17歳。ここは寄宿舎。転室生は晩生な僕を性に導く。

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表題作燃ゆる頬

ちょっと奥手な17歳
三枝
脊椎カリエスの療養で休学したため1年歳上

あらすじ

彼は、脊椎カリエスで一年休学した、一つ年上の同級生。
蝋みたいな肌に、薔薇色の頬…別世界の住人のような佇まい。
誘う彼。惹かれる僕。花に蕩ける蜜蜂のように。
「…ね、次はもっと深く…してみない?」
僕の射精を口で受け止めながら、彼はーー。

それは性愛なのか、恋愛なのか。
小野塚カホリが描く、堀辰雄が記した脆く儚い思春期の秘め事。

作品情報

作品名
燃ゆる頬
著者
小野塚カホリ 
媒体
漫画(コミック)
出版社
マガジン・マガジン
レーベル
ジュネットコミックス ピアスシリーズ
発売日
ISBN
9784896442311
3.9

(16)

(9)

萌々

(1)

(3)

中立

(2)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
4
得点
60
評価数
16
平均
3.9 / 5
神率
56.3%

レビュー投稿数4

久々の耽美の極み

原作付きなので完全オリジナルではないけれど、小野塚先生の新作を読んだのって何年ぶりだろう。
こういう、寄宿舎とか、脊椎カリエスとか、もう古い小説の中にしかないような設定が、小野塚先生の絵で形にされると、それは時代や流行を超越した、一周回って最先端的な斬新さを感じる。
今では忘れられてしまった、本棚の片隅にひっそりと隠されていたような「思春期」の高揚感と残酷さ。
BLが、まだBLという名前を獲得する以前の、耽美JUNEの雰囲気を存分に味わえます。
オールドファンには懐かしく、若い人にも耽美への扉としてぜひ読んで欲しい本。
普通のコミックスより大きめなサイズの本なので、迫力が違います。



7

空白をよみ、余韻を描いた小野塚さん

原作小説「燃ゆる頬」は一見少ない文字量に見えますが
その行間、空白にいたるまで言葉にできない言葉があり、
その文字にさえおこせないものを漫画にした小野塚さんは素晴らしいです。

生と死、恋、ほとばしる性と懊悩。
時代背景により表現が古風で清潔であることが
相反した耽美的でエロティックな魅力を引き出しているようにも感じます。

また、原作のある作品は、いわば描き手(漫画家さん)の目から原作を見るようで
作品全体を楽しむのと同時に、描き手という翻訳者がどのような仕方で物事を捉えるのか、
また原作のどこにより深く心の重きを置いているのかを読み解くのも楽しみのひとつです。
見えない余韻さえも描ききった小野塚さん、すごいなぁ…。


堀辰雄さん、小野塚カホリさん、
それぞれの感受性からなるものに揺さぶられる作品です。

7

緻密な澱の中から

小野塚さんの原作付は団鬼六作品(「美少年」「美剣士」)、
上田秋成作品(「雨月物語」)に続き三度、と言う加減と
なりましたか。
そして今回の堀辰雄さんの原作は実はネット上で気軽に
読む事ができます。青空文庫にて公開されています。

旧仮名遣い表記 http://www.aozora.gr.jp/cards/001030/card55425.html
新仮名遣い表記 http://www.aozora.gr.jp/cards/001030/card4814.html

今回小野塚さんが原作に対して行われたのは行間の
奥底の読み解きでしょう。
この原典自体が実は耽美とも言える代物なのですが、
この原典に限らず同時代の文学には何かしらそう言う
薫りが潜まされていたのです。
それをどう描き出すかは作家それぞれの裁量ですが。
この原典はそう言う薫りを簡素な文章で淡々と描いた
佳作でした。
その行間を小野塚さんが補うとこうなった、と言う
次第です。

この本の帯の惹句は決して嘘ではありません。
原典と並べて読んで戴くと、多分合点が行くかと。

7

最期はきっと綺麗な思い出に

 耽美な雰囲気が全編に亘って漂っていました。儚い青春の中で輝く少年達に、小野塚先生のタッチがとても合っていますね。三枝が美しいのはもちろん、主人公の少年もあどけなさが残りつつ、大きな瞳が愛らしい美少年。三枝に心酔していく彼のいじらしい葛藤や、歓喜に共感できました。

 初めて三枝が主人公を誘った時、彼の大人びた仕草が目立って、きっとからかっているだけなんだと感じたんですね。実際、彼自身も最初は主人公を利用しただけだったと認めている。だから、私は他に本当の想い人がいるんだと思っていたんです。でも、そうではなくて、彼は病気と美貌のせいで、ただただ孤独で、悪意に晒されがちな少年だった。純粋な好意と思いやりで接してくれる主人公に、今度は三枝の方が心酔していった。人は見かけによらず、様々な魅力や力を秘めているものだなぁと感じました。結末は悲しくても、彼は2人が共に過ごした日々を天国で穏やかに思い出せていると信じています。

1

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