いもぞう
幸せへと向かう希望の羽を無慈悲にむしり取る現実。
自分のより良い未来を思い描き、それがそこまで現実に迫っているのを感じている河内は、体調の変化よりも仕事を優先して無理して出社する…。
人生の展望が見えなくなって肉体的にも死へと向かう状態において、性を通して生きながらえさせられる苦しみ。そんな中で自分を見つめる男の行為により、赤ちゃんがまた産まれるという未来だけが見えるというエンド。
愛されることで生きる価値を見出すだろうと予感されたのですが、犬飼に番にされたため、
愛を失えばおそらく死が待っていることも、後から感じました。運命の番なので、もしかしたら愛を失っても体の関係を続けられるかもしれませんが、もしそうなったら河内はおそらく死を受け入れる気が。
しかし、このように結末がハッピーエンドではなく、また不安の残る終わり方でも、不思議とこの2人は上手くいくのではないかと、思ってしまう、信じたくなります。
希望の描き方・捉え方が木原さんは本当に上手だなと思います。
木原先生のオメガバースということで読んでみましたが、やっぱり木原先生でした(笑)
甘くもなくハッピーでもなく、けれど心に残るオメガバースでした。
こういう内容が書けるのは木原先生ならではだし、書けるのも(編集的にOKが出るのも)木原先生だからと思いました。
しっかりねっとりあとを引く、ビターチョコレートのような作品です。
できれば長編で読みたいです。
書いて下さらないかな。
犬飼、いい人ではないですか。望まない形で交わってしまったけれど、河内を気遣う優しさがあり、生まれた子どもを引き取って育てたいとまで言ってくれて。犬飼はαで、圧倒的に優位な立場にあるのに、人としての誠実さがあり、愛があると思うのです。
河内を無理やり抱く挿絵が鬼畜な感じで、犬飼の印象が悪くなっている気がします。子どもを優しくあやす場面の挿絵があったなら、ずっと好印象だったと思うのです。
Ωに生まれ苦労してきた河内が願ったささやかな未来が打ち砕かれてしまったのは、本当に胸が痛い。でも、人生はそんなものだとも思うのです。努力して積み上げたものだって、簡単になくなってしまうことがある。オメガバースを読んだのが初めてで、Ωへの共感が足りないかもしれませんが。
犬飼と河内。一緒に暮らすうちに、きっと寄り添えるような気がします。河内も本当は分かっているのではないでしょうか。今はまだ時間が足りないだけで。
自分が願った幸せだけが唯一じゃない。今そばにいる青い鳥が飛び去ってしまう前に、河内に気付いてほしいです。
誰に感情移入するかで、感じ方が大きく変わる物語だと思いました。
医者ってたまに無責任な事言うよねーって思った。いくらそんな研究があるからと、自分の患者での実例が無いのに言う?今までのΩバースものはファンタジーっぽいのが多かったけど、他の方も書いてたけど現実的でした。治療の描写とか現実的かつ具体的だしね。高校時代レイプされたのもゴツい柔道部員。そりゃあ、そんなの見たらトラウマになるわ。しかも、本人も至って普通の容姿だし。でも攻めはちょっと美形っぽいですね。この作品、治療場面で終わってるので続き書いて一冊にしてもらいたいです。問題作になりそう。
この白黒表紙のシリーズって短くてエロというイメージがあるんですけど、いや確かにエロがえげつないんですが、えげつなくて萌えないですが、印象に残ったのはストーリーでした。
オメガバースは基本的に苦手です。ふんわりよくわからん。なんでそうなるんじゃいとか歴史どうなってんのとか細かいことが気になるのがいけないのか。この話は短い割に世界観が結構しつこく書いてある。そこが自分的には良かったかな。
秀逸なのはタイトルだと思う。救いがないストーリー、ラストにこのタイトルだよ?
ああ。幸せは傍にいましたかー