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別所のレビューにて『中村明日美子先生の「同級生」を読んだ時のような気持ちになった』という一文を見て、それならば……と正直なところ半信半疑で読んでみた作品。
結論から言うと、疑ってすみませんでした。という感じで。
同級生とはまた違った読後感。
でも、読み終わった後の胸に広がる充足感は確かに似てる。
あー、これ。本当に久々です……。
帯に「教師と、生徒と、生徒。」とあるように、
ちょっと得体の知れない感じの先生と、真面目で初心な生徒と、正反対にちょっと不真面目で根明(のようで実は繊細)な生徒の三人が繰り広げるお話し。
でも、これって本当は三人というより、もう一人、先生の相手の人が居て。
だから二組のカップルのお話しでもあるんですよね。
とは言っても、そこを前に出さなかったの、正解だなーと思いました。
二つのカップリングがあるって感じだったら、なんだー総ホモか~って手を出さなかった可能性あるし。
でも総ホモかと言われれば実際のところ、全然そんなことはないし。メインは間違いなく三人の交友なので。
最近のBLでよくある「一目惚れ」とか「気付いたら好きだった」とか、好きなんですけど、でも、やっぱりどこか興ざめすることもあって。
なので、この作品のように、「好き」とは何か?
この想いはどこからやってきて、どこへ帰結していくのか?
そもそもこれは本当に「愛」なのか。それとも「憧れ」なのか?
という根本的なことが、5話かけてじっくりじっくり描かれているのは、本当に珍しいことだなと。
男子高校生が同い年の子のことを好きになっちゃうのって、本当にこういう過程を経てるのかも……とか本気で考えだしたりして(笑)。
例えば、主人公の葉純くんはアニメが好きなんですが、もう一人の生徒である根井くんに「あ、アニメ~…」って感じでちょっと引かれてしまうことがあって。
で、葉純くんは拗ねちゃうんですけど。根井くんは焦って「見るよ!」とか言って、葉純くんは「絶対見ないよ…」みたいなやり取りをする(笑)。
その時点で「あるあるだ~分かる~~」って共感してたのに、なんと根井くん、本当に睡眠時間削ってアニメを見てくれる。めっちゃ眠そうに、でも凄く面白かったって言ってくれる。
そんなの、葉純くんじゃなくても、ちょっと好きになるわ!!
本当に、そういうことの積み重ねって、バカにならないよなーって。思いました。
勿論、この二人だけじゃなくて、木庭先生も物凄くいいキャラをしてる。
教師含んだ三角関係もので、しかも教師と生徒がくっついちゃうとなると結構苦手かも……な感じだったんですが、前述したとおり木庭先生には小林という「コバ」仲間であった元恋人が居てですね。
その人と葉純くんが凄く似ていて、どうしても、嫌というほど気になってしまう。という……。
あんまり書きすぎてもアレなので伏せますが、本当にこのあたりは泣けました。
どうにもならないことを、どうにかすることすら出来ない。
人間って無力で、だから愛しい生き物なんだよな…とそんなことまで考える始末でした。
変に教師生徒モノじゃなくて、先生はあくまで見守るポジションだったの、ほんっっとうに良かった~~~。大好きですそういうの。
ちょっと感動しすぎて本気で書きすぎなのでこの辺で。
神評価をつけると、作品の規模感的にはちょっと大げさに感じちゃうんですが(神とかより萌って言葉の方が似合う感じ)、でも萌2じゃ足りなかったので神で。
久々に、ちゃんと文字にして感想を残したい!!と思える強い作品でした。
もっともっと評価されて、色んな人に読まれるといいなーと、昨日知ったぐらいの超にわかファンが思うのでした。
頭の良い天然の葉純くんと、てきとー(に見える)根井と、二人を見守る先生のお話です。
葉純くん
木庭先生に憧れるあまり生物(先生の担当教科)だけ赤点をとって補習に来るという天然。
先生の前のきらきら〜と根井の前でのむっとした感じのギャップが最初はすごいんですが、可愛かったです。どこが、っていうと大分詰めが甘いんですね葉純くん。補習に来てるのにプリントさらさら解いたり、感情が表情に出過ぎたり。隙?というか頭は良いのに表情が可愛くて葉純くんがぐるぐるするほど微笑ましい気持ちになりました。
根井とのやりとりで人付き合いの難しさを少しずつクリアして歩み寄っていく姿が素敵です。「大丈夫だよ」のところでなんだかここまで来たかーと感慨深くなってしまった…
根井
ちゃ、ちゃら男だ〜!と思ったのですが、とっても良い子です!
最初はタイプの違う葉純くんと馬が合わず図星をぐさっとついてくるのですが、おすすめされたアニメを徹夜で見たり、花の世話ちゃんとやったり、生物苦手設定を忘れた葉純にツッコミを入れたり、人の感情を汲むのが上手だったり、素直さのなせる魅力がいっぱい詰まった子です。
先生の話を聞いた後から見せる悩んでる時の目線が明るい普段との対比でグッときました。
お菓子の新作をゲテモノと知ってもついつい買っちゃう高校生っぽいところも可愛いです。甘えがちな猫みたいでした。
木庭先生
生物の先生です。もっさりした感じ。
この先生、恋愛として話に絡んでこないところがすごくいいな、と思いました。助言はしますが、あくまで「先生」で「大人」なんです。葉純がわざと赤点をとっていることも、根井の気持ちも察していました。葉純と顔が似ている元恋人を思い出してもずっと一途です。(でも、恋人の好きだったラーメン屋を葉純くんに教えたのはどんな気持ちだったんでしょうか…)
書き下ろしで数年後が描かれていますが、先生にとっては葉純も根井もずっと教え子で子どもなんだなーと思いました。
先生が単なるスパイスではなく、主要人物だ、という感じがとても好きです。
全体的に画面が細かく美しく、場の空気感(友達と過ごす夜や先生の車に乗るちょっとした非日常感とか)が伝わってくるようでした。
主人公達にとっては人生でそこそこ印象的な出来事なんだろうけど、それが全てじゃなくて、色々あった中の1つ、みたいな感じもツボでした。
目の描写も印象的で、お話も静かなのに染み渡るような構成でこれからも応援したい作者さんです。
…先生と小林はどっちがどっち…もにょもにょ…
初めて商業BLを読むきっかけになった作品です。
なので、ちるちるさんも見始めたのが凄く最近で、レビューというものの書いたことが全然なくて、読みづらいところが沢山あると思います。すみません。
以前から作家さんのことが大好きで、初めてのオリジナルでBLということで、WEB連載の時からずっと追いかけていました。
更新されるたびに、これからどうなっちゃうんだろうってドキドキしながら読んでいて、
とても小さくて、普通に読んだら気づかないようなちょっとした表情が
(私もコミックスを3回ぐらい読み返して気づいたところが沢山あります)
実はとても深い意味を持っていたり……。
読んでいて、ずっと、胸の中でじわーっと広がる、あったかいものがありました。
私は最初葉純くんが大好きで、木庭先生とくっついてほしいな、
と最初は思っていて、というか普通にそうなんだろうな~と思ってたんですが、
でも根井くんとの時間を過ごしていくことで、あ、根井くんも大好きだな~と思ったりして、
読み進めればすすめるほど、作品に出てくる色んな人のことが好きになっていく作品でした。
根井くんと葉純くんがくっついてくれて、今ではよかったなあ…と思っています。
全然激しくないし、無理もないし、多分普通に考えたらちょっと地味?なんですが、
でもそれでまるまる一本描ききってしまって、しかも、ずっと夢中になって読めて、
そういうところが本当に凄いなと思いました。
カバーもとてもきれいだし、描き下ろしも、特典も(私はホーリンラブブックスさんで買ったのですが)とてもよかったです。他の特典も読みたいんですが(中四国のやつとか、行けないので)、いつかどこかでまとまったりするものなんでしょうか…。
この本がきっかけで、商業BLという世界をちゃんと知ることが出来たので、私にとってはそれも特別なことです。
本当に、読めてよかった。と思う作品でした。
読みづらいレビューでごめんなさい。本当に好きでした!!
高校の生物教師と、二人の生徒が織りなす恋愛模様。
と、一言で片付けるには奥深すぎる……。
既にたくさんの方がレビューで触れている部分だけれど、
本当に「三角関係」とは言い難い、絶妙な距離感の三人、それぞれが主役になっている。
最初は生物教師の木庭が好きだと思っていた葉純が、自分も木庭を好きかもしれないと言う根井と出会い、その秘密を「共有」する。
けれど、そんなオイシイ展開にもかかわらず、「二人で好きな人の好きなところを言い合う」ということが一切ない。
共有はしても、共感し合うことはないのだ。
はじめはそれにかなり驚いたけど、でもそれって、ものすごく男子高生のリアルなんだと思う。
別に互いに話を合わせるでもなく、各々好きに想って、考えて、時折口にしてみて、共感されなくても全然良い。
それと同時に「自分が知っていることを、あえて相手には伝えない」ということもする。
大人にだってなかなか出来ない。
ましてやこの二人は高校二年生である。進学クラスに通う秀才くんと、普通クラスに通う、感性の鋭いおバカ。
最も顕著なのが、木庭の過去を知った根井が、葉純にはそれを最後まで言わずにいたこと。
それは根井なりの木庭への敬意であって、わざと隠しているわけじゃない。
木庭も、葉純には何も言わず、ここで木庭と根井の秘密が「共有」される。
しかし、木庭と葉純二人のシーンでも根井の話題はあがっていて、
そこで木庭は「葉純が根井を好きになりかけている」ことに気づくし、それを根井に言ったりはしないのだ。
安易に、助け舟を出すことも無ければ、背中を押すこともない。あくまで「教師」として、見守っている。
なんかもう単純にすごい。自分の作品を客観視できすぎてる……。
もちろん、高校生にしては頭が良すぎちゃって、という意見もすごい分かる笑!
けど、根本でとても優しい子達だからこそ、自然とそういう取捨選択が出来るんだろうなと思っている。
読者は神目線なので、なんでも知っている。
それは当然として、キャラクターたちは、まさか自分が誰かと喋っている裏側で何かが起こっている、なんてことは知らない。
結構それって忘れられがちというか、私自身が忘れがちな観点なのだけど、
そこを徹底してくれていたことが、何よりも気持ち良かった。
作者の人は頭が良いんだろうなあと思う。
デビュー作ということで、これからもこうやって、綿密に組み立てられた物語を作っていってほしい。
期待しかない作家さんです。
色々書いたけど単純にすごい好きだ!百点!!!
一冊すべて表題作。厚みがあって、読み応え十分でした。
「恋」と一口に言っても、それにはいろいろな形がある。
それをとても繊細に、丁寧に、ゆっくりと描いています。
中陸先生のもう一冊の本(今はかわいいバンビーノ)も読んだ上で、この方は短編以上に長編が物凄く上手いなと感じました。
ひとりひとりのキャラクターがしっかりと生きていて、何故、どうして行動を起こすのかまで、はっきりと理解出来る。
だからこそ、誰かに特別感情移入するというわけではなく、
キャラクター全員の人生を追いかけたくなるような(作中では半年ぐらいしか時間は経過していないのですが)、そんな読み方が出来る作品です。
出て来る人たちがとにかく優しいので、読んでいて全員のことを好きになってしまう。
だからこそ、みんなが幸せになれたであろうラストは、爽やかな涙が溢れました。
出来るだけゆっくりと時間をかけて、あるいは何度も読み返して、
たくさんの発見に胸を躍らせながら読むという側面も持ち合わせています。
2P程度しか出てこないキャラクター、1コマしか出てこないキャラクター、全員が「植物」に関係する名前だったり、
時間経過と共に、ちょっとずつ変わる髪型とか、意外な私服姿とか、
何よりも主人公である葉純の成長ぶりであるとか……。
人間とは愛おしい生き物なんだ、ということを思い出させてくれる、素晴らしい作品でした。
最後に、とても個人的な意見ではありますが、
この作品が「BL」という枠で発表されたことが、何よりも嬉しく思います。
だからBLはやめられない。心からそう思いました。