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表題作溺れるほどの愛を聴かせて

峰岸拓真,劇団員
伊波透琉,元ピアニスト

その他の収録作品

  • 溢れるほどの愛を奏でて
  • あとがき

あらすじ

元ピアニストの透琉がバーで出会ったのは、自己流のピアノを心から楽しそうに披露する男――。役者だという拓真からピアノへの愛惜と鬱屈を言い当てられ、泣く事を許されるままに身体を重ねてしまった。一夜の過ちにして忘れようとする透琉を、しかし思いがけぬ再会が待ち受ける。拓真は躊躇う透琉の手を優しく強引に取り、舞台へと導いて……?

作品情報

作品名
溺れるほどの愛を聴かせて
著者
杉原朱紀 
イラスト
カワイチハル 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
発売日
ISBN
9784344839045
3.6

(13)

(2)

萌々

(5)

(5)

中立

(1)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
4
得点
46
評価数
13
平均
3.6 / 5
神率
15.4%

レビュー投稿数4

お互い足りないものを補い合うパートナー


元ピアニストの透琉(受け)は偶然入ったバーで酒を過ごしてしまい、バーで会った役者の拓真(攻め)にお持ち帰りされてしまいます。
もう会うことはないと思っていたのに、偶然恩師の家で再会してしまい、言葉巧みに連絡先を教えさせられ、マスターが心配してたからとバーに誘われ、だまし討ちで拓真の所属する劇団の劇中曲の作曲まで受けてしまいます。

透琉は真面目で他人に優しく自分に厳しい人で、音楽一家に生まれ弟の天才的才能を前にピアニストとしては平凡な自分のふがいなさに、真面目過ぎるがゆえに人前でピアノが弾けなくなってしまいます。誰も悪くないとわかっていても、自分を傷つけないためにその元凶になってしまった相手を憎んでしまう人が多い中、相手を傷つけないようにできる透琉にはとても好感を持ちました。

拓真は劇団に所属する役者ですが、役者一本でやっていくにはまだ足りないものがあり、バイトをしつつ役者としての腕を磨いています。プライベートでは懐に入れる人物が限られていますが、普段の彼は人懐こくコミュ力も高く、警戒心剥き出しの透琉もうまく誘導してしまいます。連絡先を聞き、自分の所属する劇団との仕事も引き受けさせて、普段の生活がダメダメな透琉をさりげなく心地よい生活ができるようにサポートし内側に入り込むのは見事です。

透琉がピアノを弾けなくなって1年ちょっとという時間の経過、拓真のアプローチが透琉にうまくかみ合ったこと、停滞している自分を何とかしたいという気持ちが透琉の根底にあったことなど色々なタイミングが良かったからこそ、透琉が人前で弾こうという気にもなったのだと思いました。

でも、拓真を慕っている後輩君の意地悪に拓真が全然気づかなかったのはちょっと疑問に思います。「何かあったようだ」「おかしい」と思ってるのに、透琉の言葉を鵜呑みにし、ほかの手段を考えなかったのは普段の如才のないところをみると不自然だし、たくさんのほかの団員がいる中でのトラブルなのに全く耳に入らないのは作劇上の意図を感じてしまいます。その意地悪がエスカレートしたおかげで、大事な場当たりとはいえ本番前に透流のトラウマが再発し、本番で失敗することにならなかった結果になったのですが、もう少し自然な流れに持って行けなかったかなぁと思いました。
透琉が弾けなくなったトラウマに対する根本的な解決は透琉の中でまだなされてなかったので、いずれどこかで噴出したはずです。自分にも周りにもダメージの一番小さいタイミングはここだったのでしょう。自分は誰かに必要とされていると実感できて初めてこの状態から脱却できたのですがら。

とはいえ、知らないからと言ってトラウマから脱却しようと一生懸命あがいている人に対するこの酷い仕打ちに、あの後輩君はもう少しペナルティがあってもいいと思います。慕っている拓真からの信頼は地に落ちただろうから十分かもしれないけど、ちゃんと謝るくらいはするべきです。無視されるけど、何も言ってこなくなったからまぁいっかじゃないと思うんですよね。子どもじゃないんだから、本人のためにもよくないと思う。演出家の人とか間に入るなりするべきじゃないのかと思いました。

それにしても、透流の意地悪に対しての「指をケガさせられなければ大丈夫」という姿勢には驚きました。今までさんざんやられ慣れてるからと、慣れるほどやられててもそれに屈しない豪胆さと透琉自身の内部からにじみ出る繊細さとが同居しているアンバランスさが透流の一つの魅力なのかもしれませんね。

自分のすべてを受け入れてくれる相手を得た透流は、きっと人前で弾くことに少しずつ慣れ、その間に作曲の仕事もどんどんして、いつかは自分の作った曲でリサイタルができるようになったり、恩師に頼まれていた臨時講師の仕事をしたりと仕事の幅が広がるんじゃないかと思います。意地悪な記事をかいた記者を悔しがらせるといいと思います。
拓真も透流を得て足りなかったものを埋めることができ、これからどんどん露出が増えていきそうだし、この先の話も読んでみたいと思わせてくれるお話でした。

4

少しずつ1歩前へ

【劇団で役者をしている攻め×心にある深い傷に捕らわれたままの元ピアニスト受け】のお話です。

カワイチハルさんの優しくて繊細なタッチは作品の世界観に合っていてとても良かったです。
個人的に小説を読む上で挿絵も重要視しちゃうのでドップリ浸りながら楽しめました。

表紙のイメージで、芯が弱い受けなのかなぁ?と想像してたのですが
繊細さだけでなく強さも併せ持つ受けで好印象です◎
攻めに支えられながらも少しずつトラウマに立ち向かう姿。
真面目すぎるがゆえに藻掻く受けにエールを送りながら読み終えました。

で。
攻めの立ち振る舞いや言動から年下ワンコっぽさが醸し出されていて
年下ワンコ攻め萌えでキュンキュンしてたら年上攻めでした←
おっふ…年齢が明かされた以降も年下にしかみえなかった私の目よ…(ФωФ;)
年上攻めですが年下ワンコ攻めが好きな人も楽しめる気がします。
受けの番犬のような可愛さが時折見られましたw

また、あとがきの余りページにショートストーリーがあり、
最後の最後までお楽しみがありますヾ(*´∀`*)ノ
(エンドロールのあとのお話はなんかお得感ある気がする←)


内容は姐様方が詳しく書いて下さってるので感想を。

攻めはフワッと撫でるような優しさを感じさる反面、グイグイ押す一面がとても萌えました!
受けが『空気読め~空気読め~』というオーラをだして牽制しているのを
ニッコリ笑いながら敢えて空気を読まずに自分のペースに持ち込む強かさ…!!
(私は年下がコレをしたら堪らなく萌え転がります。この攻めは年下じゃなかったのが惜しい;)

少々強引さは否めないものの、
結果的には受けの性格だと強引でちょうど良かったようです。
トラウマで前に踏み出せない一歩を、やんわりと優しく且つ力強く背中を押す。
この押し加減が、受けの本音を上手く引き出しながら前へ引っ張っている様に感じました。

あと、世話焼き攻め萌えとしてもGOOD(^///^)b
作業に没頭するとなにもかも忘れてしまう受けに、せっせと身の回りの世話を焼く姿が良かった!

受けはトラウマ持ちで前にも後ろにも動けずにいる人。
個人的にトラウマ持ちの受けは卑屈な性格に描かれるイメージが強くありあまり萌えないのですが、
この作品の受けはトラウマの恐怖はあるものの卑屈さは感じませんでした。
攻めの手を借りながら少しずつ少しずつ動き出す姿を見て応援したくなります。

またトラウマのキッカケとなった弟にも優しい兄で居続ける強さが良かったです。
マイナス感情をぶつけないことは美徳とは限らないけれど
劣等感や自分に対する失望を弟にキツく当たったりする人ではありません。
真面目すぎる性格で自分の首を絞めてしまう不器用さを感じました。

そんな兄を慕う弟はこれまたイイコで…!
お兄ちゃん大好きッコでとても可愛く嫌みがなくて、弟が出てくるとホンワカします。
他のメインになる登場人物の皆も優しい人ばかりで疲れた心には毒気の少なさに救われました。
(その反動か、トラウマをわざわざ抉る人が出た時はとても刺さりましたが;)

登場シーンが少ないんですが、
マネージャーをしてくれてるという松谷さん…!
なかなかの存在感で、あれ?スピンないの???と探しました(;ω;)ナカッタ
松谷さん、めっちゃ気になる。

1

ピアニストの再生物語

あらすじ:
元ピアニストの透琉(受け)は、何気なく入ったバーで拓真(攻め)と名乗る男と出会い、彼と一夜を共に。
後日、拓真と偶然再会し、彼の所属する劇団の公演で作曲・ピアノ演奏を担当することに…

透琉は、指揮者の父とピアニストの母との間に生まれた青年。
天才ピアニストである弟へのコンプレックスから、舞台でピアノが弾けなくなり、1年前にピアニストを引退。
今もピアノや音楽を愛していますが、舞台に立つことには恐怖を抱えています。

そんな透琉が、バーで酔ってネガティブな気分になっていたところを拓真に慰められ、そのまま頂かれてしまい…という展開。
拓真もちゃっかりしていますが、透琉も透琉でいまいちしっかりしていないので、どっちもどっちかなという感じです。

ピアノの才能に気づいた拓真は、再び舞台に立てるよう彼をサポート。
舞台恐怖症で、本公演前の稽古ですら緊張してしまう透琉を献身的に支える姿がなかなか男前です。

透琉の問題はメンタルのみで、この手の作品によくある指を怪我したとかそういう物理的な問題は全くないので、やや深刻さには欠けるかも。
しかし、舞台恐怖症というのも本人にとってみれは非常に克服の難しい問題で、その大変さや、他者の支えで徐々に勇気を取り戻していく過程が丁寧に描かれていたと思います。

劇団の様子やピアノに関する薀蓄など細部の描写も楽しめましたが、二人のキャラクターに癖がなさすぎるせいか、萌は感じ辛かったかも。
同い年設定のようですが、具体的な年齢、性格などもっと情報量があれば更に楽しめたかなと思います。

6

世話焼きの攻めとトラウマな受け

心理的なトラウマからピアノが弾けなくなったピアニスト受けが、役者の卵の青年攻めと出会い、癒されていく…というのが大筋の話です。

トラウマは本人にしてみれば大きいのでしょうが、その詳細を攻めに告げることもなく「ピアノは弾きたくない」と言ってるだけなので、攻めにも腫れ物に触るように接してもらえず大雑把に扱われています。受けが「ピアノを弾けない、弾きたくない」と言い、攻めが「透琉(受け)のピアノが好きだから舞台で弾いてくれ」と迫り、騙し討ちで第三者にもそのピアノを聴かせるという、これ本当にエグいトラウマだったらどうすんだ、という展開。
あまりの大雑把さに、配慮のない攻めだなぁと思いつつ読んでいたら、受けの独白で「拓真(攻め)は僕が本当に嫌なことには触れないでくれる」。ええっ、と思いました。ピアノを舞台で弾いてくれと迫ることは嫌なことではなかったの?
まぁ、口ではイヤイヤ言ってても、「曲だけは作ってやる」、から「音源のピアノを弾いてやる」、「舞台に立って弾いてやる」とだんだん出来ることも小出しに増えていったので、攻めの配慮のない厚かましさが受けのトラウマには合っていたんだなと思います。でも多分、この楽天的な感想は作者さんの意図とは違う気が。

心理的なトラウマ云々は私的にはイマイチでしたが、エッチはとても良かった。初対面で酔った受けをお持ち帰りして初回、気持ちが通じ合ってから二度目というラインナップでしたが、どちらも攻めがかなり絶倫で、普段はあんなに爽やかなのにこのねちっこさ!、とギャップに萌えました。
抜かずの○発のあと、抜いて漏れ出てくるのをガン見、そのあと再度挿入の流れには個人的に萌えたぎりました。エッチシーンの好みだけで言えばかなり高評価です。

2

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