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表題作片恋のスピカ

霧島柊吾,29歳,図書館職員
真鍋乙矢,22歳,図書館のアルバイト 

その他の収録作品

  • ここから先は海の星
  • あとがき

あらすじ

勤めていた会社を辞め、ほとんど引きこもるように暮らしていた乙矢。外の世界へと連れ出してくれたのは、貸出カウンター越しに出会った図書館職員の霧島柊吾さん。彼に憧れるまま図書館でバイトを始めた乙矢だったが、胸に燻る想いを誰にも知らせるつもりはない。それなのに、優しく穏やかで七つ年上の柊吾さんとの距離は少しずつ近づいて……。

作品情報

作品名
片恋のスピカ
著者
中庭みかな 
イラスト
さがのひを 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
発売日
ISBN
9784344844476
4.1

(50)

(21)

萌々

(21)

(5)

中立

(2)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
7
得点
206
評価数
50
平均
4.1 / 5
神率
42%

レビュー投稿数7

何気ない一言が人を救う話/浮かれて可愛い攻め

kindle unlimitedにて
かなり辛い目にあった男の子が報われない恋心を抱きながら、その人の影響で少しずつ成長しようとする姿に泣けました…

その人にとって些細な言葉や行為でも大きく救われる時がある、というお話が好きです。時に苦しく切なく、時に甘々に繊細に、落ち着いている綺麗な文章で描かれていて読後(良かったなぁ)としみじみ泣けました。

たまたま図書館の窓口にいた柊吾の「僕は乙女座」という言葉と彼の優しい接し方で、過去の出来事で心が壊れた乙矢は少しずつ取り戻していきます。「乙女座の柊吾さん」と心の中で呟き、好きな人のことを一つ知る度に満足し、嫌な事を思い出さない様にして、何かあれば柊吾を考える乙矢が愛おしい。そして共感するところでもありました。
彼の傷は痛々しく、「周りを明るくする火種として、火をつけられて燃やされていた」という表現が辛くて涙が出ました。自分の周りで明るくしている人でも、もしかしたらそんな人がいるのではないかと考えてしまいます。

後半に柊吾が乙矢と出会った時を語りますが、自分にはない部分を持っている乙矢の臆病な猫の様な姿が記憶に残り、彼の持ってきた物と後日アルバイトとして入ってきた出来事を「大好きな絵本に、まだ続きがあるんだと知った子供みたいに」という言葉がとっても素敵で。この作品には図書館業務も書いてありますが、雰囲気が落ち着いていて好きです…

漸くくっついた後、すぐには関係を進めずキスやハグで甘々(深夜までずっと抱き合って充電してるの可愛い…)な日々、受けは内心「これ以上進まないのは自分に魅力がないから…」と勘違いし、攻めは恋愛に不慣れな受けを大切にしたくて初恋のステップにホクホクしてるの、二人のすれ違いが可愛すぎて悶絶でした!!
柊吾が乙矢を甘く包み込む様子は、乙矢の過去を知る毎により沁みて満ち足りた気分になるのですが、初夜で暴走したのが心配になりました。歳上経験者は耐えてくれ。

乙矢のものを擽って「可愛いね。すぐにいけそう」とか「自分ではどれくらいするの?俺のこと考えてしてくれた?」とか甘い言葉攻めが最高ですた…

最近最高だった「きみ色に汚されたい」のさがのひをさんのイラストが繊細でピッタリでした。
感情や行動に微妙な違和感を感じるところがあるのですが、良いシーンや言葉がたくさんあるので神評価にしました。

2

恋をしよう

作家様買いです。

過去の出来事でトラウマがある乙矢(受け)と柊吾のお話。
作家様は切ないお話を作るのがほんとに上手いな…と改めて思いました。
今回のお話もすごく切なくて泣きたくなるような部分が沢山ありました。


まず、乙矢のトラウマになった出来事。
社会人がすることか?ととてもくだらなく感じて腹が立ちました。
こんなくだらないことをさせて乙矢の心を傷つけた
その会社の人たちがみんな大っ嫌いだなぁって。

そんな乙矢の心を救ってくれたのは柊吾の何気ない一言なのですが
その一言があってほんとに良かったです。
その一言が乙矢の心の支えになったから…。

そして柊吾にも乙矢と言う存在が居てくれて良かったと、読んでいくと強く思います。
お互いにとっての唯一無二の存在。

でも、両思いになった後も色々な出来事があって
心がすれ違ってる二人にモヤモヤしたりします。
のちにちゃんと誤解はとけるのですが、
大切にしすぎると失うものもあるのかな。と思いました。

辛くて切ない部分もあるけど甘い部分しっかりとあって
切なさも幸せも味わうことが出来る素晴らしい作品でした。
読んでよかったです~(*´▽`*)

0

【俺の、年下の可愛い人。きみが好きなんだ、乙矢くん(柊吾)】

エロス度★★

柊吾×乙矢♡
図書館職員とバイト、超ド級にピュア!
恋に、対人関係に疲れてしまった2人が星と星のように惹かれあいお互いの心を癒す温かな恋が素晴らしかった。

柊吾への片想いが切なかった乙矢の勇気を出した頑張りや、柊吾視点でのタイプとは違う乙矢の可愛さに初めての恋で本気の恋だと伝わってくる彼の必死さや言い切れぬほどの想いが込められた心情描写がキュンキュンする。
穏やかそうに見えて乙矢への執着や独占欲が激しい柊吾がめっちゃツボです♡

さがのひを先生のイラストもこの作品にめっちゃピッタリで、表紙の青の美しさや挿絵がもう眼福でたまらんです!

0

全てを受け入れて、貴方を好きでい続けよう

とても透明感があって、可愛いタイトルと表紙だと思うんですけど。
まさにそのイメージ通りの、切なくて優しいお話でした。

それにしても、中庭先生と言うと、ちょい痛い方向にシフトしすぎるきらいがあると思うんですけど。
今回も、主人公の過去が痛い痛い。
心の傷が辛い辛い!
でも彼が、そんな心の傷を癒し、真っ直ぐ自分の気持ちを見つめる姿には、心を打たれました。
そう、寂しさも怖さも全てを受け入れて、人を愛するんですよ!!


ざっくりした内容ですが、図書館でアルバイトとして働く主人公・乙矢。
彼は図書館の職員である柊吾に、密かな想いを抱いているんですね。
で、それぞれ心に傷を持つ乙矢と柊吾が、互いに寄り添い合うようにして心の傷を癒して行く様。
そして、スレ違いなんかも乗り越えて、二人が結ばれるまでとなります。

で、こちら、言うなれば地味な日常系になるんでしょうか。
実の所、これと言った大きな事件は起こらないんですよね。
ただ、ひたすら主人公の心に、優しく寄り添う形で物語が進んで行くと言うか。

乙矢ですが、辛い過去を抱えています。
男にしては華奢な体型や、その名前から「乙女ちゃん」と呼ばれていじられ続けて来たんですね。
でも彼は、どんなに嫌でも「いじられキャラ」を笑顔で演じ続けてしまった。
そして社会人になり、徹底的に打ちのめされるあの「出来事」が起こった・・・。

う~ん・・・。
こういう、「心の傷」みたいのをリアルに描く事に関しては、とてもお上手な作家さんだと思うんですよ。
誰でも人間関係の中で、一度や二度こういう辛い経験をしてると思うんですよね。
だからこそ、深く共感してしまう。

で、そんな乙矢の前に現れたのが、大人びた優しい男性・柊吾。
実は彼は彼で、その優しい笑顔の裏に心の傷を隠していて。

そんな、互いに寂しさを隠し持つ二人が、少しずつ少しずつ距離を縮めて恋をするー。

で、楽しいのが、そんな二人の両片思いパート。
こちら、終始乙矢の視点で進むんですよ。
なのですが、柊吾が乙矢に惹かれているのは明白なんですよね。

ひょんなキッカケから、柊吾がゲイだと知る乙矢。
彼から「乙矢くんは好みのタイプじゃ無いから安心して」と言われて、密かに落ち込むんですよね。
しかし、何故か好きな相手に接するような態度を、なにかと取る柊吾。
「今、好きな相手に背格好が似てるから、ついつい間違えた」と、(読者には)バレバレの言い訳なんかをしちゃって。
で、乙矢は乙矢で、「叶わないけど、自分にも好きな相手がいて・・・」みたいに柊吾に話しちゃう。

そう、読者からすると、
おおおーーーい!
この二人、じれったくてじれったくて死にそうなんですけどー!!
って感じのやりとりを繰り返してるんですよ。
いや、めちゃくちゃ楽しいけど。

ここに、乙矢の心の傷となった元同僚と再会しー・・・と続きます。

えーとですね、素敵なのが、乙矢が柊吾と出会った事により、一歩ずつでも変化してゆく所だと思うんですよ。

自分の心を真っ直ぐ見つめ直す乙矢。

今の同僚と言う関係はやがて失われる・・・。
そばにいられなくて、触れる事も出来ない。
寂しくて、心が壊れそうに苦しくなるかもしれない。
それでも、その全てを受け入れて、好きでいようー。
みたいな。

なんかもう、読んでいてすごくジーンと来ちゃう、とても素敵なパートなんですよ。
こういう、心に響く心理描写がすごくお上手だと思うんですよ!

で、この後ですが、結ばれた二人のこれまたじれったいスレ違い。
を、柊吾視点で書いた後日談になります。
まぁ、犬も食わない系ですけど。
それにしても、ここでは「アラシさん」がとても切なかったですねぇ。
人間の、哀しさみたいな。
ちょっとほろ苦いです。

12

繊細で切なく甘い

表紙買いです。

作家さんの作品は「むすんで、ひらかないで」を2年前に読んだという事しか記憶になく、どんな作風の方なのか忘れてしまってたけど、試し読みをしたら「ナイーブそうな青年」「星好きらしい」「図書館が舞台」というあたりでこれは良さそうだと思って読んでみたけど、期待を裏切りませんでした。

表紙のイメージ通り繊細であたたかく、やわらかで手触りの良い布に包まれているような気分で読めました。
というのも、とにかく攻めがフワッと穏やかで素敵だったし、星に絡めた詩的な表現が私好みで文章を追う楽しみが味わえたので。

柊吾は終始うつむき気味だった乙矢の心を照らす、天空に輝くスピカのような存在。
そんな彼にひっそりと恋心を抱いている乙矢視点でお話は進みます。

ある日、図書館カウンターにいわくありげな美青年がやってきます。
彼が柊吾に唇が触れるほど近づく様子を見て嫉妬を覚えた乙矢は、そんな感情を抱いてしまった自分自身に対する嫌悪と混乱でごっちゃになった挙句「気持ち悪い、男が男を好きになるなんて」と言ってしまうんです。

そんな乙矢に「彼は元恋人で、彼を僕を好きだったのではなく、僕が彼を好きだった」と明かす柊吾。
やっちまった!!感でいっぱいだけど、どこまでも優しい柊吾は、大人しい君があそこまで嫌悪感をあらわにするなんて、もしかして男から好意を寄せられて嫌な目にあったことがあるの?なんて心配してくれちゃうんです。
おまけに「でも僕は彼みたいなちょっと派手めなタイプが好きだから、安心して」と、君はタイプじゃないから安心して宣言されてしまう。

でもね、読んでて両片思いだなってわかるんです。

一緒に買い物に行った柊吾がついウッカリ手を差し出しちゃって「今、好きな子にサイズが似てるからつい間違えちゃった」なんて見え透いた言い訳を信じ込んでいるのは純粋な乙矢だけで、腐女子にその言い訳は通用しないよ〜と。

そして、柊吾には好きな人がいる……という事に心痛めた乙矢がプラネタリムで一人星空を眺め、スピカと星座と恋心を絡めて表現するシーンは、とても健気でそして情緒に満ちていてきらりと光るものがありました。

幼い頃から中性的な容姿、ゲイであることを乙女座の乙に絡めて「オトメちゃん」と揶揄い続けられてきた乙矢。
社会人になっても「男が好きなオトメちゃん」とネタ扱いをされ続けても笑っておどける道化役を受け入れているうちに、乙矢の心は擦り減り会社を辞め引きこもりになるところまで追い詰められてしまいます。

攻めの柊吾と出会ったときの、落ちてしまった折り紙の星の飾り付けにすら心を砕くエピソードを読むと、とても優しくて繊細な心を持った青年だということがわかるんです。
だから「男好きなオトメちゃん」として場を和ますために笑顔でそれを引き受けている辛さ、そしてウケるためなら誰かを笑い者にしてもいいという空気や、決定的な悪意はないけれどNoとは言わせない圧力などが描かれたビンゴ大会のあとの心折れてしまった様子には思わず涙が滲みました。
(元同僚の彼女が男前で惚れた)

ちょっとした勘違いなどはあるけど程よい切なさで、可愛くて仕方ないと思っている攻めの気持ちがバレバレだし、通じあったときの攻めの溺愛が目に浮かぶ状態で読み進めることができるのが良かった。

【ここから先は星の海】
攻め視点
恋人同士になっても軽いキスのみですませている二人。
柊吾は奥手な乙矢が怖がらないように、ひとつひとつ丁寧にゆっくりと時間をかけて関係を深めていこうと、まさに真綿でくるむかのような愛し方をしているんだけど、厚顔無恥な元カレの登場や、図書館にいつもいる浮浪者のアラシさんとの接し方が元で微妙に距離ができてしまい……という本気で好きになったからこそ、乙矢の言動に揺れる柊吾が描かれています。

そして受け身で自分から何か言い出すことにおずおずしていた乙矢が「逃してあげないよ」という柊吾に対して「……こっちの台詞です」と返すまでになったところがとっても良かった!やるじゃん!

そのあとはひたすら甘いです。

ようやく最後にベッドインできて、いかに乙矢を愛しているかということを自覚した柊吾の気持ちがこれでもか!と詰まってますし、そんな柊吾に愛されるうちに極力目立たぬようにしてきた乙矢がやがて夜空に静かに輝く星のように光を放ち始めた姿が描かれていて、なんとも甘くて幸せな読後感に包まれました。
派手さはないし捻りはないけれど、こういう雰囲気の作品好きです。

個人的にいいなぁって思った表現は、抱き心地で季節を知るというところ。
厚手のコートを着た乙矢の抱き心地で季節が変わったことを知った柊吾が、これから先も冬になるたびに、乙矢を抱き寄せる手触りで季節を知りたいと願うところがなんとも素敵でした。

10

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