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表題作虜囚

国崎,特高の刑事
白井蓮司,プロレタリア文学作家

同時収録作品ぼくはね(前編・後編)

河野、ヤクザ
藤本香織、風俗嬢

同時収録作品歩け歩け

体育教師
森下淳二、高校生

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

書下ろしを含めた「ぼくはね」「歩け歩け」、そしてあの衝撃の話題作「虜囚」を収録。「囚われているのはどちらなのか」--それは魂を侵食する幻惑の監禁愛。小野塚カホリが贈る新世紀への挑戦状、受けてみて!

作品情報

作品名
虜囚
著者
小野塚カホリ 
作画
小野塚カホリ 
媒体
漫画(コミック)
出版社
マガジン・マガジン
レーベル
ジュネットコミックス ピアスシリーズ
発売日
ISBN
9784906011865
3.7

(9)

(5)

萌々

(0)

(2)

中立

(1)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
6
得点
32
評価数
9
平均
3.7 / 5
神率
55.6%

レビュー投稿数6

終わってからわかること

舞台は昭和初期、大日本帝国では左翼を思想犯とみなし取り締まりをしていた。
与党代議士が暗殺される事件が起こり、共産党系の組織に属するプロレタリア文学作家の白井が特高(左翼を取り締まる特別警察)によって監禁、拷問される。
屈しない白井に暴力を振るううち、国崎に奇妙な感情が湧く。
白井に「笑え」と言った。

以前に街中で女と一緒にいる白井を見かけ、そのときの笑顔を覚えていて
自分その笑顔を向けて欲しいと思ったらしい。
特高で暴力を振るい続けるうち無感動になり、自分の感情がわからなくなってしまうかわいそうな人。
すべてが終わった後に残る感情は何か。

私好みの殺伐系。(個人的にそう読んでいます)
国崎の見せる執着は恋といっていいのかすら迷います。
この作品に限らず、小野塚さんの描くお話には含みがあって
登場人物の感情を完全にわかることはできないように思います。
あくまでも想像の域を超えないというか。
先の読めないところが魅力です。


『ぼくはね』ヤクザ×ふたなりの風俗嬢
男なのか女なのかわからないけれど、好きになるのは男の人。

『歩け歩け』高校生同士
久しぶりに会った幼馴染が自分を突き放してくる。

2

ゾクゾクするのが楽しみ

独特なストーリー展開が魅力的な小野塚カホリ先生の作品。
ラブラブなハッピーエンドとか、王道ものからは外れた異彩。
いつも、どんなゾクゾクがあるのか楽しみに読んでいる。

どの短編も面白かったけど、、、
「ぼくはね」
ふたなりの編では、胸があるの描写は初めてだ。
正直〜主人公に、胸がある描写は好きではないなぁ〜。
けど、男でも女でも無い、子供を作る事もできない、産む事もできない。
そんな存在の藤本。
数奇な人生を歩んでいた彼は、ただ愛されたかったのね。

「虜囚」
丸々1冊で読みたかったな。
これは、完全に壊れている・・・国崎。

とても、面白かったです。

0

囚われたのはどっち?

表題作『虜囚』は痛くて切ない話でした。
暴力描写があるので苦手な方は注意。最後もハッピーエンドではありませんしね。
刑事の攻めがある事件に関わっている人物とつながりのある作家の受けを閉じ込め、真実を吐き出さそうとします。
でも攻めは受けを街で見かけることがあって。そのとき見た笑顔見たさに、「笑え」と言い何度も殴ってしまいます。
攻めはちょっと狂ってるのかも。「愛情」が歪んでるというか。

初めの1ページ目の「私の手にはお前の」の絵の手に乗ってるのはなんだろうと思ってたんですが、最後まで読んでわかりました。
それを攻めが飲み込むシーンが印象的です。
結局、自分の感情がわからず受けという人間に囚われていたのは攻めだったんだなあと。

表題作意外には『ぼくはね』という話が印象に残ってます。
読んでびっくり。受けがふたなりでした。
ふたなりっていうと18禁のエロ漫画にでてくるイメージしかないんですけど、小野塚先生の手にかかれば切ない話になりますw
胸も男性性器も持っているけど名前は女で好きになる人は男。でも妊娠しないし性器で感じることもできる。
そんな受けは風俗で働いていて。
自分が女なのか男なのか何者なのか時々わからなくなる、愛してくれるなら誰でもいい、と言っていた受けが切なかった。
これはハッピーエンドで、攻めもいい人でした!

1

虜囚、読者も囚われる

痛い。痛いよ…
文学的なのは時代性?の短編集。

「ぼくはね」前編・後編
ヤクザもの。
そして、ふたなりもの。(小さいペニスと、小さい乳房を持つ)
ここで凄いと思うのは、受けの風俗嬢(←ふたなり)がシーンによって本当に少女に見えたり少年に見えたりするところ。
ヤクザの組長が風俗嬢とプレイの最中に腹上死し、組の幹部が嬢を始末することになり山奥で2週間過ごす。その間の2人の通いあう心、といったお話なんだけど。
BLとして読むのは微妙な感じ。それだけ男子と女子の両方であり半分である両性・半陰陽のメンタリティの揺れ、というか不安定さが見事に描かれている。

「歩け歩け」
幼馴染の淳二が「ホモ」という事で高校で孤立している。龍ちゃんはいつまでも友達でいたいけど…
その気持ちは、少し淳二のことが好きなのかも。
少し純真で、少し残酷な10代の季節。

「虜囚」
時代は昭和初期?
共産主義者・左翼を熾烈に取り締まる特高の姿。
特高の刑事・国崎は、特に厳しい拷問をして取り調べた左翼たちを死に至らしめていた。
続いて検挙したのは、左翼的小説家・白井蓮司。
殴る蹴る、犯す、そして蓮二の婚約者まで集団で暴行(?)…そして無理やり歯を抜いて。
結局蓮司は元々無実で、だが釈放された後はどこかに入院し行方知れずとなる…精神崩壊?
国崎は後悔しているのか。
何も感じられずエスカレートしていった自分に何を感じたのか。
国崎の暴力性も結末も、非常に後味が悪い。が、ゆえに衝撃的な物語。


バッドエンド系で文芸の香り。今どきのBLとは随分違う。でも私には面白かった。決して読みやすくはないけれどね。

0

若干、キャパオーバー orz

『少年四景』というCDが強烈に印象に残った作家さん。
以前、たまたま古本で見かけたので本作品を手にとってみたのだが …… 。

『ぼくはね』は、両性具有のコールガール(?)とヤクザの恋のおはなし。
両性具有者を素材にするという時点で抵抗を感じた。
ストーリーとしては、意外にもハッピーエンドである。
ヤクザ(攻)の情愛の深さが、ちょっとイイ。

『歩け歩け』これは幼なじみの高校生モノという以外は印象に残っていない。

『虜囚』表題作。昭和初期、特高の国崎と“赤狩り”によって捕われた作家・白井。
国崎という人物が、非常に歪である。もともとSではあるんだろうけれど、己の感情を正しく把握することも不得手なら、その表現方法もあらぬ方向へとズレている。
正直なところ、読後感は悪い。

どの作品にも共通しているのは一種の文学的な香りがするということだろうか。
(寺山修司氏を彷彿とさせるふしがある)

ただ、あくまでもフィクションなので、これは個人の嗜好の範疇によるもの。
単に私のキャパを越えていただけのことで、作品自体の評価にはなんら関わりのないことであるのだが、どれかひとつ評価を選択しなければならないので“中立”とさせていただいた。読み終えて時間をおいても尚、これだけ強烈に残る作品というのも珍しい。

1

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