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表題作ヘブンリーホームシック

太田,転勤でイギリス勤務になったリーマン
行貞,イギリス赴任中のリーマン,偶然会った元同級生

その他の収録作品

  • bonus track(描き下ろし)

あらすじ

“好き”だけで 触れたわけじゃない 「ねえ、オレら ゲイなの?」 イギリスで再会した 元同級生の太田と行貞。 ホームシックで参っていた2人は 足を絡め、腕を抱き、ひざ枕を許したり…。 その行為はしだいに心も侵食し、 互いに離れがたい存在になっていた。 ある夜、ベッドですり寄って来る行貞に たまらなく愛しさがこみ上げた太田は、 強引にキスをして、衝動のまま欲望を 押し付けるのだが――。 非日常に揺れる エロティック・異国ステイ。

作品情報

作品名
ヘブンリーホームシック
著者
京山あつき 
媒体
漫画(コミック)
出版社
祥伝社
レーベル
on BLUE comics
発売日
ISBN
9784396783600
4.3

(233)

(130)

萌々

(67)

(28)

中立

(5)

趣味じゃない

(3)

レビュー数
28
得点
1007
評価数
233
平均
4.3 / 5
神率
55.8%

レビュー投稿数28

気持ちが伝わるストーリー

異国の地イギリスで偶然再会した二人。

ロンドン勤務という響きに、初めは意気込んで来たものの
言葉の壁、生活習慣、食生活・・
1か月で孤独の闇の限界に自然と涙がこぼれた太田・・・
そんな太田に声をかけたのが、高校時代の部活の友達だった行貞。
行貞もまた、太田と同じように・・太田以上に重傷で・・
太田の身体に身を寄せる行貞。
太田もまたそれを特に拒むことなく
2人して自然と人のぬくもりを求め体を寄せ合い眠った。

言葉の通じない知らない土地で、精神的に限界を感じた時に
日本人の知り合いに会ったら・・・
そりゃぁ、すりすりしたくもなりますね。
大の大人の男でも、寂しいものは寂しいし悲しくて涙も出るでしょう。
その気持ちをなんとか我慢して乗り越えようとする二人の気持ちが
非常にリアルに表現されています。
最初はお互いの寂しさや辛さを埋めるためだった。
肌を寄せ合い、足をからめ、ぬくもりを感じながら眠る・・
それがだんだんと心のつながりをも望むようになり、
互いになくてはならない存在になっていき・・・
あるとき、いつものように一緒のベッドですりすりしてくる行貞に
愛おしさのあまりとうとう欲情してしまう太田。
とても自然な流れのように感じましたが
突然の出来事に、太田のその気持に素直に答えられない行貞。
健全な成人男性である二人だから、当然あれこれすれば
生理的な現象は起きるわけで、そこに愛情がなかったら
ただの性処理になってしまいます。
少なくとも二人共、お互いをいろいろな意味で必要としていたと思います。
その時はまだ恋人とかいうものではないけれど
傍にいて欲しい、離れられない存在。
「好きだけで触れたわけじゃない」と帯にも書かれている通り
好きだけどそれだけじゃない、同じ境遇だからこそ理解しあえる
好きとか嫌いとかそんな簡単に片づけられないような
見えない心の絆でつながっているようなそんな二人。
心が病んで空洞ができるとそこを埋めようとして本能で何かを求めてしまう。
からからに乾いた土に水を注ぐように、
日本人のぬくもりに飢えていた2人が偶然出会い
渇いた心が少しづつ潤いを取り戻していきます。
寄りかかれる人が・・・受け止めてくれる人がそこにいて、
寄り添うだけで良かった行貞とそれ以上を求めてしまった太田。
ちょっとした気持ちのズレはあったものの
お互いを必要とすることには変わりはなくちょっと距離を置いたことで
なお一層愛おしさが増した様子に安心しました。

外国(イギリス)でのリアルな暮らしや常識など
普段日本での生活しか知らないものにとっては驚くことばかり
その辺も分かりやすく表現されていて、理解しやすかった。
日本国内での移動でさえ、まるっきり知り合いのいない場所への転勤は
やはり勇気のいるものだし、環境の変化は誰でも多少なりとも応えるもので
お互いがそんな極限での生活に舞い降りた天使のようだったのかもしれないですね。
1冊かけて、ゆっくりと気持ちの変化をたどっているのも良かったです。
急激に変化して無理を感じるより、自然な流れが理解できます。
そして何より、あんなに帰りたかった日本に帰っても
やっぱりお互いにメロメロで「俺たちバカップル」と自ら宣言してしまうほど
無くてはならない存在に、完全に定着したこと。
「からだがとけて、ひとつになってしまいたい」
それってすごい台詞だけど本心なんだなぁて思いました。
二人で孤独の闇から這い出したんだね。
本当に辛い時期を共に乗り越えた二人だから
これからの幸せもきっと二人で分かち合っていくんだろうな
そんな風に思えるラストでした。





14

派手さはないけれど、じっくりと読ませる

イギリス暮らしの大変さが、読者も追体験できるように丁寧に描かれていていました。

人の温もりを求めるって人間の根源的な欲求だと思うんです。
赤子のときはそれこそ抱いて育てるみたいな感じだし、
幼児が何かあれば「抱っこぉ!」だの「ぎゅっとして!」だの要求して、抱きしめてもらう事によって心の粟立ちをおさめている様子を見ているとああこうやって皆、育ってきたんだなぁって。

異国にいて言語の壁や文化の違いで、まるで自分自身が社会の中で幼児のような存在に感じられるホームシック。

極限状態の孤独のなかで、人の温もりで無条件に心が安らぐ。
足を絡め、寄り添って眠る。
最初、それに性的な意味はなかったのだけど、健全な男子二人がいれば温もり以上のものが欲しくなるのも致し方なく、太田が均衡を破ってしまう。
その後、それは一時的な気の迷いか、恋なのかわからないけど、少しずつ心の距離が縮まっていく様子がいいです。
結婚が決まった同僚の「いっしょにいるのが自然に思えたからよ。」という言葉を聞いて何か感じた二人は、その帰り道、ローションを準備して一歩先に関係を進めようとしたり・・・。

他の男には興味がないからゲイじゃない、好きになった男は相手だけってって最強じゃないですか?この関係。
ノンケ同士なのに性差の違いを超えちゃった関係って強いと思う。
でも未だに一時的なものかもしれないと思っている二人が一緒に一時帰国して異国でのさみしさの魔法が解けてしまうのか・・と思いきや、もうなんですか!このいちゃつき、バカップルぶり。
互いのメロメロぶりをしっかりと見せつけてくれました。

もしこの二人が日本で出会ったら・・・おそらく恋には発展しなかったと思うんですよね。
実際、高校時代は気の合う仲間で終わっていたし。
でもきっかけはなんであれこの二人はイギリスのおかげで恋に落ちて、プロポーズしあう関係にまで育って、最後は男二人雨に濡れてても誰にも気にしないそのイギリス社会の寛容さに救われているとこが良かったです。

この作品は自分が立てたトピ「ちるちるのランキング圏外だけど、心の琴線に触れた作品を教えてください」
http://www.chil-chil.net/answerList/question_id/4967/#ans_72025
で教えていただきました。

派手さはないけれど、じっくりと読ませる描写が優れた良作でした。
教えていただき本当にどうもありがとうございました。


12

やさしく触れるのたまらない

ぜひたくさんの人に読んでほしいと思える作品です。

大好きになってしまったカップル!
太田と行貞(ゆきさだ)です。転勤先のロンドンで超偶然再会するふたりは高校の同級生で、クラスは違ったがテニス部の仲間だった。最後に日本で会ったのが6年ほど前らしい...というところから始まります。太田はこのときすでに重度のホームシックにかかっていたので、行貞と再会したときには"もう二度とオマエを離さないっ!"みたいに抱きしめる(抱き合う)んです。

行貞はお酒も飲めないし、このふんわり感がたまらなくかわいくてモテる雰囲気なんですよね。ふたり一緒にいるシーンはなんだかもう...キュンがキュンしてキュンキュンです(笑)。だけど、読後30分ぐらいすると切なさが増してくる...私には、そんな魔法にかかったような一冊でした。なにも考えたくないわけじゃないけど頭がいっぱい、なときに読み返したいなぁ。

それにしても、息を呑むようなステキなタイトルです。細かな部分まで独特、流石な表現力で、もうこれは京山マジック!そして、自分たちさえわかっていれば、しっかりしていればいいんだ…というようなあの感じは、あの場所で、あの環境でホームシックにかかった者同士だからこそ出てくるものなのでしょうね。太田のやさしさ。あぁ、ほかほかなふたりでした。

異国の地での魔法にかかったり、心が大きくなったりたくましくなって。おそらくいい年頃の彼らだろうから、故郷に帰るときがきたら…と思うとまた勝手にいろいろと考えて胸が詰まりそうですがね。ロンドンの曇り空ではなく、このスカッと晴れた空を思わせるエンディングは、切ない気持ちを少し香らせながらもなんてシアワセ気分をくれるのだろうか、と思うのです。

11

迷宮のリコリス

これ、気になってたんです!
孤独で淋しい留学経験者な自分(笑)
今思いだすと気恥ずかしいほど弱気になっていたなーって思うんです。
そんな環境で高校時代の仲間に出会ってしまったらって思うと・・・。
ああ、やっぱり読んでみたいです!

ラブメーターもエッチメーターも0から100まで読める

ストーリーラインもコマ割りの流れも私好み。

はじめはお互いに故郷から離れて、寂しくて寂しくて涙が出るほどホームシックになった。寂しい二人は出会った瞬間喜びがあふれた。一緒にご飯を食べたり、同じベッドで寝たりする二人を読んで微笑ましい。好きかどうかまだ分からない二人は本能に任せて挿入以外はした。次の日は普段通りに一緒に朝ごはんを食べて、さよならをした。その日から相手のことを初めて意識して、寂しいと好きの境がはっきり分からないからエッチはするけど挿入はしない。

「一緒にいるのが自然に思えた」って友人の結婚の決め手を聞いて、覚悟を決めてフールコースのエッチをする。その後、帰国してもいちゃいちゃする。そしてイギリスに戻って、相手の転勤の話を聞いて、離れたくなくて仕事を辞めてもいいって結論を言い出したとき、感動します。ラブーメーターもう~MAXになったわ(´艸`)。

エッチシーンも萌えた。最初は「指を入れたら殺す」とても初々しいですね。最後は「ローションないけど入れてほしい」、大胆すぎて、もうたまらない(*´∀`)クスクス。

8

天国みたいだろ?ユキサダ

いやぁ もぅ やはり京山さんは凄い漫画家です
ただ、甘いだけでは無く、本人も蓋をしていた内側を暴く描写が素晴らしいです
でも、加減が良いのでエグくない 作品に深みだけを与えるんです 今作は今まで一番好きです

舞台はイギリス、高校のテニス部の部活仲間のユキサダとオータが互いの赴任先のイギリスでばったり出くわす

しかし、その時には二人共慣れないヨーロッパの言葉、食事、文化に追い込まれてて相当参っていた

そんな異国で孤独と寂しさが絶頂の時に出会った昔馴染み、二人の物理的距離は心の寂しさを埋める様に近づく

そして、ある日オータに膝枕をしてもらっていたユキサダの頭にキスをするオータ
『えっ、なに?』
『いや、なんとなくしたくなったから..』
いやいや、なに?って聞いたユキサダ あんたも既におかしいよ!友達の膝枕で寝転ぶってないでしょ!!
ってツッコミましたww

その日の晩にオータは堪らずユキサダにキスをする
ユキサダも戸惑いながら、オータに触られ自らパンツを脱ぎオータの手に自分の手を重ねる もどかしいとでも言う様に
オータはユキサダのアナルに入れようとするが、
ユキサダは『怖い やめて』と拒む
その口元に興奮しフェラを強要
口内発射したオータの精液を吐き出しに行ったユキサダ
オータはここでやっと少し冷静になったと思います
自分のやった事に してしまったことに..
タオルを持ちユキサダを追うオータ
下半身を露出し、口をゆすぐユキサダを優しく包むオータ
そして、唇を重ねる
突き放し逃げるユキサダ
『こっちくんな バカオータ』と子供の様に罵るユキサダ
そんな、ユキサダと竿をそれは、それは優しく包み咥えるオータ
喘ぐ ユキサダ

ここが 良かった ここも 良かった どう? 天国みたいだろ?
ユキサダ

このモノローグがとてつもなく可愛くて悶えました..
自分が良かった事をユキサダにもやるオータの名誉挽回ともいえる一生懸命の行為に

しかし、その日を境に来なくなるユキサダ
ユキサダにもう一度来てもらう為に美味しいもの用意しようとするオータ
腐心して考えたのがすき焼きでした..
アホくさくて可愛いオータがたまりません

そんなオータに 食べ物しかないんか..と戸惑いを見せるユキサダ

彼はオータが自分を好きだったのかと思ってました
すき焼きを食べる時にそうもらしたユキサダ
しかし、オータはそこまで思い至って無かった

ユキサダを気遣い、あんな事は2度としないからと別々で寝る事を伝えるオータ
そんなオータの行動に何処か寂しさを覚えるユキサダ
『俺はオータの寝たい..』
率直に聞こえる台詞ですが、たんに人肌恋しかったからポロっと出たんです その瞬間は
しかし、それをSEXととったオータはユキサダに優しくキスをする
ユキサダ あれっ?そういうイミ? それは..そういうことだったんだ
と初めて自分の思いに気付くユキサダ

でも、淋しいだけかも知れない
ホームシックで正気じゃないかも知れない
もともと恋なんて正気じゃないだろ

こうして、二人は人肌恋しいのか純粋な恋なのか混在した関係になっていきます

でも、恋なんて純粋な思いだけじゃないと思うんです
その時の心の隙間を埋める様な始まりや思いなんて誰でもある事だと思います
彼らはそこに同性っいうマイノリティなキーワードが入っているから、もどかしくなるんです

でも、だからこそ、この環境でしか出逢えなかった思いや越えられなかった線だと思うとそれだけで胸がグッと掴まれます
真っ新で純粋な思いだけじゃない恋って凄くいいなぁって

そして、二人で夏季休暇を利用して帰国
二人は帰国と同時にこの愛おしい気持ちが霧散するのではと危惧していたが、想いは深まる一方でした

もうここからは色ボケ馬鹿ップルぶりが可愛過ぎて止まりません
恋しい愛おしいと言う気持ちを隠すこと無く見せ合う二人

わだかまりも無くなり異国で二人頑張ろうと決意新たに戻ります

程なくしてユキサダにイタリアに転勤の打診がありました
断るユキサダ
でも、オータも色々考えていて、もしユキサダが転勤になったら俺は仕事を辞めてついていく 仕事は現地で探せばいいとプロポーズ
もぉ どんだけ好きなん!!って絶叫ですよ
そんな、オータにユキサダもプロポーズで返します

異国で色んなとこがルーズで不便だけど、男二人でいても咎められること無い緩さもまた異国ならではの雰囲気でした
この土地で当分二人でいようと告げるユキサダにはこの異国が、もたらしたおおらかさが身についてる様でした

特異な環境から育った恋に胸が高鳴りました
京山さんのモノローグは物凄く想いが伝わります

もどかしい思い 恋しい思い 戸惑い 沢山の思いを抱えて結ばれた二人が大好きです

沢山の要素を含む京山ワールドか好きでたまりません
今回も素晴らしい作品をありがとうございました

8

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