇野に、お前の彼女と浮気をしたと丹羽が懺悔してくる。泣きながら謝る丹羽を見た槇野は自分を抑えきれず、押し倒してしまい――!?

(出版社より)

作品情報

作品名
クローズ・ゲーム
著者
カシオ 
媒体
漫画(コミック)
出版社
エンターブレイン
レーベル
B's‐LOVEY COMICS
発売日
ISBN
9784047284715
3.7

(28)

(4)

萌々

(14)

(9)

中立

(0)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
8
得点
103
評価数
28
平均
3.7 / 5
神率
14.3%

レビュー投稿数8

容赦なくえぐってくる

「なりたい自分」と「本当の自分」。
時期はそれぞれ違えど、誰でもそのギャップに悩むときがあると思うのです。
そんな時期の焦燥感や自己嫌悪感、言葉では言い表せないような苛立ち、自己犠牲なんかがぎゅっと詰まった作品でした。

「ドミノ」「エンドゲーム」「クローズゲーム」
名門男子校に通い、中学から付き合っている美人の彼女もいる槇野。
表向きの彼は無敵で万能に見えた。
ちょっとしたきっかけで堰を切ったように崩れていく内面の葛藤が痛々しいほどに描き出されたモノローグや表情がぐいぐいこころに刺さってきます。
丹羽の方も「みんながしあわせであれば(自分なんて)」という子で、ネガティブな方に空気を読みすぎるせいでおそらく「俺なんかが話しかけたら迷惑かな」みたいな理由でクラスの友達ができないタイプ。
槙野の倒れたドミノを元に戻そうと空回って、間違って、こちらも痛々しい。
ラストは「本当の自分」を受け入れた槙野は清々しく、自分に気持ちを閉じていた蓋を取った丹羽は一歩前へ進めて、思春期って周りを巻き込みながら成長していくものだったなと懐かしく思いました。
描き下ろしもいい感じでございます。

「watch your boy」
高校時代、ずっと好きだったけどほとんど話したことがなかった相手の突然の来訪。
劣等感に歪んでしまったプライドを、自分を好きだと言ってくれた相手に会うことで立て直したかったのかな。俺様と下僕からの下剋上はあるのかないのか。

「サー・オースティンの個人的な思い出」
ちょっとファンタジー、BL色は少ないけれどこころに沁みます。
おすすめ。

1

認めたくない認めたい

表題
◾︎槇野(優秀)×丹羽(赤髪) 同級生
これはある種のNTRってやつでしょうか。
誰が誰を寝取ったことになるかは、微妙ですが。みんながみんな浮気の当事者

槇野の上げが十分でないまま下げ(貧乏 母子家庭)設定に流れてしまったので、反動があまりなく衝撃とか展開の面白さを味わえなかった感じ。
槇野が優秀な私学を転校するのも、決断を今するならもっと早くその時はきていた気がするし、なんとなく唐突な気がした。

同時収録の「サー・オースティンの個人的な思い出」、短さとそのオリジナリティーで好きな作品です。

1

自分を肯定出来るのは自分だけ。自分を許せるのも自分自身だけ。

表題作が後日談含め、5つのサブタイトル化した連作になっていて。
自身の性癖に気付き、悩み、葛藤する槙野視点と、そんな槙野に複雑な想いを抱えながら、
それでも惹かれていく丹羽視点を交互に描いていきながら、時系列を遡ったり、周囲の人間視点を入れながら、とにかく一つの決着へと導いて行く。
どこかで何かを掛け違えていたら…?違う結末をいくつも考えられていきそうな。
ギリギリの均衡を保ちながら。息が詰まりそうな緊張感を読み手側に強いる、そんな空気感を孕む物語。
巻頭の「ドミノ」というタイトルがニクい。
そう、あの一つを倒したら、パタパタと全てが倒れて行く、あの「ドミノ」。
『気付きたくなかった…。』
簡単に入学出来ない進学校に進み、優秀な成績を修め、美人の彼女がいる。
誰もが羨望の眼差しを向けるであろう、背が高くイケメンの槙野。
ある日、槙野は 恋人に勃たない事に気付いてしまう。
自分が思わず欲情するのは、幼馴染の丹羽にだけ。丹羽の細い身体。感じている顔。泣き顔。
我にかえりたいと願いながら、こんなのは自分じゃないと踠きながら、それでも求めてしまう。
丹羽を押し倒しながら、「ドミノ」の様に 自分の脆いアイデンティティが崩れ去っていく不安を感じている槙野。
それから、「エンド・プレイ」「クローズ・ゲーム」と続き、槙野は自身の性癖を受け止め、
強迫観念ともいえる、虚勢を張った生き方を捨て去り、親に負担をかけていた進学校を辞め、定時制に転校し、バイトを始める。自分を受け入れてから、そうしてやっと。丹羽に告白するのだ。
後日談として。その後の温かい二人と、別れたけれど、優しい気持ちで遠くから二人を見つめる元カノの姿を見せているけども。
これから二人には、世間の目だとか。この社会の中で、もっと困難が待ち受けているかもしれないし。
何だか手放しで喜べない様な気持ちになってしまうのだ。
槙野の母は、シングルで水商売をしながら、進学校へ行かせていた。
お金がかかると文句を言ってはいたけども。せっかく入れた学校を辞めて、定時制へ転校することを喜んだりするのかな?とか。槙野は、母を説得したかもしれないけども。
成績優秀な筈の槙野を救済出来る様な、奨学金制度とか、学費免除制度とか、周りの大人は何も助けてくれなかったのかな、とか。
槙野が自身で選んだ道なのだから、それが一番いい事なのかもしれないけれど。
とても寂しい気持ちになりました。
最初の槙野の、苦しい気持ち。口の中が苦くなっていく様な気持ち。
それがずっと最後まで、引きずっていく様な。そんな読後感です。

同時収録は、BL未満なショートストーリー。「Watch your boy」
リア充チームに属していた筈の片山は、受験に失敗して引きこもりになったという。
そんな片山の落ち込んでる気持ちを軽くしたのは、志野原の何気ない心遣いだったのか。
自分に好意を寄せていると分かっている志野原に頼りたかったのか、何なのか。風のような片山の本心は分からないまま。予感だけを残して終わる。

サー・オースティンが、この後どんな人生を歩むのかはちょっと気になる 切ないショートストーリー、「サー・オースティンの個人的な思い出」
幼年学校の頃、身体が弱いからと特別視され、他の子供のように遊べなかった不治の病に侵されていたクラスメイトの少年。彼は死んだらお星様になるのだと言っていた。
彼は星になったのだろうか。小さな小さな物語。

0

帯のタイトルにつられて

「俺を軽蔑してくれ
誰か、俺を正気に戻してくれ」
というあおり文と、あらすじにひかれ
雰囲気の暗いお話が好きなので購入したんですが、
わたしの萌えポイントにはヒットせずに、ただ淡々と読んでいました。

攻めの彼女に電話でなじられるシーンなど切なくて良かったんですが、
その彼女があまりにも好い人で最終的にふたりでいるのを見て
ほほえましく見ているのがどうも納得できませんでした。
いい子で、ふたりの仲を認められるようになったということなんでしょうが
個人的にはもっと足掻いて、嫌な女になってほしかったです。
攻めの家のことも出てくるんですが、受けの学校があまり合わないと思っている様子も
もう少し丁寧に描いて貰えたら良かったと思います。
葛藤などもしているんですが、わたしの心にはいまいち響いて来なかったので
題材が良かっただけに、全体的に残念な印象が残りました。

4

壊れない世界

カシオ先生の作風はなんというかギリギリのラインというか危ういというか険しいというかなんとも表現しがたいのですが、でもその危なさがたまらないです。切り裂くような危なさ、精神的にクるといいますか、いやでもそこまで危険でもないし怖いということもないのですが…切なさとは異なる感覚で胸をギュッと潰されます。
今作もまた、それを表題作からずるずると感じました。

【ドミノ/クローズ・ゲーム/エンド・プレイ】
表紙からぷんぷん香るほの暗さに裏切りはありません。
危なげな匂いがする作品が好きな方には、賛否分かれそうな気もしますが往々にして受け入れられるお話だと思います。
はじめのうち、黒髪高身長男前の槙野はごくごく普通の高校生でした。冗談も言えるし彼女も居るし、他人と違うところといえば通っている高校が偏差値の高い名門校ということくらい。
ところが、友人であるやや赤毛で幼い顔立ちの丹羽の自慰行為を見てしまってからというもの、坂を転がり落ちるようになんだか違う方向へ走っていっちゃうんですよね。これが顕著で。もう、なかば狂気じみているというか。表現としての怖さはそこまでないのに、槙野の目に光が灯らなくなるというか…。
普通じゃないと思って歯止めをかけようにも、自我よりも欲が先行しちゃって更に深みにはまっていくふたりが淫らで苦しくて。
丹羽は、槙野とその彼女ゆりちゃんの仲を引き裂いたと自分を責めるのですが(でもそれに間違いはないんですよね、冷静に見れば悪いのは誰かってソコは丹羽なんです。もしこれで、槙野から丹羽に矢印が出ていなければ…っと思います)、もうその頃には槙野も戻れなくなっている。泥沼というか、ずぶずぶ。
槙野が高校を辞める、という決断を下したことには少し驚きました。
そもそもが彼の生活環境では難しいことだったのかもしれませんが、このことがなければ今も梨樟に居たはずだから…。たった一度、なにかを違えただけで、生まれたきっかけによって変わってしまうんだな、と痛みました。だからか、なおのこと最後髪の毛を切ったゆりちゃんが苦しげに笑っていることが辛くなります。
誰も傷つかないでいられることって、難しいと思うんです。

【watch your boy】
軽い子と大人しめの子の話。押せ押せで色々と押しつけられるような内容かと思いきやこれもまたややダークな一面を孕んでいます。カシオワールド。
一度好きだった気持ちって、うまく昇華されないかぎり冷めようもないんじゃないかな。後悔するほどに、記憶は強烈に残りますものね。
ふたりで同棲するなら広い部屋に越したらいいと思うよ!

【サー・オースティン】
カシオ先生の絵柄だと、外国の男の子がぴったりですね!
アーサーはなんにも間違えてないと思います。なにもしたくないわけじゃ、ないはずだから。そうして仲間外れにされるよりも、彼に出来ることならば共になにかを成し遂げれたはずだから。
これも少しの重さがありましたが、他2作よりも優しい気持ちになれる可愛いお話でした。

一歩踏み外せばまっさかさまに落ちてしまいそうなのに、それでもそのギリギリのところであるような、このギリギリに惹かれてしまう一冊でした。
この感じ、好きなんです。危ないぐらいがむしろいい…。

7

うまく感想をまとめられないんだけど…

母子家庭で裕福とは言えない家庭で育った槇野。
美人で性格も良い彼女を持ち、名門神学校に入って陽のあたる道を進む予定だったのに、中学から一緒に進学した丹羽との関係の中で大きく変わっていく。
世間的に良いものとされているものと、自分が望むものが違うと気づいた時に、どちらを優先するか決めることって、そうとうな勇気がいると思います。それもたかだか15、6歳だし。
きっぱり決めるまでの、槇野の揺れ動く様、後ろめたさや鬱々とした思いが痛々しかった。
そうはいっても、登場人物の気持ちの変化が濃厚に描かれているというわけではなく、その辺が読み手任せ。
こういったところがなのか、これまでのカシオさんの作品も、今ひとつ掴みどころのない感しでした。
でも今回はなかなかウエッティーで良かった。
なのに、いざレビューを書こうとすると思うように筆が進まずなんですよねえ。難しい。
このどんよりした気持ちをうまいこと表現できませぬ。

湿度高いし痛い内容だけど、最後はみんなに笑顔があったのが救いでした。
個人的にはそうじゃない終わり方でもよかったかもなあ、なんて思ったりもしますが、そうなると評価が下がるのかもしれませんね~。

13

理想と現実の狭間で…

「俺を軽蔑してくれ、誰か俺を正気に戻してくれ」
帯のこの叩き文句につられて購入。
これだけ読めば、どんな変態さん!?とワクワクしましたが、見事に裏切られました(笑)
己の価値観に悩む男子高校生のお話で御座います(汗)

初読み作家様でしたので、予備知識無しに読みましたが、こういう心理面に重点を置き、ジワジワ攻めてくる感じの作品、好きです♪

ー以下ネタバレ有り
誰もが羨む名門進学校に通い、美人で気立てのいい彼女。
―己の理想とする人生、
俺は絶対に日の当たる道を歩く―
育った家庭環境にコンプレックスがあり、「理想の人生」に固執する槇野(攻)

しかし丹羽(受)の存在が邪魔をする。
俺はおかしい、丹羽の細い体、泣いてる顔、彼の全てに欲情する。

―誰か俺を正気に戻してくれ―
丹羽の細い体を半ば無理矢理組みしきながら、
もう、手遅れなのを自覚した。

ありのままの自分を受け入れた時、全てが鮮やかに動き出す。
最後、憑き物が落ちたような槇野の笑顔に癒されました。

絵は、お世話にも好みとは言えません(スイマセン、スイマセン)が、
ストーリーで魅せる作家様だと思いました。
他の作品も是非読んでみたいです!

9

追い詰めて、追い詰められてわかること

サシオさんの初期の作品の頃、どうしてもかわいらしい独特な絵柄が気になって、今ひとつ流している感があったのですが、
ある雑誌の1昨年~昨年の連載を読んで、とてもストーリーに引き込まれる作家さんだと印象が変わりました。
それをはっきりと自覚させてくれたのは、前作の30歳DT小津くんの本。
そして今作の単行本の表紙でもわかるように、かわいらしいから脱却して、子供っぽさの抜けた主人公たちの絵柄が、この表紙はあじあさんの、某作品のカバーを少しほうふつとさせるのではありますが、
人物の表情や、全体の姿など、とてもとても絵柄も、ストーリーも強く印象に残る好き作家さんとして自分の中でグレードアップが確定しました♪

表題は【ドミノ】【エンド・プレイ】の3本から成り立っています。
中学を卒業して、唯一名門進学校へ入学した親友同士の槙野と丹羽。
高校からの入学は浮くからと、学校に馴染めない丹羽は、槙野にくっつき虫。
槙野には中学から付き合って1年になる彼女がいるのですが、いよいよ初体験を!
というとき、全く勃たない現実に打ちのめされます。
その帰り偶然、中学時代の仲間とつるんでいる丹羽と出会い、彼等はAV鑑賞会を開くところで牧野も合流します。
牧野には彼女がいるんだから見ちゃダメ!と丹羽に追い出されたのですが、部屋から抜けてきた丹羽が勃起して困っているのを、隣で「いいよ、見ないから」と自慰させる。
そのときから槙野は丹羽に、丹羽の存在・一挙手一投足全てに欲情を覚え、丹羽が好きなことに気がつくのです。

そんな始まりの親友が恋人になる話ではあるのですが、そこに色々なものが混在します。
ただ、ひとつ一本筋としては、それぞれがそれぞれのこだわりと、内にこもる部分を捨てて、前を見て、そこへ踏み出す話になっているということです。
それに対する恋愛はきっかけです。
槙野には家庭の事情がある。
頑張って意地張って、そこから抜け出したいと思っているのに、
自分にはないものを持っている、本来羨ましさを感じる彼がヘタレていることで、
そこに欲情が加わることで、自分でも歯止めの効かない衝動が働いてしまう。
丹羽は、槙野の行動の意味を自分なりで考えて受け止めて、自分の思い込みに気がつく。
追い詰めて、追い詰められて見えるその先の決断。
その後日談である話では、槙野は随分と自分らしくなったんだな~という部分が垣間見えます。
ちょっと切ないけど、この決断も必要だったんですね。
【中学の頃のはなし】においては、彼等にはそういう素養があったのかもしれないという、エピソードが綴られていました。
すごく、物語進行中は切なくて苦しいけど、思わず何度も読み返してしまい、そしてとても味のある作品だな~ともっと好きになりました。

【Watch your boy】
これ!古いですね~懐かしい!!09年のcab掲載の短編。
高校卒業時に告白して振られた相手が二年後突然、主人公の部屋に転がり込んでくる。
彼は、どうしても国立大学でないとだめだという家の縛りにあい、2浪してひきこもりになっていたというのだ。
なんとなく、転がり込んできた彼の気持ちがわからないではないw
わらにもすがる思いで追い詰められていたんだな。。。主人公は優しいです。
恋愛未満の、どちらかというと友情の始まりのお話。

【サー・オースティンの個人的な思い出】
フュージョンプロダクトのマーザーグーズに載っていた話ですね♪
「キラキラ星」がテーマです。

やはり、現在の作品の表題と一連が、圧倒的な魅力を見せていると思います。
ここまで化けると思わなかった!
冷めた目でみてしまうと、よくあるかもしれない。
モノローグが多くて、ストレートには分かりづらいかもしれない。
でも、今までのかわいいだけじゃない何かが、絵をとおして語りかけてくるその力を感じます。

7

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