イラストあり
オカルト要素ありの刑事ものであり、バディものであり、主人公救済ものです。
個人的に、こういうトラウマ持ちの美人受けは大好物ですし、オカルト系捜査モノと言いますか、能力者ものも大好きだったりするのです。
そんなワケで手に取りましたが、予想以上に面白かったですよ!
いや、ストーリー自体は謎解き要素もありつつ落ち着いた雰囲気で進むんですけど、山場ではアッと驚かせてくれてと、緩急の付け方が上手いのです。
そして、思わずホロリとしちゃうような、優しいラスト。
こちら、作者さんの初めての文庫になるそうです。
ショコラ文庫さんですが、自分のカラーをしっかり持った面白い新人さんをデビューさせて、世に輩出するのが上手いレーベルだと思うんですけど。
他にもそういうレーベルはあるんですけど、そこが超王道で手堅い所を押さえているんだとしたら、ここは遊び心がある感じ。
新人さんをしっかり育てるノウハウがあり、何より編集さんに意欲があるんでしょうね。
なんか上からの偉そうな意見で申し訳ありません。
何が言いたかったかというと、新規開拓をしたい方、ショコラ文庫さんの新人さんをぜひチェックしてみてね!ってだけだったりします。
ザックリした内容です。
人に憑依して罪を犯させる『ファクター』を感知する事が出来る能力者・千尋。
そんな、捜査官としてファクターが絡む事件を追う千尋と、新たにバディを組む事になったのが、年下の刑事・嵯峨野になるんですね。
人嫌いで組織の中でも浮いている千尋に、最初から親しみを向けて懸命にフォローしてくれる嵯峨野。
ついつい嵯峨野に心を許したくなる千尋ですが、そうする事は出来ない、重い罪を背負っていてー・・・と言うものです。
千尋ですが、幼い頃にファクターに乗っ取られた父親から襲われ、能力を暴走させて義理の弟を殺してしまっています。
それが彼の重い十字架となり、現在の誰にも心を許さない孤独な青年が出来上がったんですね。
また、彼の感知能力ですが、実際に「被害者」の身に起きた事を追体験すると言うものです。
被害者が切り刻まれていれば、同じだけの苦痛を味わうー。
これね、情景描写がとてもお上手なんですよ。
血に弱い方は、読むのがちょい厳しいんじゃないかなぁってくらい。
えーと、ややスプラッタ。
いや、個人的には、痛みに悶え苦しむ美人受けって事で、気の毒ながら萌えちゃったワケですが。
こういうさあ、一定数存在する、やたら嗜虐心をそそる受けって何なんでしょうね?
鼻血を出してるのが似合うタイプと言いますか。
いや、私だけかもしれないけど。
で、そんな彼に何故か最初から好意を示し、邪険にされてもワンコのように付いて回る刑事・嵯峨野。
年下ながら抜群の包容力があり、その穏やかであたたかい人となりで、千尋の心にスルリと入り込むー。
千尋がわりと言うか、かなり面倒くさいタイプなんですけど、そんな彼ですら心を許してしまう、嵯峨野のワンコっぷりが素晴らしいのです。
また、彼ですが、実は独占欲もかなり強いと思うんですよね。
千尋には幼い頃からずっと面倒を見てくれている、兄貴分的存在がいるのですが、彼と身体の関係にあると誤解しています。
で、普段はすっごい包容力とワンコっぷりを発揮するクセに、その時ばかりは苛立ちをあらわにする。
急に意地悪な態度をとられ、ワケが分からず不安げな千尋も、また可愛いんですよ。
普段クールなだけに、「・・・何か、怒ってるの」みたいなセリフが、妙にいじらしくて萌えちゃうと言いますか。
と、共に捜査を進めるうちに距離が近づいて行く二人。
しかし千尋は、過去の事件による心の傷から、嵯峨野を強く拒絶してしまうんですね。
更に、ファクターに侵食されている疑いをかけられた事から、捜査を外されてしまい・・・と続きます。
この二人が追う事件ですが、謎解き要素がかなり面白いです。
伏線がしっかり張られてまして、またミスリードを巧みに誘われるんですよね。
犯人は一体誰だよ!?って感じで。
が、それ以上に面白いのが、千尋の過去に絡んだ驚きのオチ。
いや、嵯峨野の正体はうっすら予想したものの、もう一つ大きなオチがございまして。
くっ、千尋、不器用すぎだよ。
そして、めちゃくちゃ健気じゃないかよ!
ついでに嵯峨野、意外としたたかだったよ!!
あと、これは完全に個人的な好みの問題なんですけど、千尋を嫌う女性キャラが出てきます。
こいつがウザい。
嵯峨野にも周囲にも千尋の事を悪くいい、最終的には「誰かに責められたかったのは私なんです。ごめんなさい」って何やねん!?
やってる事が矛盾してる気がする。
千尋、許す必要ないから!
許す必要ないからー!!
と、女性キャラにはイライラしたものの、とても面白くて心を打たれる素敵な作品でした。
と言っても過言ではない位良かった。面白かった!みずかね先生の美しい表紙とタイトルの「捜査官」という単語やあらすじから「こんな美しい受けが主人公の大好きジャンル・刑事ものなの?!」と思い初読み作家さんですが手に取り、結果大当りでした。
刑事は攻めの方で受けは殺人現場で被害者の残された思念を読むことが出来、「ファクター」という人に乗り移り、殺人を犯させる犯罪者の悪霊も見えてしまう特殊能力者で、とある研究所に所属しながら警察に協力する立場です。
SFホラー・サスペンスとも言えるジャンルで宮部みゆきさん、S.キングなどが好きな方はハマると思います。BLでいえば夜光花さんのホラーみたいな雰囲気があります。研究所の他のメンバーも魅力的だったのでスピンオフも読みたいなあ。
BL属性はキラキラした癒し系年下大型ワンコ×悲しい過去を負いながらストイックに仕事をこなす意地っ張り美人で…これもまあ大好物です。28歳の受けは年上なのに童貞というオプション付きなのでそこにも萌えられます。ラストに向けてもう一つの属性が追加されるので、新人作家さんのようなのに色々仕掛けが用意されていてすごいと思いました。
ストーリーもBL部分も楽しめて、夏の読書に超オススメです。頑なだった受けが攻めの優しさにだんだん溶かされていく様子が、ウン、やっぱ王道っていいよね!と思えます。
みずかね先生なのでマストバイ。デビュー作なのかな、初めましての先生でした。どうなるどうなると気になって読んでしまうお話でしたが、ひっかかってしまうところもあったので、萌にしました。サイキック関わる事件ものの本編270P弱+あとがき。
一宮超自然現象研究所の下部組織「特殊現象対策室」に所属する千尋(ちひろ)。目に見えない「ファクター」によって起こされる事件が確認され、それに対応するべく警察は千尋のような何等かの能力を持つメンバーに協力を求めるようになっています。ある日その対策室に懐っこい笑みを浮かべるでっかいワンコのような男が訪れてきて、ある事件について協力を求めてきて・・と続きます。
大輔(受けの義弟、故人)と受けの父・義母(故人)、一宮(アカデミーの所長)、藤野(対策室室長)、伊坂(対策室の事務員、♀)、雑賀をはじめとする事件関係者多数。
**攻め受けについて
攻めはゴールデンレトリバー級の懐っこいでかワンコ(好き)。受けは、接触することにより思念が読めてしまうため人との関わりをあまり持ってこなかった&過去の凄惨な事件によるトラウマ持ち。最後なんとか円満な方向で事件が片付いて、攻め受けとも納得いく形でのハピエンで、その部分は「何よりだ!!!!」と大変嬉しいものでした。
サイキックものも好きだし、デビュー作からチャレンジ!とすっごく思うし嬉しいです。でも事件のドキドキ感と恋話の萌え萌え感のミックスが、私にはちょっと難しかった・・・
受けが攻めに堕ちるその前に、もうちょっと「受けの渇望感出してくれると嬉しいな」「攻めの気持ちを前倒しで滲ませておいてほしい」と感じました。
それから謎解き。やっぱり、あれは?と気になる部分があって残念。(私の読み取り不足でしたら申し訳ありません)
事件ものって凄く好きで、もっともっと読みたいなあと思うのですが、なかなかしっくり来るのは難しいなあと思う一冊でした。でももしよかったら、先生、また事件もの書いてください・・この二人でもスピンオフでも。もうちょっと大人びた、でかワンコに会えると嬉しいです。よろしくお願いいたします。
2019年刊。
特殊能力を発揮する刑事もの?らしいあらすじに惹かれて購入。
しかし実際に読んでみるとこの話、刑事もの、バディものと言うには相当異色だ。
大好物な設定なのにいまいちピンとこなかったのは、何といっても『凶悪な残留思念が”ファクター”として人に憑依する事によって、残忍な殺人犯が産み出される原因となる』設定にある。
この発想は斬新で目を惹くが、どうしても悪霊憑きのイメージを混合してしまう。
作中では、人に憑依したファクターを上手く取り除くのが可能ならば、本来のその人は無事救い出されるとなっているが、自身の意思とは全く関係なくとも人を殺めてしまった事実は当人を苛むものだと思うけれどね。
あと、いくら話の流れで事件の捜査協力を申請しているとしても、刑事(嵯峨野)一人と能力者(千尋)がペアを組んで捜査しているのに引っ掛かってしまった。
そもそも能力者ってのは一応一般人なのに、ファクター憑きの凶悪犯に襲われる危険もあるし、犯人を取り逃がす恐れもあるし、もう一人の刑事代わりをこなすのは無理があるんじゃ…と思っていたら案の状…ね。
と言いつつも、そんな千尋と嵯峨野がペアを組むって成り行きはまさに僥倖だった訳だが。
千尋自身、持っている能力を恐れられてアカデミー内で遠巻きに敬遠されているわりには、あまり卑屈になっていない態度には好感が持てた。
嵯峨野に世話を焼こうとするのは過去の経緯もあっての事かも知れないが、本来のお兄ちゃん気質っぽい感じがしたし、嵯峨野のワンコっぽさと相性が良いのが一目瞭然だった。
正直、刑事ものとしてはいまいちしっくりこない感はある。
全登場人物の無念が報われる形ではないせいもあってか、余韻の重さも印象に残る一作かと思う。
オカルト混じりのミステリーものです。
人の悪意などの思念が悪霊化したもの・ファクターに寄生された人間が事件を起こし、それを感知できる能力者・松雪千尋(受け)と刑事・嵯峨野(攻め)が連携して寄主を保護し浄化するまでとこの二人の恋の話。
あらすじはすでに詳しく書かれているので感想だけ。
ファクターを追いかけるミステリー部分は面白かったです。
リーディングで読み取った情報と犯人と対峙したときの違和感があるのは何故なのか、犯人は一体誰なのかという部分が良くできていたと思います。
ただ、恋愛部分がちょっと弱かったように思います。
最終的に判明する二人の関係は予想通りなところでしたが、もう少しその辺りにも言及があってもよかったように感じました。
千尋視点なこともあり、千尋が嵯峨野に惹かれていくのはわかるのですが、嵯峨野の方はどういう心理変化だったのだろうか。
いつ恋愛感情になったのか気になります。
嵯峨野の方は千尋との関係も知っていたのだから、最初はそういうつもりはなかったんじゃないかと思うのです。そして、最終的に千尋も全く葛藤とかなくさらっと受け入れていたのも、ちょっと拍子抜けした感じです。
また、千尋の所属する「特殊現象対策室」の事務担当の女性・伊坂の言動にはかなりイラつきました。
伊坂の能力に関しても一貫性がなく、登場時は「ちょっと感知能力がある」ということだったのが、物語終了時には「「対策室」でも特に精度の高い感知者」ということになっていて、1年も所属していて今頃判明したの?と疑問に思ってしまいました。
貴重な能力者である千尋に対して酷い言動をする伊坂に対して、上が何も言わないのも不思議。注意するか移動させるかの対策くらいとればいいのに。
最終的に、伊坂は「自分の能力がうまく使えなかったことに対し、自分を責めたかったけど、その代わりに千尋を責めてました」みたいな懺悔をしていたのが余計に腹が立ちました。
子供の時の事件でトラウマ持ちの千尋をさらに自己批判させるために登場させたような気がして・・・
伊坂がいなくても話は成り立ったと思うので余計に彼女の登場シーンはイライラしました。
それにしても、千尋のようなリーディング能力があれば、ファクター絡みでなくてもどんな殺人事件もすぐに解決しそうですね。
面白かったのですが、エロはあるのに恋愛部分の描写があまりなく、萌をあまり感じなかったのが残念でした。