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表題作神さまに言っとけ

惣田洋一(清水陽一),瀕死のヤクザ,32歳
久慈眞,花屋の店員,18歳

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

ある事情から『純粋なる人』と恋愛関係を成立させなくてはならなくなった惣田洋一は、花屋に勤める眼鏡の冴えない十八歳男子・久慈眞と恋愛すべく努力をしていた。
期限は四週間。だが、女にすら本気になったことのない惣田に、男と恋愛できるはずがなかった。
おまけに野暮ったい眞はいつも俯きがちに話し、いつもおどおどしていて魅力がない…はずだったのだが!? 
榎田尤利が贈るスピリチュアル・ラブ!

あなたは奇蹟を信じますか?

作品情報

作品名
神さまに言っとけ
著者
榎田尤利 
イラスト
紺野キタ 
媒体
小説
出版社
大洋図書
レーベル
SHYノベルス
発売日
ISBN
9784813010142
3.9

(30)

(10)

萌々

(9)

(10)

中立

(1)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
6
得点
117
評価数
30
平均
3.9 / 5
神率
33.3%

レビュー投稿数6

「最初から最後まで榎田尤利」って感じ!

電子書籍で読了。挿絵なし。ちなみに現時点で紙の本は中古しかないみたいです。

2003年の出版ですが今調べたら「ラブトラ」や「眠る探偵」のシリーズを書いていた頃なんですね。榎田さんのお話はすごく好きなのですが、この作品は取りこぼしていました。いやー、気づいて良かった。

榎田尤利さんは、こういう言い方もなんですが、ブランドとして確立している作家さんだと思うのです。それもエンタメ色の強いブランドなんじゃないかと。だから「好き嫌いのハードル」が高くならざるを得ません。あと「出来るだけ平易な言葉で複雑な人生を語って欲しい」と、求めてしまっています。
つまり榎田さんに対して、私はとてもとても欲張りになっているんですね。あくまで私基準ではありますが。

このお話の分類は多分「ハートフルコメディ」って言うようなものなんでしょう。
その非情さゆえに刺されて瀕死状態のヤクザ惣田は「4週間の間に指定された『純粋な人』と恋愛関係を成立させ、その『純粋な愛』を主に捧げる」ことが出来れば死を免れる契約を神と結びます。
神は人と対峙しないものですから、お告げを持ってくるのは大天使ガブリエルなんですが、このガブちゃんがとんでもないオチャラケさん。惣田とのやりとりは、そのリズムの良さもあって明らかにマンザイです(「天使が暴力をふるうのか!」「武闘派だもん」のやりとりには吹いた)。『純粋な人』久慈くんもズレまくりで、そこはかとなく可笑しい。
でもね、いきなり心をわしづかみにするような文章をぶっ込んでくるんですよ。
「さっきまで笑ってたのに今は鼻の奥がツンとする。どうしよう。ヤバイ」という状況に何度なったことか。

人を好きになることは、嬉しくて高揚して、明らかに陽の感情なのに、どうしてもの悲しくなるのか、私はずっと不思議に思ってきました。
その理由が書いてあります。
ベタかもしれない。いや、確実にベタでしょう。
でも、だからこそ愛は人生は美しく輝くのだと思わせていただきました。
神評価、付けさせていただきます。

5

春の日差しのようなファンタジー

トラブルで女に腹を刺されたヤクザの惣田は、三途の川の手前で何故か天使ガブリエルに出会い、
指定された「純粋な人」と、恋愛関係を成立させることを条件に、執行(死亡)猶予を貰う。

骨子は古典的なおとぎ話なんだけれど、細部が王子さまじゃなくてしょうもないヤクザだし、
天使もふざけた奴だし、そもそも、天使さまBL勧めてどうする?!という、おかしな幕開け。

指定された純粋な人は、あか抜けない臆病な花屋の青年・眞。
しかも、執行猶予中の惣田の魂は
「清水洋一」という本当の自分より10歳以上若い20歳の青年の身体に入っている。

期間は4週間。
生きのびる為には、このダサイ青年と恋に落ちなくっちゃならない?!

最初はそんな利己的な理由で眞に近づいた惣田が、
いつしか眞や周囲の人々を思いやることができるようになっていく様が丁寧に書かれている。
一方の眞も、惣田と触れ合ううちに少しずつ人付き合いが出来るように、明るくなっていく。
時折現れる天使と惣田のやり取りは漫才みたいだし、
基本的にコメディタッチで笑いながら進むのだが
少しずつ心が溶けていく様は、切なく、そして最後には…

終わり、かと思った後の、さらに一捻りのラスト!

こういう榎田さんの上手さって、あざとい気もするんだけれど、
そう思いつつやはり涙してしまうのって、悔しいなぁ!

心温まるファンタジーでした。

3

隠れた優しい名作

冒頭で引用されている新約聖書の1節とは真逆の人物である、今作の主人公・惣田洋一。
風俗に沈めた女から刺され、瀕死状態で入院先の病室で生死の境を彷徨っているヤクザです。
三途の川を目前にして目の前に大天使が現れ「生きたければこちら側が指定した人間と愛を育め」と言われ…と、現代ものではあるのだけれど非常にファンタジックな設定となっています。
レビューを書いている今から丁度20年前の作品です。
けれど、古さを全く感じさせない。随所にしっかりと榎田節が効いています。
読み応えがある作品というよりは、もう少し肩の力を抜いて読めるライトな読み口。でも、ふと気が付けば掴まれるものがある。そんな作品だと思います。

瀕死のヤクザが天使と契約を交わし、清水陽一という見ず知らずの大学生の青年の身体に入り込むお話。
天使が求めているのは純粋な愛。4週間のタイムリミットの中で、花屋で働くごく普通の18歳の青年・眞と恋愛関係にならなければ死んでしまうというもの。

コメディタッチで読みやすい中で、じんわりとくる丁寧な描写がすごく良いんですよ。
過去の境遇によるものもあるのだろうけれど、今まで人のことを、愛なんてものを知ろうともしなかった惣田の心の動きというのか…人が変わっていく瞬間が見られるのです。
人を好きになる。愛したくなる。
とてもシンプルでありながら、尊く美しい感情が優しい文章で紡がれています。

読み終えた後に冒頭に戻ると、この1節は眞そのものなのではないかなと思えてなりません。
素敵な作品でした。

0

コミカルで、ちょっとシニカル、だけどホロリとさせられて、そして……。

一見、爽やかな好青年風の大学生・清水。彼は彼であって彼本人ではない。
中身は頬にケンカ傷のある強面の32歳のヤクザ・惣田なのである。
職業柄(?)刃傷沙汰で重傷を負い、そのまま三途の川を渡るはずだった惣田はなぜだかそこで天使に呼び止められ、起死回生のチャンスをもらった。
「四週間のうちに『純粋なる人』と恋愛関係を成立させ、その『純粋なる愛』を主に捧げること」それが出来れば生き長らえさせてやろうというのだ。
というわけで、惣田本人の体は瀕死のため使えず、代わりに清水という青年の体をレンタルさせてもらうことに。
だが、天使の指定した相手は、鳥の巣頭にでっかいアラレちゃんメガネをかけた冴えないルックスの花屋の店員、しかも、男だった……。

それまで斜に構えて世の中を渡ってきたおっさんが、自分の命がかかっているとは言え、ありえないシチュに放り込まれ、賛美歌をBGMにぼやきながら花屋でボランティア。
いくら色恋沙汰に慣れてはいても、「サオやタマのある奴なんて絶対にムリ!!」。
第一、キリスト教ではご法度だろう、と抗議する惣田に「細かいことは気にしない」と答える軽~いノリの天使とのやり取りは、ベタなしゃべくり漫才のようで笑える。

外見はダサいが、不器用で言葉に嘘がなく、人に対しては少し臆病な所もあるけれど、人の痛みを自分の痛みのように感じることの出来る優しさを持った眞(マコト)と接しているうちに、惣田は徐々に心を許していくようになる。
そういう自分に混乱しながらも、眞に惹かれていく惣田の心境の変化が面白い。
人を好きになるというのはどういうことなのか、32歳にして初めて知った本気の恋が、ささくれ立っていた惣田の心をひたひたと潤し、変えていく。
そしてそれは、眞にとっても同じだった。

ふたりが結ばれ、これでようやくハッピーエンドか?と思ったら、とんでもないドンデン返しが待っていた。(まあ、話が旨すぎるよナとは思ってたけど)
でも!最後はちゃんとハッピーエンドなので、その点はご心配なく。
ラストの数ページに感動!

3

性格の悪い攻めとピュアの塊のような受け、たまりまへん…

面白かったです。
性格の悪い攻め登場。性格の悪い攻め、大好きです。
でも、榎田尤利さんの描く悪い攻めは、木原音瀬さんのような本格的な悪男ではないのでご安心(?)を。
天使との約束で、「男と恋愛」しなきゃいけなくなるこの攻め。相手として指定されたのはダサダサでピュアの塊のような男です。
どう考えても無理!と焦る攻めだけど、そうしなきゃ死ぬとなれば、必死にならざるをえない。
でも、イヤイヤながらも同じ花屋で働くうちに、受けのハートの美しさや、天然の可愛らしさなどに、どんどん惹かれていってしまう攻め。
お約束な展開ですが、描写が自然なので読んでるあいだニヤニヤ笑いが止まりませんでした。

コミカルな部分は面白く、切ない部分ではキュンキュンさせられます。
ステキな読後感でした。

2

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