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表題作天国が落ちてくる 1

ヴォーカリスト・新條カオル
音楽雑誌ライター・湊秋広

その他の収録作品

  • インタヴュー
  • プライヴェート

あらすじ

元ピアニスト志望で現在は音楽雑誌ライターの湊秋弘は、カリスマ的人気と実力を誇るヴォーカリスト新條カオルのインタビュアーに抜擢される。しかし、その貴族的ともいえる容姿と裏腹にカオルは尊大で傍若無人で暴力的という最悪な人柄で、インタビューも失敗に終わってしまう。ところが何を気に入られたかカオルに「うさぎちゃん」という愛称をつけられた湊は、再取材をエサにカオルに振り回されることに。地味で無難な人生を歩んできた湊と、スターとなるべき才能と容姿を持ちながらどこか孤独の影を漂わせるカオルとの出会いは…。雑誌掲載分+書き下ろし。

作品情報

作品名
天国が落ちてくる 1
著者
高遠琉加 
イラスト
祭河ななを 
媒体
小説
出版社
二見書房
レーベル
シャレード文庫
シリーズ
天国が落ちてくる
発売日
ISBN
9784576040684
4.3

(27)

(18)

萌々

(3)

(5)

中立

(0)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
7
得点
117
評価数
27
平均
4.3 / 5
神率
66.7%

レビュー投稿数7

静かで優しいお話です。

根底に静かなものが流れる、とにかく素敵なお話です。
この先にきっと訪れるちょっとした闇も見えているんですが、それも含めて、というか、それがあるから、というか、今の静寂が綺麗で怖い……という感じ。
夜明け前――みたいな印象の読後感です。

とにかく主役の二人がイイ!

うさぎちゃんは本当に可愛いし、真っ直ぐだし、そのくせ男前で、とても「綺麗なもの」のように見えます。
カオルが惹かれるのが凄く分かる。

カオルはカオルで、窮屈で生きにくい場所で、必死で自分の形を保つように、誰にも傷つけられないように、周りを威嚇して虚勢を張って、手負いの獣のよう。
まだ17歳なのに。
そういう狭い箱の中に無理やり閉じ込められてでも、なんとか自分を失くさないようにともがく姿がとても切なくて、そんなカオルがうさぎちゃんの傍でだけ安心して眠れるというのが本当にジーンときました。

なんだか、「この眠りを守ってあげたい」と、読みながら切実に願ってしまいます。

終盤の、道端でのサマータイムに、やんわりじんわりと感動しました。
コレと言って劇的な展開があるわけでもなく、ドラマが大きく動くわけでもないんですが。
凄く静かでなんだかとても優しくて「綺麗なもの」に触れられたような気分にさせられて、高遠さんの優しい言葉にたくさん心地よくさせてもらいました。

「神様のためのピアノ」と「うさぎちゃんの心を柔らかく撫でるサマータイム」
お互いが寄り添うのに全然傷を舐めあっているように見えないのは、二人がそれぞれ自分の仕事や立場を放棄せず、不器用ながらも一生懸命生きているからだと思いました。

3

純粋に

面白いと言える作品だと思います!
文を無理に飾り付けていないようなところとか、比喩が納得できやすいので、すごく読みやすい!だけどじっくり読みたいような小説でした。(実際はあまりゆっくりは読めませんでしたが)
読後も温かな余韻に浸れます。

クラシックの世界を諦めきれずに、悩んでいるうさぎちゃんにカオルが言った言葉がすごくジーンときました。
水族館でのシーンはほのぼのしていてすごく気に入っています~
クラゲネタは「へ~」と思いました。
うち、クラゲ大好きなんですよね~♪
カオルが毎回うさぎちゃんを振り回すところはカオルが甘えている子供みたいに見えて、萌え~!です!
なんだかんだ言ったってカオルは未成年らしいところも見せてくれます。
うさぎちゃんのピアノの音で眠ってしまうところはかわいすぎる!
これはリバでもおいしいかもしれないと思いました。
ただビールを飲んでいるところは未成年には見えないな~
ってそれ以前に未成年は飲んじゃいけない~w

「息」もとても気に入っている作品です。女の子が良い扱いをされているところにまずホッとしました。
この話はBLらしいところはないです。
意外に少女漫画っぽいような雰囲気があります。
花凛のやさしい性格にすごく癒されました。
カオルが何かお返しをしたくなる気持ちがすごく分かります。
カオルと花凛は少し似ているところがあって、どちらも本当の幸せを掴んでいない様だからこの二人には幸せになってほしいです!

3

ふたりのドタバタした始まり

業界物が好きというそれだけで購入したのですが、いまでは宝物の本の一つです。
3巻を揃えてからの一気読みをお勧めします。
祭河さんの描かれるイラストも登場人物と同じように繊細で、とてもイメージに合っていました。

俺様なタイプが好きなのでエキセントリックなカオルの言動にもときめいていたのですが、それだけではないカオルを知ってから更に好きに。
でも、基本的に俺様というか、自己中心的なのは変わらない気も。

うさぎちゃんとカオルから呼ばれる湊が、ただ可愛いだけ、愛玩されるだけでなく、きちんとした社会人であり雑誌記者という仕事を全うしていたのが凄くよかったです。
常に一生懸命で一途な秋弘の性格の良さも魅力でした。

年下のカオルに翻弄されて振り回される秋弘が、とても可愛かった。
頭で考えてしまうタイプなので、余計にそうなってしまうのだと思います。
秋弘によって癒されるカオルの姿を見ているだけで、こっちが癒されました。
ちょっとしたワンシーンでも、はっとして惹きつけられる話で、広くお勧めしたい話です。

1巻から早くもカオルが垣間見せる闇がなんだか心配で、もちろん、2人の関係も気になって、早く2巻が読みたかったです。

2

ああもう大好き

高遠琉加さん大好きです。
芸能人な攻めと、音楽ライターの受け。
舞台設定だけ見ると派手なんだけど、ストーリーは地味です。地味というか、じっくりじわじわゆっくりって感じ。なのに、ぐるぐるはしてない。そのすべてが好きです。
高遠琉加さんの小説って、空気感がいつもセピアに感じるんですが、なんでだろう。胸の奥の柔らかい場所を、常に優しく刺激してくれる感じ。すごく心地いいんです。

攻めのもがき方が痛々しい。
まだ10代で、色んなものを背負ってて、才能はあって。彼の感じる焦りやらもどかしさやらがひしひしと伝わってくる。
この攻めが、受けのピアノに癒されてる場面にいちいちキュンキュンさせられてしまう。
受けは受けで、また屈託を抱えてるんだよね。
でも、ぐるぐるうじうじして守られるだけの甘えた受けにしてなかったのが好きでした。

優しい優しい物語です。
必死で生きる二人を懸命に応援してる自分に気づかされる。そんなお話。

2

優しい子守唄


一言で言うなら、とってもとっても優しい作品で、読んだ後はきっと音楽が好きになります。

主人公の秋広は、一見高校生に見えちゃう童顔の音楽雑誌ライター。優しく心が綺麗だけれど、芯は強く強情な一面を持つ子。
一方お相手のカオルはワガママで傍若無人、でもさみしやがりで、孤独な売れっ子アーティスト。
実はBLの好みで言えば、全然好きじゃない組み合わせなんですが、気付けばこの作品に深く入り込み、読了してから数日たってもずっと余韻が残っています。

2人とも人生で挫折を味わいながら、それでも音楽を愛し、自分なりに向き合っていて、その姿には痛々しさを感じつつも透き通るような潔さも感じました。


お話の中でも特に好きな場面は、声が出なくなり眠れないカオルの為に、秋広がピアノを弾くシーン。

『この世に、こんな綺麗なものが存在するってことを、バカみてぇに信じられる気がするんだよ』
このカオルの台詞を読んで、泣きそうになりました。
絶望の中でも自分の隣にこんな優しいピアノを弾く人が居たら、また秋広にとってもこんな台詞を言ってくれる聴き手が横に居てくれたら、きっとすごくすごく幸せなんだろうなぁ。


ちなみに2巻には、カオルの恩人と、彼とユニットを組んでいたお相手が主人公を務めるお話が入っていますが、こちらの2人の関係も刹那的な美しさ、哀しさがあり、とてもお勧めです。


・・・余談ながら、シリーズを通してこの作品には、名曲が沢山出てきますが、私が特に気に入ったのが、やっぱりバッハのゴルトベルク変奏曲。
秋広がカオルにリクエストされて子守唄代わりに弾く曲ですが、寡聞にしてこの作品で初めて知りました。
作品同様にとても優しい曲なので、これを聴きながらこの作品を読むと、よりゆったりとした気分に浸れます。

1

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