• 紙書籍【PR】

表題作恋の獲物

志水千博(しみず ちひろ)18才
高森恭介(たかもり きょうすけ)29才

あらすじ

仕事熱心で真面目な公認会計士、恭介の前に現れたのは、頼りなげな幼さを残した可愛い顔立ちの青年、千博。
どこにでもいるような今時の若者に見える彼には隠されたもうひとつの素顔があった。
かつて千博の中に激しい衝動を湧き上がらせた恭介との出会い、それが始まりだった。
『甘い罠』に続く、ハード・ラブストーリー後編はミステリアスな千博のこころ模様とその過去が明らかに!千博に翻弄されながらも、恭介が見出したふたりの関係の意味とは…。
番外編『鏡が映すもの』も収録。

作品情報

作品名
恋の獲物
著者
暁由宇 
イラスト
斐火サキア 
媒体
小説
出版社
イーコネクション(星雲社)
レーベル
Gene novels
発売日
ISBN
9784434022890
4.6

(3)

(2)

萌々

(1)

(0)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
2
得点
14
評価数
3
平均
4.6 / 5
神率
66.7%

レビュー投稿数2

答えはなくても

『甘い罠』の続編。前編で年上の男を翻弄して落とした千博が、なぜ恭介に執着し、Sな性癖に至ったのかが明らかにされます。

作者様のキャラ造形にはちゃんと理屈が仕込まれているところが真面目だな〜と思います。例えば、家族構成であるとか、それまで付き合ってきた友人や恋人との関係性であるとか。

千博は中学まで自営業の家庭に育ちましたが、高校生の時に父親の会社が経営破綻。借金返済のために両親は離婚、千博は母方の祖母がいる北海道へ転校します。そこで初めて同性の先輩・誠から口説かれて恋人になり、SM的なお遊びを覚えたのでした。

兄と妹に挟まれた中間子の千博は、両親からの関心が薄かったにもかかわらず、いつも自分のやりたいことを否定されてきました。バイクの免許を取る時も反対され、祖母が急逝した時も北海道に残って高校の二部に通うことを認めてもらえず、自分の非力を恨みます。早く自立したいと思っていましたが、結局どちらも友人や恋人の影響でしかなかったことに気付いていきます。

千博が恭介を落とし、初めて寝てから半月が過ぎた頃。恭介になぜ自分だったのかと問われ、実は3年前、父親の会社が経営破綻した際に会計士として倒産処理に当たっていたのが恭介だったこと、また、その時から恭介のことが忘れられなかったことを告白します。

家族の危機にあって、弱っていた父親の代わりにサポートしてくれた恭介に父性を見出し、甘えたくなったであろう倒錯した千博の欲求はわからなくもないし、二人が再会したのも宿命だったといえないこともない。

本編後の「鏡が映すもの」では、恭介が別れた元恋人と会い、過去のわだかまりを清算したり、母親からお見合いを勧められても、結婚は考えていないことをきちんと伝えるエピソードが描かれています。

お互いの過去と現状を対話や肉体の交わりを通して照らし合わせながら、二人の今とこれからに目を向けていく結末は、不安もあるけれど強い信頼を感じさせてくれて、とても良い関係だなぁと思いました。

言葉少なく飾らない日常会話が男同士っぽくてリアルです。千博が作るレトルトにひと工夫を施した手料理が美味しそうで参考にしたい笑

天真爛漫でめげない千博のキャラが愛くるしく、抑圧系淫乱ちゃんな恭介のキャラもさっぱりとした男前なので、闇には落ちません。萌えとは一線を画しますが、人間描写に心血を注いで深く掘り下げている部分はとても読み応えがあると思います。

0

あなたは恋人で飼い主

もう一冊、「甘い罠」という受け視点のお話が出ているのですが、こちらの「愛の獲物」は攻め視点のもの。

歳の差のあるカップルで、年上で真面目な会計士・恭介が年下で小悪魔系の学生・千博に調教されていくお話です。
「甘い罠」では肉体的な調教が多かったのに対し、こちらは精神的なものに目を向けています。
あちらから読むのが時系列的にわかりやすくオススメだと思います。

こちらは少し時間が経って、恭介は30歳・千博は19歳になっています。
30歳の大人が10代の子供にいいようにされているのもなかなかそそられるのですが…。

調教ものといっても鬼畜系とは違って、暗黙の了解と言うか、互いに望んでしている雰囲気で、その後の2人はすっかり恋人になっています。
昼間は学生の千尋を10歳以上年上の恭介がベタベタに甘やかします。
美味しいものを食べさせてあげて、千博にお金は一切出させず、自分は仕事をしながら、千尋にはテレビを見せたりアニメやゲームをすすめたり。理想的な甘やかし系の歳の差カップルというという感じ。
でも夜になると関係がガラリと変わり、それがとても面白いです。

「甘い罠」では何で千博が恭介に近づき、恭介の身体を開発しようなんて思ったのか、そのへんが曖昧でしたが、こちらはその理由が千博視点で描かれています。

千尋はこれまで親の都合で学校や住居を転々とした過去があり、初めて出来た彼氏のそばに残りたかったのに許されなかった過去があります。
けれど、死ぬほど辛いトラウマかというとそうでなく、自分は子供で非力だったゆえの苦い過去だという感じでかかれているところがよいと思う。

千尋に大きく歪んだ過去があってこういう行為に出たというわけでなく、こういうこともあったよという感じです。もし千尋に相手を従属させることで得られる快感があるのならそれはもともとあったもので、恭介もまた同じです。

それでもハードなSMや必要以上にパートナーを痛めつける行為は千尋にとってそこまで興味を引くものではありません。
あくまでハードとも、痛い調教とも違う。ただすごく気持ち良さそうで、二人ともノってる、ていう表現が近い気がします。

「受け止めてくれる相手がいなくてみんな苦労する」という台詞があります。これは「相手がいないと出来ない遊び」なんだろうと思います。
アブノーマルなのかもしれないですが、精神的にも肉体的にも満たされた2人だと感じました。
えろ度は「甘い罠」のほうが高いです。でもラブ度はこちらのほうが高く、お話としてはこちらのほうがよく出来てるかなあと感じました。

ハードで鬼畜な調教ものとはちょっと違う、雰囲気の調教ものが見たいときにオススメです。

1

マンスリーレビューランキング(小説)一覧を見る>>

PAGE TOP