イラストあり
ずっと本心を押し隠し、完璧を演じ続けてきた主人公に、人の目なんて一切気にせず、自分に正直な攻め。
正反対な二人が出会い、ぶつかってスレ違って、愛しさを覚えたりする。
本音をさらけ出し、カッコ悪くとも素顔を見せる。
そして、自分の全てを素直に受け入れるー。
と、「恋愛」をこれでもかと真っ向から描いた、とても素敵なお話でした。
これ、二人の恋愛を通して、「人生とはなんたるか」を訴えかけてくるんですよね。
いや、婚活パーティーで偶然出会った二人が、誤解やスレ違いを乗り越えて結ばれるー。
と、超シンプルなお話なのです。
なのに、根底にあるものがめちゃくちゃ深い。
個人的にファンタジー好きでして、どちらかと言うと派手で凝った世界観なんかを好むのです。
が、これと言ってどうと言う事のない、ただ二人が恋愛をしてるだけのお話なのに、めちゃくちゃ面白くて。
う~む・・・。
恋愛に、特別派手な演出なんて必要無いんだなぁ。
泣いて笑って、傷ついたり、ときめいたりー。
そうやって、一生懸命相手と向き合ってるだけで、十分特別なんだなぁ。
で、ザックリした内容です。
高校教師である椿。
主人公の彼が婚活パーティーで、偶然隣になった場違いな青年・藤丸と出会った所からスタート。
同じヘヴィメタル・バンドのファンだった事から意気投合し、泥酔状態で一夜の過ちをおかしてしまうんですね。
その後、何故か藤丸からプロポーズされー・・・と言うものです。
椿ですが、実はずっと親友に片思いしてます。
で、その親友の側に居るために、ひたすら努力して完璧な人間を演じ続けてきた。
また、彼はすごく頑固で頭が固くて。
自身の親友への気持ちが恋だとは認めようしないし、自分がゲイだとも認めようとしない。
椿の視点で語れるのですが、なんかこう、本人は気づいてないんですけど、すごく生きにくいだろうなぁと。
こんな毎日、息苦しくないんだろうかと言うのが第一印象なんですよね。
で、そんな彼が出会った、正反対の青年・藤丸。
TPOなど無視し、自分のやりたいように振る舞う。
その最たるものが彼の婚活の理由でして。
実はウエディングドレスのデザイナーなのですが、結婚と言うものが分かっていないとデザインに文句をつけられるため、じゃあ結婚しようみたいな。
こう、結婚と言う事実さえあればいいと思っていて、相手すら誰でもいいのです。
徹底してるのです。
しかも、運命のイタズラか、椿の想い人である親友の仕事相手でもあって。
ここから、その親友・北斗に頼まれて断る事が出来ず、藤丸の面倒を見る羽目になる椿。
藤丸を結婚させるべく、いい男へと磨き上げますが、彼からは「結婚するならあんたがいい」と言われてしまい・・・と言う流れです。
こちら、とにかく二人の恋愛が丁寧に綴られるんですよ。
その中で、藤丸の男としての成長、そして親友への長い片思いを終わらせ、本当の自分と向き合えるようになる主人公が語られる。
最初こそ酔って寝てしまうと言う、最低の始まりだった二人。
それが、少しずつ少しずつ相手を理解し、互いに影響を受け合い、それぞれ変わって行く。
そして、かけがえのない存在へとなってゆく。
主人公の心情を丁寧に追いつつ、二人の変化が鮮やかに語られます。
この、深く掘り下げられた心理描写にすごく心動かされて。
あと、単純にですね、真っ直ぐな藤丸の言動がいいんですよ。
傷ついた時は「他の男を重ねた。プライドが傷ついた」と言い、好きになれば「あんたに夢中だ」と告げる。
また、意外と素直に椿の言う事に従うのも可愛くて。
椿がですね、そんな彼と過ごすうち、初めて楽に呼吸が出来ると感じるんですね。
そこがとても素敵で。
ついでに、気持ちが通じあってからのエッチを、最初の時のエッチと全然違うと思うのにも萌えちゃって。
想いが通じ合えば、重ねた身体も別物になるー。
いや、エッチって愛が無くても出来るけど、逆に愛があれば、これ以上ないほど素敵な行為になるんだなぁと。
他、椿の想い人である親友。
彼のキャラもとても素敵でした。
椿がこれだけ拗らせるワケだねと。
それと表紙がめっちゃ可愛いんですけど、口絵カラーが負けず劣らず素敵なのです。
本編を読了後に再び見ると、胸がジーンと熱くなってしまう。
最後に、自身がゲイだと頑なに認めようとしなかった椿。
彼が終盤で、気負いなく「俺はゲイだ。」とやりとりするのがすごく素敵でした
読み終わって、最高すぎて本当にのたうちまわってしまいました…!
正直、読み始めて今回のカップルの人となりがわかった段階では(うーん、好みじゃない!はずれ!)とさえ思っていたのに…!
テンポ感がよく、それでいてキャラクターの心に寄り添いながら成長を見届けられるような、なかなかこんなに読んでて楽しい作品はないかもしれません。
長年の努力でなんとか作り上げた完璧な男としては認められずにいた同性への片想いに気づかないふりをする受けの椿、そんな片恋相手の自分とはちがって生まれながらに完璧な男である北斗、それに相対するように、欠陥だらけと言っても過言ではないのに、椿の話を道標にどんどん完璧な男に近づいていくレン、どんな完璧な男相手でも肩を並べるにふさわしい椿の教え子・真凛がメインの登場人物のお話です。
先述のように、あらすじには特段書いてないけれど、椿は"北斗の隣にいるための完璧主義・意識高い系で人を見下すような"キャラクターです。言い過ぎかもしれないけど。俺様でもないけど。だから私は「え〜?好きじゃないかも」と思ってしまいました。
ところが、物語冒頭でなりゆきでレンに抱かれることで、本質ではないことが露わになります。
物語が進み、レンと親しくなるにつれて完璧主義「のよう」な椿の脆さが垣間見えて、また、その脆さゆえにすれ違ってしまいます。ここが本当に椿の可愛そうさをよく表しています。とはいえ逆に、誤解に気付いた時の椿のナルシズムに安心するとともに笑ってしまいました。
好きになってもらうための努力をして、完璧に近づいていく一方、レンの前では「完璧」でなくても許されることを知って、完璧な自分だからではなく、「完璧でいる努力をする人となりだから周りの人に愛されている」のだということに気づいていない椿が、かっこいいのにとっても可愛かったです。
椿のことばかり褒めてしまいましたが、
もちろんレンも俺様なのに健気で一途で、
レンが相手だからこんなにも椿のことを好きになれるお話だったと思います。
破れ鍋に綴じ蓋みたいなカップルですが、「支え合う」未来が手に取るように見えるステキな2人です。
北斗のBLのお話も読んでみたいですけど、そうじゃないし、ショートとかで2人を見守る北斗視点の話が読めたらいいな〜
というか、北斗は本当に椿の気持ちに気付いていなかったのか気になります。
今回のレビューで連呼した「完璧」って、魅力的な要因の一つであるのはたしかですが、何を持ってそう言えるのかなんて、感じる側の人間次第だし、不器用でも胸を張って生きられるために努力をし続ける方がよっぽどかカッコいいな、と読者にも訴えてくれていたような気がします。
騙されたと思って読んでみてください!
婚活パーティで偶然出会った相手と、まさかの偶然が重なりに重なってしまったお話。
ウエディングドレスのデザイナーなのに、愛することや結婚することについてはわかっていないと言われ、とりあえず誰でもいいから結婚さえすればいいとばかりに、婚活パーティに参加していたレン。
親友への感情を認めたくなくて、完璧な結婚を求めるている高校教師の椿。
そんな二人が、好きなヘビメタバンドの話題で盛り上がって、つい、一夜を共にたら、、、。
このお話、椿の職業が高校教師だという設定がとてもよくいかされている。
レン、椿、椿の教え子の女子高生、それぞれの結婚観が、三人互いに作用しあって、それぞれに自分の内面をちゃんと見つめて、それぞれ成長していく。
特にレンの成長が著しくて、とんでもないスパダリに変貌していく。
超ハッピーエンドでした。
千地イチさんの新作ということでとっても楽しみにしてました。
誰でもいいからとりあえず結婚したいという、なんだコイツ!感全開な攻めなんだけど、違和感なく読み進めることができ、いつしか二人の気持ちにしっかり寄り添って読むことができる。
最高でした。
仕事のために結婚したい攻めと、14年間思い続けた親友の結婚にショックを受けるもいまだにゲイである自分を認められず結婚に逃げたい受け。
それぞれ不純な動機で婚活パーティに臨んだ彼らが出会い、マイナーバンドのファンという共通項で盛り上がり、酒の勢いもあって寝てしまう。
翌朝、一夜の過ちとして無かったことにしたい椿(受け)に対して、結婚を迫るレン(攻め)。
性格が真反対な二人による恋のシーソーゲームが面白かった。
レンはウェディングドレスのデザイナーなんだけど、結婚の意味を理解しないと良いウェディングドレスが作れないと言われたからとりあえず結婚したいとか言っちゃうキャラで、「好き」という感情を知らないんですね。
そんなレンが、椿に出会って椿の言葉や存在に化学反応を起こして、「好き」という感情に目覚めていく箇所が好き。
母エピソードを絡めてああいう風に自分を肯定されたら、そしてあんな風に一緒に笑えたら、そりゃ恋に落ちるよね、わかります。
そして「恋愛なんて面倒」なんて言ってたレンが、椿の教えを守ったり恋愛セオリー本を読みまくったりして、教科書通りの恋をしようとするんです。
なんとしても椿を手に入れるために。
不器用なんだけど、一生懸命に。
そこがもう とにかくかわいすぎました!!!
恋は人を変え、成長させるわーと思いました。
一方、親友への気持ちは憧れだと言い聞かせてそばにいた椿の14年にも渡る片思い。
その想いにきちんと終止符を打つところが、切なくも晴れやかで良かったです。
そして、完璧な親友にふさわしいように完璧な自分を演出し続けてきた椿のために、レンがお手製のスーツを作って「完璧な姿」にしてあげる。
切ないのだけど恋を葬った湿っぽさはなく、晴れ晴れとしていてまるで卒業シーンのようだった。
ここがすごく印象に残ります。
あとがきが終わって、一番最後のカラー絵。(親友の結婚式の後だと思う。)
レンの笑顔が本当にかわいい。
一緒にいると思わず笑顔がこぼれる、そして相手の笑顔が見たくなる、そんな関係。
作中の「笑顔」にまつわるエピソードの数々が思い出されて思わずジーンとしちゃいました。
何度でも見返したくなる挿絵でした。
教科書通りの超王道のプロポーズをしたレンだから、次はゼクシィでも買い込んで結婚式のリサーチに励んでほしいです。
こぼれんばかりの笑顔で、全身から幸せを撒き散らして永遠の愛を誓う二人の姿が脳内に広がります。
(でも椿は男同士なのに人前で誓いのキスなんて!と抵抗しそうだけど)
もちろん二人はレンお手製のウェディングスーツを着用です。
きっと、そんな素敵な結婚式を挙げてくれることでしょう!
タイトルにつきます。素晴らしかった……
二人の感情の動きや恋していく過程が、これでもかと丁寧に書かれた純度の高いラブストーリーでした。文章がキラキラしてた…
デザイナーでCEO、婚活、プロポーズ、ヘビメタなど……目に入りやすい設定は多いですが、私は二人の日常の描写に惹かれました。
想いってこういう何気ない生活の中で、二人にとっては特別な瞬間を積み重ねて、育まれていくものだよな…なんて柄にもないことを心から思ってしまいます。
また攻めの藤丸レンが……こんな純粋で真っ直ぐな男が世の中にいるのかと…!
温室で育ってきたような男ではないのですが、彼の飾らない、そのままの言葉には心を撃ち抜かれます。
車の中で椿さんに言ったあのセリフ……!読んだ瞬間、一旦本を閉じて放心したあと、部屋中転がり回りました……やられた…
迷ってないでもっと早く読んでおけば良かった…そしたら特典とかも色々あったのにな…悔しくて発狂しそう…
どんな形でも、この二人にまた会えたらとてもとても嬉しいです。