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陰謀と政略に翻弄される想いの行方は。
あらすじ:
代々"女帝"を擁するイリストリア帝国。
現女帝・ユシル(受け)は、女系の伝統を守るため女として育てられた美青年。
ある日、ユシルとの間に世継ぎを作るため、地方貴族の娘が秘密裏に王宮に召喚される。
娘の兄で、一緒に拉致されたのは、アルフォンス(攻め)という年上の男で…
血族結婚を繰り返した結果、世継ぎに恵まれなくなった王家は、女系存続のため男であるユシルを"女帝"に仕立て上げた…という設定です。
ユシルが男と知り驚くアルフォンスですが、彼の国を想う心や、性別を超越した美しさに惹かれ、物語序盤から彼に忠誠を誓っています。
最初こそ妹を拉致されたことに憤っていましたが、ユシル相手なら…と許してしまうあたり、なかなか単純な性格?
ユシルを守る騎士に命じられてからは誠心誠意ユシルに尽くしており、好人物ではありますが、彼や妹の境遇を思うとちょっと都合のよすぎる展開に感じました。
アルフォンスを"女帝"ユシルに簡単に近づける側近たちもまるで危機感がなく、このへんは設定が甘い印象。
ユシルもアルフォンスを気に入っており、最初から仲の良い二人なので、ラブ展開としての面白みはいまいち。
ユシルを毒殺しようとした人物の正体についても、物語中盤〜やや後半あたりで解決してしまうため、これも盛り上がりに欠けます。
その後メインテーマとなるのは、やはり世継ぎの問題。
結局、アルフォンスの妹はユシルと交わることなく幸せになり、
ユシルも国を存続させるための方法を色々考えており、
ご都合主義的なところはあれど、設定が丁寧に拾われている点には好感を持ちました。
あとがきによるとユシルは、スペイン系ハプスブルク家の王子、フェリペ・プロスペロ王子から着想を得たキャラクターとのこと。
ユシルだけでなく、イリストリア王族の設定自体も「高貴なる青い血」に固執したハプスブルク家と重なるものがあり、どこか悲壮感漂う世界観です。
エピローグはなかなか感動的。
歴史には残らないユシルたちの真実と、彼らが成し遂げた偉業に思いを馳せたくなる良いラストです。
一見ほのぼの甘い世界観ですが、国の存続や血の継承というものについて割合しっかり語られてもいて、真面目な作風には好感が持てる作品です。
純血の血統の女性のみが女帝として国を治めることを許される帝国で、男であることを隠して女帝となった受けの話です。
結婚することになり、名目上の結婚相手としての男性と、世継ぎの子供を産んでもらうための女性として用意されたのが、近衛騎士だった攻めとその妹。
実は受けと攻めは幼い頃に会ったことがあり、攻めの言葉で男ながらに女帝になることを決意した、という過去があります。でも攻めはそれを覚えていないばかりか、妹とを子供を産む機械のように拉致されて怒っている、という状況。
話は持って回りすぎだし、そんなにしてまで兄妹を拉致って来たのに結局純血の血統じゃないから攻めは受けの愛人扱いされてるし、そもそもなぜ連れてきたのかがよくわからなかった。おまけに受けにはその時点で名ばかりの夫がいたし。
あと、推敲が足りていないというか、今言ってたことと違うやん、という描写が結構あって、毎度そこで引っかかるので、読むのにかなり時間がかかりました。読み応えがあって時間がかかるのはいいのですが、読みにくさのあまり時間がかかるのはマイナス点かなぁと思います。
例えば、受けが女帝になる即位式で、何の飾りも付いていない白の衣装に裸足、という姿で民衆の前に現れ「我が治世を築くに宝飾の類い一切必要なし」と言い放った、というエピソードがありました。そのあとに受けの結婚式(攻め相手ではなく)の描写があり、「純白の婚礼衣装には繊細な刺繍が縫い込まれ、小粒の宝石をふんだんにあしらったティアラが」云々。
他にも、攻めに乱暴にされて「感情のままに双眸から涙をこぼす」受けの描写があったのに、その後日に受けが泣いたときに「泣いたのなんて先帝の葬儀以来」なんて言う。少々のことは気にせず読み飛ばせたらいいのですが、「あれっ、さっき矛盾した描写があったよな…」とか思っていちいちページを戻ってしまうので、時間がかかるしイライラすることこの上なかったです。