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表題作藍より昏く秘めやかに 

磯崎湊,29歳,政治家秘書
宗谷航一郎,30歳,経済アナリスト

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

代議士の父が倒れ、祖母の法事で代わりに挨拶することになった航一郎は、十年ぶりに幼馴染みの湊と再会する。
過去、航一郎のせいで父が逮捕され自分を憎んでいるはずの湊はなぜか「貴方の秘書になるために来ました」と言い、
挨拶原稿をすり替えてまで航一郎に後継の宣言をさせた。
その後、父の秘書の不正調査への協力を求められた航一郎は、負い目から議員事務所入りを承諾するが、
なしくずしに湊と同居することになってしまい ……。

作品情報

作品名
藍より昏く秘めやかに 
著者
手嶋サカリ 
イラスト
amco 
媒体
小説
出版社
心交社
レーベル
ショコラ文庫
発売日
ISBN
9784778120634
3.2

(18)

(3)

萌々

(3)

(9)

中立

(1)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
3
得点
55
評価数
18
平均
3.2 / 5
神率
16.7%

レビュー投稿数3

政治家関係のしっかりしたお話

プライベートバンカーを読みたくて、先にこっちを手に。
他のレビューアの方が書いておられるとおり、
すごくしっかりした政治家関係のお話で、読み応えたっぷり、
書き下ろし290P+先生のあとがき でした。
地雷はあんまり思いつきません。

登場人物は
受け:富山の名家出身の代議士の一人息子。
   事情により10年前に家を出て東京で働く。
攻め:受けの幼馴染。政治家の秘書をしていたが、退職し富山へ。
その他、代議士事務所の秘書、受けの父親、親戚などが出てきます。
「?誰だった?」というのも一瞬あり。

受けは頭いいですが、幼少期に起因した心因性のものを抱えているので
そこを読むのはちょっと辛かったです。
名家で跡継ぎで、ちょっと無理しないといけなかったとのことで
辛かっただろうなあと、かなり同情。
攻めさんは最初怪しげな登場の仕方でしたので、こいつ敵?味方?
という読み方をずっとしました。
そのため、全体を通して、甘い感じは皆無でした。

メンタルとのバランスが難しいとは思いますが、
多分、人の上に立つ要素は持っているように思ったので
これから二人で色々試行錯誤して、
受けさんが市議にでもなってくれれば嬉しいな、と思える終わり方でした。
そして攻めに「命令だ」なんて言い、それにぴっと反応する攻めの
後日談を読みたかったです(笑)既にどっかにあるのかな?

2

「作者は議員秘書か?」と思うほどリアル

電子書籍で読了。挿絵有り。amcoさんのイラストは美しい絵柄というだけではなく独特の雰囲気があり、脳内妄想をかなり補完していただきました。

最初に読んだ『プライベートバンカー』が好みだったものですから→『僕の、なれない君』→本作と続けて読みました。で、思ったことなんですけれど、最初に盛大に(あらすじとは違った意味で)ネタバレしちゃいます。





「これは、手嶋さん……ファザコン三部作ではないかーっ!」
主人公にとって大きな存在である父とどう向き合うかということを、これだけ繰り返し描くというのはどうなんだろう?ということが気になりすぎてLOVEの方を読み飛ばしてしまうという、BL読みとしては異端の(まぁ、私の場合はよくあることなのですが)読み方をしてしまいました。(私が執着攻めにあまり萌えない所為もあるかもしれません。磯崎の宗谷に対する執着ぶりは凄いよ。『ねっちり』なだけじゃなく『しっとり』した執着って珍しいんじゃなかろうか?)

『プライベートバンカー』と同じように「手嶋さんはその世界の人?」と思うほど描かれる世界がやたらリアルです。秘書が名簿を持って対立候補に鞍替えするとか、普通は思いもしないよねぇ。『秘書が恋人』という候補はいないだろうけど「いるのか?!」と勘違いしてしまうほどのリアルさ。
きっちりとした取材をされる作家さんなのでしょう。既刊分を全部読んでしまいましたので、新作に期待したいと思います。願わくば、ファザコン以外を主役とした作品も読んでみたいなぁ。

5

骨太な政界BL

ショコラ新人賞奨励賞を受賞された作家さんの二作目。
前作は高校の同級生ものだったようですが、今回は政界をテーマとした社会人もので、年下攻めです。

あらすじ:
代議士の父が倒れ、父に代わり祖母の法事で挨拶することになった経済アナリストの航一郎(受け)。
そこで、1歳年下の幼馴染で秘書になった湊(攻め)と再会。
湊は航一郎の挨拶文をすり替え、航一郎に父のあとを継ぐことを宣言させ…

航一郎と湊は、過去に父親同士のことで何かあったらしく、そのことで航一郎は湊に対し後ろめたさを感じています。
航一郎は湊に敬語で礼儀正しく接しつつも、彼の秘書になると聞かず、航一郎はなしくずしに湊と同居することに。

二人の子ども時代に何があったのか。
湊の狙いは何なのか。
そんな謎をはらんだ展開はなかなか読み応えありです。

実は、湊の父はかつて航一郎の父の秘書をしており、航一郎の父に代わり不正の罪を被り逮捕されたという事情が。
航一郎は幼き日の自分が不用意にマスコミの前に出たことで、世論が父を擁護する方向に変わってしまったことに責任を感じています。
その後一時的にパニック障害となり、今も時折発作が起きそうになるほど、この事件は航一郎にとってトラウマ。
報道の怖さや、代議士の息子としての心理的重圧がありありと伝わってくるような描写です。

湊は、航一郎の挨拶文をすり替える腹黒さと、彼に真摯に尽くす健気さを併せ持つ、ミステリアスな人物。
航一郎に不正疑惑がかけられた際、黙って罪を被ろうとする姿は父親と重なるものがあり、親譲りの義理堅さに胸が熱くなりました。
幼い頃憧れていたからと言って、その後ろくに会う機会のなかった航一郎にここまで執着するか??という疑問は残りますが、子どもながらに航一郎の持つカリスマ性に惹かれ、崇拝する気持ちが恋愛感情に育っていったのかもしれません。

二人の恋模様より父親同士の友情や、航一郎の父の清濁併せ呑む生き様の方が印象に残ってしまいましたが、骨太で良い政界BLでした。

今後もこの作家さんの様々なテーマの作品を読んでみたいです。

11

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