SS付き電子限定版
親友同士の両片想いモノ。
高校生編、大学生編、社会人編の三部構成で、誤解し合ったまま友人関係を続ける二人が切なくもコミカルな物語です。
互いにゲイでDT同士というところも萌ポイント。
高校生編は、受けの蜂谷視点。
蜂谷はチェーンラーメン店の坊っちゃんで、明るくお人好しな美人。
入江を好きになるけど、友人関係を築いてしまった手前気持ちを伝えられず、その後8年も入江に片想いする健気なキャラです。
攻めの入江は、凪良さんが気合を入れて書かれただけあり、とても個性的で面白いキャラクター。
飲んだくれの父親に代わりバイトで家計を助ける彼は、将来悪徳弁護士として稼ぎまくることが目標のリアリスト。
しかし恋愛に関してはヘタレかつ不器用で…?
入江視点の大学生編では、蜂谷のこととなると別人のように(心の中で)取り乱しまくる彼の独白に笑いっぱなしでした。
もう一人重要なキャラクターが、陸上部エースで実はオネエの花沢。
人前では硬派なイケメンを演じる花沢のon/offのギャップは面白いけど、本当の自分を隠す生き方に苦しむシリアスなキャラクターでもあります。
こんな三人の、大人になっても変わらない友情は本書の魅力の一つです。
大学生編の最後で初めて関係を持つ二人ですが、お互い相手に好かれていることには気づかず、昨夜のことは忘れ友達のままでいましょう…という切ない引き。
ここからどうまとめるのかと思っていたら、最後の社会人編で、まとめるどころか更に問題やら濃い新キャラやら出てきてヒートアップする展開が秀逸です。
蜂谷の実家のラーメン店は競合店に押され経営不振。
アスリートとなった花沢は、靭帯の故障とオネエとバレたことで選手生命の危機に。
大人になったことで直面する厳しい現実の数々にほんのり切なくなります。
そんな中で、悪徳弁護士を目指していた入江が家族のため地元の法律事務所に就職し、イソ弁として真摯にクライアントと向かい合っている姿には感動。
ますます弁舌豊かになったのに相変わらず蜂谷には弱くて、大人気なくヤキモチを焼いたり、彼のため店の改革に協力したりする姿にキュンキュンし通しでした。
ラストはラブ面だけでなく、脇キャラ含む全ての問題が解決する綺麗な大団円。
オーソドックスな設定でも、展開力とキャラクターの魅力でここまで読み応えある作品になるんだなと感心させられました。
文句なしの神評価です☆
作家買いです。
凪良さんという作家さんは引き出しが多い作家さんだなあ、と感心。つい先日発行された『累る-kasaneru-』はシリアス満点の作品だったのに、今作品はラブコメ。作品をつくっているときって頭のなかってどうなってるのかなあ。なんて思いつつ読みました。
面白かった!
貧乏で、この貧乏から抜け出すためにどうすればいいのかと考えた挙句出た結論が「悪徳弁護士」になること、という入江(攻め)。
大手ラーメンチェーン店の社長の子息の蜂谷(受け)。
リストラされて以来(しかも10年前だ)酒におぼれ借金を重ねる父親をもち貧困生活にあえぐ入江ですが、彼自身ハングリー精神にあふれ、高校生だというのに「大学に行く費用にするために」とバイトに精を出す。
そう聞くと暗い家庭をイメージするところなのですが、母親を筆頭に家族みんながダメな父親をフォローしつつそれなりに明るい生活を送っている。親に負担をかけまいとバイトに精を出す入江くんですが、けして爽やかなナイスガイではない。口は悪いし、お金に対してもシビアで、結構腹黒いところもある。それでいて、実は人に対する思いやりもしっかり持ち合わせている男でもあります。
対して受けの蜂谷くん。いい意味での「お坊ちゃん」で、入江と口げんかしながらもとても素直で可愛らしいキャラでした。彼の秘めた恋心にきゅんときました。
蜂谷くん、入江、そして蜂谷くんの幼馴染の良太郎。
同じゲイ(良太郎だけはオネエですが)ということで仲良くなる三人ですが、この三人の軽快なやり取りを通して高校生→大学生→社会人の8年が描かれています。
蜂谷と入江の、「自分だけが相手を好き」と思いつつ実は両思い、という王道のストーリーなのですが、さすが凪良さんというべきか、ゲイであることの葛藤や、好きな気持ちを押し殺して『親友』という立場を貫く切ない恋心とか、仕事上の悩みとか、そういうこともきちんと書かれていて非常に読みごたえがあります。
そしてなんといってもこのお話のキモは「じりじり進む二人の恋」でしょう。くっつく…、かと思うとスタートに戻り、それでいて消えることのない二人の想いに非常に萌えました。
それと個人的にすごく好きだったのは良太郎。爽やかイケメンであり、かつ陸上選手としても有望で女子に絶大な人気を誇りながら、内面は「オネエ」。自身の内面とのギャップに悩みつつ、それでも自分の道を切り拓いていく彼(彼女か…?)が非常にカッコよかった。ぜひとも彼のスピンオフを書いてほしいと切望しておりますです。
あと木下さんの挿絵もすごく良かった。
俺さまな入江や、誰に対しても優しい蜂谷くんがイメージにピッタリでした。
設定はそれなりにシリアスなのですが、全体を通してコミカルな雰囲気で、最後はみんなが自分自身の力でいろいろなものを掴み取っていく。
文句なく、神評価です。
地元で有名なラーメンチェーン店の跡取り息子の蜂谷と
優秀な俺様(でもどこかずれている)苦学生の入江、
そんな高校の同級生だった二人の、長くじれったい両片想い。
かけがえのない友人になっちゃったものだから、
打ち明けて相手を失ってしまうのが怖くて、恋に踏み出せない。
蜂谷が恋に気がつく高校時代、大学時代、社会人の三部作。
足掛け8年、長っ!
途中で、おっ!まとまるかっ?と思ったのに、
あああ、ダメかい、お前達、私が通訳してやるっ!という感じで
またすれ違い継続……
ああ、じれったくてキュンキュンする!
そんな二人の、長い時間の中で培われてきた関係がよく分かる
雰囲気や会話が読んでいてとても楽しい。
お花畑だけれど、優しく健気で料理上手な蜂谷もいいキャラだが、
入江のキャラと台詞がなんとも秀逸!
お金にシビアで将来は悪徳弁護士を目指しているという入江。
毒舌で腹黒い……ように見えて、実は飲んだくれの父親や
引きこもりの弟にもちゃんと愛情があって、
そして、恋愛に関しては鈍感で不器用な愛すべきキャラ!
テンポよく、笑いながらも切なくてキュンと萌えながら読了。
恋愛だけじゃなく、友情やそれぞれの家族の温かさもいい感じで、
すごく満足な気分で読了しました。
蜂谷の幼馴染で二人の大事な友人オネエキャラの良太郎が
またいいキャラなので、彼の幸せなスピンオフもあったらいいな。
お話は『高校編(受け視点)』『大学編(攻め視点)』『社会人編(受け視点)』の三部構成。
いわゆる両片想い作品ではあるのですが、受け視点のお手本のようだなあと。
視点主(読者)に攻めのラブ視点を感じさせない書かれ方を凪良さんはきちんとされていて、もちろん読者は『攻めも受けを好きだろ、ラブエンドだろ』とはわかっていますが、地の文で攻めの熱い視線をわざわざ書かれるとわざとらしさを感じてしまうためその辺りの匙加減が絶妙です。
実際は攻めと受けの三視点ではあるのですが、何もかもお見通し!的に見せながら鈍チンの攻め視点では、しっかり受けの狼狽具合を描写しながらもそれを攻めが冷静に観察分析するにも関わらず恋愛下手の残念さがしっかり滲み出ているという…(苦笑
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受けの獅子(レオ)はラーメンチェーン店の御曹司で、幼馴染みの良太郎とはゲイ仲間。
元ヤンキーの父と乙女系の母から生まれた、育ちの良さの滲み出た天然さん。
攻めは、目指せ!悪徳弁護士!が目標の入江。
高校時代学年でもトップクラスの成績で、大学進学のために身分を偽って獅子の家庭教師となったことが縁となりゲイトリオのお仲間(本人不本意)入りに。
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一般的に考えれば、アル中一歩手前のリストラされた父親や借金苦に喘いだ生活は苦労のど真ん中。
そんな入江ですが、状況に悲観せず、いかにしたら理不尽な人生に勝てるかという自分の目標に向かって邁進しています。
そして獅子は入江と出会い彼の置かれた日常に触れ、それによりいかに自分が恵まれそれを当たり前のように享受してきたかを自覚します。
それは自分の置かれた恵まれた環境を恥じるのではなく、自分の両手の範囲以外のことを知ることをしてこなかった自分自身を恥じるというのがすごく好感が持てました。
わたしはいつでもどこでも攻めキャラの味方ですが、獅子は受けでも可愛かったし応援したいと素直に思える子でしたね。
自分の行動を人のせいにしない彼は、もしかしたら今まで読んだどんなBL小説の受けよりも健気で頑張り屋であったかもしれません。
笑いの中に切なさが入り混じっているのは、大学編。
ここでは入江が己の気持ちを自覚し、一歩踏み出したはずの初体験が書かれております。
ただ二人とも不器用で縁が切れてしまうことを怯え、かつ相手を慮ってしまう(特に獅子)ために逃げ道を用意してしまうというドツボに。
そしていたるところに散りばめられたドーナツ脳(良太郎談)による勘違いや自己完結が、凪良さんもあとがきで書かれているようにノリノリな攻め視点となっております。
もともと攻め視点というのは好きなのですが、この章では入江が恋心を自覚するまでの上がったり下がったりする感情が面白おかしく書かれているのですよ。
登場するキャラクターたちが皆気持ち良いくらい清々しく、かつ頑張り屋で(入江弟はちょっと足踏みですが)、とても後味の良い作品となっておりました。
多分今作で人気があるのは良太郎ではないかと思うのですが、彼は高校生にしてもうゲイバーのママクラスの聞き上手話し上手。
最後の最後まで二人を見守り叱咤激励する姿は、まるで昭和の母のようです。
こんなにまとまっていて不満のない初恋キュンキュンコメディを読んだのは、久々でした。
今まで凪良さんの作品を読まれたことのない方でしたりあまり小説に触れていない方にもひじょうにお勧めできる、読みやすさと切なさと可愛さに溢れております。
有名ラーメンチェーンの一人息子で何不自由なく高校生活を送っている受けは、成績が悪いのを理由に親に家庭教師をつけられる。大学生だという触れ込みで現れた家庭教師は、同じ高校の同学年の入江(攻め)だった。攻めは父親がリストラを機にアル中になり、年齢をごまかして割のいいアルバイトをしまくっている勤労学生で、将来は悪徳弁護士になる予定だと言う。ともにゲイであることも判明したが、互いに好みではないため恋愛関係にはならず、長い友人関係が続くはずだった。しかし受けはいつしか攻めに恋愛感情を抱き始め…。
萌えとギャグのバランスが絶妙でした。攻めいわく脳内お花畑だけど健気な受け、金に執着しているけど根は優しい攻めを始め、陸上の有望選手なのに隠れオネエの幼なじみ、受けや攻めの家族など、脇キャラもすごくキャラが立ってて、ページ数以上に読み応えがありました。
知り合った高校時代、大学時代、お互いに親の会社に就職し、新米イソ弁になってからも友人関係は続きます。大学時代に一度だけ身体の関係を持ったにもかかわらず、すれ違いと、攻めのまさかのヘタレと、恋愛が入ると友情は壊れるという思い込みから関係はジョブチェンジせず、足かけ8年の長い長い友人関係です。
恋人ではないのにほぼ半同棲で、攻めはがっちり受けに胃袋を掴まれています。ふわふわオムレツに魂抜かれてるのが笑える。冷静沈着な外面と、受けのことに関してだけはトチ狂っちゃう内面のギャップが面白すぎました。なのに鈍い受けは気づかない…もう幼なじみくんも教えたれよ! と焦れ焦れしまくりました。
とにかくすんごく楽しかった。
イケメンなのに童貞同士(しかも攻めは即死続き)というのにもひたすら萌えた。
凪良さんでは『全ての恋は病から』に並び立つ名作コメディでした。