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表題作銀の雫の降る都

ユーリス・アラヤ,カレルに買い取られた剣闘士
カレル・エサイアス卿,エイドリア辺境伯

その他の収録作品

  • 瑠璃と玻璃と銀の蜜

あらすじ

あと数年しか生きられない不治の病を抱えるカレルは、内陸部の市場で売られていた少年トワを買い取り、ユーリスと名前を与えるが……。

作品情報

作品名
銀の雫の降る都
著者
かわい有美子 
イラスト
葛西リカコ 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
リンクスロマンス
発売日
電子発売日
ISBN
9784344827851
4.4

(115)

(76)

萌々

(20)

(13)

中立

(5)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
17
得点
504
評価数
115
平均
4.4 / 5
神率
66.1%

レビュー投稿数17

静かに美しく紡がれる物語……

高度な文明と科学の老成した大国レーモスが統治するエイドリアは、
未だ未開な文明のままの大地だ。
ここに執政官として赴任して70年、エイドリア辺境伯カレル・エサイアス卿は
赴任してきた28歳の頃の容姿のまま、まるで人生を消費するようにして生きている。

君臨すれども統治せず、という姿勢で現地のことには殆ど関与せずにきたカレルだが
ある日視察先の内陸の街で、何の気まぐれか売買されていた年若い剣闘士を買い取る。

片目尻に刺青を入れた彼の名は、トワ。
剣技を誇る少数民族の出身で、この地では一人前とも見なされる13歳だった。
自由にするから里に帰れと伝えるも、男としての名折れなのでそれはできないと拒むトワに
カレルはユーリスと名前を与え、自分の邸に連れ帰る。
教育を与え、しかし特になにをさせるでもなく、ただ好きなようにさせて日々が過ぎる中、
彼は剣闘士として立派な青年に育ち、美しいカレルに強い憧れを抱くようになる。

                 :

SFでありながら、エイドリアの風物はアフリカ北岸を思わせ、
辺境伯、モノクル、剣闘士、主従、執事…と、
私のツボをついてくる設定がてんこ盛りのこの物語。
あと書きで作者が、萩尾望都先生作『マージナル』のメイヤードへのオマージュと書いているが、
然り。

とびきりの名家に生まれ、人並みはずれて聡明でありながら、遺伝に瑕疵を持ち、
運命を諦め人と関わろうとせずに生きて来たカレルに、
一途で純粋で見返りを求めない想いを向けるユーリス。

剣闘士として優勝した折りに与えられる副賞の宝冠の代わりに、
カレルの胸を飾っていた薔薇のブートニアを望むユーリス…、ああっ!
そして今やどんな栄華も思いのままの彼が望んだのは、カレルの護衛になることだった。
しかし、彼の想いを上手く受け取れないカレル。

淡々と紡がれて行く物語に、ずっと胸がギュン!と深いところから締め付けられる。
やがてカレルもユーリスのひたむきな想いに心溶かされ、笑顔が見られるようになり、
地方視察の際に暴動に巻き込まれたのをきっかけに二人の距離は縮まるが、
彼の寿命はもう尽きようとしていた……

まるでカレル自身のように、静かに美しく紡がれる、切ないファンタジー。
とても好き!!

最後のSS「瑠璃と玻璃と銀の蜜」は、静かながらやさしく甘いお話。

26

読みたかったんです

ずっと前から読みたくて、なかなか手に入れられずやっと読めました。
美しいカバー絵。内容をそのまんま表してると思います。
ファンタジー好きにはたまらん。
いや、そりゃ色々思うところはありますが、それを全部いいやっと思わせるぐらい、この穏やかな愛情が好き〜。
攻めさんが頑張って待って、最後多分幸せになったろうと思うのですが、
ほんと号泣。ティッシュ何枚使ったことやら(笑)
二人いつまでも穏やかにお幸せに と願わずにはおれません。
また、リカコ先生の絵の美しさったら、最高です。
もともと好きな先生でしたが、この絵は反則です。
私にとっては一生もんの一冊になりました!

12

かわい先生異色のSFもの

文章はさすがかわい先生という素晴らしさで、イラストもすごく世界観にあっていました。あとがきで、かわい先生が葛西リカコ先生のえの雰囲気はSFものの方が合うのではと担当の方にいわれたと書かれていましたが、まさにSFにぴったりの、どこか現実味がないくらい繊細で美麗なイラストでした。

ラストは少し物足りないと思いました。でもその物足りなさというのは、ストーリーの詰めが甘くてこれで終わりかい!なんだかな!というものではなく、もっと2人を見ていたい、もう終わってしまうのかというものです。2人の甘甘な後日談とかあればいいのになとも思うけれど、ご飯ももうちょっと食べたいくらいの腹八分目に食べるのが一番美味しいように、ここで余韻を残して終わるのもいいのかもしれません。

最終的にカレルはクローンなので、私は読後に一抹の寂しさが残りましたが、そのもの悲しさも作品の雰囲気とあいまってなんともいえない気持ちで、しばらく世界観から抜け出せませんでした。でも、カレルが最初は廃棄するつもりだったクローン胚をユーリスのそばにいるために使ったことで、愛を知らなかったカレルにユーリスの一途な想いがちゃんと届いたんだなとしみじみ感動し、ハッピーエンドだなと思えました。オリジナルではないとはいえ、記憶も復元される設定なので、これから2人が長く幸せな日々を過ごしていけることを願うばかりです。

7

こんなにも美しい愛は初めて

ファンタジーは苦手なので、ずっと避け続けてきたのですが
「骨太な作品を書かれる作家さんのファンタジーだから…」
と、思い切って手に取ってみました。

読んで正解!
静かで穏やかだけれど、一途でとっても熱い想いにウルッとくるお話でした。

とはいえ、一読目の時は
予想していたよりも淡々と話が進んでいくため
涙ポロポロとはならず、何となく物足りなさを感じました。

なので、しばらく放置してから期待感を抱かずに再読したら
きましたっ!
淡々と進んでいく話の中で
ユーリスとカレルそれぞれの愛の美しさが浮き彫りにされていて
ジンときました。

ユーリスの愛は
表面的には静かで穏やかだけれど、
その実、肉欲をも凌駕する激しくて熱いものでした。
こんなにも禁欲的で純粋で美しい愛に、心ときめかずにはいられませんでした。
カレルへの想いに生きる姿には心を鷲掴みにされました。

カレルの愛は
どこまでも静かで穏やかで、そして美しい。
その美しさが寂しくも悲しくもありました。

ユーリスの愛が青色の炎(静かで穏やかな色なのに最も高温)だとすると
カレルの愛は冷たく冴えた氷(触ると冷たさより熱さを感じる)のようだと思いました。

私の例え方が拙いために誤解を招くかも知れませんが
彼らの愛に温度差はありません!
それぞれが、それぞれの精一杯、全身全霊で相手のことを愛しています。

本当に美しい愛のかたちを、この作品では見ることができます。
ファンタジーが苦手な方であっても
SFアニメとか『間の楔』とかが大丈夫ならOKな設定だと思いますので
是非読んでみて下さい!

私的読書時の注意事項としては以下2点だと思います。
・作品に何も期待せず淡々と読む
・初読み時にイマイチだと思った時は結構な日数を開けて再読する

静かでロマンティックな雰囲気の作品だと思うので
これからの寒い季節に向いているような気がします。

気に入ってもらえると嬉しいです。


6

この美しさをどうやって伝えればいいのか・・・

今レビューを書いているのが出版されてから約8年前なんですね・・・
出版から時間が経っているにもかかわらず、色褪せることなくとても素敵な作品でした。

こちらの作品、個人的に大好きなファンタジー作品です。
表紙もイラストもとても美麗ですね・・・
どうやら電子はイラストがないサイトもあるみたいですので、どうにかして紙の本を手に入れて読んで欲しいな・・・と思います。
葛西リカコ先生の描かれる儚く美しいイラストはずっと見ていられます。

以下、重大ネタバレ含みます。
読んでいると中盤でなんとなく分かってきてしまうのですが、ネタバレは避けて読んだ方が楽しく読めるかと思います。


まず、受け様であるカレルについて。

なんといっても表紙からビジュアルが最高です。
この作品を読むと片眼鏡の虜になるに違いありません!(私の偏見)
そして、素敵な布多めの衣装に、美しい銀髪。
個人的好みがもりもりでした。
ありがとうございます。

キャラクター(性格)は侯爵の長子であるだけあって、美しい言葉に美しい所作で貴族らしい威厳を感じさせます。
でも心根はとっても優しくて、素敵な方なんです。
想いを伝えるのが下手で、でもそこがまた愛らしくって。
なんてかわいいんだろう・・・

そして、病気を患っていることもあり、余命はそう長くはありませんでした。
性交をすれば寿命を確実に縮めることになる、そう分かっていながら攻めさんの想いに自分も応えたいと、攻めさんのお部屋に訪れるんですね。
あ~・・・もうここ、、、好き。

カレルの最後の場面では自分のみっともない姿をユーリスに見せたくないと、最後の強がりを見せます。
こんな強がりが彼らしい最後だったなと思います。

私は普段、攻めさんか受けさんが亡くなる作品はあまり読みたくないのですが、この作品は最終的に再び二人が幸せになるというエンドだったので読めました。
(途中、とんでもなくつらい目を見ましたが・・・笑)

次に攻めさんのユーリスについて。

最初から最後までずっと(特に最後の場面では)カレルのことを尊敬し、大切にしていたという印象です。
今まで読んできたBLのなかでも5本の指に入る「静かに、でも激しく恋人を愛した」攻めだと感じました。
カレルの強がりを受け入れ、(というか、この人はこういう人なんだろうなと思っているんだと思います)いつも彼と大事に大事に接する様子はぐっときました。
そして、カレルが亡くなった後も、「みっともない姿をみられたくない」という彼の思いを尊重しています。
とっても素敵な攻めさんでした。

先ほどから「亡くなる」なんて物騒なことを書いていますが、終わり方はハッピーエンドですので!
安心して読んでいただければと思います。
レビューを書いているといつもまとまりのない文章になってしまいます・・・

最後に、この物語に出会えて良かった。

4

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