• 電子書籍【PR】
  • 紙書籍【PR】

表題作不器用な恋のあらすじ

乃木洋一郎 人気作家(室井真明)
笹倉優人 作家志望の弟子でフリーター 23歳

その他の収録作品

  • あとがき
  • ある一日:明日になるまでの間

あらすじ

売れっ子作家で完璧主義の乃木は、財布をなくし途方に暮れていた作家の卵・笹倉を拾う。頼りない笹倉を放っておけず、しばらく家に置くことにするが、全く生活能力のない笹倉に日々苛立ちが募り…!?

著者:小宮山ゆき

作品情報

作品名
不器用な恋のあらすじ
著者
小宮山ゆき 
イラスト
小椋ムク 
媒体
小説
出版社
白泉社
レーベル
花丸文庫black
発売日
ISBN
9784592877127
3.5

(19)

(2)

萌々

(8)

(8)

中立

(1)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
7
得点
67
評価数
19
平均
3.5 / 5
神率
10.5%

レビュー投稿数7

優しい二人を試す女のプライド!

小宮山ゆき先生の新刊が気になったので、デビュー作を読んでみました。コミックスには当てはまらないのですが、小説だと作家様のデビュー作で自分との相性がなんとなく測れるんですよね。結果とても好みでしたので、新刊を買ってみようと決めました。

丁寧な心理描写と淀みないエピソード展開にじわじわと掴まれてしまいました。視点が攻めと受けの交互になっていて、二人の心情が同時進行でわかります。交互視点だとコメディー?すれ違いのケンカップル?なんて予想しがちだけど、本作はピュアな初恋物語。とても新鮮でした。

多作な有名小説家と作家を目指す青年のカップリング。大学を出て一年ほどバイトをしながら作家を志す優人が頼りなさすぎて、大丈夫かなぁこの子?と心配になりました。でも、優人のその未熟な出発点こそが重要なポイントなのかも。

小説家の乃木が訳あって宿なしだった優人を自宅に泊めたことがきっかけで、作家とアシスタント的な半同居生活を送ることになった二人。始めはオドオドして恩返しに必死だった優人も、乃木の仕事や生活ぶりに触発を受け、少しずつ視野を広げていきます。二人が一つ屋根の下で生活しながらも、互いに距離感を保ちつつ仕事とプライベートを行き来する絶妙なバランスが、読んでいて心地よかったです。

優人のキャラクターが好きでした。いつも笑顔。争い事が苦手だから人が嫌がることを率先して引き受ける。相手に迷惑をかけるのも申し訳なくて、すぐに謝ってしまう。キャパオーバーになるとすぐに知恵熱を出す…。本来ならこういったタイプはメチャ苦手なんです。なのに優人に好感を持てたのは、彼が経験したことを大事にして、あらゆることに消極的だった自分を変えようと努力していくから。優人を見ていると、なんか励まされちゃうんですよね。

乃木は優人が書いた原稿をチェックをした時、優人は書くことは好きでも、書きたいものがないのだと察します。乃木は盛んに優人に遊べとアドバイスをしますが、おぼこい優人にはいまいちピンとこなくて…笑

優人は人生経験の少なさから、それまで自分がいかに恥ずかしいことをやらかしてきたかを徐々に思い知ります。それは初めて人を好きになって開いた扉でした。10冊の本を読むより、本気の恋をしなさい!(by 瀬戸内寂聴)を地で行ったわけです笑

本気の恋については乃木にも言えることで、彼はセフレだった彩美に対して酷い仕打ちをしてきたことに気付かされます。この彩美というキャラがなかなか刺激的でした。ヒールなのはわかってるけど、彼女が乃木に復讐するために、優人と寝て二人とも傷つけてやりたいという思い、倒錯的すぎて萌えました。もし彩美が男だったら、途端にリアリティを失って興醒めしそうな気がします。このエピソードが女性を挟んだ三角関係が好物なわたしにとっては萌えるクライマックスだったとしても、女性キャラがダメな方には受け付けないかもしれません。なので、妙なレビュータイトルは地雷避けで。

優人が乃木の優しさを知っているのは彼と一緒に生活して同じ仕事をしていたからでしょう。都合のいいセフレだった彩美にとってそこは知りえない、好きな人の姿だったんだろうなぁと深掘りすると、俄に生々しくなってきたので自粛します…

いやー、彩美じゃなくて優人みたいなのが魔性の女なのかも(戦慄)

小椋ムクさんのイラストがピッタリでした!優人の髪型や表情が文章のイメージどおりで、挿絵でも存分に楽しませてもらいました。

2

とても印象的なお話でした。

登場人物の描写がとても面白くて、良くも悪くもずっと記憶に残る作品だと思います。

特に受けの優人。
あとがきで「普通の子」と書かれてあって、どこが?!と思いました。
捉えどころがなくおっとりした雰囲気で”草食系”ならぬ”植物系”。
会話や行動がいちいち斜め上にいきがちで、個人的には超がつく天然に見えました。
それもこれも優人は自分を含めた人間というものに無関心であるため、社会性が若干乏しいようです。
名前のとおり優しい青年ですが、それは他人に無関心であることと自信のなさが起因する「害のなさ」であったりもします。
欠点ではなく個性としての面白さを感じ、これがどうBLに発展するのかとても引き付けられました。
そんな優人が一人の男性に強く惹かれていく過程がすごく面白かったです。
そのきっかけが唯一の生きがいである小説だったというのも説得力を感じました。

周りの人間からすれば優人は「放っておけない」「構いたくなる」人物らしく、攻めの乃木も優人の魅力にハマっていきます。
乃木は売れっ子小説家で人格的にも優れているように見えますが、その一面だけでなく優れているからこその傲慢さなども描かれていてやはり印象的な人物でした。

優人視点と乃木視点が交互に入り2人が心を通わせていく過程は本当に面白かったのですが、乃木が優人に恋心を抱き執着する過程がよく理解できませんでした。
というのも、私が男性的な魅力を優人に感じていないからだと思います。
正直、乃木が心も体もあんなにのめり込む要素が優人のどこにあるのか分からなかったので、そこの部分だけお話が性急に感じました。

当て馬として女性が複数登場しますが後味の悪い絡み方でした。
みなそれぞれの事情や葛藤があるにしろ、傷つけたのならばお互いフォローしてほしかったです。

印象的で読み応えがあってとても引き付けられたお話でした。
BL的にはあまり萌えませんでしたが、優人の成長物語としては文句なく面白かったです。

3

とってもシンプルなあらすじ

最初から最後までドラマチック!なBLではなく、なんというか本当に『AさんがBさんに恋をした』でいい意味で締めくくれる穏やかな作品。
受けが稀に見るピュアっぷりで、この子はよくここまでこの純粋さを維持できたなぁと、こりゃ、攻めも対応に慎重になるはずだわ…という感想です。
中盤から受けが攻めを好きだという描写が多く、あれ、これ、受けの片想いをひたすら追っていくのか?と思ったのですが、きちんと攻めの心理描写もあったので、両片想いだなぁ、可愛いなぁ、襲っちゃえよ攻めさん、とにまにましました。
最後までスルスル読むことが出来、日常に疲れて荒んだ気分が温かくなる作品でした。

3

帯買い!

ハイスペック攻め×ヘタレ健気受け
表紙買い、タイトル買いなどはあるのですが初めての帯買いでした。

タイトル通り、とても「不器用な恋のあらすじ」でした。
おふたりの出会いから思いが通じ合うまでが細かく描かれていて
読んでいてずーっとキュンキュンしました。

怒りっぽいけど器の大きい攻めさんも素敵だし、
計算のない純粋さでいっぱいの受けさんもかわいかったです。

恋愛は相手あってのもので、障害もたくさんあるけど頑張らないとね!
という所をすごく丁寧に表現されていたと思います。

個人的に、思いが通じ合った後のラブラブ+アルファがもっと見たかったので
萌*2で。

3

好き避け・・・意外にこの気持ちが解る(笑)

人気作家と作家志望の青年とがちょっとしたきっかけで出会い、
作家はどこか危なっかしい青年がイラつきを覚えながらも気になりいつしか弟子と
言う立場で半同居しながら、どちらもかなり不器用な、それでいて、苦しくなるくらい
恋をしているような、タイトル通りの作品でした。

受けになる作家志望の優人は、本人は普通だと思っているのですが、
周りからみたらかなり危なっかしいタイプで、更に衣食住や感情面において
かなり天然気味な淡泊さんなのです。
情緒面がどこからか育っていないのではないかと思うくらい感情の起伏が少ないけど、
真面目で優しくて人当たりは良かったりするのです。

そんな優人が酔って財布も無くした時に偶然出会い、特に面倒見が良い人では無い
作家の室井は、顔色も悪かった優人に声を掛け、はっきりしない物言いが面倒になり
このまま凍死されるのも目覚めが悪いと思った理由で自宅に一晩泊め、
面倒ついでに自宅まで送るが、そこで優人を待ち構えていた半ストーカー女性と
もめている現場を見て、またしてもイライラしながらもお節介のように
自宅に連れ帰ってしまい、そこで初めて室井が人気作家で自身も作家を目指していて
いきなり弟子にして下さいと頼みこむことから始まる付き合いです。

この二人、特に優人にとっては無自覚天然でいつの間にか恋が育っていた感じで、
そこまでいくにも、かなり遠まわりしながら、人に言われて気がつくくらい自身の
感情にもニブイ人なんです。

それでも真面目で料理でも壊滅的に下手なのに、それでも一生懸命頑張る姿に
室井は初めはイラつき怒り、次第に呆れから同情、絆される感じで、
懐き始めた雛みたいな気持ちから次第に肉欲を含む思いになって行きますが、
相手が男で小説家志望と言う事もあり、可愛い弟子だと思い込む努力をしてます。

どちらも不器用なので、すんなり相愛ハッピーになるまで双方とも遠まわりして、
相愛になったと思った後も、優人の「好き避け」なんて行動ですれ違ったりします。
でもこの「好き避け」って何となく解りますよね、好き過ぎて相手が気になるけれど
傍に寄られ過ぎると逆に逃げ出したくなるくらい恥ずかしい思いを抱いたりする。
初恋にはありがちな現象の一つだとニヤニヤしちゃう展開で楽しかったですね。

6

この作品が収納されている本棚

マンスリーレビューランキング(小説)一覧を見る>>

PAGE TOP