ボタンを押すと即立ち読みできます!
大正はじめの東京を舞台とした、
なかなかに意表を突かれる作りの作品。
ほのぼの幻想文学テイストかと思いきや
時代故の哀しい別離や、すれ違いといった切なさも
どんどん出てきて・・・
二人の行く末に最後まで目が離せません!
■「催眠術入門」
遊び好きのお坊っちゃん・龍彦(攻)と、
カタブツ英文学者の林(受)は、高等学校からの友人。
龍彦は、森鴎外の『魔睡』に影響され
戯れに林に催眠術をかけてみる。
すると、いつも無愛想な林がエロエロ誘い受に豹変!!
こんな涙目でずっと好きだったと告白されたら
龍彦でなくともオチるというものです!
(術が解けたら、元に戻ってしまうのですがw)
エロコメ+奇妙な味系のお話。
■「三月怪談」
芝居観賞の帰りに雨に降られ、
二人は龍彦の別荘で一夜を過ごす。
誰もいないはずの屋敷で、林は和装の美女と出会い…。
ちょっと怪談めいたエロコメ。
■「円城寺伯爵の犯罪」
円城寺伯爵のサロンに招待された二人。
女性といる龍彦を見て傷ついた林は、伯爵につけこまれ…。
互いに嫉妬し、すれ違う二人が切ない。
帰りの馬車にての激しい情事のシーンは、
窓の指紋と指の絡みだけで
車内の様子を雄弁に語る一コマが秀逸。
■「淡雪事変」
ようやく林の気持ちに気づいた龍彦。
だが、龍彦を信じるのが怖い林は
龍彦の告白を拒む。
気長に口説く覚悟の龍彦だが…。
回り道の末、ようやく向き合えた二人。
すっかり大人の男の顔になった龍彦と、
林(こちらは漱石気取り?)の抱擁に胸が熱くなり
読み終わるのが心底惜しいと思いました。
三月の雨夜、夏を歌ったシェイクスピアの詩、
そして淡雪の舞う十二月―――
若き二人の日々は、移り変わる四季のように
いつの間にか過ぎ去り、過去のものとなる。
幸せなラストに安堵しつつも、
どこか甘酸っぱい切なさがあとを引く
なんとも言えない読後感。
短く、儚いからこそ愛おしい。
青春や、大正という時代そのものへの
ノスタルジーを喚起させる作品でした。
近代モノというと、第一に雰囲気萌え、その次に近代ならではのストーリーやキャラクターに萌えるものだと思っておりました。その時代の魅力を知っている人でなければ完全燃焼できないような壁を感じていて、どんなに萌えても心乱されることはない、不得意分野だったのでございます。それがもう、乱されっぱなしでした。
あとがきによると、まず決まったのは「こんなエロが描きたい」という事で、そのためには大正時代が適していたとのお話。そういう訳でしたか。「ほら大正だぜ、咥えろよ」的な流れではなく、ただ純粋にエロを楽しんでいただければ幸いです、という方向性。
第一にエロに萌え、主人公2人の眼差しや言葉少なに語られる台詞に萌え、そうしていつの間にか大正という時代を知ってストーリーに萌える、そんな作品でした。
新しい時代への理想と希望に満ちあふれていた時代。華やかに見えますが、それでもまだまだ不自由で。そんな時代に生きた2人の青年の物語。エロく甘く切なく、最後はハッピーエンドです。
高等遊民(お金持ち高学歴のニート)である龍彦と、大学教員の周(あまね)。お互いに対する「好き」という言葉では表せない感情が生々しく描かれていてゾクゾクでした。
世間で騒がれている催眠術。試してみようじゃないかということになり。どこからどこまでが催眠術だったのか。
「俺がいいと言うまでいくな」「もう我慢をしない」
ずっと達することができていなかった周の乱れる姿に、読んでいる側まで切羽詰まってきます。
「待ち焦がれた相手に抱かれる喜びを 俺は肌で感じたような気がしたから…」
普段はクールなやりとりをしている2人ですが、布団の中では乱れに乱れ。日常に戻ってまたお互いの気持ちを密やかに探り合う様子が妖しく美しいです。
周がシェイクスピアの詩を英文で朗読するシーンは、意味も分からないのに胸が痺れました。後に意味を知ってまたジンジンと痺れます。
ゴーンと胸に響く台詞、笑える台詞も多くて、名台詞集を企画したら100では足りないぐらいですが、第5位ぐらいの台詞を紹介して終わります。
「君に聞かせたくない事は英語で言おう」「ひでっ」
Krovopizza様、
朝っぱらから咥えてくださりありがとうございます。
気持ちいいです(笑)
スズキ27さん お早うございます★
>「ほら大正だぜ、咥えろよ」
この例えがツボすぎて、思わずコメントしてしまいました!!
エロやセリフに萌えている間に、小難しい話もいつの間にかパクっとイけちゃうところが本書の魅力ですよね★
スズキ27さんのレビューを拝見して、本編で萌えた・感動したセリフや場面が次々よみがえってきて、よしもう一回読もう!となりましたw
素敵なレビューをありがとうございますv(・∀・*)
カシオさんが森鴎外の小説をモチーフにしたのを目にするのはこれで2作目です。
1作目は元の小説と同名の「ヰタ・セクスアリス」。ストーリーだけでなく、文体にも寄り添った現代劇でした。
2作目であるこの「催眠術入門」は、森鴎外が生きていた時代と社会情勢を共有しています。
[催眠術入門]
大正浪漫、気取った言葉遣い、眉目秀麗な青年と高等遊民、そして催眠術。
18禁の「エロとろR18」に掲載されただけあって、最初から最後まで、やらしい、やらしい、やらしい展開。これでもかと扇情的な演出を繰り出してきます。
一話目を読み終えるころにはすっかり二人に魅了され、続きが気になって仕方なくなりました。
[三月怪談]
こちらは「よみきりCitron」の作品。
怪談としてはごくごく一般的な展開。定番といっても構わないくらい。
しかし催眠術入門のあとだけに、はたして何処まで信じていいのか迷うのです。ありきたりだと判断した自分を。
結局は翌朝に庭師から屋敷にまつわるいわくを聞くまで待たなければならず、また聞いた後もなんとも狐につままれたような感覚で、満足気に納得したのは一晩役得にありつけた龍彦だけだったというお話。
[円城寺伯爵の犯罪]
ここからは重く切ないトーンへと様変わりします。
伯爵の晩餐会に招待された周(あまね)と龍彦。
龍彦が令嬢の相手をしてる間に、周は英語の朗読を頼まれます。彼が朗読に選んだのはシェイクスピアの十四行詩の第18番。
伯爵は直ぐに周の真意を察したようですが、肝心の龍彦はというと・・・無念、気づきません。このせいで伯爵に出抜かれる隙を作ってしまいました。
伯爵が周に盛ったアヘンチンキは、酒と一緒に服用すると龍彦が作中で述べた副作用が特に出やすくなる薬物です。
しかしそれを知っていてもなお龍彦は、誤解と嫉妬から帰路の馬車の中で周に乱暴してしまいます。まさかこれが淡雪事変まで尾を引くとも知らずに。
ところで、周が朗読したシェイクスピアの詩はある美青年へ向けられた愛と賞賛を綴ったものです。
もし龍彦が事前に詩の内容を知っていたら?そしてすぐに周のメッセージに気がついていたら?伯爵の企みはむしろ二人の絆を強める結果となっていたかもしれません。
しかし結局、伯爵が「大げさな」と一蹴した彼の犯罪は一夜の出来事に留まらず、その後の周と龍彦の長い年月に影響を及ぼすものとなりました。
[淡雪事変]
淡雪事変とは、何をもってつけた題名なのでしょうか。
「不意打ちで告げた別れに対する周(あまね)の咄嗟の抵抗」なのか、「不確実な約束を残し淡雪の朝に消えた龍彦の行動」を指しているのか。
陸軍に入隊する龍彦は [催眠術入門] で使用したあの懐中時計を残していきました。
戦地に向かう前提での入隊ですから、万が一のときの形見とみるのが普通です。
しかし周は帰りを待ち続けるようにと、龍彦が自分にかけた最後の催眠術なのだと信じることを選んだようでした。
龍彦が入隊したのが大正三年の師走の時期。
ならば出征した戦争とは第一次世界大戦。少なくとも五年以上は会えなかったはず。
終戦後も相変わらずの生活が続いたなら、更に一年、二年と過ぎてるとも考えられます。
終盤のモノローグでは、龍彦の死の可能性を認めなければならない周の心中をうかがわせます。
それでも引き揚げ船がくるたびに港へ足を運ぶのは、周にとってそれが"生きた龍彦"と自分を繋ぐ最後の細い糸であるとの思いがあったのかもしれません。
淡雪の日に貴方がかけた催眠術が薄れて解けるまえに、どうぞ帰ってきてくださいと。
まったく、物語は導入部でいかに読者を引き付けるかが肝だと諭された気分です。
エロエロホイホイに掛かり易い私は、この作品には格好の獲物でした。
舞台は大正です。時代モノ大好き…!
軍服も少しだけ見れます、和服エロもw
高校からの友人同士が催眠術をきっかけに一線を
超えてしまうというお話。
龍彦はスネかじりでチャラい感じのお坊ちゃん、周はストイックな雰囲気を
持つ美形英語教師。
龍彦がひょんな事から周に催眠術をかけ、周がエロエロになってしまう
という話ですが、実は周は龍彦が好きだったという展開です。
周がとてもエロいw普段の厳しいストイックさとのギャップが凄くて
かわいいです。
でもただエロいだけではなく、2人の表情や会話がなんとも
いい雰囲気を出しています。和風情緒があるのも関係しているかな?
性格や時代もあってか、あまり自分の感情をストレートに言葉にしない
ので作中モノローグが濃密で切実でとても効いていると思います。龍彦の…
「俺はもういいなりになるしかなかった 黒い瞳に覗きこまれると
俺は 気が狂いそうだった」
というモノローグとシーンがとてもよかったです!
ただ少し残念なとこは、学生時代のエピソードがもう少し
あったらよかったんじゃないかなーと思いました。
カシオ先生は、ほぼ全作品読ませていただいていますが、いつも絵を見ずモノローグや台詞だけを読んでも充分楽しめるくらい、文章にセンスのある方だと、思っています。漫画が巧い作家さんはいますが、カシオ先生のように文章の美しさが心に染み渡るような個性は稀有なように思います。第1話は、エロとろからの収録だということで、エロさ多めで浮いているような気もしますが(勿論、私も人の子、エロも大歓迎ですが)、その後はカシオ節が冴え渡っていました。
周が朗読したシェイクスピアのソネットを、龍彦が後日翻訳してやっとその意味と周の気持ちを汲み取れた箇所から、「震える蚤の心臓よ〜」までのくだりは、本当にこちらの気持ちも高揚しました。最も心に残った場面のひとつです。
この作品は大正時代のお話ですが、独特の華美さ、退廃的な雰囲気は大正時代ならではで、カシオ先生の文学的な文章にぴったりです。第一次世界大戦、そして関東大震災、最終的には昭和初期に華族制度も廃止されることを知っている私達には、やはり忍び寄る時代の足音を感じてしまい、どうしてもなんだか切なくなってしまいますね。物語の最後では、龍彦は無事に大戦から帰還し周と再会しますが、心配性の私は二人はこのあとどうなるのかと空恐ろしくなります。しかし、元すねかじり、今でいうニートだった龍彦がかなりしっかりとした頼もしい顔つきになって戦地から帰ってきたので、彼なら頼りにしてもいいかも、周くん、頑張れ!
これは本当に私個人の萌ポイントというか純粋な趣味なのですが、男性の燕尾服が 大好きなので、二人のお出掛け姿には萌転がりました。龍彦のハットなんて、今ではオーソドックスジューが時々飛行機に乗っているのしか見る機会ないのですが、色男が被っている姿を是非拝んでみたひ。
そしてそして! 龍彦の色々な髪型!
オールバックに七三、そして軍帽と、めくるめくファションショーで堪りませんでした。BLだと前髪長いほうがお好きな方が多いような気がしますが、私は二次でも三次でもポマード上等! 七三オールバックカムカムなので‥。同じ趣味の方に出会ったことはまだありません。お友達ほしひ!
後は、周くんの伏目の色っぽさも罪だなぁと。皆エクステだのつけまだの必死になって目元を演出しているのに、君はナチュラルになんて誘うような色気を出しているのか! 熱気のこもる馬車の窓に押しつけられる二人の手形も秀逸でした。心に残る絵です。
絵にクセはありますが、お薦めしたい漫画です。
スズキ27
Krovopizza様、コメントありがとうございました(__)
>いつも無愛想な林がエロエロ誘い受に豹変!!
>互いに嫉妬し、すれ違う二人
>気長に口説く覚悟の龍彦
私も、そこここで悶えました。
昨日は他にも新刊を読む予定だったのですが、この本を何度も読んでいるうちに1日が終わってしまいました(/- -)/
本当に、目が離せない二人でしたよね!