貴方に支配されたい――禁断の身分差愛!

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表題作薔薇の王国

サイラス・ブラハム 新入りの庭師
アーネスト・オルドマン 王女と婚約する貴族23

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

貴族のアーネストは、ある日、庭師のサイラスに強引に体を奪われてしまう。しかし次第に彼に支配されたいと願うようになり…!?

作品情報

作品名
薔薇の王国
著者
剛しいら 
イラスト
緒笠原くえん 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
リンクスロマンス
発売日
ISBN
9784344828391
3.2

(9)

(0)

萌々

(4)

(3)

中立

(2)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
3
得点
27
評価数
9
平均
3.2 / 5
神率
0%

レビュー投稿数3

散らない薔薇もある

 オスカル様の時代から、気高く咲いて美しく散るのが薔薇のさだめ。でも本作のアーネストは散ることはありません。だって戦わないんだもん。薔薇は薔薇でも、じぶんの身を守るトゲすらもたない薔薇なのです。

 舞台は架空の王国オルランド。オルドマン公爵の嫡子アーネスト(23歳)は国王の従兄弟にして幼い王女ハンナの婚約者でもある。貴族の中でも抜群の毛並みの良さ。それに加えて見事な金髪と澄んだ青い瞳。王国の薔薇にたとえられるその美貌は令嬢たちのあこがれの的だけれど、本人は社交界に出ることを好まない。館にこもって、専ら薔薇の絵ばかり描いている。実は彼は世間が怖い。外に出て、逞しく魅力的な若い男に会うのが怖い。少年のころ、家庭教師に性的虐待を受けて以来、彼は自分の中に眠るひそかな欲望に気づいてしまった。夜ごと彼を悩ますのは強い男に淫らにいたぶられる夢。そんな自分を深く恥じ、ひたすら押し隠して生きてきたのに、ある日彼は運命と出逢ってしまった。新しい庭師として邸に雇われたサイラス。夢の男そのままに、逞しい体躯と野性的な美貌を持つ彼は、荒々しくアーネストに襲いかかる。秘めた欲望を暴きたて、白く美しいその背中に薔薇の鞭で傷痕をきざむ。罪の意識におののきながらも、被虐の喜びにうちふるえるアーネスト。しかし繁栄を極めた王国は土台から腐り、革命の足音が近づいていた。

 最初はね、こんな受け、趣味じゃないなと思って見てました。あまりに非力でひよわでふがいない。革命のあらしが吹き荒れても、剣を取って戦うどころか、馬にすら乗れない情けなさ。絵筆より重いものを持ったことがない深窓のご令息だから、農家にかくまわれても、鋤や鍬はふるえないし、絵を描いたところで金に換える算段などもとより思いつきもしない。ただ彼には、自分が貴族としても出来そこないのはみ出し者という自覚がずっとあったから、この時代の貴族としてはありえないくらい金にも権力にも無欲で、弱いものにはとことんやさしい。いよいよ革命軍が館に迫ってきても、彼は逃げない。もちろん迎え撃つすべなどないのは百も承知。自分が館とともに滅びる覚悟はできている。ただ中に飾られたたくさんの価値ある絵まで焼かれてしまうのが忍びなくて、革命軍の隊長に直談判しようとする。臆病なんだか肝が据わり過ぎているのかよくわからないけれど、だんだん天晴に思えてきてしまう不思議なキャラなのだ。
 
 そんな不思議ちゃんのペースにいつしか巻き込まれてしまったのが攻めのサイラス。もともと彼は、豪商であった父親をオルドマン公に殺された恨みから革命軍に加わり、庭師として館にもぐりこんだのも諜報のため。もしアーネストが傲慢で淫乱な貴族のバカ息子だったら、もてあそんで破滅させてやろうと近づいたのだ。なのにその無垢な魂にふれるうち、復讐の目論見などどこかに吹き飛んでしまい、当人がまるで頓着していないその命を救うために必死で奔走する羽目になる。「実はこいつの正体は温室育ちの薔薇で、最近人間になったばかりだから、歩くのはうまくないんだ」知り合いの農家の少年にそう言ってアーネストを紹介するサイラス。半ば本気でそう思っているらしい。激動の時代を共に生きる伴侶としてはこれほど不向きな相手もいないと思うけど、アーネストじゃなきゃだめらしい。「綺麗に咲いた薔薇に、人は何を求める? まさか薔薇に、明日のパンを焼いてくれとは言わないだろ」まあ彼は見るからに生活力旺盛ですから、どんな場所でも時代でも、アーネストひとりくらい軽々かついで泳ぎわたってゆけそうですけどね。

 ロマンの薫りあふれるおとぎ話に、すこしだけSMチックな毒のスパイスも振りかけて、でもあくまで品よくまとめて後味もわるくない、さすがベテラン作家さんの安定したお仕事ぶりでした。緒笠原くえんさんのイラストも、華やかな雰囲気を丁寧につくりこんであって、作品の世界によく合ってました。
 

 

 

5

フランス革命チックな物語

外国モノで、王侯貴族と庭師というあらすじの設定を読んで悩みました。
どうしよう~ラブロマンスだったら超地雷だしぃ。。。賭けに出ました!
何気にフランス革命を思わせるようなあれこれ設定があり(この本の舞台は架空の國オルランド王国だが)、許されない性癖に悩み内向的になり絵画を描く事が好きな貴族の子息。
あらすじからいうと、彼が庭師とくっつくという話になるようなのですが、読み進めて行くと、何と!SM調教が(驚)
SMといっても、そういうハードな滅茶痛いのではありません。
下克上的に立ち場が逆転して、潜在する子息のM欲望を引きずり出して自覚させるというものであります。
この庭師というのがとても謎な人なので、そこに愛はあるの?とか愛の行為じゃないとSMはダメという人には若干不安を誘うかもしれません。
しかし、この子息のトラウマからしてそうだろうな~というものがありますので、ちょっと都合はよすぎるけれど、そういう王道ラブロマンスで突き進みそうな所へ持ってきた変化球というのが、楽しめた要因です。

このオルランド王国、王侯貴族は血筋を重んじる為にどうやら近親婚とかのせいで子供が少ないとか健康な世継ぎが生まれないとかの弊害があるようです。
そんな王の一人娘である障害のある王女ハンナの婚約者になっているのが公爵の息子・アーネスト。
彼には誰にも言えない悩みがあり、多分まともに夫婦になれないかもしれない王女との婚約はありがたい申し出なのです。
公爵家では、宝石より高価だという薔薇の栽培をしてこれが副収入としてばかにならない額を叩きだしているのです。
国では自由民といわれるいわゆる平民層が台頭して、貴族と険悪になってきています。
その自由民を弾圧しようとする先鋒がアーネストの父なのです。
アーネストは絵を描くのが好きで政治には興味がありませんので、そういう情勢は若干人ごと。
王女が公爵家に来たおりに、温室で目を奪われた庭師のサイラス。
アーネストが自分で自制しようとしている欲望が頭を持ち上げてきて、しかしアーネストはサイラスに惹かれて行きます。

アーネストのこの性癖というのは、過去のトラウマによるものなのかどうかはわかりませんが、後サイラスによって暴かれるそれは、間違いなくトラウマによって育てられたものです。
今だったら虐待か児ポものですねぇ~何せなにも解らない子供に!
この自分がない、優しいけれど他力本願のアーネストの日より見な事無かれな人間性に魅力は感じないのですが、そんなオドオドして自分が変わることを怯えている彼はまさにマゾヒストです!
仕置きをされて喜ぶ人種だと思います。
サイラスにとっては、彼は大事な薔薇のような人なのでしょうか?
彼はご主人様という鬼畜な部分を持った人ではないと思いますので、多分あれはアーネストの欲望をみたすだけのものだったような気がします。
しかし、そんなアーネストを見て感じて触れて所有欲もでるというものでしょう。

さて、展開はフランス革命をなぞってください。

エンドの部分において、アーネストがサイラスに愛を問うシーンがあります。
その答えに、どう思うのか。それもお楽しみということで。


3

閉ざされた小さな国の王

王権制度貴族制度の崩壊を背景にしたSMチックな雰囲気を出しながら貴族の子息と
薔薇の手入れをするために新しく雇い入れた庭師とのラブストーリー。
革命の時代とも言うべき時代に、貴族の子息で跡継ぎでもあるアーネストは
薔薇を愛でながら引きこもりのように絵を書いて1日過ごしている貴族。
そして、国王の一粒種である王女の婚約者でもあるが、その王女は発達に障害が
あるみたいな、8才になっても片言しか話せず、本物の天使みたいな王女。

アーネストは、過去に家庭教師に価値が無い人間だと言われ続け、更に痛みと言う
快感を身体に覚え込まされ、同性にしか性的興味を抱けない。
しかし、そんな自分の呪われた性癖を被虐的に常に懺悔しているような感じ。
年端もいかない将来が不安な王女との婚約も、アーネストにとってはかえって
ままごとのように自分が大切にしている薔薇の館で絵を書きながら暮らす事を
安堵と共に受け入れているような内容でした。

そこへ現れるのが新しい庭師、黒髪に逞しいからだ、アーネストは心が揺さぶられる。
いつしか庭師を気にし視線で追いかける、そして愚かな自身に暗澹となる。
しかし、その庭師サイラスに待っていたのだろうと身体を奪われスパッキングで
快感を煽られて、いつしか心まで傾くアーネスト。

しかし庭師と思っていたサイラスには別の顔があり、アーネストは利用されていると
思い悩むが、所詮身体を弄ばれるだけの存在だからと全てが諦め気味。
ちょっとMっ気のあるアーネストとその嗜虐性を見抜き、更にある目的のために
アーネストの館に入り込んだサイラス。
すれ違いや過去のこだわりを抱えながらも揺れ動く時代の中で
新天地で共に新たな一歩を踏み出すまでのストーリーでした。

3

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