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◆僕のかわいいストーカー(表題作)
ストーカー行為はかなり度が過ぎているけれど、人格的には無害で健気さすら見せる池田が可愛らしかったです。ストーカーされる側の健太郎の人間性も素敵。衝動的に突っぱねたり罵倒したりすることがなくて、どんな形であれ相手の自分への好意を粗末に扱わない、ひとまず受け止めてみてから考える姿勢が好きでした。この大らかな優しさは多くの人を惹き付けるだろうなと。テンポも良く、軽快で読みやすかったです。
◆短い通学路
メインキャラの回想ではなく、正真正銘小学生がメインキャラの作品。滅多にお目にかかれないはずなのに、何の抵抗もなくすんなり読めてしまったのは金魚鉢先生の腕でしょうかね。もちろん現実でも小学生の間に同性愛に目覚める子もいるでしょう。彼らがこのまま優しい世界で生きられることを願います。
なんで俺のストーカーになったの?
ストーカーされてるのに真面目に聞いてるよ!面白い。
見つかったら、お願いですからストーカーだけは続けさせてくださいって!土下座して。
池田が自分を見るようで。人の輪に入れなかったり相手にされなくて、もしシャーペンを貸してもらったら私も、こんな私なんかに優しくしてくれた!って特別な人になるかも。
健太郎はいい人ですね。公認ストーカーに任命して。写真もちゃんとポーズとってあげたり、ストーカーしてこない日は心配したり。
ストーカー物でこんな反応なのは初めてです。
健ちゃん日記私も読みたいな。
健太郎に好きになられて良かったね!
ひとつの本に印象深い短編が必ず収録されている気がする、でめ先生。この本にもやっぱりありました。
『はなむけのうたを、』
卒業式を約一ヶ月後にひかえた先輩と繊細で真面目な後輩の話。彼女をとっかえひっかえしてそうなハデな見た目の先輩とは同じ理科委員で、交替で魚にエサをあげるだけの間柄だった。
女みたいと好きになれない自分の名前を「俺は好きだよ」と肯定の言葉をくれた人。他意はないであろう先輩からのコミュニケーションが、予想外の感情を呼び起こす。
二人の距離が近づいていくのを見せられながら、埋まりそうにない気持ちの温度差に、泣く。
登場人物にとって幸福な出来事ではない告白のシーンは猛烈に切なく、そして鮮やか。
三谷君(後輩)が練習していた「はなむけのうた」を彼がこの先思いがけず耳にすることがあるかもしれない。メロディと記憶の結びつきが思った以上に深いことを私は知っている。三谷君も先輩との、楽しくも辛く美しくも悲しい記憶を引っ張りだされるんだろうか・・・と考えると、また泣いた。
全部がまぶしすぎたあなたは私の青春そのもの。
表題作シリーズと、他に読み切り2編。計3つの作品が収録されています。
【僕のかわいいストーカー】
「かわいい」とタイトルにあるように、ほんとに可愛いストーカーです。
健ちゃん大好きで「健ちゃん爪切った、チョココロネ食べてた」だの些細なことを日記に綴ったり、ナイスショットを撮ってはへにゃ〜と喜んでて、罪がない感じがかわいい。
ストーカーされてる健太郎はそんな池田の様子に最初ドン引きしてたんだけど、いちいち些細な事でも喜んでいる姿がかわいくて邪険にできず公認ストーカーとして認めちゃいます。
池田が健太郎のお宅へ遊びに行く様子が好き。健太郎のお家が様子がいいんです。窓辺のキャビネットの上の花瓶に綺麗にいけられたお花、ポーセリンの置物、家族写真がきちんと写真立てに入って幾つも飾ってある室内。そして二階に至る階段にもたくさんの家族写真。
あぁ、素敵なご家族に囲まれてすくすく育ったいい子なんだなぁ、だから池田のことも一蹴せずちゃんと対応してあげられるんだなぁって育ちがわかるところが。
最初は影から見つめてるだけで満足していたのに、一緒に並んで健太郎の部屋の窓から健太郎がいつも見ている景色を見たときの感慨や、健太郎が元カノから呼び出された時今までだったら迷わず盗み聞きしてたはずなのに…今は怖い…とポツンと一人で佇む様子。
色々な感情に揺れはじめるストーカーくんが健気でその恋をついつい応援したくなってしまう作品です。
【はなむけのうたを、】
これは読むたびに何とも切ない気分に襲われます。泣きたくなるけど、嫌いじゃない、大好きな話。
理科室にある水槽の餌やり当番。せっせと真面目に毎日通う二年生の三谷と、きたりこなかったり…の小深山先輩。
段々卒業の日が近づいてくるある日。三谷が、小深山先輩しか3年生の中で知り合いがいないのを知って、「卒業式の歌は俺のためだけに歌うんだ」とニッと笑う先輩。
三谷は先輩のことが実は好きなんだけど、先輩のそういう他意はない言動にいちいち心動かされる三谷。
先輩は人気者で人と接するのがうまくて、ただのコミュニケーションの一環でしかないのだけど三谷にとってはそうではない…。そこの差が、読んでるとあぁ…って。
卒業式の前に告白した三谷。先輩は三谷からの突然の告白に慌てるけど「もしかしたら俺もお前のこと好きになるかもしんないじゃん。」と言ってくれる。だけど、それを拒絶する三谷。
先輩と気持ちが重なることはないと自ら終止符を打った恋心、だけど完全に忘れ切ることができない様子。それが「卒業式の歌」というものに絡めて描かれているところが最高だと思います。
別れの季節と新たな旅立ちを歌う「卒業式の歌」って、聞くだけで色んなことを思い出して心揺れるじゃないですか。なんとも切ない青春の感傷たっぷりで大好きな作品です。神作品!
【短い通学路】
小学生同士の淡〜い恋愛未満のお話でかわいい。
評価は神よりの萌萌なんですが、金魚鉢でめさんの3冊の中では一番好き(他2冊は萌萌)なので、他2冊と差をつけるために神評価です。