電子限定かきおろし付
作家買い。
イサクさんと言えば綺麗な絵柄で紡がれる、ほのぼのな優しいストーリーを描かれる作家さま、のイメージですが、今作品もそのイメージを損なうことのない、コミカルで温かいお話でした。
主人公はホテルマンの坂木。
ほぼ彼視点でストーリーは展開していきます。
坂木の勤めるホテルに、超セレブなお客さまが宿泊されることに。粗相のないよう気を配るホテルスタッフたちですが、とある事がきっかけで、坂木はその超セレブなお客さま・朝比奈に気に入られてしまいます。
普通に接してほしいという希望を告げられ、セレブでありながら気さくで腰の低い朝比奈と少しずつ仲良くなる坂木だけれど、朝比奈に「恋人になってほしい」と言われ…?
というお話。
イサクさん作品なので、とにかくイケメンたちに癒されます。
坂木しかり、朝比奈しかり、彼らがカッコいいのなんのって。
で、庶民とセレブ、という違いはあるにせよ、自分の仕事に誇りとプライドを持って働く姿にも萌え。やっぱり働く男はこうでなくっちゃね。
そして仕事面だけでなく、彼らには越えなくてはならない壁がいくつもある。
金銭感覚の違い。
生活スタイルの違い。
住む世界の違い。
そういった壁を、彼らは自分たちの手で乗り越えていく。
坂木ははじめは朝比奈に押し切られる形で恋人(仮)のような立ち位置に立つことになるわけですが、紆余曲折あって自分の朝比奈への想いをきちんと自覚していく過程は、まさにBLの王道といった展開。
朝比奈は超セレブリティ。
そしてイケメン。
何しろ優しい。
世間から「王子」と呼ばれる彼ですが、彼が「王子」と呼ばれる理由が、きちんと存在しています。
正直、ストーリーとしてはありきたり。
目新しい展開があるわけでもないですし、先の先までスーッと見通せる展開。
攻めさんはザ・スパダリですし受けさんもツンデレながら非常に可愛らしい男性。
という事で大きな波乱もなく、斬新な設定でもなく、攻めさんも受けさんもBLにおいてこれぞまさに理想の人物像といった感じで描かれています。ゆえにスルスルと読めてしまってあっさり読破してしまう。
のですが、萌えはきっちりあるんです。
なんだろうな。
これがイサクマジックなのかも。
とにかくキャラが魅力的で、波乱もないし穏やかなストーリー。なので安心して読めるんですよね。
ドキドキハラハラすることがない代わりに、痛い展開になることがないのでほんわかな気持ちで読むことが出来る。
こういったお話が好きな方は多いんじゃないかな。
イサク作品なので、濡れ場はあっさり目。
あっさり目なのですが、お互いが大切で、愛おしく思う気持ちに溢れているので温かい気持ちになれます。
しいて言えば二人の恋愛感情が育っていった過程が若干甘い気がしましたが、この作品はこれで良いんじゃないかな、と思わせる世界観があります。
イサクさんのデビュー10周年に行われたファンミーティングで出たファンからの要望から生まれた作品とのことですが、イサクさんを愛するファンたちの声から生まれた、という事で、イサクさんらしさにあふれた作品だったように思いました。
夏目イサク先生、安定の可愛さ。うんうん。
御曹司の朝比奈に気に入られて「友達」になる坂木がなかなかの振り回されっぷり!
爽やかな笑顔に凛々しいイケメンっぷり、そして紳士な対応、ダメ押しにしっかり仕事をこなしてる。
そんな朝比奈に言い寄られたら心射貫かれない方が無理だよね!
「ヤキモチ妬いて欲しい」なんて一面も見せる朝比奈が可愛かったけど、その思惑通りにヤキモチ妬いちゃう坂木が・・・たまらん可愛かったです。
やきもきしすぎて、途中、心臓が潰れるんじゃないかと思いました。
超有名ブランドの御曹司とホテルマン。
「王子」と称されるほど見目麗しく、何でもスマートにこなす玲児。
そんな玲児が夜の街で酔っ払いに絡まれていたところを助けた坂木を、ホテル滞在中の専属指名にして…。
ファンミで要望のあった設定をCPにしてみたとのことですが、そういうアイデアでさえこんなに胸きゅんなストーリーに仕上げてしまうなんて…。
うっとりです。
王子は本当にカッコいい。
イサク先生の作品にレビューを書くたびに書いている気がしますが、どうしてこんなに色気を醸し出せるのでしょうか。
こういうタッチでこれだけの色気を出せるひとってそうそういないと言うか、わたしはイサク先生以外には存じ上げません。
坂木はふつうです。
絡まれる王子を救ったのも、正義感が強すぎるからとかじゃなくて、単純に一般常識の枠内での行動だし、超がいくつもつくほどの金持ちを前にして恩恵を受けてやろうと思わないのもふつう。
小金持ちとかだったら「恩恵を…」って思うのかもしれないし、ブランド志向の女性なら王子が出会ったひとたちのように買い物に走ってしまうかもしれないけど、金持ちにお金をかけてもらって借りを作るなんて怖いですもんね。
そんな「ふつう」のひとに出会う機会がなかった王子だからこそ、はまったんだろうなと思います。
そこからの坂木のやきもき、ぐるぐるがもう切ない。
ふつうの自分だからこそ、どこが王子にとって特別なのか分からないから自信が持てないし、2人だけの世界なら対等でいられる錯覚を感じられるけど、一旦他者が介入すれば「身分違い」だという事実を嫌でも突きつけられる。
ずっと坂木目線なので、坂木の気持ちの変化やそれに伴うもやもやは分かるものの、王子がなー、もっとがーんと、どーんと独占欲とか見せてほしかったと思ってしまいました。
好きなのは分かるけど、何か引いてる。
坂木を思ってのことだというのもちらっと出てくるけど、いまいち伝わりにくくて。
「そこまで思われてないんじゃないか」っていう悩みがあるなら、もっと何かアクションを、エピソードを、と思ってしまった次第です。
がっつり溺愛系が好きなので、ついわがままになっているのでしょうか、自分…。
そんなわけで攻めの気持ち>受けの気持ちが好きなひとには、若干の物足りなさを感じる作品かもしれません。
でも眼福でした、王子。
イサク先生のデビュー10周年の際、ファンからの要望にお応えしたカタチで描かれたという作品ということです。
テーマは、「年下攻め」「ギャップ」「制服」らしい…。
そうか。私だったら何をお願いしたかなぁ。今、思い付かないや。
年下の王子こと、朝比奈様は世界的ブランド創始者の孫。
そんなセレブが宿泊するというので、ホテル内は大騒ぎ。
ホテルマンの坂木は、ひょんなことから朝比奈様に懐かれ、お部屋係兼、お話し相手に任命される。
坂木の素直なリアクションに感動した朝比奈は、坂木の恋人になろうと猛アタックを仕掛けて来るが…。
という、何となくシンデレラ・ストーリー⁈
朝比奈様の金銭感覚や、そのセレブっぷりに少々引きながらも、彼の優しさや仕事への向き合い方に次第に惹かれていく坂木。
意識し過ぎて、ジタバタしたりは、「飴色パラドックス」の尾上とかに通じるものがありますが、
そこまでツンデレでも無く。
朝比奈もカブより素直で真っ直ぐなワンコ攻めなので。
そーんなに事件も無く。拗れる事も無く。
勝手に嫉妬してジタバタする坂木が恥ずかしいってだけで終わります。
もちろんラブラブです♡
物語としては、食い足りない感じもあり。
坂木もホテルマンの仕事には情熱持ってる筈だし、だからこそ朝比奈の仕事への熱心さをリスペクトしていると思うので。
そういうのをもっと深掘りして、素敵エピソードを沢山盛り込んで欲しかったなぁ。
夏目イサク先生は、長編の連載の傍ら、5年かけて描いてらしたそうなので。
お忙しい中、ファンの要望に応えるべく頑張られたのは、やはり素晴らしいと思いました。
長編、「花恋つらね」と「飴色パラドックス」の続きもとっても楽しみにしています。
新刊。
というには結構前の作品なせいか。
もう違う作品でも言ってしまったような部分が気になってしまいます。
ファンミーティングで読んでみたい設定。
希望を叶えてくれる夢のような企画ですが、需要に応えすぎて魅力が半減してしまったような。
朝比奈の爽やかさも坂木のホテルマン姿にも今一つときめくことが出来ませんでした。
付き合うまでの行ったり来たりする感情の部分が、どたばたしているだけにしか見えず。
最後まで、ふたりの関係が大きく変わったように見えなかったのが残念です。