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表題作僕たちは昨日まで死んでいた

佐埜、りくの店の改装に携わった左官職人
月島りく、おにぎり販売店オーナー

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

絶望に囚われ、死に執着する人間が放つ不吉な甘い香り――交通事故で兄を亡くして以来、「死の匂い」を嗅ぎ取れるようになった月島(つき しま)。「死」を漂わせる人間とは極力関わりたくない…。そう思っていた矢先、経営する飲食店の改装工事で、若い職人の佐埜(さ の)と邂逅!! 精悍で鍛えられた肉体は生命力そのものなのに、なぜかあの匂いを纏っている!? 警戒する月島だけれど、工事後も客として店に現れて!?

作品情報

作品名
僕たちは昨日まで死んでいた
著者
中原一也 
イラスト
笠井あゆみ 
媒体
小説
出版社
徳間書店
レーベル
キャラ文庫
発売日
電子発売日
ISBN
9784199010941
3.9

(32)

(14)

萌々

(8)

(7)

中立

(1)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
9
得点
124
評価数
32
平均
3.9 / 5
神率
43.8%

レビュー投稿数9

「死んでいた」とは


折り紙職人な左官職人 × おにぎりカフェオーナー

おにぎりメインの食堂を経営している月島りく(受け)は死の匂いをさせている生気あふれる男・佐埜(攻め)と出会います。
関わりたくないと思っているのに、なぜか目が離せない佐埜との付き合いが続くうち、親しくなっていくのですが、お互いが自分のことを知られたくないと境界を作って緊張感のある関係が出来上がります。
そんな時、りくの事情を話す機会があり一層親しくなるのですが、佐埜は自分ことを話してくれません。
それぞれの心を死なせる原因は無くなるのでしょうか。

りくは子供の頃、兄そらをら亡くしています。それもりくを庇ったため事故死です。
兄を溺愛していた母はそらの死を受け入れられず病んでしまうのです。
元々兄しか相手にしていなかった状態だったのにさらにおかしくなってしまった母。
しまいには成長したりくを見て兄と間違える始末。母の中で死んだのはりくで兄は生きていることになってしまうのです。
激しく傷つくりくですが、母が安定することもあって兄の振りをすることになって10年以上。心がすり減っていく毎日です。
そんな中で兄に褒められた料理作りが唯一の生きがいで美味しく食べてくれるお客さんの姿が喜びです。
そして、兄が亡くなってから、なぜか「死の匂い」を感じ取れるようになってしまいます。



佐埜の方も妹が亡くなっていて、それを自分のせいだと思っています。自分が幸せになってはいかないと思い込んでいます。


りくの生い立ちが本当に気の毒でした。
読んでいて、両親に腹が立ちます。
特に母親。元から兄の方を溺愛していて弟の方は無視に近い扱いをしていた上に、成長した弟を兄にして勝手に弟を殺してしまうなんて。
病むのは仕方ないかもしれないけど、残った子供のために前を向いて歩いて欲しかった。
そして父親は、確かに病んだ妻に仕事に家事育児と大変だっだだろうけど、それを子供を犠牲にすることで解決する方法を取るなんて親失格です。
楽になる誘惑に駆られ最初は弟を兄にすることに同意したとしても、すぐに我に返って欲しかった。10年以上も子供を犠牲にして心が痛まないのかと思うと本当に大人としてどうなのか。
予期せぬ悪意ではあったけど、ちゃんと向き合えるようになって本当によかった。
でも、彼らにはもっともっと反省してほしい。特に母親。読み終わってからもずっとモヤモヤしています。

そしてもっと許せないのは、佐埜の義兄で弁護士の栗原。完全に犯罪者でこれが捕まらないなんて世も末だ。
あの後どうなったのか気になるところですが、弁護士資格剥奪されてるといいな。


タイトル通り本当に「死んでいた」んですね。
死を乗り越えて2人が光に向かって歩けるようになってよかった。
これまで不幸の連続だったから、幸せになってほしいです。


0

死を匂わせていますが、怖くないです。

死の匂いを嗅ぎ分ける能力のある月島と、彼の飲食店の改装工事に来た佐埜のお話。月島は佐埜の事が気になるけど、死の匂いがずっと佐埜から出ている事でなかなか心を通わせる事に躊躇しています。死の匂いを嗅ぎ分けられるきっかけとなった兄の死と、その後の家族の状態などもあって、人との関わりを深くは持とうとしなかった月島と、やはり、事情があって、人と関わらないようにしていた佐埜。
お互いに身内の死の影を漂わせてずっと話が進んで行きます。心を閉ざして、死の影がチラチラしていて、少しほの暗い感じなのですが、
月島が作るお店のおにぎりの美味しそうな所や、佐埜が得意としている折り紙が、この本を明るい部分として補正してくれます。
月島が抱えていた事情。佐埜が抱えていた事情。それらが段々と明らかになっていきます。そして、お互いをより理解する事で、お互いを恋愛対象として、深く関わって行くことを決心します。2人の抱えていた事情と言うのが、なかなか重苦しい感じでしたが、その悩みを克服する所が、このお話の爽快さでもあります。
そうすると、このタイトルは決して不穏なタイトルではなく、夜明けなんだなと理解できました。
心を殺して生きていた人の心の再生がテーマなんだと思います。読後感はとても清々しい気持ちなります。

1

ツラさと感動とで、目に涙が溜まる

中原一也先生の作品は複数、拝読させて頂き、今作も作家買いさせて頂きました。

個人的、各項目5段階で
シリアス 3
救済 3
不憫 3
涙 2
エロ 1
な感じだと思います。

死の匂いを漂わせた職人×死の匂いが嗅ぎ取れる料理人のカプです。受けの月島りくさんは、いつからか、人の「死の匂い」を嗅ぎ取れるようになってしまった。それは微かな甘い匂い。死の匂いを漂わせる人が命を絶ったり、心や感情を殺したまま生きていたりと、極力関わらない様にしていた。そんな時、お店の改装工事をしてくれた職人の佐埜さん。
まるで太陽を思わせる生命力溢れた鍛えたれた肉体を持つ、攻めの佐埜さんだが、何故か死の匂いを漂わせていた。関わってはいけない。そう思っていた月島さんだったが、佐埜さんがお店に客として来店して以降、徐々に交友関係を築いていくのだけど…。

今作のメインとなる死の匂い。何故、いつから、月島さんが死の匂いを嗅ぎ取ってしまうのか。死の匂いがどう言った存在なのか、月島さんの過去なども併せて色々と詳しく書かれていますので、読み応えや物語りに引き込まれること間違い無しです。
ですが、「死の匂い」なので言葉の通り、そう言ったシーンが度々ありますので、苦手な方は用心してください。個人的に、自ら死を選ぶシーンは辛くて痛々しくて、読んでいて目に涙が溜まりました。

他にも、心を痛めてしまった母親が月島さん自身を全く見てくれなくて、それどころか月島さんが、自身の兄である月島そらさんを演じ続けている姿はとても不憫で心苦しいです。そして死の匂いを漂わせてる佐埜さんの過去も現在も辛くて、脇役キャラの義弟の存在感が凄まじいです。めちゃくちゃ嫌な奴ですね。


肉体的にも精神的にも、少し重く暗い物語りではありますが、月島さんと佐埜さんが徐々に距離を縮め、自分の為にも相手の為にも少しずつ変わろうと進もうとする姿に胸がジーンとして、救済し合う2人の関係に目頭が熱くなりました。
個人的に、年下の佐埜さんが年上の月島さんに、時折タメ口で接する、一瞬で距離が縮まったり佐埜さんの素顔がチラッと見える瞬間が好きです。

少し辛くて重い展開もありますが、救済し合う2人が幸せになる行く末を見届けてください。是非とも読んでほしいです。

1

目指す夢を復活 生き直す話

笠井先生の挿絵が美麗。りくは寂しげな美貌。
意味不な題名に誘われてしまった

月島りく:おにぎり販売の「そらのテーブル」を経営
人間の諦めと絶望の臭いが分かる。
りくを異能ごと受け入れてくれたのは、佐埜だけ。

佐埜??:
恋人になるまでの筋書きのせいか、佐埜の名は出てこなかった。
「そらのテーブル」改装の左官職人
絶望と諦め由来の死臭を放つ、折り紙作家の卵。

異能を活かして、佐埜を励ますりく。
諦めていた夢をもう一度目指す佐埜からは、もう死臭がしない。

続編は出るのでしょうか? 中途半端な終わり方だと思う。
コロナで絶望が満ちる今世に希望を与えるような、りくが素敵。

※おにぎりの名の由来
=御結びの神様 造化三神「神産巣日神(かみむすびのかみ)」

2

爽やかな青い表紙だけど、シリアス!

現代を舞台にしているけれどあくまでファンタジーで、小説の世界の出来事。そう思いでもしないと、受けと攻めの置かれている環境がしんどすぎて重い。

受けのお母さんがひどいんです。ですが悪役じゃないので憎めず・・・もやもや。心の病気とはいえ、受けくんだって自分の息子なのにこれは辛い。

でも、後半にちゃんと間違いを正して、家族が立ち直っていく様が描写されていてすっきりしました。攻めの方の問題はミステリーぽくスリルもあり、そちらは違った感じで楽しめました。物語りの描き方がとても上手な作家様だと感じます。

ただ禁欲的な印象が強い組み合わせなので、(ストーリが重厚で十分に満足がいくので)、濡れ場が取ってつけた感じで惹かれなかった。そういうシーンはいらなかったかも・・・? なので萌え要素は少なかったです。

0

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