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◆SMOKING ROOM
冒頭を飾るこの作品が一番お気に入りです。タカナシ先生はきっと可愛い先輩受けがお好きなのかな。煙草を燻らせながら伏し目がちな表情が色っぽい先輩が、徐々に後輩にペースを乱され、本心を露わにしていく様がとっても可愛くて萌えました。逆に後輩の表情がどんどん大人びていくところも素晴らしい。2人の続きをもっと読みたかったので、短編なのが残念です。
◆ノンフィクション・レッド
油絵専攻の美大生・磯崎は、バイト先の先輩である安藤を物理的に傷付けた時に浮かぶ色に執着しています。頬をつねった時の赤、背中を引っ叩いた時の赤、キスマークをつけた時の赤などなど。安藤がかなりお人好しで素直な性格なので、磯崎の行動は結局すべて許されてしまう。でも、なんだかんだ最初からお互い好ましく感じていたからなんだろうと思います。歪な関係なのに、あくまで健全な雰囲気の作品でした。
◆君のつくえで踊るぼく
これも会社の後輩×先輩もの。多分この後輩が机を片付けないのはわざとなんだろうなぁと早い段階で気付いてしまっても、どう先輩を自分のものにするんだろう、と期待に胸を膨らませてしまいました。そうやって気を引こうとする後輩も可愛いし、文句を言いながら毎回律儀に片付けてあげる先輩も可愛いので、萌えずにはいられないのです。読み終わった後にタイトルを見返して、また萌えられる、素敵な作品でした。
実質的なエロなしですが、エロなしだからこそ、この、何とも言えない意地悪な雰囲気が逆にエロくてツボでした。
中でも、底意地が悪くて臆病なツンデレな攻めと、天然な受けの「ノンフィクション・レッド」とかは、エロなしだからこそ好きなお話。
他にも、受け攻めすら定かではないけれど、お互いに臆病な「SMOKING ROOM」や、一筋縄ではいかなそうな「いびつな靴底」に見え隠れする意地悪な感じも好き。
全体に限られた室内だけでお話が展開する作りと、このチョット気障な絵柄の雰囲気も似合っていて、私の好みとしてはかなり神寄りの萌2です。
二作目の「まっくらやみで君と、」でストーリーは勿論のことスタイリッシュな絵柄に惹かれてしまいました。
スタイリッシュな色気を感じる絵柄はもちろんのこと、先生の描かれる天然さんの無邪気な表情がとにかく可愛らしくて、こんな顔されたら堪らないよね、という顔ばかりなのです。
絵柄そのものは少し神経質そうなのに、天然さんの表情にはそういった絵柄の神経質さが消えて、ただただ無邪気。そのギャップが非常に好みでして。
あまりにも二作目が良かったので、一作目にあたるこちらも読んでみることにしました。
全部で6つのお話が収められた短編集でエロは皆無、キスもしていませんが、絵に色気があるからでしょうか、裏にそういう熱を含んだようなお話ばかりです。
「ノンフィクション・レッド」以外はどの作品も二人だけで、派手な動きもありません。
会話劇を楽しむといいますか泥くささが皆無の都会派だと思います。
冒頭の「SMOKING ROOM」
こちらが一番好き。
ゲイの湯浅は喫煙室でしか出会えない他部署の藤沢のことが好き。いつものように二人で煙草を吸っていると藤沢が失恋したと言いだして・・・。
しかも藤沢は実は煙草が嫌いなことも判明。
自分の事を「僕」と呼ぶ藤沢は、二作目の「まっくらやみで君と、」に登場した課長に通じる天然さ、可愛さがあって、個人的に好きなキャラです。
「夢現ブレイクタイム」
突然枕元に立っていた夢を食べて生きているという男の話。
ファンタジー系がいまいち苦手なのでちょっとこれは作品の意図を掴みきれません・・・。嫌いではないんですが、正解がないような話に感じます。
「いびつな靴底」
これ面白かった。
憧れの靴屋の職人さんの元へ弟子入りを願う青年がやってきます。
弟子入りの条件は自分の作った靴を履いて、自分を踏みつけてくれ・・・と言うんです。
踏みつけてくれというからにはきっとそういう性癖があり、どMなんだな?と思って、踏みつけながら「この醜い豚野郎!!」と罵ってしまうのだけど、職人はそんな性癖もないうえそんな言葉はちっとも求めておらず・・・・。
「ノンフィクション・レッド」
カフェで働く先輩の安藤はとても色が白い。美大で油絵を描く磯崎は先輩の肌をつまんで肌が赤くなる様が芸術的で美しいと入れ込んで、絵を描く際の資料と称して安藤の肌をつねってみたりしているが、少々天然ぎみの(この人も自分を僕と呼ぶキャラ)安藤は少し邪な心が生じている磯崎の意図に気づかない・・・。
「君のつくえで踊るぼく」
会社で隣合わせの席に座る上司と部下の話。やる気もあって仕事もできる部下なのに唯一の欠点はデスク周りが汚いこと。それをついつい几帳面な上司は放っておけず片付けてあげている。
ある日風邪で休んだ部下の家に行ってみると、まさかの・・・。
BLファンの私は「まぁまぁ」と言ってますが、アートファンの私はコーフンしてます。そんな感じ!とにかくオシャレで、系統で言えば中村明日美子先生タイプの絵なんですが、もうちょっとモードな感じですかね。説明が難しいですが。5CP出てくるんですが、短編集って言うのもありますが、ハッキリと恋愛に発展するカップルはいません。なので、エロもなしです。多分、キスも無かったと思う。
一番最初のSMOKING ROOMが設定も絵も展開も一番好きでした。タバコの煙の描き方がステキでした。十分キュンキュン出来る場面はあったと思うんですが、全体的にちょっとシュールなトーンなので、BLに求めるキュンキュンはあまり得られなかったです。アートとして見たら素晴らしいけど、マンガだと思うと満足度が低いかもです。
■感想
本書には「SMOKING ROOM」「夢現ブレイクタイム」「いびつな靴底」「ノンフィクション・レッド」「君のつくえで踊るぼく」の5作品が収録されています。
作品ごとに、実に多様で独特な世界観が描かれている一冊です。
特に「ノンフィクション・レッド」と「君のつくえで踊るぼく」は登場キャラクターが可愛かったり、ストーリーがとても魅力的でした。
残りの3作品に関しては、残念ながら個人的にそりの合わない作品でした。
ただ、そりが合わないハズなのに、作画や世界観に引き込まれている自分を発見して、少々戸惑っています(良い意味で)。
評価は「萌」としたい所ですが、読む人を選ぶ作品と判断したため「中立」とさせて頂きます。