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小説ショコラ新人賞受賞作とのこと。
読みやすい文章に、ほのぼの優しい作風が好印象の作品でした。
裕福な家庭に生まれ、クラスでも一目置かれる存在だった志信(受け)。
自分によく花をくれる、貧乏な家庭育ちのクラスメイト・吉野(攻め)に淡い恋心を抱いていました。
しかし、ある日花を受け取っているところを他のクラスメイトにからかわれ、思わず花を突き返してしまいます。
それから数年後。
父が借金を残して病死したことで、志信の生活は一変。
病弱な母と借金に困窮する志信の前に、裕福になった吉野が現れ……
そんな再会物です。
タイトルの「びんぼう草」とは、ハルジオンの別名。
学生時代、志信が照れ隠しに吉野に突き返してしまった花です。
その花言葉が「追想の愛」というのが何とも作品の主題に合っていて素敵だなぁと思います。
志信は、母親想いで働き者の好青年ですが、現在の惨めな境遇にときに卑屈になることも。
再会した吉野の変わらない人の良さに惹かれつつも、彼に見下されることを恐れ、ときに壁を作ってしまう。
そんな人間味あるキャラクターです。
吉野は、高校時代は貧乏で周囲に馬鹿にされる存在でしたが、遠縁の老人の遺産のおかげで裕福になり、現在は大学院の農学部で花の研究をしています。
昔の志信に花を突き返されたことを全く恨まず、再会後も志信に花を送り続ける健気な人物。
彼の送る様々な花が、志信と母の暮らしに彩りを与えていく展開に温かな気持ちになります。
そんな吉野視点の番外編では、志信とのラブラブな日々と、吉野が今までに志信に送った花の思い出が丁寧に描かれます。
学生時代、吉野が志信を好きになるきっかけとなったキュウリグサ(花言葉は"真実の愛")。
初めて志信にプレゼントしたムラサキカタバミ("喜び")。
二人だけの秘密となったニオイスミレ("秘密の恋")…。
それぞれの花言葉を調べてみると、各場面に込められた吉野の志信への想いがより伝わってきて、じんわり感動します。
特に印象的だったのは、再会後吉野が初めて志信に送った花・トルコギキョウのエピソード。
志信に喜んでもらえるよう今度こそ彼に相応しい花を選びたい、と苦心する吉野の健気さにグッときます。
このように表題作(志信視点)で出てきたエピソードが番外編(吉野視点)でもう一度語られることで、物語に深みが増していたと思います。
再会して恋人になるまでの展開自体はシンプルですが、その前後の心の交流が丁寧に描かれているので、読み応えはなかなか。
今後が楽しみな作家さんです。
あとがきによると、年下攻めや体格の良い受けがお好きとのことなので、次回作ではそうした設定の作品も読めたらいいなと思います♪
優しい絵柄の表紙とあらすじを拝見して、なんだかとても心惹かれて手に取ってみました。
裕福な家庭で育った志信(受け)。
一方、貧しく満足に制服も買えないような家庭でありながらも優しい性格の吉野(攻め)。
高校の同級生で、相反する立ち位置にいる二人ですが吉野のくれる花を通して近づいていく二人。なのに同級生の目を気にして吉野に酷い態度をとってしまった志信は…。
という、何とも既視感のあるというかよくあるお話でした。
けれど、この二人の気持ちが丁寧に綴られていて、また、どちらも共感できるキャラであることから話にすんなり入り込みやすく、読みやすかった。
志信は高校生の時『お坊ちゃん』であることに優越感を感じていて。でも父親の急死と残された借金によりそれまでとは一変した生活を送ることになり。そこで卑屈な感情を抱いたり、でも母親を守りたい、負けたくない、と気持ちも持ち合わせていて非常に人間臭いキャラでした。
そして吉野も。
貧しくともいい家庭で育ったんだな、という性格で、とても好き。
志信に嫌われたくないと、一生懸命な彼が何とも可愛らしい。彼が志信に送る花のチョイスもとても良い。彼らしく、華々しさはないもののそれぞれ魅力のある花でとても良かった。
前半は志信視点で、後半は吉野視点で描かれているため二人の感情の機微がわかりやすかったのも良かったし、文章自体読みやすかった。
ただ、詰めが甘いなと思うところも。
志信のお母さんとの関係や、いじわるな職場の先輩の話も『これだけ?』という感じだし、吉野の大学での人間関係のもつれもあっさり終了してしまったなあ、と。
二人の気持ちの変化を中心に描きたかったのは分かるのだけれど、そういう細かいところももう少し書き込んでくれていたら一層話に深みが出たのになと思ったりしました。
高校生の時からお互いに好きで。
ずっと忘れられずに、お互い想い続けていた、というのには激萌えしました。特に、志信が吉野がくれたハルジオンをしおりにしてずっと持ち続けていた、というのは非常に良かった。
優しい表紙がこの作品によくあっていて、優しい気持ちになれる、そんな作品でした。
結論から言うと、とっても良かった!新人作家さんで買うのを迷ったのだけど買って良かった。迷いつつも購入した自分を褒めたい。
高校時代に傷つけてしまったクラスメイトのことを忘れられない主人公が、ふとしたきっかけで相手と再会しする。お互いの蟠りや誤解を理解し合いながら、気持ちを通じ合わせていくのがたまりません。描写が丁寧で無理がなく素敵な作品です。
何となくあまりエッチシーンはないような予想でしたが、エロではなくラブラブな感じで描かれていてそこもいい。
もし迷っている方がいたら冒険してみることをおススメしたい素敵な1冊でした。本当に表紙のイメージ通りの作品です。
裕福だった高校生時代、いつも自分に野の花をくれる貧乏なクラスメートがいた。花が好きだった志信(受け)は、それをもらうのが嬉しく、それをくれる吉野(攻め)にほのかな想いを抱いていたのに、ある時ほかのクラスメートに花をもらっているところを見られ、恥ずかしさにきつい言葉を投げてしまう。
その直後に父が亡くなり、志信は一転困窮した生活に陥る。病弱な母とふたりの、働いては借金を返す日々。卒業から5年あまりが経った頃、あれ以来疎遠になっていた吉野に再会する。吉野は相変わらずマイペースだったが、高校時代とは逆に裕福になっていて…。
高校時代に貧乏だった攻めが金持ちになり、金持ちだった受けが貧乏に、というありがちなストーリーです。でも攻めが不思議ちゃんで、「金が欲しければ愛人に」などの展開にはならず、おっとりとした雰囲気で話は進みます。
受けは5年もの困窮生活で疲れてはいますが、根が上品でこちらもおっとりしているので、卑屈さはほとんどないです。もちろんたかろうともしないし、金持ちになった攻めを羨むわけでもない。おごりや施しは受けない自尊心の高い人です。
攻めは不思議ちゃんで、昔から花と受け以外に何の興味もない人です。人付き合いは下手だし、自分の何が人を怒らせるのかわからない。付き合うのに疲れそうな人です。
受けも攻めも個性の強い人だけど、受けが攻めに惹かれるのも、攻めが受けに惹かれるのもとてもよく理解できました。おっとり穏やかな話だった印象があるのですが、実際に内容を思い返してみると割とアクの強い内容だった気もするし、なんか不思議な読後感です。
野の花の名前がたくさん出てきて、春めいた気分になりました。
途中で警備員のバイトをしていた受けが、同僚に痛い目に遭わされているのですが、そのエピソードのオチがないので少々モヤっとした気にはなりました。悪人が野放しなのはすっきりしないなぁ。
電子書籍で読了。イラストは小さいサイズでした。
受け攻めとも環境の劇的な変化があってもねじくれもせず真っ直ぐなまま。とてもピュアです。ギラギラした男っぽさは皆無の草食系です。
色々とドラマは起きて、それ自体が平板なわけではないのにも関わらず「せつない」という感じはあまり持ちませんでした。
ストーリーよりも二人が小川のほとりで昼食を食べているという印象風景が強く残っています。
ペリエの様な味というか、喉ごしというか、爽やかです。