電子限定かきおろし漫画付
さあ、僕を癒しておくれ
ちるちるさんのレビューを読んで、主人公のすばる君に興味がわき、コミックスで読みました。
この作品を読んで(読みながら)涙を流して心を動かされた方々がいることに納得しました。
神評価のレビューに共感しました。
素晴らしい作品だなぁとしみじみ思いました。
私自身、確実に合格出来る高校を受験し合格。特にコレといった目標や夢が無く、出来ればラクして生きたいって思ったことがあります。
ですから、すばる君に寄り添いながら読み進めることが出来ました。
しかしながら私自身は、
家族同士での揉め事が多い家がとても嫌だったので、自立した一人暮らしをしたいと思っていました。
リストラがなく倒産する危険もない職に就いて安定した生活を送るためにはどうしたらいいかな、、、という思いが
ラクして生きたい〜をやめることにつながりました。
結局、食いっぱぐれが無いと言えば医療関係の専門資格を取得して就職するのが良さそうと思って勉強を頑張ったりしたなぁー、、、
と、数十年も前の自分を懐かしく思い返しながら読み進めました。
美しい線で描かれていて心情や状況の描写も私が大好きな作画です。
すばる君がとても素直。そんな彼の心情を見抜くことが出来て、真正面からきちんと向き合うあすかと大東禅吉というキャラも好きです。
コミックスの帯には『すばるくん、君のお仕事は僕と寝る(ペット)ことだよ。』と大きく書かれていますが、
この作品の本質とはズレています。
裏表紙にあらすじが書かれていますが、『さあ、僕を癒しておくれ』と太字で大きめに書かれているのも、この作品の良さを誤解させてしまうと思いました。
コミカルな作品ではないので。
エロ描写もとても少ないので、高校生や多くの若者が読んで生きるヒントを得られる名作として売り出してほしいなぁと、アラフィフの私は思いました。
目標もない、やりたいこともなりたいものも見つけられないすばる。
だからただ楽な方に流されて、のらりくらり生きているけれど、このままではダメだという焦りもあり‥。
すばるはきっと、焦りと諦めがごちゃ混ぜになると無気力になるタイプなんでしょうね。
プラス強がりで負けず嫌いっていう‥
でもそれは根っこの脆さを隠すためなのかな。
これまではたしかに甘ちゃんだったところもあるかもしれない。努力も足りなかったかも。
でも善吉の
「そんなに焦らなくてもいいんだよ
人生は長いんだから」
その言葉ですばるはこれからも救われていくんでしょう。
過去のダメだった部分は今の彼にたどり着くまでの道程だった、ということなのかな。
すばるについての感想ばかり書いてしまったけど、他のふたりについてもかなり考えてしまえる(良い意味で深読みできる)作品でした。
言葉尻だけでない、その奥に在る本心を探りたくなる一冊だなと思います。
そして、こんなにも読み手によって印象が二分する作品もなかなかないのではないかな、と他の方のレビューをみて感じています。
だからこそ面白いですね。
作品と合わせて色んな捉え方があることを知れて良かったです。
わたしは主人公のすばるくんと似たようなところがあり、読んだ今現在もそのような状況下にあります。
あすかに対し『どうしてそこまで出来るんだ』と思うシーンがあるのですが…まさにわたしが日頃、"何かの、誰かの、自分の未来、そのようなことの為"一生懸命になり、頑張っている方々に抱いている感情でした。すばるくんの灯台は"お母さん"でしたね。元々、灯台があったからこそ、すばるくんは頑張ることができたのか、気付くことが出来たのか、と思いました。要はわたしは途中から少しすばるくんに対して"僻み"妬み"の感情があったようです…。
BL漫画でキャラを自分と重ねることはあまり無いのですが…今回は少し…苦しい気持ちになってしまいました。安堂ろめださんの作品はこちらが初めてで、イラストがとても綺麗であらすじを読み、即決で買わせていただきました。本当に素敵なお話だと思います。
私情が絡んでしまい…気持ちを切り替えられず、自分と重ね合わせ、楽しめなかった事が誠に申し訳ないです…。
わたしの見解なので誤解して欲しく無いのですが…この作品は『他人に肯定され許されて、自分を許せている人』は読んでも何も感じないかもしれないです…。
わたしはすばるくんの"お母さん"の存在や、大東先生の存在がとてもとても羨ましいかったですね…。
読む時を間違えてしまったかもしれないです…わたしはずっと…"高校を卒業後の2年前のすばるくん"のままだからかもしれません…。
『あてもなく生きるのが嫌』まさにその通りです。
何もないまま生きるの等、死んでいるのと何ら変わらないと思うのです…わたしの場合はすばるくんが持っていた"お母さん"からの焦燥感も無いので読んでいて…少し困ってしまいました。すみません。
良い作品です。本当に。
わたしもすばるくんのように、何かを見つけられたら良いなと思います。おめでとうすばるくん。
そしてごめんね、すばるくん…君は…凄い子ですね。
ありがとうございました。失礼致します。
いい読後感でした。
オメガバ作品の「なみだ枯れるな」
兄弟ものの「どこにもいかなくていいよ」を既読しています。
まず、絵が好みです。
汚い線がなくて、水をたたえたような瞳の描き方が少女漫画ちっくで好きです。
早くに父を亡くし、母の道しるべに従っていきてきたシロ。
なやみなきようないまどきニートのようでその実、大人になりきれない自分に
とまどっている若者だったんですね~。
金に目がくらんで飛びついたバイトで詩人の大東と出会い、
惹かれて、告白して、お互いのため的なことで叶わなくて。。。って
王道の展開でよかったです。
王道展開なので、もちろんハピエン。幸せになってよかったです。
好みがわかれている作品のようですが、わたしはよかったです。
何度でも読み返したくなる再生と成長のお話でした。
これはですねー。多分に読み手側の心理状態によって、評価の別れる作品では無いかと思われます。
もし、私が何憂うこと無く元気な時だったらば、違う評価になっていたかも知れません。
私は、読んでいる最中からもぅ。涙が溢れて止まりませんでした。ちょっとメロウな気分だったのかもしれません。
主人公の すばるくんは、高卒で20歳のニート。日々何となく生きていて、「楽な方へ楽な方へ生きてきたツケがたまってきてる感じがする。」と、自覚して生きている。
余談ですが、私は「馬鹿馬鹿しさの真っ只中で犬死しないための方法序説」という考え方が割と好きで。それは「逃げて逃げて逃げまくれ。」という、身もふたもない方法なんだけど。遂に逃げ切れない状況になったとき、それこそが真摯に考え得る価値のあること。…だったかな。
とにかく。そうで無い時は、「逃げて逃げて逃げまくって」OKだと思ってもみる。そのぐらい気を楽にしていないと、生きて行くのは 辛い事のが多過ぎる気もするのだ。
すばるくんは、そのやる気の無さで バイトも長くは続かない。しかし、母親に「いい加減にしなさい!」と言われるのも嫌だと思っている。そして、後にすばるくんの母親への想いが描かれて行くことによって、彼の焦燥感の意味も成してくる。
偶然出逢った高時給のバイトは、謎めいた作家の癒しのペットとなる事。ただし、エッチな意味は含まれない。エッチはエッチで、担当者がいる。恋仲めいた関係を結んで、身の回りの世話も焼くあすか。
勿論あすかは ただ可愛がられるだけの「ペット」である、すばるくんに嫉妬する。
けれど、あすかには辛くて苦しい失恋の痛手もあって…。
という、絶妙に微妙な三角関係で展開していく。
禅吉が詩人という、珍妙な生き物である事で。そういうのもアリなのかな。という煙に巻かれてしまう。
禅吉が引用する、高村光太郎も好きだ。人が生きていく上で。
「この遠い道程のため」
思春期にこの詩人の詩を読まなかった人がいるだろうか。メランコリ。
すばるくんは初めて自己を肯定された事で、たぶん生きて行く糧を得る。
誰かの為に生きていたいと思えるようになるのだ。涙。
私は禅吉とあすかが恋をする結末になるのかな、すばるくんが存在した事で何らかの化学反応が起こる事も期待したんだけど。禅吉とあすかは恋人以上の関係に昇華されてしまっているので、ここは禅吉とすばるくん、という事に落ち着いてしまう。
描き下ろしのその後では、苦しんだであろう、あすかの元カレがあすかの元へ戻ってくるというオマケが付いていて。きちんとあすかを救済してくれている。
誰にだって「何か」は残っていて。すばるくんはそこに「誰かの為に」料理をするという、んー、もしかしたら安易かもしれないけど。とにかく‼︎ 自分の拠り所を見つけて生きて行く。
ただ飼われるだけの「ペット」では無くて。
20歳の若者が生きるすべを見出していく、温かな物語です。
心がくすんだり、弱った時の処方箋になるかと。未だに、「逃げて逃げて逃げまくっている」私には、刺さりました。