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今朝早くに届いた典雅さんの新刊。「ちょっとだけ」と思って読み始めたら止められなくなって、本日するはずの仕事が明日に持ち越しに……いや、後悔はしていないっ。
『若葉の戀』と『燃ゆる頬』の二部構成です。いや、これがほぼ同じ話なのに与える印象が違うったらないの。その構成の妙だけで「うふふ」と含み笑いをしちゃうほどでした。
父の思い出話に憧れて、猛勉強の末全寮制の高校に入学した鞍掛捷は同室の領家草介に自己紹介をした途端「女子寮かよ」「仲良しごっこ」という侮蔑的な言葉を投げかけられます。理由もなくこの様な態度を取られたことのない捷は怒り、戸惑いますが日を重ねても領家のツンケンする態度は変わりません。ならばこちらから歩み寄る必要などないと思っていた捷ですが、とあるピンチを救って貰ったこともあり、夏休みにも帰省しないという領家の寂しそうに見える姿を見て自分の家で休みを過ごそうと誘います。鞍掛家での領家は捷に対する態度とは手のひらを返した様な好青年ぶり。ひょんなことから捷は領家が妾腹であること、9歳の時に実母から引き離された後は冷たい家庭環境にいること、実の母に捨てられたと思っていることを打ち明けられ、今までの態度は幸せな家庭に育ったであろう捷への八つ当たりだったと謝罪されます。捷は領家の実の母親を捜すことを提案し、一緒に静岡まで行くのですが……
『若葉の戀』で描かれるのは、まさしく旧制高校での青春です。ストーム、硬派の美少年へのアプローチ、ドイツ語混じりのあだ名や学生隠語がちりばめられており「ああこれは!ヴェッデンブルグ・バンカランゲン!金髪ものならトーマの心臓の世界のノリ!」と口元がほころんじゃう訳ですが、素直で優しい、おまけに初心な捷くんの目を通した物語なので、どこまでも健全でピュア。典雅さんお得意の饒舌さも長ゼリフも若干なりを潜め、美しい青春譚となっています。
ところがどっこい『裏バージョン』とでも言うべき『燃える頬』では、そのピュアが、健全さが踏みにじられるとでも言いますか、典雅節が炸裂!領家の激しくも捻くれたおなじみと言っても良い恋が描かれます。
このどんでん返しが可笑しいったらないの!
受け視点と攻め視点が交互に描かれるBLはいくつも読みましたが、文章や物語の印象も含めて、これほどすれ違っていて、これほど抱腹絶倒な印象を残す老獪なお話は少ないんじゃないかと思いました。
……でも、最後の一文は泣かせるのよ。
くそっ、またやられてしまいました。
蛇足
『燃ゆる頬』では草介くんの恋心が強い衝撃を受ける度にクラシックの名曲が幻聴として現れます。
それらの曲をBGMにして、今度のお休みに再読しようと思っています。
ああ、楽しみ。
とにかく出てくるキャラクターが可愛いです。
特に受けのキャラが甘いお菓子に例えられたりと、ふわふわのイメージで容姿を想像しやすいです。
ドイツ語の多様も作品の雰囲気にあってて面白い。
昭和初期の児童文学を読んでいるような気分が味わえます。
学園モノも時代が変わればまた雰囲気が変わりますね。
こういう学園モノのBLを読んだことがなかったので、とても新鮮に感じました。
シリーズ化してほしいくらいです。
この作家さんは色々な雰囲気のBLが書ける方なので本当に凄いと思います。
次作も楽しみに待たせて頂きます。
昭和初期の、全寮制男子高校を舞台にしたお話です。
主人公の捷は、見た目は繊細な美少年なのに、バンカラ学生に憧れて制服を改造しようとする等、時代の薫りをくゆらせつつ、少年たちがとっても生き生きとしていました。
小林典雅先生の書かれる文章は、いつも楽しくて好きなのですが、今回は主人公たちが外国語を勉強しているのに合わせ、文章の要所要所にドイツ語を織り交ぜているのが秀逸でした。
個人的には、キスを「キュッセン」って言うのが可愛いです…。
前編は、素直で天然な捷目線、後編はクールでツンな領家目線です。
特に後編は、素直になれない領家が実は…という種明かし的なストーリーなので、二度美味しい構成でした。
例えば、どさくさに紛れて領家が捷へ自慰を教えるシーンでは、前編では強気に見えたのに、領家視点では「このまま身体ごと、シャムの森の奥の遺跡のように、蔦に巻かれて何百年も絡み合っていられたら‥」みたいな、溺愛独白をしているのがたまりません。
また、湯上がりに、お互いの洗面器をコツンカツンとぶつけ合う、昭和ないちゃいちゃは、一読の価値ありです!
全寮制が舞台。時代は、昭和初期の設定。一番日本が元気だった時で、長い大戦がはじまる前。
大正ロマン風に拘った物語なので、例えば恋を旧漢字の「戀」=糸し糸しという心という字を選んでます。そして当時の流行りにこだわっていて、ドイツ語でリルケの詩とか引用が多いです。
モデルはで日本最初の七年制高校だと思う。(ここは今も男子校、難関で有名。80年以上にわたって太陽黒点の観測を続けている珍しい学校。OBに衛星ハヤブサのスタッフが居る事でも話題になっていた。)
凄く面白かった。
バンカラが善く表現されていて、オトコらしさの勘違いというか、汚い臭いが漢の勲章と言う、男子校の寮は若いオスを集めた動物園と似ていて面白い。
この著者さんは、真面目な表現なのになんとなく面白くて笑わせるのが上手です。
登場人物の内言表現の際に、心情に合う曲や詩の一節が書き添えられていて、ラフマニノフや、トッカータとフーガや、啄木の詩の一節の引用など、それを想像しながら読むと場面のBGM効果が脳内で響いて、笑っちゃって面白くてたまらなくなる場面が何度も有りました。おもしろいわー。
大真面目な場面なのに、想像しながら読むと、フフフと笑い声まで出してしまった。つい笑っちゃうから、コッソリ読めない。
眠れないときや、痛みがある時の気分転換にBLを読んで居ます。何故かハーレクインなどの恋愛ものだと集中できない。
BLだと、痛みがある時でも笑ったり夢中になれる作品が多いのですが、特に小林典雅さんには可笑しい作品が多いようなので、気に入ってしまいました。あとがきによると「ビタミンBL」と言うのだそうです。面白い。
他にも面白そうな作品があるので、読んでみます。
一つ不思議に感じたのは、主人公の父親が「古代朝鮮語」の研究者という設定。
古代朝鮮語とは、「吏語」の事だと思う。
使用していた一族が絶滅して、謎とされている言語で、官吏が用いたり、万葉集に一部残って居たり、日本の神道の祭文に使われていいのが古代朝鮮語=高句麗語だと習いましたが、面白いものを持ってくるんだな、と思いました。
大変久しぶりにレビューしたくなりました。
当初表紙を見て、こんな可愛らしい少年たちの話では、典雅さんの面白さが出しにくいのではないかと思ったのですが、そこは問題なかったですね。
しかし、評価がマイナスになった理由がそこにあります。
私としてはもう少し大人な感じのイラストでお願いしたかったなと・・・
内容に関しては他の方が書かれているので、いつも私が典雅さんに期待している『道徳的』な部分について少し。
二人で浴室から帰る時の会話が、192~193ページにまたがってあるのですが、男前な受くんが攻くんに求める恋人像に、うんうんと頷くばかりでした。
それから、端々にドイツ語やクラシックの名曲が出てきます。
ドイツ語は、注釈付きなので私にとっては邪魔にもならず、楽しめました。
攻くんの脳内に度々流れるクラシックの名曲が、BGMですぐに流れてくれたら申し分ないと思いました。
とにかく、嫌な人が出てこないので、典雅さんの小説は癒されます。
あとがきでも書かれていますが、『読むと和んで元気になるビタミンBL』を今後も期待したいと思います。