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表題作日陰蝶

同時収録作品Flutter of Butterflies

脅迫者 永田
剣道部の学生 松浦

その他の収録作品

  • とまりぎ芽生えた
  • 籠の中

あらすじ

弱小剣道部顧問として自適な日々を送っていた教師の牧は、剣道強豪校から転入してきた練習熱心な松浦を疎ましく思っていた。彼が牧に向ける敬慕とも恋慕ともつかない感情は、牧に学生時代の記憶を呼び起こさせるものだったから――

松浦に憧れて剣道部に入部した浜部、浜部の良き理解者である武田、そして松浦の過去を握る一人の男。
松浦は、牧に恋焦がれる一方、男の夜毎の呼び出しに身動きがとれなくなっていく。
水面下で繰り広げられる‘超不道徳的’青春群像!!

(出版社より)

作品情報

作品名
日陰蝶
著者
名取いさと 
媒体
漫画(コミック)
出版社
リブレ
レーベル
シトロンコミックス
シリーズ
日陰蝶
発売日
ISBN
9784799712245
3.6

(49)

(13)

萌々

(16)

(13)

中立

(3)

趣味じゃない

(4)

レビュー数
10
得点
171
評価数
49
平均
3.6 / 5
神率
26.5%

レビュー投稿数10

ちょっとヘビーなんだけど…

うおぁ、久々にこういうシリアスを読みました!!
購入時、一度手に取り、置いて、でもやっぱり気になって、という
迷いがあったのですが買ってよかったー!

先生×生徒よりは生徒×先生が好みなんですけども、
それで判断するような内容じゃありませんでした。

普段、文武両道を真っ直ぐ突き進んでいるように見える松浦が
実はゲイで、転入前に関係があった男に痴態を撮られ
やっとの思いで離れたというのにまた脅されて抱かれてしまう負のスパイラル。
一度はカッターを持って暴れたらしいですが(描写はありませんでした)
結局はその男のなすがまま。
若いから、快楽に流されるのは仕方ないけど
そんな自分が嫌で嫌でたまらなくてどうにか逃げ出したい松浦が不憫でした。

数学教師で剣道顧問の牧先生は、
普段は穏やかなのに、剣道の指導になると厳しくて
そのギャップに萌え!!
牧先生が、松浦を無理に抱く男・永田と友人で
永田にホテルで目隠しをされたまま、第三者の介入に慌てる松浦を
ただひたすら見つめているだけ。

牧先生は、ゲイなのかそうじゃないのか…微妙な感じでしたが
学校で慕ってくる松浦に、過去の嫌な出来事を重ねつつも表面上優しく接して、
松浦の永田によって乱れる姿を見た後車中で一人でしてしまうという…。

日曜も部活動したいと申し出る松浦に面倒な気持ちになるとか、
先生という立場だからこその偽善なのか、
上手く逃げる姿が狡い大人だなぁ…と感心しました。
松浦の裏を知っているのに何食わぬ顔の牧先生が腹黒というか…。

松浦がホテルに来たのが牧先生だと薄々感じていて(声でわかって)
「隠せないなら」と、学校の相談室で切り出します。
「俺は先生だけがいいんです」と泣きながら手を握りしめる松浦にズキッとしました。

描き下ろしで、先生のアパートへ来た松浦は
玉砕覚悟で乗り込んだのに優しいキスをされ、
「どんな風に傷付いても 動けないのはもう同じ」でENDマークです…。
“もう後戻りはできない”的な終わり方が余韻を残してて良い!
だけど、優しく牧先生に愛され乱される松浦が見たかった…!!

そして、この作品で欠かせないのが
松浦に憧れる、友人・浜部!
素直で、悩んでいる様子の松浦を助けたくて
逡巡している姿が可愛らしかった…。
彼はストレートだと思うんですが、ワンコのようだったw

その浜部の幼馴染・真澄は見た目ちょっとヤンキー入ってるんですが
浜部の松浦へのご執心ぶりに少し腹を立てつつも、
真澄の力になりたいという、ここは純粋な友情…なのかなー??

普段泣きそうにない松浦の泣き顔とエロい姿、
牧先生の、いい熟しっぷりの表情!(顔には出さないで淡々としている様子!)
ここにとてもツボを押されました!!!
絵柄に変化があるんですけど、それを差し置いても
好みの感じになってたので無問題☆

牧先生の感じが、エンゾウさんをお好きな方は「惚れ!」になるかも…。
ならなかったらごめんなさい…。

次のコミックスも、とっても楽しみないさとさんでしたー♪
(出来れば牧先生みたいなタイプが受けの……w)





11

暗い!! 暗くて好き!!

表紙に描かれた、くたびれたおじさまとキツネっぽさのある男の子ふたりの図からただならぬイケナイ雰囲気を嗅ぎ取りました。
また帯に書かれている「超不道徳的群像劇」の一文にも惹かれたのです。群像劇も好きですし、このいかにもイケナイ関係漂うふたりに『超不道徳』とは! たやすく乱れるようには見えないけれど、不道徳とは!! と心が爛々いたしました。

…が。ただイケナイだけのそんな甘っちょろい世界じゃありませんでした。
確かに不道徳。高校教師と生徒の関係です。またふたりは剣道部の顧問と部員でもあります。
群像劇もその通りでした。教師←生徒←生徒?←生徒?? うしろの二人は恋とか愛とかそういうのではなくただの友人として、かとは思いますがもう盛大に方々へ矢印が向いています。そもそも先生だってかつての後輩に対する重い感情があるようですし。
帯に書かれていたことになにひとつ嘘はございません、むしろ期待以上でした。

ではなにが甘っちょろくないのか? と申しますと、読後、びっくりするほどすっきりしませんでした。
ページを全部捲り終えたことに驚いたのです、え、終わってしまった…と。ここで終わるの!? と。
いやもう何一つとして解決していないのです。登場人物それぞれが抱えるモヤモヤが、なにひとつ! なにひとつとして昇華されていない!!
・受けの松浦はいまだ永田の魔の手から逃れられず!
・攻めと思われる牧先生の過去がいったいどんなものだったのか読者に明かされず!
・松浦が落ち込む理由を突き止めてしまう&憧れが高じて守りたくなる友人の浜部は相変わらず苦手視されたまま!
・浜部が勝手に憧れる松浦、に対して浜部と親友だからこそわずかな嫉妬心が芽生る唯一まともそうな真澄も宙ぶらりん!
それぞれの幸せがどっこにも見当たりません! かろうじて最後、松浦が生徒向けの相談室で牧先生に告白して受け入れられ…ているのかこれは! この先生こわいです!(笑)
牧先生自身もわかっているようですが、彼の心の闇は大きくて、教職員てのはマズすぎるのでは……。このキャラを『先生』だと捉えて見ると、ストーリー展開上、アウト!と感じる節が出てくる方もいらっしゃると思います。単なる先生×生徒モノではございません。

先生×生徒を頭から取り除いたとして、それでもどうしてここまで背徳感を覚えるのだろうなと考えたのですが、やはり『剣道部』であることも理由のひとつだと思います。
武道ってとてもストイックな印象がありますよね。強さを鍛えるには精神も整える、という雰囲気もですが、キレのある動きと強靭そうな肉体もまたイイのです。名取先生の作画も美しいので、魅力が余すところなくあふれ出ています。
あとこの牧先生が醸し出すサディスティックな雰囲気がたまりません。こわい。眼鏡をかけた物腰柔らかそうな先生ですのに、剣道では激しい攻撃をかけてくるうえ過去を見せたがらず。こわい。
松浦を転校に追いやった(と思われる)人=松浦の卑猥な画像を持つ人=牧先生と友人(?)の図式が成立したときにはゾッとしました。何が始まるんだと。
しかもここで一冊のうちの半分。視姦プレイらしきものも挟んで不道徳感も割増。これはお話が片付くのかとハラハラしながら読み進めて、結果、終わってない…これ終わってないよ!! だったのです。

ここまでいかに消化不良かを書き連ねてしまいましたが、でもこのダークな世界観はたまらなく好きです。今の段階で私には光が見えません。しいて言うならば、描き下ろしで松浦と牧先生がめでたく結ばれたような…気がしないでもないですがこれってそれが幸せなのどうなの!? でまたもや悶々といたします。
時折挟まれる楽しそうな光景が、むしろ更なる闇への一歩だとしか思えなくなる負スパイラルに私は嵌りました。愛とか恋とかが置いてけぼりなくらいの暗さがすごく好きです。
また松浦は鬱陶しく思っているみたいですが、浜部の存在はこの暗いストーリーのなかで唯一の清涼剤ではないでしょうか。真澄から「親友取られた感」がうっすら香っているだけに、浜部たった一人に癒されます。

一番好きなシーンは真澄が松浦に耳打ちをするところです。永田から強制的に奉仕させられていた、あのことを果たしてなんと告げるのか…と思っていたら吹き出しもなく耳打ち…! 真澄・浜部両者の気遣いと松浦の絶望感を一瞬で感じられる場面がとても印象的でした。
読み終わり、重かったな…とため息漏らしながらカバーをめくったらまた癒されました。わんこ街道まっしぐらの浜部ほんとうに癒しです。
そして、牧先生は若返り、松浦には妖艶さが備わりはじめたように思います。続編があると伺っておりますゆえ、一冊にまとまるのをとても楽しみにしている作品です。

7

闇落ち?それとも?

先月ショコラから「つないだ両手がはなれたら」が出たばかりの名取いさとさん。
citron掲載のこちらは、実に重く暗く痛い作品です!
雑誌で初めて目にしたとき、何故かその痛さにショックをうけましたもん!
それは肉体的にというのではなくて精神的に?
先に出た方の作品と比べると、面白いかも?
トーンもですが、絵も幾分お話がダークな分暗めな印象を受けます。
そして・・・これで完結なのかな?描き下ろしで救われたことになるんだろうか?
続きはあるのかな?すごくすごく身悶えして悶々するラストがまっているのですが、何となくくれはこれでもいいような~
モヤっと感を抱きそうと思った方とか、理不尽でイタ重いのが苦手な方は注意が必要です。
しかし、自分的にこんなダークだけどしっかりと組み立てられた漫画というのは小説ではいくつかあれど、新人さんの漫画では久々に見た気がいたしまして、すごく高評価な作品でもあり、作家さんなのであります♪
萌は?と聞かれたら、この歪んだ先生と、自ら檻に入っていく生徒というこの関係にあるのではないかな~なんて思うのです。

表題はこの1冊のプロローグです。
高校の弱小剣道部の顧問の先生・牧の学生時代後輩を怪我させた過去。
そして、その彼を慕ってぶつかってくる生徒の松浦。
何やら、牧のほの暗さを示しながら・・・

【とまり木芽生えた】は松浦の同級生・浜部が剣豪の漫画にはまり、親友からそんなに好きならやってみれば?と言われとまどっているところ、松浦の凛とした姿に惹かれ剣道部に入部することになるという、
松浦が牧を慕うのと対比するような、もう一つの執着と盲信の姿です(ただしこちらはワンコ♪)

こうして、登場人物が揃ったところで本当の本編となる【Flutter of Butterflies】が展開していくのです。
松浦がこの学校にきたのには実は逃げてきたという人に言えないモノがあるのです。
それは彼はゲイで、それを受け入れてくれた男性・永田と関係を持つのですが、どうもそれで脅されて学校に居づらくなり転校してきたようなのです。
しかし、その永田は伝から松浦の居所を知り、また脅されて関係を持ち始める。
そしてそこに牧を同席させる。
しかし松浦は目隠しされており、憧れの先生なのかどうかが大変に気になり、そして牧に聞くのです・・・

メインとなる牧と松浦のざっとな上辺部分だけ抜き出すとこんな感じなのですが、その奥に潜むものは、純粋なものを汚す歪んだ「S気質」が隠れているような気がします。
浜部が松浦に憧れて慕うように、
もっと強くなりたい、牧の剣道に、そのうち先生として憧れ慕い必死でついてくる松浦の存在を、松浦は浜部に釣れなくするが、牧は優しい顔をしてその裏で松浦をいたぶることを考えている。
可愛く思うものをいたぶりたい!ひどくしたい!
はっきりとそれを牧にかたらせているわけではないですが、それを匂わすモノローグや表情などがゾクゾクさせるものがあります。
永田と牧は学生時代の友人?同級生?
牧はゲイなんだろうか?
そのあたりははっきりはしてないのですが、それは些細な事で気にしなくてもいいのですね。

牧にいやらしい姿を見られたとうっすら感じた事で、絶望したんだろうか?それとも開き直ったんだろうか?そして松浦は自ら牧の手に落ちていくのか。
牧は欲しいものを手に入れたのか?それは自らの意思でなく?
まるで獲物を待つ蜘蛛のような牧が不気味で、ポジティブな魅力でなく、ネガティブな魅力で真っ黒に染まっているように見えますw
イタイスキーの方にオススメしたい♪(ただしモヤモヤの始末は保証しませんw)

そんなダークな展開ですが、カバーを外した本体の、松浦に相手にもされなかった浜部と、牧が若返っていく(これ、マジ感じたのよ!)姿の4コマに吹き出しちゃいました!


6

シリアス

なかなかに読み応えのあるシリアスものでした。
だいぶ積ん読してたので、もっと早く読めばよかった。

剣道部の松浦と、顧問の牧。松浦は強いが、前の道場で因縁があったもよう。
一方牧はやさしくて強い指導者。数学の先生でもある。そんな牧に、憧れを経て恋心を抱く松浦。

だんだんと過去や、関係が明らかになってくる描き方がいい。
前の道場の先生であった永田と関係があり、写真をネタに今もゆすられて時々呼び出され、色々されてしまう松浦。

しかし、ある日目隠しをされ、松浦に犯されようとしているところへ、牧が現れ、松浦は先生ではないかと気づく。

後日松浦は、先生の家を訪ね、やっと自分の気持ちを伝える。そして牧も優しく彼を受け入れる。そんなラストでした。しかしこれは描き下ろしで、これがあることでだいぶ甘くなっていますが、その前の「Flutter of Butterflies」までだと、牧はまだ少し倒錯した大人のままで、むしろその方がリアルなのかもしれない。

最初はかっちりした印象だった牧が、だんだん色気のある男性として描かれているのもうまい(後書きで解説あり)。

そんななか、松浦のクラスメイト、浜辺と真澄がどこまでもいい子たちで救われます。

1

拭えないモヤモヤ感

高い画力、どこか陰のある登場人物、何が起こるか分からない不気味さなど、非常に惹きつけられるものはありました。
登場人物の過去や人間関係など、謎が少しずつ明かされていく展開は読んでいてドキドキしましたし、全体的に漂う陰鬱とした空気も好みでした。

しかし、そうした登場人物の心理や行動理由や人間関係や過去など全てが小出しに紹介されるだけで、ラストは盛り上がるかと思わせて妙に引いた終わり方で、読後の消化不良感がすさまじかったです。
様々な後ろ暗いものを抱える人物達がどう関係して折り合いをつけていくかが読みたかったのに、その辺りの描写は曖昧のまま妙に大人しくまとまったというか、当事者同士が内輪で理解し合って解決したかのような置いてけぼり感がありました。

ラストのモヤモヤ感がすさまじいため中立評価としたいところですが、途中までは完成されたダークな世界観に引き込まれたことと、最近始まったらしい続編でこの物語の本当の終着点が見たい!という期待を加味して萌評価としました。

敢えて全てを説明せずに詳細を読者の想像に委ねる作品、結末より過程を読ませる作品としての魅力はあると思います。

3

この作品が収納されている本棚

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