SS付き電子限定版
『あのとき君とシておけば。』が大変良かった上田にく先生の過去作。個人的な話ですが、好きな作家さんは既刊8割がた好き、デビュー作から推せるってのが多かったところ、正直に上田先生の初期作品は全然ハマらない。マイナス点っぽいですけど、むしろ自分にとって僥倖で、過去作が合わなかった作家さんも最新作がツボをついてくる場合があるんだな〜と気づいたわけです。
今作の表題は、こういう話ですよ〜って見えてくるのが遅いのが勿体ない。特に最近の漫画はBLに限らず、1話で作品全体の方向性がしっかり見えるものが多い気がする。『あのとき君とシておけば。』なんかはまさに1話目で作品の自己紹介がしっかり済んでますね。この点に限らず、本人が意図的になのか編集者の助言なのか、ブラッシュアップして最新作に至っているならなんと素晴らしいことだろうと感慨深く思います。
作者買いです。
①そして今夜も眠れない 萌2
攻くんの妄想がセーヘキど真ん中なんですよねえ・・・♡絶対本気では嫌がってない、いやよいやよも系!大好き!抱きたい!全力でいじわるしたい!!!!
前後編の短めのお話ではありますが、夢と現実が混ざって、ただそのまま・・・ではない流れもめちゃくちゃ好みの展開。あとはもう少し時間をかけてモダモダしてくれれば、完璧!やっぱり上田にく先生のお話が大好きです。同じ時代に生まれてしあわせ!
②愛してると言え 萌
こちらも、、!可愛い(*´◒`*)
素直になれないツンデレDKと彼を思い続ける(けど忘れるためにめちゃくちゃ彼女つくる)マイペースDKの話。マスミくん(ともだち)のアシストが絶妙。歌詞最高笑
③魔法をかけて 中立
④ふたしかなビジョン 中立
キャラがハマらないのと、ちょっと不完全燃焼です・・・!
珍しく収録されている全てが攻め視点の短編集でした。
「そして今夜も眠れない」5割
「ふたしかなヴィジョン」1割
「愛してると言え」 1.5割
「魔法をかけて」 2割
描き下ろし 0.5割
【そして今夜も眠れない】
表題作で一番長めのお話。
こちらは唯一の社会人(同僚)で不眠症の受けに一緒に眠ってくれと頼まれた攻め。
一緒に眠るうちに妄想が止まらなくなり…。
受けの方が最初に攻めに片思いしていた実に平和な作品でした。
【ふたしかなヴィジョン】
コンタクトだった攻めが眼鏡にイメチェン。
【魔法をかけて】
ダサいオタクの攻めがイメチェン。
エロは表題作のみで、それでもかなり薄め。
BL初心者さんにはオススメですが、かなりBLを嗜んでいる方には物足りないかもしれません。
地雷もなく、当たり障りのないほのぼのBLが楽しめます。
ただ、私は読んだ後にあまり思い出せないくらい、特出した面白みを感じられませんでした…。
睡眠不足に悩んでいた広瀬から、安眠の為に添い寝して欲しいと、頼まれた岡田は、一緒に寝る様になってから不埒な夢を見る。この、岡田の「夢」は、実は現実で…。っていう話かと思った。夢遊病的な?もしくは、広瀬の想いが夢枕に立つのか。あるいは、作中、岡田も訝しんでいる様に、自身の願望なのか…?気持ちも恋も。無意識下では芽生えていたのか。
物語は、明確な答えを出さないまま、二人の関係が変化していくところを描いていく。
とにかく、職場では普通の友達なのに、夢の中で抱かれている広瀬が可愛くて、ヤバい。電子限定のおまけを読んで、この一見不思議な物語の答えを見つけた様な気がした。それは本編の前日譚。広瀬の方も、岡田を気にしていたのだ。さりげなく優しくて、人たらしなところがある岡田を素直にいいな、って想う気持ち。添い寝を申し出たのは、岡田に近づく為だったのかどうか…?は判らないままだけど、もしそうだったら、そんな大胆なアプローチを選択した広瀬がやっぱり可愛いと思ってしまう。
同時収録は、ツンデレが過ぎる相川の、気持ちと真逆の可愛げの無さにちゃんと気づいてあげられる角倉。「愛していると言え」。友人の真澄作詞・作曲「ツンデレハート」が相川の気持ちを表して、キューピッド♡ しっかし、相川の気持ちを思うと、これは恥ずか死ぬ。若さ故の…って事でいいのかな。
オタクの晴生に頼まれて、イメチェンをしてあげた幼馴染の千昭。「魔法をかけて」。クラス中の皆んなが驚く程のイケメンに変身した晴生の一念発起の目的は…、もちろん千昭への恋心ゆえ。よくある設定だけど、予想の斜め上に行動する晴生には驚かされます。
視力が落ちてしまい、眼鏡をかける事になった明里と教師に淡い想いを寄せる三隈とのショートストーリー「ふたしかなヴィジョン」。眼鏡をかける前の日に、ぼんやりとした視界で三隈の泣き顔を見てしまう、明里。短かすぎて、この二人の間には何かが始まる予感だけ残して終わる。
短編はいずれも可愛いけど、やっぱり表題作の不思議な夢の物語が一番好き♡ 描き下ろしも可愛くて。夢より現実の広瀬がエロくて可愛いよ、っていうあまあま後日談です♡ そうでなくっちゃね!
素晴らしき当て馬ゼロの世界!
もしくは不特定多数の当て馬風な存在がほんのりいるだけの世界とでも言いましょうか。
どきどきしつつも、無駄にハラハラまではしたくないという方にはおすすめです。
4組のCPが出てきます。
表題作は同じデザイン会社に勤める同僚が隣に引っ越してきた!という話。
「実家では犬と寝てたから眠れない」という理由で一緒に寝るようになるも、今度は主人公が淫夢で眠れない!という展開でした。
概ねさらっと読めますが、同僚が過剰に頬を赤らめていた社長への思いは単なる憧れだけでしたという件がないので、そこだけ引っかかりました。
2つ目のCPは友人最高か!という短編。
入学してすぐに助けた亀ならぬ助けた同級生に告白されて「気持ち悪い」とフったものの、その後仲良くなって3年。今度は自分が好きになってしまったけど、素直になれなくて…というツンデレ男子の話でした。
水田くんにすべて持っていかれます。作詞作曲、自主制作でCDまで作る友人、最高です。
3つ目はリアルスネオヘアな幼馴染が好きな子のためにイメチェンしたら、あらイケメンという話。
スネオヘアーがスネ夫ヘアだったインディーズ時代にライブに行ったのを思い出しました。そんな彼も今はともさかりえの夫。それはいいのですが、最初から展開は読めているものの、内田さんの挟んでくる小ネタにいちいちクスっと出来るので楽しめます。よさこい節w
4つ目は視力だだ下がり男子がとうとう眼鏡を作ったら、好きな人もできたよという話。
DKらしい暴走やもじもじした感じ、片思いしているという気持ちだけで充実できたあの頃を思い出せる瑞々しい短編でした。
やはり好きな人が自分を好きという設定、さらに余計なことをしてくる当て馬がいないという作品は気持ち良く読めるなあと再確認できた短編集でした。
既に現実社会でもやもやしまくっているので、これ以上もやもやしたくない!というときにおすすめです。