軽いノリのタイトルですが、中身は決してコミカルなノリではなかったです。
というのも、受けの喜一は自己肯定感がかなり低いんですね。
思考回路が超後ろ向きで、諦念とともに生きているお人。
もーそこが読んでてめっっちゃくちゃもどかしくて。
勉強に励めという父の言葉通り、友達も作らず(そこ極端じゃない?と思った)せっせと勉学に邁進し、大学受験を目前に控えたある日、父が死んじゃうんですね。
そこにめちゃくちゃ罪悪感を抱いてしまい失意のまま15年過ごしている。
15年!!!
おまけに30代なのに、終活すら意識してる始末……。
あぁ……とーちゃん、泣くよって思ってしまって。
息子がそんな思いを抱いたまま生き続けてるなんて、私がとーちゃんだったら草葉の陰からおいおい泣くしかないわ……申し訳なさすぎて……。(どうしても親の立場で考えてしまうので)
だもんで、澄良から熱烈アプローチ攻撃されてもなかなかYESと言わないんですね。
こんな年下のしかも超絶イケメンが自分を好きだなんて、世界を知らないからだ……もっと成長して世界を知ったら自分よりももっと素敵な人は沢山いると知った時、離れていくだろう……もう俺は二度と喪失感を味わいたくないんだ……みたいなやつ。
臆病な受けも嫌いではないんですが、喜一の臆病さは個人的に好みではありませんでした。
澄良はいい攻めでしたね。
ただお祖父様の影響をモロ受けたせいで、ジジ臭い喋りをするのがどうしても違和感を感じてしまいました。
でもいい攻めです。
そして石のエピソードが素敵でした。
タイトル見て、幽霊とか出てくる話かな?と思ってましたが全然違いました。
心が死ぬような、死にたくなるような経験のせいで、心を殺している二人が出会って…というお話で、読後にちるちるを見て「夜明け」となっているのをみて激しく同意した次第です。
夜明けの手本みたいな作品だな!!と。
読後感は夜明けなのでいいんですが、その道中がかなりヘビーでしたね…。
胸糞悪くなる脇キャラが二人、しかもそいつらが攻めと受けの心を殺した人たちときたもんで登場もそこそこあるし、出てきた時の毒成分のつよさといったら…!
佐埜の敵は、モラハラ毒全開のクソ野郎だけど、完全悪過ぎてかえって割り切りながら読めるのに対して、りく(受け)の母ときたら……
もうりくが不憫で不憫で不憫で仕方なかったし、同じ母親として、目を覚ませ!!!と300回くらいビンタしたい衝動に駆られるというか。
めちゃくちゃイライラさせられました。
子を亡くして心が病んでしまうのは罪ではないけれど、りくの犠牲のうえで心の平安を保っているというのが胸糞悪すぎて…それを許してる父も同罪。
なので、後半立ち直るのがちょっと嘘くさく感じてしまいました……。ご都合主義っぽくて…
おいしそうな変わり種おにぎりの数々や、攻めのハーフアップの挿絵の眼福さなど楽しめる要素は色々あったのですが、受け母の狂乱かつ悲劇のヒロインパワーが私には強すぎて萌評価です。
攻めのライルが落馬して植物人間のような状態になってしまい‥‥というところが今まで読んだことない!ということで面白かったですね。
どーせ何もわからないだろとぞんざいな扱いをする人々ばかりのなか、ただ一人、名前を呼びかけ、語りかけ丁寧な介護をしてくれたのが受けのリク。
ようやくライルが意識を回復し、あのお世話をしてくれた青年は誰だ?とひたすら探すもすれ違い……。そしてすれ違いが長い。
後半の攻めのおかーさま・リハームが非常に印象深く、裏の主役といってもいい存在感だなと思ったら、あとがきに「まず最後のリハームの話を書いてから物語を作り始めました」とあり、超〜納得。
初読み作家さんですが、残念ながら文体が私には合わなかったです。
「〜なリク。」「〜なライル。」「〜な二人。」「〜ドアの隙間にリク宛の手紙。」「そう言いながらも豪快に笑うシーリン。」のように状況説明の文章で体言止めがちょいちょいありました。
作家さんの癖なんでしょうね。
会話文ならまったく気にならないのですが、状況説明している地の文章での体言止めは他の商業BL小説ではまず見ないので違和感がすごかったです。
作家さんが脳内で喋ってる文章をそのまま読まされているというか、どことなく悦に入って語る講談のように感じてしまうというか……。
あらすじにもある「イオはルキウス王の暗殺の命を受けイリア王女に同行することに」という肝心要のところが納得がいかなかったので、ちょっとモヤモヤしつつの読書でした。
だってノースガルトのルキウス王を暗殺した後、どーすんの??って。
暗殺者であるイオが死んで終わり!ではなく、絶対に絶対に絶対に国に攻め込まれて、国が滅亡させられるにきまってるじゃんと思ったんですよね。
サザンランドが攻め込まれても全く問題のない大国ならいざ知らず、サザンランドの国王はぼんくらだし、ノースガルトのほうが技術力も上回る大国。
勝ち目のない戦争へ持ち込むための大義名分を相手にみすみす与えてどーするよ……と思ってしまって。
国の命だからと悲壮感満載で相手国へ乗り込むイオには悪いけど、イオも少しはそこらへん頭使って考えなよ……とか思ってしまい……。
そこがどうやっても納得いきませんでした。
でも、ドラマチックなお話とみずかね先生の美麗なイラストが楽しめました。
攻めの一城は甘えたがりなのにそれを封印して、俳優業に全力で取り組みクールなキャラを確立させ、他人にはつけ入る隙を見せずあれこれ我慢して頑張っているお方。
それがプライベートになると、たがが外れたように全力で受けのヒナに甘えまくるんですよ。
ヒナも一城の頑張りを知ってるからこそ、せっせとご飯作ったり甘えさせたりしてて男前。
とは言うものの言葉巧みな一城にのせられるまま、住み込みのハウスキーパー始めちゃうし、演技の練習に付き合わされてキスだのエッチなこと許しちゃうんですよね。
えーっ、いくらなんでも騙されホイホイ過ぎない?と読んでてテンションがちょい下がったけど、最後の方でそーだったのね、と。
だから再読のほうが楽しめるかもしれない。
それにしてもこんな甘えたがりなのに、ヒナと再会するまでよく頑張ってたねぇ…
二人の高校時代を振り返って言う「俺の青春は、ヒナの弁当箱に詰まってる」ってのがまさに!で良かったな。
攻めが前髪ありの長髪、しかもまつ毛のカールが綺麗に決まってるせいで、BLのBだと理解してても、え?これ女子では??となる瞬間がしばしありました…
もちろん表紙では特に女子とは思わなかったし、なんでだろ??と中の絵を見て気づいたんだけど、美形ということだからか、まつ毛がやたら上向いて描き込まれているんですね。
表紙にも三角形の黒々としたまつ毛がありますが、下から見上げた構図ということと、情報量が多いこともあり視線がバラける。
それに対して漫画だと顔だけのシーンとか、下から見上げた角度でもまつ毛がしっかり上向いてるとオネーサン?!となってしまう瞬間があり…
さて、中身についてはまさかの再会ものだったけど、そんなんでここまで好きになるのか?と思ってしまったり、ヘビーな出だしかと思いきやライトなノリでした。
同時収録の超短編は体毛濃ゆ濃ゆおじさん受けでインパクトがありましたが、唐突過ぎて、この組長とやらはタイトル作品のスピンオフか?(受けが取り立て業やってるから、裏社会的な繋がりの)とかなり戸惑いました。
おまけして萌で。
健気なワンコ攻めが読みたくて、攻めの属性で「ワンコ」「健気」にチェックして検索したらヒットした作品がこちら。
でもその当時は電子化されていなかったので見送ったのですが、最近ようやく電子化されたので読んでみました。
舞台は大学の相撲部。
なんと受けの泉田は相撲部員。
でも、おデブさんではなく細マッチョの黒髪キリリ系。
そんなキリッとしたお顔に性別超えて一目惚れしてしまったのが真木。
真木はゲイってわけではないけど……と自分でも戸惑いながらも、泉田に会いたくて泉田が通う理系部がある「緑の孤島」と呼ばれる僻地へ足繁く通います。
真木がいいワンコでしたね。
ゴールデンレトリバー系で周りを明るくする雰囲気がある。
誰とでも屈託なく素直に接することができるので、相撲部の先輩たちからも可愛がられているし。
お互いノンケ同士でしたが、わりとスムーズにくっついたのでライトな雰囲気。
後半は受けの泉田視点。
俺は性に淡白なはずだったのに男に抱かれて気持ちよくなっちゃってるし、まさか淫乱だったのか??と悩んでます。
発売当時、表紙が素敵!と表紙買いしたんですね。
お前は気づいていないけど、実はずーーーーーーーーーっっとお前のこと見てたよ、みたいな攻めが好きなので、攻めの秘めた熱い想いみたいなのを楽しめるのかなーって。
そしたら受け視点のお話で、攻めからの熱い想いみたいなのもそこまで感じずに終わってしまって、アレ??と。
あの時から二年後、入れ替わりものということすら忘れている状態での再読です。
硬派で文武両道な風紀委員長の藤木と、屈折した思いを抱えてやや自暴自棄な若宮。
接点は同じクラスというだけで、性格も境遇も異なる二人の中身が入れ替わってしまって……というお話。
身だしなみなどを注意してくる藤木に対して苦手意識を持っている若宮だけど、本人自覚していないだけで、藤木をめちゃくちゃ意識しまくってるんですよね。
あの日、弓道をしていた藤木が射抜いてしまったのは的だけではなく、若宮のハートなんだなと。
おまけに、実はスマホで隠し撮りまでしてたとか、あーもー、それって「好き」なんだよ、って若宮の耳元で囁きたくなります。
若宮は、家族愛に恵まれなかったせいで斜に構えているところがあるけれど、藤木母の良さに気づいたり、成績優秀者である藤木の成績落とすわけにはいかないからと必死で勉強したりと、根はいい子なんですよね。
藤木が、硬派なキャラとはいえ「すまん」とか「〜なんだが」という喋りをするのが、少し古い気がしました。
でもめっっちゃイイ男になると思う。
サイコパス素質ありまくりな若宮の弟は、何かざまぁ系な制裁を受けるのかと思ったけど、藤木のおかげでなんとか軌道修正させたらしく(どうやったのかは詳しく書かれていない)拍子抜けというか尻すぼみ感があるけれど、読後感は悪くない。
「嫌いな男」のスピンオフとのことで「嫌いな男」を再読してからこちらを読みましたが、再読しなくても問題なさそう。
全方位に渡って美意識も高く拘りもある伊崎が、普段なら絶対にスルーするような居酒屋に入って、偶然知り合った相手が安原。
この攻めの安原が、いい意味で派手さがなくて肩の力が抜けた大人で良かったですね。
ゆったりまったり包容力。
伊崎はゲイだけど、安原は完全に圏外なので気取る必要もなく、単なる近所の飲み友達としてリラックスして過ごすんですね。
この時の空気感がすっごく良い。
後半の安原視点による「(伊崎は)何もかも例外でできている」というところがいいな。
「例外だから自分とはあいません」ではなく、例外なところを面白がってまんま受け入れている感じで、安原の度量の広さ&人間力が良く伝わってくると思う。
再読。
全体的にぎこちないし、キャラの感情が伝わってこないというか、それってホントに好きなんか?!と思ってしまう作品が多いというか……
【ダメなやつほどかわいい】
友人から突然ヒモ男を押し付けられ同居するハメになるが、このヒモ男ときたらほんとーーに何も出来ないやつで……
攻めのダメっぷりは面白いけど、恋人としてはどうかと思う。マジでセックスしか能がないとか嫌。
【とある男子はかく語りき】
男子校でカプ成立するまでの過程を、友人視点で描いたお話。
恋が形を持ってすぐそばに存在している
ってとこが好き。
【楽しい逃避行】
うーん。この二人が恋人同士になるのがなんかしっくり来ない。友情エンドって感じ。
【隠しごとはなんですか】
時給が良いという理由で女装メイドカフェで働くことにした攻め。
そのバイト先にいたのは、元生徒会長の先輩で…
攻めが常にローテーションで醒めた表情をしてる子なので、なんか盛り上がりに欠けるというか…お話も超ドラマチックなはずなのに淡々としてて微妙。
上田にくさん大好きで作家買いしてるけど、こちらの一冊は正直、微妙…
超〜上から目線で申し訳ないけど、上田さんにもこんなぎこちない作品を描いていた時期があったんだなぁ、今の上田さんなら全く同じ話でももっともっと面白く描けるだろうなぁと思ってしまいました。