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表題作プラスチックの卵

東野浩輝・美術教師
相原拓哉・高校1~2年・美術部

その他の収録作品

  • プラスチックの卵
  • パステルの呼吸(いき)
  • 透明な記憶
  • あとがき

あらすじ

美術部のエース・相原拓哉は、並外れた才能を持つが幼い頃の体験から人に心を開けず、ずっと自分の殻に閉じこもっていた。そんな彼の前に現れた美術教師・東野は拓哉の弱点を見破り、ある課題を与えた。

作品情報

作品名
プラスチックの卵
著者
白銀みるく 
イラスト
金ひかる 
媒体
小説
出版社
角川書店
レーベル
角川ルビー文庫
発売日
ISBN
9784044366018
3.6

(3)

(1)

萌々

(0)

(2)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
2
得点
11
評価数
3
平均
3.6 / 5
神率
33.3%

レビュー投稿数2

先生×生徒の名作

金ひかるさん挿絵は自分的にやっぱ当りが多いなー、これも金ひかるさん表紙にひかれて読んだクチ。
シリーズ物ですがこの1冊単作でも読めなくはないので(父親の謎とかは分からないままになっちゃうけど)、とりあえず第一作目のこれを読んでみて気に入ったら続きを的な読み方でも大丈夫。

白銀さんの文章は自分の好みからするとちょっと句読点が多いので、最初の内は読むリズムがちと狂いますが文章自体は読みやすいので慣れてしまえば平気。
幼い頃の悲惨な過去の影響で、拓哉[受]は自分の周りに膜、つまり卵状の見えないバリヤを張って生きています。
といっても彼は特に偏屈ではなく、絵が飛び抜けて上手い以外は一見普通の少年で同級生や部活でもそれなりに溶け込んで見えない卵の殻に包まれながらも彼なりに無難に生活しています。
誰も気付かなかった拓哉のその闇の部分に、いきなりズバズバ踏み込んできたのが臨時教師としてやってきた美術担当の東野[攻]
彼は拓哉の絵のモチーフに「人」が描かれていない事をまず指摘。
それは拓哉自身も自覚していて触れられたくない部分なんですが、よりによって美術部展示作品のテーマに人、それも寄り添う2人を描けと言われてしまうんですね。
いきがかり上、断れずそのテーマを受ける拓哉。
しかし描いても描いてもどうしても上手くは描けず次第に拓哉は追いつめられて行き、最初は面白がってモデルになってくれていた寮の生徒達も彼のあまりのしつこさにそれを拒否しはじめる程になり展示まで一週間前になってもキャンパスは白いまま。

拓哉は幼い頃、母子家庭で育つも母親は育児放棄。
アパートの一室で食べる物もなくなく衰弱死寸前だった5歳の拓哉は、偶然発見され保護されるのですがその時に彼は完全に己の殻に閉じこもり無反応、無感情状態が続くも絵を描いてその上手さに周りが同情以外の素直な感嘆の声を聞いて、それを切っ掛けに拓哉は絵を上手く描く事が出来る自分という縋る糸を持ちます。
けれどその影響で人というモチーフを愛を持って描く事が出来ない。
追いつめられた拓哉の手を東野が取ります、実は拓哉と東野はかつて出会っていて5歳の拓哉を助けた当時小学生だった少年が東野だったのですね。
その時も拓哉は人の気配に手を伸ばしたのですが、動転していた東野はその手を取る事が出来ずそれをずっと後悔し続けていて彼にとってもやっと握り返せた拓哉の手。
拓哉を包んでいた殻は割れ、目の前の東野を殻無しで見つめ触れます。
金ひかるさんの挿絵も相まっていいんですよ~~実に!!

臨時教師だった東野は拓哉が進級した年に本採用教師となって再び戻ってきます。
ここからが後半で東野狙いの美少年が邪魔しに来たり、彼に陥れられたりするんですが、それがきっかけで今度は東野が自分が絵を描き出した理由が拓哉である事とその証拠を見せてくれるんですがここも良いんですよ~~!

エロシーンは匂わせてあるか、比喩っぽく一行で表現されてるのみですがそこがこの作品には合ってます。
拓哉と東野との会話も甘過ぎず、軽口をたたき合う感じな部分が好きです。
ツンデレって訳でもなく何ていうのかなー、拓哉の場合はなんか少年って感じ。
学校側の対応とか権限持ってる美少年とか男子校での東野先生ファンクラブなんかはちょっと90年代学園BLの香りがしますが、メインストーリーに影響してくる程の物ではないです。
っていうかそれ位では揺るがない位にメインストーリーが素晴らしいです。
あと今作では思いっきり嫌なヤツの滝沢ですが、彼は次の「KISSのデザイン」から少しずつその内面を見せていきます。

金ひかるさんの挿絵は無条件に好きです~、昔でも古さを全く感じさせない、
あと口絵カラーが何枚もあるのが嬉しい。

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重い過去を持った主人公

教師×生徒です。
主人公の拓哉は出生に事情があり、人間を人間と意識して愛することが出来ないのですが、臨時で来た教師の東野は何故か拓哉の過去を知っているようで…というお話です。

短編形式なので内容はちょっと重たいところもありますが、さらりと読みやすかったです。
拓哉はルームメイトにも部活の仲間にも恵まれていますが、過去をおもしろ半分に学校新聞に書き立てる生徒がいたり、それを校長や教頭もとがめなかったり、これはないだろうと思うシーンもたびたびありました。

ですがこの作品、ただ先生と生徒のお話としても成り立ちそうなのに、一話目で東野が拓哉を愛してるといったのがちょっと唐突に感じました。
子供のときに会ったのが最後、その後長い間会っていなくて、臨時教師として来たとき東野は拓哉だと気づいたといいましたが、愛になるのはどんな理由があったのか…。
短編集でお話がすすんでいくと、ずっと拓哉のことが気になっていたという東野の執着が見えてきて納得できるのですが、始まりはちょっと唐突かなとも思います。
「拓哉が気になっていた」の気になるも、肉欲を伴う愛というには拓哉に最後にあったのは非常に小さいころだと思うのでちょっと不思議に思ったというか。

人を愛せないでいた拓哉が、教師としての尊敬でなく東野に恋心が芽生えた過程もも少し掘り下げてくれてもよかった気もしました。

男子校だからかライバルも男の子で、東野を横取りしようと出てくる生徒が非常にきゃぴっとしていて女の子のようなのがちょっと苦手で…
昔ながらの男の子のアイドルのような…こんな子、実際いるのかな~と思ったというか^^;
この子がいなければもっと高い評価をつけたかったです。

まだまだ解決していない問題はありますのでお話は次回に続きます。
暗い過去を乗り越えて誰かを信じる過程が丁寧に描かれている作品でした。

1

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